コンサルティングファーム志望の方へ(前編)

はじめに

近年、大手コンサルティングファームは就職人気ランキングで上位に現れるようになってきました。筆者が就職活動をしていた2010年代前半には募集枠が少なく、そもそも目指す人も限定的であったのに対して、最近では会計BIG4と呼ばれる総合系ファームが数百人単位の採用を行ったり、MBBと呼ばれる戦略系ファームも2桁以上を採用しはじめたりすることで、コンサルティング業界を志望業界の一つとする学生も増加している印象を受けます。

広大生のなかにも興味をもつ方が増えてきているようで、筆者のもとにも毎年一定数、OB訪問や選考対策の準備をしたいとの連絡を頂戴しています。そこで、本稿ではよくある質問に一問一答形式で答えることとしました。もちろん、ここは公共の場ですので、ぶっちゃけすぎることはしません。ただ、企業の採用ページにあるような顔出しインタビューでは語れないような、裏側の話を交えてお伝えすることはできると思います。

ただし一点、留意していただきたいことがありまして、以下の記載は筆者の経験に基づく話に過ぎません。コンサルファームの働き方は、会社・部署・プロジェクト・プロジェクトメンバーなどの要素で大きく左右されます。したがって、本稿だけをみて全体の理解とするのではなく、本稿で気になった箇所について、あなたが実際に関心をもったファームの現職の人に「この点はどうですか。こういうことを言っている人もいるようだけど」と聞いてみることが絶対に必要です。あくまで筆者の体験談であって、予備校の合格体験記よろしく生存者バイアスが相応にかかっていることをご理解のうえ読み進めていただければと思います。

「忙しいですか?」

忙しいと思います。そもそも他の業界でも社会人の最初のうちは忙しいはずで、例えば2,3年目になるまでは仕事と休息の2つで一週間が終わる、ということもザラだと思います。すると分かれ目となりそうなのが3年目以降かと思われまして、一般的な業界・職種であればそろそろ仕事にこなれてきてゆとりが生まれ始めてくるところ、コンサル業界では上司からさらに多くの仕事を振られることとなって、結果として何年目だろうと常に多くの仕事を抱えている状態になります。

コンサル業界では、一人当たりの仕事量の水準感というものがあります。これは士業などのプロフェッショナル業界であれば共通する考え方で、そもそも報酬の計算は「単価×時間」で行われており、質の高い専門家は時間ではなく単価で勝負する、というのが不文律です。
入社したての頃に1.5時間かかっていた作業が1時間で終わるようになると、”成長したね、おめでとう”と評価される一方で、浮いた0.5時間を埋めるかのように仕事が降ってきて、結果として一向にゆとりなんて生まれない、というカラクリになっています。逆に言えば、手を抜こうものなら上司からあっという間に見抜かれて”サボってんじゃねーよ”と激詰めに遭うため、常に集中力の高い状態を保ちながら朝から晩まで過ごす必要があります。

なお、年間を通じて語れば、これは私の経験談ですが、忙しい時と暇な時とが高いところでバランスしていると捉えています。つまり、多忙さから休日や眠る時間がなくなることもありますが、休暇は例えば2週間まとめてとるなどして充分に羽を伸ばすこともできます。
どのような場面で忙しくなりがちかというと、クライアントに対する報告会や定例会のような、プロジェクトにおける重要な節目の前にはバタバタします。期限がわかっているなら調整できるのではと思われるかもしれませんが、例えばクライアントからの追加オーダーや第三者へのヒアリングのような、自分たちでコントロール不能なイベントが生じることで猶予を確保できない場合が多いです。ちなみに私の属するM&A界隈ではそもそも納期が短くてコントロールの余地が少ないケースがほとんどで、ゆえに一般的なコンサルと比して毎回常に忙しい傾向にあります。

休暇のとり方については、人によって差があるものの、大抵は1週間単位でとります。私の所属先では年間25日付与されるため、例えば私は四半期ごとに1週間ずつとり、残りは年末年始やGWなどの中日を埋めて休日をつなげ、100%消化していました。私の場合はプロジェクトが終わるタイミングで人事チームから休暇を取得するかどうか聞かれ、それに返事をするまでは次の案件に入れられないよう配慮がなされていました。また、部署の繁忙期の際には休暇の先延ばしを打診されることもありますが、繁忙期を避けていれば1ヶ月連続で休暇を取得した人も私の周囲に複数います。

