修了生・在学生の声(教職開発プログラム)

教職大学院での学び「挑み続ける自分づくり」

 教職開発専攻(教職大学院)2023年度修了生
 福山市教育委員会 学事課 橋本嘉文さん


2004年広島大学教育学部卒業後、出版社(営業職)勤務を経て、呉市内の公立小学校に採用され4年勤務、その後福山市内の公立小学校に10年勤務。2022年広島県教育委員会長期研修制度により教職大学院に入学。学校マネジメントコースにて学び、教職修士(専門職)を取得。令和5年度広島県教育奨励賞を受賞。2024年4月より現職。

教職大学院を志望した理由

教職経験が10年を超え、学校の中でも主任や主事を任されることが多くなっていた頃、「働き方改革」で勤務時間を減らすことが注目されるようになりました。勤務時間を減らすことよりも、一人一人のやりがい、働き甲斐を重視していくことが本当の意味での働き方改革なのではないかと考え、一人一人を生かす組織づくりについて研究してみたいと教職大学院学校マネジメントコースを志望しました。

「挑み続ける教職員が育つ学校づくりに関する研究―協働的省察モデルの構築を通してー」

学校マネジメントコースは、私のような現職教員が所属校から離れて学校の歩みを捉えながら自らの理論を構築するとともに、現場で先生たちを巻き込みながら実践を行う中で、スクールリーダーとしての自分を更新していく「理論づくり」「学校づくり」「自分づくり」を一体的に行うアクションリサーチ型の研究を行うことに特徴があります(教職大学院ウェブサイト)。 

私の所属校では、学校教育目標「挑む」の実現に向けて、「固定観念にとらわれずまずはやってみよう」「やってみないとわからない」という「挑む」風土が醸成され、子どもも先生たちも意欲や向上心に満ちていました。しかし、取組ばかりが重視されて成果を意識できていない現状に気付き、子どもたちがどのように育ったのか、ということについてもっとこだわる必要があるのではないかと考えました。それぞれが「自分なりにやってみた」状態から、子どもの育ちを追求することに組織として「挑む」段階に引き上げることを目指して研究を行っていきました。また、子どもの姿をもとに自らの実践を振り返り修正していくこと、つまり「挑み続ける」ことを通して、子どもの育ちとともに先生たち一人一人の成長にもつなげられるのではないかと考えました。

 具体的には、個人の目標を学年会、分掌部会、研究チームという単位で共有し、目標に対する子どもの姿をもとに協働的に振り返ることができるような対話の場を設けました。その中で、目標と日常の実践とをつなげる意識が見え始め、子どもの育ちを「点」から「線」へつなげて捉え、次の実践を検討する姿が見られるようになりました。先生たちが挑んだことを振り返りながら成長していく姿が少しずつ見えるようになってきたことで、マネジメントへの手ごたえ、研究の成果を実感することができました。

「正解を探す自分」から「挑み続ける自分づくり」への転換

研究を進める中で、どこかに自分の求める「正解」が存在し、それを探す自身の姿勢に気付きました。自分の意見が「正解」ではないかもしれないという不安から自信をもてず、授業やゼミの中でも発言を躊躇していました。学校づくりにおいても、理論を構想する中で、自分の中に描いたゴールに想定通りに辿り着かせようという意識が頭のどこかにあり、教職員と自分の理論をつなぐこと、先生たち同士をつなぐこと、それが学校づくりをリードする自身の役割だと捉えていました。  

実践の中で、他の先生たちとの対話や協働を通して新たな価値が生み出される瞬間に遭遇し、それに気付くたびに心が動かされました。それこそが学校の中でつくり出される「答え」であり、どこかにある「正解」と思われるものを提示したり、思った通りに先生たちにやってもらったりすること(=つなぐ)のでは、いつまでたっても「他人事」のままであることに気付きました。また、つくり出した「答え」そのものよりも、自分たちで価値ある「答え」をつくり出していくプロセス(=つながること)にこそ価値があり、自分事として学校づくりに参画する中で先生たちの「自分づくり」が実現されていくのだということにも気が付きました。  

「正しいこと」だから自信がもてるのではなく、学校づくりの協働の中に生まれた動きとその価値を捉えることができる自分を信じる力が自信なのではないか。スクールリーダーとして、自分こそが挑み、挑み続けるという「自分づくり」を継続していく必要があるのだと考えられるようになりました。

学校づくりを支える存在として

現職では、市教育委員会の管理主事として人事や服務管理の業務に従事しています。学校現場で行っていたこととは業務内容が大きく変わり、何もかもが初めてでわからないことばかりですが、目的や根拠を大切にすることや学校のこれまでの歩みを捉えた上で次の段階を構想することなど、教職大学院での学びが今の私を支えてくれています。 教職大学院に入学し、学校現場を俯瞰しながら取り組んだ様々な経験が、今、学校現場から離れて行政の立場で学校と関わることとなった自分の後ろ盾となっていると感じています。それぞれの学校の歩みやビジョンを理解して伴走し、学校づくりを支える存在でありたいと日々尽力しています。

2025.04.01


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