ごあいさつ(平成28年度)

ごあいさつ

 時下,みなさまには益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて,広島大学附属中・高等学校では,今年度からの研究主題に「次期学習指導要領に向けたアクティブ・ラーニングの展開」を掲げ,3か年にわたる教育実践研究を開始しました。
 ご案内の通り,「社会に開かれた教育課程」を目標の一つに掲げる次期学習指導要領では,「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し,社会と連携・協働しながら,未来の創り手となるために必要な知識や力を育む」ことが目指されています。そして,その「必要な知識や力」=「新しい時代に必要となる資質・能力」=学びに向かう力・人間性/知識・技能/思考力・判断力・表現力等の3本柱を育成する学習方法(「どのように学ぶのか」)としてアクティブ・ラーニングが位置づけられ,教員にはその視点からの「不断の授業改善」が求められています。
 目的ではなく手段(学び方)としてあるアクティブ・ラーニングが改めて確認された格好ですが,強調されているのはそこでの「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」の「過程」。しかも,「汎用的能力」でもある「資質・能力」の育成にとって,その「過程」は「認知プロセスの外化」とその「メタ認知」をともなうことが肝要とされ,そのためにもアクティブ・ラーニングは身体的に活発な学習(hands-on)よりもむしろ知的に活発な学習(minds-on)であることが期待されています。「学び方」としてのアクティブ・ラーニング,しかし,それはもはや「学習形態」(学び方)の範囲を踏み越え「学習内容」に深く立ち入っているように見えます。
 今年度から始める研究主題は,こうしたアクティブ・ラーニングをめぐる議論を承けてのものです。議論をより具体的で生産的なものにするために,私たちは昨年度までの研究主題「知識基盤社会における生徒の育成」の成果を引き継ぎ,本校の教育実践研究の蓄積を活かす形で,アクティブ・ラーニングの再定義,研究計画を次のように策定しました。

 知識基盤社会への変化に対応しうる資質・能力の育成のために,学習形態と学習内容の両面の重なりが大きくなるようなアクティブ・ラーニング,すなわち,「主体的・対話的で深い学び」を実現する。そのために,生徒個々の主体的学びによる「内化」と,生徒同士の対話的学びによる「外化」の往還を重視した授業の設計・実践・分析・評価を行う。その過程においては,各教科固有の理論や方法に拠るのみでなく,教科間で連携し,教科横断的な理論や方法の開発も試みる。

 第1年次である今年度の教育研究大会では,設計した授業デザインについて実践,報告します。
 全体講演では,静岡大学学術院教育学領域准教授・益川弘如先生をお招きし,「次期学習指導要領につながる授業と評価のすがた」の演題でお話しいただきます。また,SSH事業の一環としてのSSコース生徒による課題研究についても研究成果の展示を行います。
 今年度もまた,多くの方々のご参加を得て,議論の深化と新たな課題の発見の悦びを共有することができればと願っております。
 公務多端の折とは存じますが,多数の先生方にご参加いただきますようご案内申し上げます。

   広島大学附属中・高等学校長  竹村 信治
 


up