臨床検査センター_感染症検査室(微生物検査)

感染症検査室

概要

感染症診断に必要な細菌学的検査,ウイルス感染迅速診断を実施します.また,近年では病原菌を直接検出する遺伝子学的検査の導入により結核菌,マイコプラズマ,クラミジア,肝炎ウイルス,エイズウイルスなどの迅速対応に貢献します.
感染症病原診断の一角を担い,感染症科や感染制御部と密な連携をとり365日勤務出勤体制をとることにより病原菌検出の一報報告と情報共有により刻々と変化する患者病態に検査データを重ね,次なる治療に有効な情報を提供します.
感染対策では院内のみならず,広島大学院内感染症プロジェクト研究センターやNPOひろしま感染症ネットワークと連携し,県下の中心的役割を果たします.また,定期的な微生物分離状況や薬剤耐性菌の状況,それらの分子疫学的検査や耐性遺伝子の確認を行っています.

要員(スタッフ)

2023年度 8名
臨床検査技師8名のうち,正規職員が7名,契約職員が1名. 
認定臨床微生物検査技師(含むICMT)は5名.
社会人大学院生として4名が修士課程終了,そのうち2名が博士課程研究中

業務内容

Ⅰ 一般細菌検査(細菌塗抹・培養・感受性)
Ⅱ 抗酸菌菌
Ⅲ 遺伝子学的検査
Ⅳ 感染症抗原・抗体検査
Ⅴ 感染対策
Ⅵ 地域連携・その他

Ⅰ 細菌塗抹・培養・感受性

塗沫鏡検(顕微鏡)検査

グラム染色(バーミー法),チール・ネルゼン染色を実施.必要に応じてヒメネス染色や墨汁染色,キニヨン染色を行う.真菌の形態確認の染色はラクトフェノール・コットンブルーを使用している.

顕微鏡観察

顕微鏡観察

グラム陽性球菌

 グラム陽性球菌
(紫色、球形)

グラム陰性桿菌

 グラム陰性桿菌
(赤色、棒状または円筒形)

培養検査

採取された材料に菌がいるかいないかを判断するために,患者さまの情報や患者さまの材料の状況に応じて寒天平板培地を組み合わせて,人の体温に近い温度で24 ~72 時間かけて菌を培養する.肉眼で観察できる菌のかたまり(コロ二一集落)に育てて,大きさや形,色,においなどを観察し,菌の名前を推定します.

★血液培養 BACT/ALERT® VIRTUO®(ビオメリュー・ジャパン)

検体を培地へ接種

検体を培地へ接種

寒天培地

寒天培地

培養後寒天培地

培養後寒天培地

BACT/ALERT® VIRTUO®

BACT/ALERT® VIRTUO®(ビオメリュー・ジャパン)

同定検査

培養の後,寒天培地を観察,細菌同定はMALDIバイオタイパー迅速同定を有効利用し,従来法である試験管培地,その他,コアグラーゼやPYRなど生化学的性状を適所で利用する.菌株によっては16S rRNA遺伝子解析やプライマーを用いたPCR検査を実施している. 

★BD™ Bruker MALDI バイオタイパー™ sirius システム(日本ベクトンデッキンソン)

原因菌の特定

原因菌の特定

Bruker MALDI

自動微生物同定装置
Bruker MALDI sirius(BD)

The First sirius in Japan

The First sirius in Japan

薬剤感受性検査

同定検査と並行して,菌にどのような薬剤(抗菌薬)が有効なのかを調べる「薬剤感受性試験」を行います.栄研ドライプレートを用いてIA40MICiを使用し微量液体希釈法で測定している.多剤耐性グラム陰性桿菌には依頼があればBCプレート(栄研化学)での測定.酵母様真菌はASTY(極東製薬),結核菌はビットスペクトル-SR(極東製薬)を使用している.報告は感染制御部と協議しselective reportingを取り入れている.

IA40MIC-i (栄研化学)

IA40MIC-i (栄研化学)

DPS192ix(栄研化学)

DPS192ix(栄研化学)

業務風景

感染症検査室における検査の様子

Ⅱ 抗酸菌

塗沫鏡検(顕微鏡)検査,培養検査,同定検査,薬剤感受性検査を行う,一般細菌検査とは検査方法が異なることや培養検査で菌の発育に時間が必要なことから最長で8週間程度かかることがあります.当院では,検体からのダイレクトPCR(GENECUBE)やMALDIバイオタイパー迅速同定を積極的に取り込み,可能な迅速報告を試みる.

