Jean-Laurent Casanova(ロックフェラー大学[米国])、Paul Bastard(イマジン研究所[フランス])らの研究グループ、岡田賢(広島大学大学院医系科学研究科小児科学 教授)、江藤昌平(同大学院生)、津村弥来(同研究員)、田中純子(広島大学大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 教授)らの研究グループ、森尾友宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野教授)、貫井陽子(同感染制御部准教授)らの研究グループは、他の研究グループと共同で国際共同研究グループ(CHGE:COVID HUMAN GENETIC EFFORT)(注5)を結成し、COVID-19患者(5,857例)および健常者(34,159例)の検体を収集して、I型IFNに対する中和抗体の保有状況を調査しました。
その結果、COVID-19による死亡例および80歳以上の最重症例は、I型IFNに対する中和抗体を高頻度(約20%)に保有することが判明しました。一方、COVID-19の軽症者における中和抗体の保有率は70歳未満で0.18%、70歳以上で約4%(70~79歳 1.1%、80歳以上 3.4%)と低く、本中和抗体を保有することがCOVID-19重症化のリスク因子になることが明らかとなりました。
なお、本研究はAMED 2021年度 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究」(研究代表者:岡田 賢) の支援により行われたもので、その研究成果は、8月19日23時に「Science Immunology」に公開されます。
(注1)I型インターフェロン(IFN):
IFN-α, IFN-β, IFN-ωなどが該当する。ウイルス感染によって産生され、強力な抗ウイルス活性をもたらす。本研究では、I型IFNの代表としてIFN-α2, IFN-ωに着目して研究を実施した。
(注2)COVID-19:
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症で、SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスが原因で起こる感染症。
(注3)最重症例:
重症度が高く、集中治療室で全身的な管理が必要な症例。
(注4)I型IFNに対する中和抗体:
I型IFNの活性を中和する自己抗体。I型IFNに結合して、そのウイルス感染防御機構を阻害する自己抗体を示す。
(注5)CHGE(COVID HUMAN GENETIC EFFORT):
COVID-19重症化のメカニズムの解明を目指した国際共同研究グループ。