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シルクエラスチンの安全性確認 安達教授らが半月板再生医療で医師主導治験

 広島大学大学院医系科学研究科(整形外科学)の安達伸生教授らが、膝の半月板損傷を対象にした再生医療の医師主導治験で、シルクエラスチンを用いる新たな治療法の安全性を確認しました。シルクエラスチンは三洋化成工業株式会社(京都市東山区)が開発した機能性タンパク質。安全性の確認を受けて2025年春から、同社を中心に広島大学病院など全国の病院で有効性を確認する30~50例程度の企業治験を実施する予定です。安達教授たちが5月21日、三洋化成工業株式会社本社で開いた記者説明会で発表しました。

 シルクエラスチンをゲル状にして半月板断裂縫合部に適用し癒合すると、再生を促す効果があることが両者の共同研究で見出され、医師主導治験は2022年6月から2023年3月まで、広島大学病院で実施してきました。運動療法や鎮痛剤の保存治療でも疼痛が改善しなかった17歳から52歳の男女8人を対象に実施。シルクエラスチンを投与した結果、特段の有害事象は認められず、安全に使用できることが分かりました。また、すべての患者で、切れていた半月板が癒合しました。

 膝関節軟骨や半月板は、運動の衝撃を吸収するクッションとして働き、膝を滑らかに動かすための重要な組織。機能の低下はいわゆる「ロコモティブシンドローム」に大きな影響を及ぼします。膝関節疾患の根治には、軟骨の修復だけでなく半月板の修復・再生に重要ですが、半月板は血行に乏しく、一度損傷すると修復されにくいため、やむを得ない場合は半月板を切除する治療が主流です。このため膝関節軟骨と半月板の双方を再生する“究極の根治”をコンセプトに掲げて、2017年から共同研究開発を進めています。半月板を温存し、修復・再生する新たな治療法になることが期待されています。企業治験を経て、三洋化成では2028年の上市を目指すとしています。

医師主導治験の結果について発表する安達教授(中央)=京都市東山区の三洋化成工業京都本社ホール


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