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[研究成果]慢性皮膚粘膜カンジダ感染とマイコバクテリア感染が同時に起こる原因遺伝子を同定



広島大学大学院医歯薬保健学研究院小児科学の岡田賢講師は、同研究院小林正夫教授の指導のもと、米国ロックフェラー大学のJean-Laurent Casanova教授らと共同研究を行い、慢性粘膜皮膚カンジダ感染とマイコバクテリアに対する易感染性を合併する原発性免疫不全症の原因となる遺伝子の同定に成功し、平成27年8月4日に広島大学東京オフィスで記者説明会を開催しました。



説明を行う岡田講師

【本研究成果のポイント】

●ヘルパーT細胞に属するTh17細胞のマスター転写因子であるRORC遺伝子の先天的な異常により、免疫系が障害され、CMCとマイコバクテリア感染を起こしやすくなることを発見しました。

●ヒトにおいて、Th17細胞が産生するIL-17を介したカンジダに対する粘膜免疫と、IFN-γ産生を介したマイコバクテリアに対する全身性免疫応答に、RORCという遺伝子が必須であることを発見しました。

【研究成果の詳細】

今回の研究では、マイコバクテリアによる重症感染症と慢性のカンジダ感染症の合併という非常に稀な症状を呈した3家系(イスラエル、チリ、サウジアラビア:すべて近親婚家系)7人の遺伝子解析を行いました。

その結果、全員がRORC遺伝子(白血球の一種であるヘルパーT細胞に存在するTh17細胞のマスター転写因子)のホモ接合性変異を有することが判明しました。同定されたRORC遺伝子変異は、機能が完全に失われるタイプの変異でした。患者細胞はIL-17産生が障害されているほか、BCG感染に対する反応性のIFN-γ産生が障害されていました。患者で認めたIL-17産生障害は、正常なRORC遺伝子を導入することにより回復したため、RORC遺伝子変異が疾患発症の原因であることが分かりました。本研究は、ヒトにおいてRORC遺伝子異常が先天性疾患の原因になることを、世界で最初に発見した報告です。

このRORC遺伝子異常による原発性免疫不全症の発見により、カンジダに対する粘膜免疫、マイコバクテリアに対する全身性免疫応答にRORC遺伝子が必須であることが明らかになりました。

今回世界でもまだ例の少ない稀少疾患を取り上げたことで、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬などの発症に関与すると考えられているTh17細胞の未知の役割が示され、Th17細胞をターゲットとした新たな治療法の開発に役立つことが期待されます。

本研究成果は、2015年7月9日発行の米国科学誌「Science」のオンライン版に掲載されました。



【今回の研究で明らかになったこと】

●RORC遺伝子(白血球の一種であるヘルパーT細胞に存在するTh17細胞のマスター転写因子)の先天的欠損により、カンジダとマイコバクテリアに感染しやすくなる原発性免疫不全症を発症する。

●免疫能が障害されて、爪、口腔粘膜などに発症する慢性、反復性のカンジダ感染は、インターロイキン17(IL-17)の産生障害により発症する

●マイコバクテリア易感染症では、インターフェロンγ(IFN-γ)の産生障害により発症する。



【研究内容に関するお問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究院 統合健康科学部門

医学分野 小児科学 講師 岡田 賢(おかだ さとし)

TEL:082-257-5212

E-mail:sokada*hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください)


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