全体講演

講師

松下 佳代 先生(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)

演題

なぜ「深さ」が重要なのか
 ―能力・学習・評価のつながりから考える―

 新しい学習指導要領では,授業でめざす学びのすがたとして「主体的・対話的で深い学び」が掲げられた。だが,「深い学び」とはどういうことか,どのようにすれば実現できるのか,教育現場には戸惑いも広がっている。
 学びに「深さ」が重要なのは,それが,アクティブラーニングが表面的な学習にとどまるのを防ぐだけでなく,<コンテンツ(内容)とコンピテンシー(能力)>,<教科の固有性と教科をこえた汎用性>といった一見相対立するものを結び付けるかなめになるからである。事実的知識を知っていても,他の文脈や教科に適用することはできない。その背後にある概念や原理にまで掘り下げることで,他の文脈や教科に通じる回路が開かれるのである。そのような「深い学び」がどのくらい実現されたか。それを教師や生徒自身が知るには,評価の方法も工夫する必要があるだろう。
 「深い学び」という言葉は目新しいが,これまで日本の教師が蓄積してきた教育実践の中には,それを具体化するための多くのヒントがある。いろいろな教科の事例を知ることで,自分の実践の中で深い学びを実現していくための手がかりをつかんでもらいたい。

講師プロフィール

[松下 佳代 先生 プロフィール]

 福岡県生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程研究指導認定退学。京都大学博士(教育学)。京都大学教育学部助手,群馬大学教育学部助教授等を経て,2004年より現職。
 専門は教育方法学(特に,能力論,学習論,評価論)。能力はどう形成され評価されるのかに関心をもち,初等・中等教育と高等教育の共通性と差異に着目しながら研究を進めている。

 主な編著書に,Deep Active Learning(Springer, 2017),『アクティブラーニングの評価』(東信堂、2016),『ディープ・アクティブラーニング』(勁草書房,2015),『高校・大学から仕事へのトランジション』(ナカニシヤ出版、2014),『〈新しい能力〉は教育を変えるか』(ミネルヴァ書房,2010),『パフォーマンス評価』(日本標準,2007)など。

現在,
大学教育学会副会長・編集委員長
日本カリキュラム学会代表理事
日本教育方法学会理事
日本学術会議連携会員


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