養成する人材・教育研究上の目的

 研究対象とする主たる学問分野
 人間社会科学研究科では,「言語学」「文学」「哲学」「心理学」「教育学」「社会学」「史学」「文化人類学」「地域研究」「法学」「政治学」「経済学」「経営学」「教科教育学」とそれらに関連する学際分野,融合分野が,研究対象とする主な学問分野である。

 養成する人材像
 人間と社会のための諸科学の追求と,教育による持続可能で平和な世界の構築を目指すという2つのミッションを有し,人間や社会に関する深い見識と専門分野以外への強い関心を持ち,自然科学や生命科学を含む他分野の専門家と協働して将来の人類社会を創造する人材を育成する。

人文社会科学専攻

人文学プログラム

 人文科学の伝統的なディシプリン(言語学,文学,哲学,史学)を踏まえながら,人間及び文化を根源的かつ全体的に捉えるとともに,常に新しい知の探求と開拓をめざす。古今東西の文化を広く深く追究し,人類の来し方行く末を見据えつつ,文化の継承と共存に貢献できる,高度な研究能力と深い学識を有する人材を育成する。また,日本語・日本文化の研究を志す外国人留学生の枢要な受け皿としても機能する。

 博士課程前期では,専門科目の履修を通して,高度専門職業人として活動するのに十分な基礎学力を身につけさせる。

 博士課程後期では,博士課程前期で培われた学力をもとに,自立した研究者に相応しい研究推進能力・論文作成能力を身につけさせる。

心理学プログラム

 現代社会では,心に関連した様々な問題が生じている。それらを解決し,持続可能で平和な社会を構築するためには,人間の行動の根底にある心理過程にアプローチする必要がある。

 博士課程前期では,実証的研究と実践活動をとおして,人間の行動とその心理過程を科学的にかつ多様な観点から解明し,それらに関する問題を解決するための資質を身につけ,社会の持続可能な発展に貢献する人材を育成する。

 博士課程後期では,博士課程前期の心理学先端研究コースと臨床心理学実践・研究コースにおいて培われた多様な視点に立つ研究力,臨床実践力を基盤として,さらに研究力を伸長し,心理学各領域の先端的な研究を国内外で推進できる研究者,大学教員,高度専門職業人の養成を目指す。

法学・政治学プログラム

 博士課程前期においては,法学・政治学・国際関係論・社会学を包括し,(i)国や地方自治体,さらにはNPO等の市民活動や,民間企業も含んだ「新しい公共管理」について,(ii)行政による事前調整から,司法による事後救済への移行において,必要となる「企業統治と遵法経営」について,(iii)ヒト・モノ・情報が軽々と国境を越えるようになった時代の「グローバルな公共性」について,(iv)現代の複雑化した医療問題を社会科学的観点から扱う「医療社会科学」について,教育と研究を行う。

 博士課程後期においては,社会科学の他領域の研究成果も視野に入れたうえで,関係分野の最先端の知識や観点をさらに展開し,実践的な問題解決を導出する能力を涵養する。
 

経済学プログラム

 博士課程前期においては,国内経済及び国際経済についての理論的・歴史的視点を持ち,経済的・社会的諸問題に関する客観的で事実に即した解決を模索する能力を身に付けた人材を育成する。(i)ファイナンス,(ii)経済分析,(iii)公共政策,(iv)比較経済などの領域において,高度な専門的知識を身に付け,それを現実の経済社会や企業社会において使いこなせる人材である。

 博士課程後期においては,関係分野についての先端的な内容をテーマとした実践的研究,及び学生自身による先端研究情報の収集・解析を通じて,問題解決に必要な課題分析・政策提案能力を涵養する。

マネジメントプログラム

 博士課程前期においては,理論と実践を融合し,営利・非営利を問わず,組織における様々なマネジメント問題について,教育と研究を行う。(i)地域の経済社会や文化における独立心あるいは起業心あふれる人材,(ii)様々な組織の運営に関わる専門的な知識と能力を有する人材,(iii)情報化・グローバル化に対応する交渉能力を有する人材,(iv)アジアの日系企業で活躍する日本型マネジメント能力を持った人材を育成する。また,アジア志向のマネジメント人材教育を提供し,日本型マネジメントの知識と能力を備え,中国や東南アジア,インドなどアジアの日系企業で経営幹部として実践できる人材と,この分野における理論と実践の融合を体現した研究者を育成する。