さて、1週間休暇を取ることのメリットは、平日に出発する旅行ができるため安値でかつ混雑を避けることができることです。たまにグローバル案件に入れられると、年末年始やGW、お盆などの習慣が海外にはないため日本チームが祝日返上で働くこともありますが、その分時期をずらして旅行に行けることがモチベーションになります。(なお、祝休日に働いた分は振替休日とすることもできますが、その分を残業申請すると割増賃金も出やすく、休日振替はせずに残業申請+有給休暇で休みをとる人が多いです笑)

まとめると、忙しいときは忙しくストレスフルでもありますが、その分まとまった休暇をとって存分にリフレッシュできます。

「何を対策したらいいですか?/自分でも入れますか?」

いまは業界として何百人と採用しているため、おそらく唯一解というものはないと思います。普遍的なメッセージとなりますが、「自分の経験を踏まえ、一貫性あるストーリーでやりたいことを伝える」が全てだと思います。このことは入社後も重要です。
エントリーシートを他者に添削してもらうだけでは足りず、その場で相手に伝えられる思考力・対応能力を鍛えておく必要があります。相手の反応をみながら言い換えたり、逆に興味がなさそうだったら話し過ぎないようにしたり。一定の距離感を保ち続けるのではなくて、近づけるべきときは近づいて、少し離れた方がいいときは離れる。面接官相手にそれができないと、入社後お客さん相手にもできないと思われてしまいます。

Webテストやケース対策は、会社や面接官によってあったりなかったりするのですが、アタマ一つで戦う業界ですので、準備するに越したことはありません。応募者の上位層の中には、SPIや玉手箱を国家総合職の過去問で対策してくる人や、日頃授業でビジネスケースを議論しているような学生もいます(私は両方あてはまっています)。ただ現状、採用の目線は「この中から一人選ぶ」という相対評価ではなくて、「いい人がいたら採る」という絶対評価でやっているところがほとんどだと思いますので、きちんと目立つことができれば評価されるはずです。
私がグループワークの面接官をしているときは、チームメンバーに振られるまで発言しないような受け身の人は基本落としています。というか多分全員落としてきました。チーム内の強い人ほどに発言回数・量が至らないとしても、要所で「自分はこう思うけど、どう?」と切り込んでいければ、質的貢献の観点で評価されるはずです。あとはその頻度を増やして、チームの議論全体を下支えするような役回りを果たすことができれば、自然と量的貢献の評価もついてきます。冒頭から追い付いていくことができなくとも、最後まで食らいついていけるだけの素養やガッツは鍛えておきましょう。

また、老婆心から厳しいことを言うと、そもそもこの質問の背後にはひょっとすると「対策、そんなことまでやらなくていいよ」というアドバイスをほしいのかもしれませんが、やる前からラクをしようというマインドはそもそもコンサルに向いていないと言わざるを得ないです。
コンサルは仕事の効率性が高いイメージかもしれませんが、それはやる前から見当がついているわけではなく、やるべきことを洗い出した上で少し着手してみて、その後の優先順位を絞り込んでいるだけです。例えば、OB/OGにできると思わせる学生であれば「こういう対策をしてきたが、他にやるべきことはあるか」という聞き方をしてきます。つまり、自分であらかじめ調べて着手できるものは独力で済ませた上で臨んでいることを意味し、実際の仕事でも、そうした姿勢の人が早く結果を出して評価される傾向にあります。

なぜ厳しいことを言うのかといえば、大量採用時代となったことで、ロクな経験を積んでいない第二新卒コンサルが中途採用の市場にあふれはじめてきているためです。「適当に受けて受かったところに入る」ではなく、「この人たちについていこう、この人たちとなら頑張れる」というところを見つけだして妥協しない会社選びをしないと、なすがままに配属させられた部署で希望しない職務経験を積むことになります。数年前に入社した私の100人の同期でさえも、”何割か”という水準で、3年たたずに会社を去っていきました。

もちろん、「自分が何をしたいかわからないので、とりあえずコンサル」という考えの人は世に少なくないと理解していますが、そもそも大量採用の部署・領域においては”コンサル経験を積めば即ち希少人材になれる”という皮算用はもはや成立しませんので、ぼんやりと目指すのはやめておいた方がよいと思います。(これは、広大生というよりも関東の有名大の学生に伝えたいメッセージかもしれません笑)

【後編】はこちらから↓
コンサルティングファーム志望の方へ(後編)

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