【口伝 1992年の広島大学】 30年前の生活実態で知る、長きにわたった景気低迷

失われた30年と呼ばれる景気低迷は、バブル崩壊後、1990年初頭からごく最近までのことである。この間、物価も賃金も低迷し、就職氷河期と呼ばれる時期も存在した。30年前の学生生活はどうだったか、それを伺い知ることができる資料がひょんなことから手に入った。 1992年に広島大学消費生活協同組合が発行したパンフレット、「お部屋探しガイドブック」である。ここでは当時の現役学生12人の生活実態が詳細に紹介されている。

まず平均値。収入が119920円(うち仕送り80700円)、支出が111000円、住居費(水道光熱費、共益費込み)40600円、食費が31500円。
個別の収入支出を拾い出してみよう(項目は筆者が取捨選択、再集計してある)。
 

  • KKさん(総合科学部3年 東千田キャンパス)
    仕送り93000円、アルバイト64000円
    家賃+水道光熱費52000円、食費35000円、交際娯楽費15000円、電話代3000円、貯蓄40000円
  • CGさん(法学部3年 東千田キャンパス)
    仕送り80000円、アルバイト70000円、奨学金35000円
    家賃+水道光熱費30000円、銭湯代8000円、食費25000円、交際娯楽費12000円、クルマ関係20490円、衣服代18000円、電話代2500円、貯蓄52000円
  • YUさん(法学部1年 東千田キャンパス)
    仕送り104000円、アルバイト10000円
    家賃+水道光熱費35000円、銭湯代6000円、食費40000円、交際娯楽費10000円、電話代3000円、貯蓄5000円
  • FSさん(総合科学部2年 東千田キャンパス)
    仕送り80000円、アルバイト40000円、奨学金35000円
    家賃+水道光熱費26500円、銭湯代9000円、食費25000円、交際娯楽費20000円、電話代5000円、貯蓄45000円
  • TKさん(法学部1年 東千田キャンパス)
    仕送り80000円、アルバイト35000円
    家賃+水道光熱費30200円、銭湯代9000円、食費35000円、交際娯楽費10000円、電話代3000円、貯蓄17800円
  • MHさん(工学部3年 東広島キャンパス)
    仕送り100000円、アルバイト45000円
    家賃+水道光熱費47000円、食費30000円、交際娯楽費10000円、電話代5000円、クルマ関係30000円、貯蓄10000円
  • AMさん(工学部1年 東広島キャンパス)
    仕送り80000円、アルバイト10000円、奨学金38000円
    家賃+水道光熱費50000円、食費35000円、電話代3000円、貯蓄30000円
  • KSさん(理学部3年 東広島キャンパス)
    仕送り90000円、アルバイト10000円
    家賃+水道光熱費65000円、食費18000円、クルマ関係10000円、貯蓄3000円


これが30年前のデータであることがにわかには信じられないほど、2025年の現時点の生活感覚からして“歴史”を感じさせないことに、まず驚かされる。特に東広島キャンパスの家賃+水道光熱費、むしろ現時点よりも高いようでもある。

開通当時のブールバール(1992年11月 市街地~広島大学方面)
写真提供:東広島市
東広島市制施行 50 周年記念特設ウェブサイトより

この生協のパンフレットには、当時の東広島キャンパス周辺の住宅事情が紹介されている。

今、大学周辺にアパートが続々と建ってきています。新築ということもあって、家賃は4万円くらいが平均です。西条に銭湯はありません。(中略)。西条に来て必要になった物に自動車があります。西条の学生の約半分が自動車を持っています。その理由に、アパートが大学から離れている、坂が多い、アパートの近くに店が少なく買い物が大変、バスは本数が少なく、最終の時間も広島と比べると早いなどが挙げられます。学生の車の所有率が高い分、学生の事故率も非常に高いです。

それから30年、東広島市の都市化は急速に進んだことで、交通事情や生活環境は大きく改善されている。また、家賃もこなれてきており、広島大学生協のサイトによると、2025年時点で大学近辺は3~5万円、少し離れた寺家、田口、八本松エリアであれば1~3万円の相場であると紹介されている。また、3~4年生に限られている自動車通学は、1割程度になっているという。

逆に1992年当時、東千田キャンパスに学ぶ学生の住居は風呂なしアパートが少なくないことがわかるが、この30年で広島市内の銭湯は69か所から17か所、4分の1にまで減少している。風呂なしアパートといえば、鉄製の外階段2階建ての、おんぼろアパートが一般的だが、いまはそのような物件は少なくなっている。広島市内でも学生・単身者向け物件は風呂付きのマンションが普通で、生協の取り扱い物件を見ると、家賃3~5万円台。住空間の質の向上を考え合わせると、実質的な住居費は30年前よりむしろ安いと言える。

では、30年間の全国的な推移はどうか。
全国大学生活協同組合連合会の調査によると、1992年と2024年、下宿生の全国平均では
 

  • 仕送り額94560円→72350円
  • アルバイト26850円→37540円
  • 住居費43610円→56090円
  • 食費33660円→26110円
    仕送りの減少をアルバイトで埋め、食費を削る傾向が見て取れる。

    同じ調査で中四国に限った場合
  • 仕送り額77700円→56100円
  • アルバイト23760円→35760円
  • 住居費35700円→47120円
  • 食費30220円→22840円
    と生活費の面では安上がりにはなっているが、傾向は同じである。
    この調査では学生の意識も取り上げられている。

    なかで「大学生活で現在最も重点を置いていること」の質問項目では
  • 豊かな人間関係1992年26.6%→2024年14.3%
  • 勉学第一19.0%→33.5%
  • サークル第一14.6%→17.6%
  • 何事もほどほどに15.7%→13.1%。

この間、就職状況の変化、大学の単位認定の厳格化など、さまざまな環境の変化が生まれているが、親の収入減少が仕送り額に影響していることは想像に難くない。厳しい生活の中で勉学に励む、30年間で学生の意識・生活態度は大きく変わってきているのである。

次回は、1969年、大学紛争に向かい合った体育会幹事に、当時の「リアル」を語ってもらう。

本稿シリーズは広島大学OBOGの回顧をまとめたものであり、広島大学の公式記録・見解ではないことをお断りしておきます。

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