うまくいくまでやるだけ、以上です(前編)

インタビュー日

2022年9月5日

起業した人

池邊 友大(イケベ トモヒロ)さん
2018年総合科学部卒業
株式会社グロースバリュ 代表取締役

インタビュー(前編)

株式会社グロースバリュ 代表取締役 池邊 友大 氏
(2018年 広島大学総合科学部 卒業)

起業したきっかけは

池邊:広島大学を4年前の2018年3月に卒業、内定をもらっていた企業を辞退して、フリーランスになりました。その1年後にWEB系の会社を起業して3年目になります。

―現在、社業は何をされていますか。

池邊:サブスクリプション(月額制)でWEBマーケティングスクールを運営しています(月額制WebマーケティングスクールWithマーケ)。この業界でサブスクリプションでの運営は、日本において当社が最初だと思います。多くのスクールは、例えば3か月40万円、のような会費制ですが、当社は月額5,000円で学び放題です。1~2年間在籍して学習する方が多いです。

サイト上に掲載している動画コンテンツを視聴して学習したり、分からない部分についてサポートや相談を受けることができます。現在、有料会員が800名在籍しています。

―うまくいっているようですね。ところでなぜ、社会人経験なしでいきなり起業しようと思ったのでしょうか。

池邊:学生時代、東京オフィスを利用しながら就職活動をして、外資系コンサルティングファームに内定をもらいました。非常に満足してワクワクしていましたが、入社月が4月ではなく8月だったため、卒業してから入社までの間にノリでブログをはじめたところ、広告収入で月10万円程度稼げるようになりました。打ち込めば打ち込むほど成果がでることがわかり、その段階で「自分はブロガーとしてやっていける」と確信を持ち、独立しました。

誰よりも深堀りして考えるということ

―ブログは誰でも書けると思いますが、稼げるブログと稼げないブログは何が違うのですか。

池邊:まず読者に「この人の記事はおもしろいな」と思ってもらうことで、読者が集まり、ファンが生まれます。その土台ができた上で商品を紹介します。

僕の場合、大学生向けに「就活体験談」をテーマにブログを書いていました。自分自身、就活で成功体験、失敗体験がいろいろありますが、それを記事にしたところ、大学生の読者がたくさん集まりました。記事の内容は、自分が活用した就職エージェントや就活サイトの紹介などです。それをブログに載せることで、相手企業から紹介報酬を得ることができる仕組みです。

―同じようなブログがたくさんある中で、他との違いは何だったのでしょうか。

池邊:「マーケティング思考だったから」ということだと思います。一般的なブログには、自分が食べた料理や読んだ本など、雑多なことが好きなように書かれています。それでは際立つことができません。僕が書いていたブログは「地方大学生の就職活動」というテーマで、他者とは色を変えていました。

―つまり、大都市圏の有名大学の学生はターゲットにしていなかったのですね。当時の池邊さんは、外資系コンサルに内定をもらった成功体験が自信になっていたはずですが、ブログを書くにあたってそこは修正した、ということですか。

池邊:お金を稼ぐことが目的だったので、自分のカラーはほとんど表に出していませんでしたね。読者にとって、自分の自慢話が役に立つのであれば喜んでしますが、そうではありませんので、情報提供に徹していました。

―読者からは、どういう情報が必要だと思われていましたか。

池邊:就活中に一番困るのはお金なので、「安く泊まる方法」「安く移動する方法」ですね。また、滞在している間に一気に予定を終わらせてしまいたいので、そのために必要なサービスの情報です。意外と世の中に出回っていないので、これは喜ばれました。

就活中に東京オフィスを利用されていた当時の池邊さん

事業プランは、なかった

―そこで自信をつけて、起業されたということですね。最初の事業計画書はどのようなプランでしたか。

池邊:「事業計画書」なんて言葉も知りませんでした(笑)。借り入れもしたことがなく、銀行とは付き合いがありませんでした。事業プランもありませんでした。最初の1年はフリーランスとしてブログで稼いでいました。