 博士課程後期においては,関係分野についての先端的な内容をテーマとした理論的研究あるいは実践的研究,及び学生自身による先端研究情報の収集・解析を通じて,問題発見能力と問題解決能力を涵養したうえで,理論的課題あるいは実践的課題に必要な課題分析や政策提案能力を養成する。

国際平和共生プログラム

 平和学,文化人類学,政治学,法学,倫理学,地域研究などを基盤として,社会における不平等の状況,その原因や解決策を分析・検討したり,国際社会・地域社会の協力による,紛争の予防と解決,包摂性を持つ平和な社会の実現について考察したりすることを目的とした教育研究を行う。なお,本プログラムは英語による学位プログラムとする。

 博士課程前期では,専門科目の履修を通して,高度な専門的知識を身につけ,より高度な研究または平和構築などの現場における活動に対応できる基盤づくりを行う。

 博士課程後期では,博士課程前期で培われた学力をもとに,自立した研究者として研究を推進し深く問題を分析する能力及び論文作成能力を身につける。

国際経済開発プログラム

 博士課程前期においては,広島大学の理念5原則に基づき,開発途上国が抱える様々な開発問題に対して,グローバルな視点から経済発展を社会科学を中心とした学際的な研究アプローチによって分析し,創造的・協同的に課題解決に取り組むことができる研究者・高度専門職業人の育成を使命とする。

 博士課程後期においては,関係分野についての先端的であり,かつ実践的な問題解決型の研究課題を設定し,自らの研究力で分析結果を導出し,政策的含意の導出ならびに提案力を涵養する。その上で,多様なステークホルダーと協働するためのコミュニケーション能力を持ち,問題解決に向けたリーダーシップが取れる人材を育成する。

 なお,本プログラムは英語による学位プログラムとする。

人間総合科学プログラム

 人間総合科学プログラムは分野横断型教育を行うことで,特定分野の専門性を獲得することに加え,研究分野の枠を超えた知識や方法論も有し,他領域の専門家との協働を通して現代社会の抱える諸課題に対応することのできる人材を育成することを目的とする。

 本プログラムは,学問分野の枠を超えた学際プロジェクトを展開する。学生は,教員とともに研究プロジェクトに参加することで,中核となる専門分野に関する深い知識と方法論を獲得することに加え,多角的・多面的に捉える複合的視点及び異分野と協働することのできる能力を涵養する。

 博士課程前期においては,各プロジェクトで開講されている授業科目を中心に履修をすることで,中核となる専門的知識や方法論を習得するとともに,関連領域の授業科目を履修することで異分野と協労するための幅広い知識や視点を獲得する。また,プロジェクトの研究に参加することを通して,研究チームの一員としての役割を担いながら,自分のテーマに関する研究を行う。

 博士課程後期では,プロジェクトに参加して中核的に研究に携わり,自分のテーマについての研究を深めていく。また,指導教員の指導のもと関連領域の授業科目を履修することで,研究の幅を広げるとともに複合的な視点から異分野との協働を行う能力をさらに涵養する。
 

教育科学専攻

教師教育デザイン学プログラム

 教育問題の複雑化に伴う教職の高度化への要請に対応するため, (i)学びが成り立つ場(空間),(ii)学びを引き出す仕掛け(カリキュラム,学習材),(iii)学びを支える人材(専門職)に着目し,これからの社会で期待される教育ビジョンをデザインできる教師教育者(teacher educator)を育成する。また,教師教育者の教育・研究に関わるアジアの拠点形成を目指す。教師教育者には,①教育システムの改革を支援するイノベーター(innovator)の側面と,②教育システムを実質的に機能させている教師を育てる専門職(mentor/ coach)の側面の,二側面がある。

