広島大学と株式会社SCREENホールディングス(京都市)は、SCREENが開発した腎臓移植用医療機器「オーガンポケット」の臨床試験を終了、安全性および有用性を確認しました。移植手術中、体温により移植される臓器の温度が上昇し機能が損なわれるのを防ぐものです。伸縮性が高く温度を伝えにくい特殊な素材で移植臓器を巾着状に包み込み、そのまま血管などをつなぐ手術ができます。ドナーの高齢化により移植臓器の機能低下が懸念される中、リスクを低減した効果的な移植手術が期待できます。8月9日には京都市内で記者発表があり、臨床実験を進めた広島大学大学院医系科学研究科消化器・移植外科学の大段秀樹教授、井手健太郎講師、開発に携わった東京慈恵会医科大学腎臓再生医学講座小林英司特任教授、SCREEN関係者らが出席しました。
移植臓器はドナーから摘出後、冷却保存されます。しかし、移植手術中に術者や患者の体内組織との接触による加温で、機能低下のリスクにさらされます。これまでは冷却した水を散布するなどして温度上昇を抑えていましたが、効果が一時的であることや散布の量やタイミングなどの条件設定が難しく、より適切な温度管理が求められていました。SCREENは、慶應義塾大学医学部との共同研究を通じて、「オーガンポケット」を開発。冷却された移植臓器を特殊ゲル素材でできた巾着袋状の器具で包み込み、体温の接触熱を遮断する医療機器です。広島大学では10症例の非盲検非対照単群試験を実施、移植腎臓の表面温度は12.8-18.7度に抑えられたことが確認されました。SCREENは腎臓移植における新しい温度抑制法として、普及を図っていきます。将来的には腎臓以外の移植臓器についても対応可能な製品開発に取り組んでいくとしています。
大段教授は「移植臓器は、血流が再開されるまでの期間は可能な限り低温で維持して、細胞代謝を抑制して臓器障害を減少させなければなりません。オーガンポケットは、手術中に移植臓器を低温に維持することができる臓器遮熱製品です。安定した移植成績に貢献することが期待されます」とコメントしています。