―それは100人いたら98人が失敗する世界という話も耳にします。

池邊:2/100の成功確率を「高い」と感じたんですよ。

―ものすごくポジティブですね(笑)。

池邊:ブロガーとして1年間で月収90万円までいきました。手が腱鞘炎になるまで記事を書いていました。

―そんなにネタがあるものですか。実体験なんて有限だと思うのですが。

池邊:いくらでもあります。例えば上京してお金がないからシェアハウスに住んだとしたら、シェアハウスの記事が書けますよね。その記事に対して、シェアハウス運営会社から自分に紹介料が入ってきます。このような、紹介記事に報酬を払う小口のビジネスは、世の中にいくらでもあります。

―「月90万円の収入が未来永劫続くわけではない」と、気づく時があるはずです。

池邊:ブログは、Googleのアルゴリズムに支配されている世界です。結局、自分自身がそれに支配されている、ということには、始めてすぐに気が付いていました。ブログというのはWEBを使った集客スキルです。これが法人向けに売れる、ということに着目して法人向けの事業としてスタートしたのが、当社の始まりです。

レッドオーシャンに突っ込んでいった?

―起業された当初、いきなりレッドオーシャン(※競争の激しい市場や業界、ジャンルなど)に突っ込んでいったんじゃないかと、外野から心配していました。

池邊:レッドオーシャンと言われつつも、拾えていない企業はいくらでもあります。たとえば、広島の企業がどれだけWEBのコンテンツを自社で作成できているかというと、ほとんどできていません。その意味で「地方」は一つのキーワードになりますね。最初の仕事は、広島大学の先輩からもらいました。

また、WEBコンサルやCEOコンサルを名乗る人はいくらでもいるのですが、成果を出せている人はほとんどいないと感じていました。顧客を見ていないことが原因だと思います。一般的に、支援したプロジェクトの成功率は20~30%、と言われていますが、自分たちは100%成功させる自信があり、クオリティで勝負していました。

―その人たちと池邊さんの違いはなんなんでしょう?

池邊:「コミットメント」だと思います。顧客の会社を成功させないと、自社が破綻するという危機感で常に動いています。

―ところで、現在の事業は、起業時の事業内容とは違う展開になっているのですね。

池邊:当初は、他社の事業の支援を行う、受託事業でしたが、結局それだとすべてをクライアントに握られることになり、自由度も安定度もなくなります。労働力提供型ですね。「果たしてそれがおもしろいか」と考えた時に、「おもしろくないな」と思いました。

自社事業をやらないと、ビジネスマンとして、起業家として楽しくないし、企業として一番大事な「利益を上げる」ことにも弱いと感じ、2年ほど前に、本格的に自社事業をつくろうと考えました。

―受託事業の場合、得てしてクライアントは無茶を言いますよね。

池邊:こちらからの提案に対して、WEBに詳しい担当者から、「絶対にその施策はうまくいかない」ということを散々言われることがあります。自分たちには決定権限がないので、クライアントの言うことに従い軌道修正せざるを得ませんが、実際うまくいかなかった時は、「おまえたちの責任だ」と言われるわけです。こちらの提案どおりにやらなくてうまくいかなかったのですから、そういう時はもやもやしますね。

―そのような、負の打率はどれぐらいなのですか。

池邊:2割ぐらいですかね。途中から自分たちでクライアントを選べるようになったので、最近はあまりなくなりましたが。

―クライアントには、どうやって営業しているのですか。

池邊:最初は、広島大学の先輩や塾、などの「紹介」です。そのクライアントからさらに別のクライアントを紹介される、という展開で、「紹介」がメインです。

ですが、そのやり方に限界がやってきて、会社を立ち上げて半年ぐらいで、一時期月90万円までいったブログ収入が20万円まで落ち込みました。「そこそこやっておけば、紹介で広がるでしょう」という気のゆるみがありましたね。

【中編】はこちらから↓
『うまくいくまでやるだけ、以上です(中編)』

<お問い合わせ先>
広島大学東京オフィス
TEL:03-6206-7390
E-Mail:tokyo(AT)office.hiroshima-u.ac.jp ※(AT)は半角@に変換して送信してください。


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