 博士課程前期では,特に①の側面の教師教育者の教育研究と社会貢献活動に焦点化し,次世代の革新的で先導的な教育課程・指導・評価の理論と方法をデザインできる資質・能力と,インクルーシブで協働的な学習空間をデザインできる資質・能力を涵養する。

 博士課程後期では,特に②の側面の教師教育者の教育研究と社会貢献活動に焦点化し,次世代の革新的で先導的な教員養成・教員研修の課程と方法をデザインできる資質・能力と,教育現場で実際に教師を指導し,専門的職能をデザインできる資質・能力を涵養する。

教育学プログラム

 多様な教育の目的・内容・方法・組織・制度等に関する基礎的・原理的研究及び現代教育の諸問題の解決に資する応用研究を,哲学的・歴史的・社会学的・国際比較的,教育方法学的・生涯学習的,制度・行政・経営的な視点から行う。それを通して,複雑化・深刻化する多様な教育課題の解決に向けて,社会のさまざまな領域で展開される生涯にわたる「生きる」ための仕組みとしての教育のあり方を多角的な視点から分析・探求する能力を持ち,国内外に新しい知見を発信する研究力と大学教育を担う教育力を備え,その能力開発を行う人材を育成する。

 博士課程前期では,専門科目の履修及び基礎的・応用的研究を通して,教育に関する高度な識見と総合的な判断力を涵養する。

 博士課程後期では,さらに研究を深めることを通して,教育に関する総合的な学識に裏打ちされた高度な研究能力,大学教育を担う教育能力及びその能力開発を推進できる能力を涵養する。
 

日本語教育学プログラム

 日本語教育及び日本語・日本文化についての高度な専門的知識と研究能力を有し,国内外の高等教育機関において日本語の教育研究を行いつつ,世界的な日本語教育ネットワークの構築に中心的な役割を果たすとともに,国と国との懸け橋となって平和な社会の実現に貢献できる児童・生徒・学生及び社会人を育てることが可能な日本語教育研究者を育成する。

 博士課程前期では,専門科目を履修することを通して,日本語教育の実践研究に必要な専門的知識と研究能力を身につけさせる。

 博士課程後期では,博士課程前期で修得した専門的知識や研究能力をもとに,日本語教育に関する諸課題について探究し,自立的に研究を推進することができる力を身につけさせる。

国際教育開発プログラム

 博士課程前期においては,途上国・地域における質の高い生涯学習社会の実現やグローバルな観点からの持続的な教育開発の実現を目的として,教育学を基盤として,教育制度の改革,教育人材の育成,学校教育カリキュラムの開発,幼児教育・高等教育の開発などについて,教育研究を行う。

 博士課程後期においては,博士課程前期での研究を発展させ,各国・地域の特性を生かした教育研究活動をけん引するとともに,グローバルな視点から国際社会との連携し,協働的問題解決を行う能力を涵養する。

 なお,本プログラムは英語による学位プログラムとする。

教職開発専攻(教職大学院)

教職開発専攻

 高度に複雑化,多様化する現代の学校や地域が抱える課題に対し,構造的・総合的な理解に立って幅広く指導性を発揮できる専門性と豊かな人間性を備えた高度な専門職業人として,高度な専門的知識・技能,教育実践の遂行力,省察力を身につけ,教育委員会等のデマンド・サイドからの要望を踏まえ,学校や地域の課題解決に応えられる,優れた実践的対応力と実践研究力を備えるとともに,自己の崇高な使命を深く自覚した,「探究・創造・協働の学び」を追求する新しい学校づくりを担う総合的で実践的なプロフェッショナルを育成する。
 

実務法学専攻(法科大学院)

実務法学プログラム

 高度な専門的法律知識を紛争解決の場面に応用し,状況に応じて適切かつ柔軟に適用でき,かつ,個々の紛争解決活動における高度専門職業人としての職責を深く自覚し,自己の活動を真摯に自省しながら,知性を鍛錬し,日々研鑽を継続することのできる,リーガル・プロフェッション性を身につけた人材を育成する。
 


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