支援を受けた学生のご紹介

Vol.6 「教育実習でつかんだ確かな手ごたえ」

名前: 齋藤 岳人

所属: 初等教育教員養成コース3年

基金を活用して、広島大学附属三原小学校へ2020年9月1日~9月30日まで教育実習を受ける。

コロナ禍で例年とは異なるところもあり、実習は大変ではなかったですか?

今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2年次で行う観察実習(教育実習指導A)が中止となり、直接子どもたちに関わることができないままの授業作りとなってしまいました。
事前準備から苦労の連続でしたが、実習生仲間と相談しながら教材を作りこみ、しっかりと準備を行いました。どのクラスを担当しても対応できると思えるほどでした。

しかし、実際に目の当たりにした児童は、自分の頭の中で都合よく動いていた子ども像とはかけ離れ、想定していなかった反応を見せました。実習期間の最初に担当した授業では、授業者であるにも関わらず混乱してしまい、準備していたことの半分も達成できなかったように思います。後日、その時の写真を見ましたが、「この板書を後から見返したとして、どのくらい授業内容を理解できるだろう」と疑問に思うような有様でした。どれほど入念に準備していても、決して思い通りにはいかないということを痛感しました。

実習前に練っていた授業内容と実際に行った授業内容では、多くの変更点がありました。子どもたちのことを知れば知るほど、「もっとこうした方がいいのではないか」ということが出てきて、直前まで修正し続けたからです。授業を行うと必ず上手くいった部分と上手くいかなかった部分が見つかります。自分の行った授業について自己分析を行い、周りからもフィードバックを得ることで、「次に担当する教科ではここを改善してやってみよう」と授業者としての目標を持って臨むことができました。
集大成である一斉授業では、体育を担当しましたが、最初に行った算数の授業よりも確かな手ごたえがありました。算数, 国語, 理科, 社会, 音楽, 図画工作, 体育の7時間の授業を経て自分の成長を実感することができ、自信にもつながりました。

跳び箱運動のポイントを分かりやすく示すために
使用した教材(体育科の授業用)

子どもたちに活動の見通しを示すために見せた見本
(図画工作科の授業用)

子どもたちとの交流で学んだことはありましたか?

子どもたちからは、多くのことを学びました。その中の1つに、子どもたちは自分たちで何とかする力を持っている、という発見がありました。子どもたちが困っているのを目にすると、最初は何でも手取り足取りやってあげたくなりました。しかし、子どもたちが自分たちの力で解決していく姿を見ると、成長する機会を自分が奪いかけていたことに気づきました。何もかも全てやってあげるのではなく、いかに上手に足場架けをし、成長の芽を摘まないでいられるかが大切であるということを学びました。

また、子どもたちとの信頼関係の築き方についても学ぶことができました。一番大事なことは、やはり積極的に子どもたちに関わるということだと思います。子どもたちが一生懸命伝えようとしている時は、1人1人の目を見ながら理解しようとします。するとその姿勢が子どもたちにも伝わります。この小さな関わりが積み重なって、信頼関係の構築につながると感じました。
しかし、ある程度の信頼関係ができてくると、今度は注意したり、凛とした態度で接したりすることに臆病になってきます。「嫌われたくない」という思いをどうしても無視できないのです。そんな中、とっさにある子どもを注意したことがありました。「嫌われてしまう」と思いましたが、その子どもはその後も変わることなく私と接してくれました。子どもの信頼を損ねない限り、築いた信頼関係は揺るがないということが分かり、迷わずに褒めたり注意したりできるようになりました。このことは大きな経験になりました。

個性あふれる子どもたちと関わることができた1ヵ月は、自分にとって一生忘れることのできない時間となりました。実習期間が終了してから2ヵ月以上が経過した今でも、鮮明に1人1人の顔が脳裏に浮かび、様々な出来事が思い出されます。このような貴重な経験を得ることができ、本当に良かったと思います。

これからの目標を教えてください。

小学校3年生の時に出会った先生から大きな影響を受け、「その先生のようになりたい」と思い、小学校教員を目指すようになりました。しかし、教員志望の学生が大勢いる大学で学んでいくうちに、「自分は教員に向いていないのではないか」、「自分が教員になって、果たして子どもたちのために何かできるのだろうか」と、自信を失くすようになりました。

今回の教育実習は、そんな自分の気持ちを確かめる、進路を決める上で重要な意味を持つものでした。そして実習を終えた私が出した答えは、「小学校教員を目指すしかない」というものです。実習を経て、子どもたちや先生方、実習生との良い思い出とともに、たくさんの悔しい思い出も残りました。上手くいかないことがほとんどであり、「もっとこうしておけば良かった」と今になって思うことがあります。そのことが私を「いい教師を目指したい」という目標に向かわせてくれました。

現在は、地元の京都府で小学校教員になることを目指して勉強に取り組んでいます。

お世話になった方々へ

指導担当の先生は、私たちに1人の教師として接してくださり、ご自身が忙しいにも関わらず、実習生の授業準備に最大限協力してくださいました。先生方の助けがなければ、教育実習期間を無事に終えることはできませんでした。また、子どもたちの気持ちに寄り添った接し方、きちんと指導するところと褒めるところのメリハリの付け方など、指導担当の先生の姿全てが自分たちにとって学びとなりました。先生のご指導に深く感謝申し上げます。
 

そして、最後になりましたが、この度は私たち実習生のためにご寄付いただき、誠にありがとうございます。ご厚意に実習生一同、深く感謝しております。皆様からお寄せ頂いたご厚意で、私たちは、実習1カ月間の宿泊費を補うことができました。

広島大学附属三原小学校を実習先に希望する学生の多くは、金銭的な理由から小学校の敷地内にある寮を使用できることを前提としていました。私もそうでした。しかし、今年度は新型コロナウイルス感染拡大の観点から、寮は使用禁止という決定が下されました。この判断が仕方のないことだということは、もちろん理解しました。しかし、大学近辺から三原までは往復2時間以上かかります。朝の7時前に出発し、夜の9時過ぎに帰宅する。そこから夕食や入浴、実習の記録・授業の指導案作成、教材の準備、必要なものを購入し、深夜に就寝する。このような生活リズムで1ヵ月間の実習をこなすことに、私たちは不安でいっぱいでした。

そんな中、皆様からのご支援のお話を聞かせていただきました。その瞬間に、目の前が明るくなったような気がしました。実習生同士で喜び合い、安堵したことを今でも覚えています。金銭面での不安も解消され、実習校のある三原市内に寝泊まりできることで、精神的にも身体的にも大きく救われました。
皆様のお力添えがなければ、全員が欠けることなく実習を終えることができなかったと思います。ひとえにご寄付頂いた皆様のおかげです。重ねてお礼申し上げます。

本当にありがとうございました。

 

(2021年7月取材/基金室)


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