塗抹

塗抹 
チールネルゼン染色陽性(赤色)の抗酸菌

培養

培養
菌の発育状態

Ⅲ 遺伝子学的検査

抗酸菌はGENECUBE®(東洋紡)を用いて実施し,他にマイコプラズマ・ニューモニエやクラミジア・トラコマチスの検出も行っている.Cobas®6800(ロシュ・ダイアグノスティクス)ではHBV/HCV/HIVウイルス,LoopampEXIA®(栄研化学)では百日咳菌の検査を行っている.2020年9月からFilmArray(ビオメリュー・ジャパン)を導入した.当院では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はCobas®6800,LoopampEXIA®,FilmArray,Thermal Cycler Dice®(タカラバイオ)の4種類の機器で検査が可能であり,患者の状況に応じて使い分けを行っている.

全自動遺伝子解析装置 GENECUBE®

全自動遺伝子解析装置
GENECUBE®(東洋紡)

リアルタイム濁度測定装置 ​​​​​​​LoopampEXIA

リアルタイム濁度測定装置
LoopampEXIA®(栄研化学)

 Thermal Cycler Dice® Real Time System III

多波長検出用qPCR装置
Thermal Cycler Dice® Real Time System III(タカラバイオ)

cobas® 6800システム

多検体処理可能な全自動遺伝子検査装置
cobas® 6800システム(Roche Diagnostics K.K.)

cobas® Liat® システム

卓上式小型アナライザ
cobas® Liat® システム(Roche Diagnostics K.K.)

全自動遺伝子解析装置 FilmArray

全自動遺伝子解析装置 
FilmArray® システム(ビオメリュー・ジャパン)

GeneXpert® システム GX-XVI

自動遺伝子解析装置  
GeneXpert® システム GX-XVI(ベックマン・コールター株式会)

Ⅳ 感染症抗原・抗体検査

迅速検査は検査時間が30分~1時間程度で結果報告ができるため,早期に感染症を推定することができます.
β-Dグルカンおよびエンドトキシン(富士フィルム和光純薬),アスペルギルス抗原,クリプトコックス・ネオフォルマンス抗原の検出を行っている. インフルエンザ,マイコプラズマ抗原,CDトキシン,A群溶連菌,デング熱,新型コロナウイルス,その他呼吸器や消化器系など5種類のウイルスはイムノクロマト検査を実施している.

トキシノメーター MT-5500

微生物由来成分分析装置
トキシノメーター MT−5500(富士フィルム和光純薬)

イムノクロマト法による検査

イムノクロマト法による検査

Ⅴ 感染対策

AID stewardship model
ASP  :  antimicrobial stewardship program
ISP  :  infection prevention stewardship
DSP  :  diagnostic stewardship program

GUIDANCE FOR IMPLEMENTING AN ANTIMICROBIAL STEWARDSHIP PROGRAM IN JAPAN 2017より
『抗菌薬適正使用の鍵を握るのは正確な微生物学的診断である』

毎週,耐性菌などの感染情報レポートを提出している.また,月1回のICT会議資料として,血培陽性データ集計(複数セット率,陽性率,菌種),耐性菌の検出数(MRSA,ESBL,CRE,VRE,MBL産生緑膿菌,MDRP,MDRA),緑膿菌の耐性率MRSAのグリコペプチド系薬の耐性状況,Clostlidioides difficileやCD Toxinの検出数などを提示している.
アンチバイオグラムは1年ごとに作成し,職員へポケット版の配布と院内Webの掲示を行っている.
 

Ⅵ 地域連携・その他

広島県感染症ネットワーク

広島県感染症ネットワーク

LINK

 

広島県保健福祉局健康対策課「ひろしまCDC」そして,(特定非営利活動法人)NPOひろしま感染症ネットワークの安定した歯車の一助として広島県臨床検査技師会という組織の一員として関わりを持つ.更には広島大学病院として教育・研究の中心としての役割を果たしたい.
日々自己啓発であり,そして,社会貢献を忘れないことで臨床検査技師の認知と必要性を求めたい.
 

広島県感染症・疾病管理センター(ひろしまCDC)_HP

NPOひろしま感染症ネットワーク_HP

一般社団法人 広島県臨床検査技師会_HP

広島大学病院と大学院との関係性

広島大学病院と大学院との関係性

血液検査                                                                   輸血・移植・遺伝子検査

 


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