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研究者への軌跡

とことん数えてみたい

氏名:高橋 浩樹     

専攻:数学専攻

職名:准教授

専門分野:代数的整数論、岩澤理論

略歴:
1968年8月31日 愛媛県生まれ
1996年10月 広島大学総合科学部助手
2005年10月 徳島大学工学部准教授
2009年3月 広島大学大学院理学研究科准教授 現在に至る

 

内容↓
私が数を好きになったのは、小学1年生のときに先生が出してくれた宿題のおかげです。それは、ノートに2~20までの偶数をたくさん書こうという宿題でした。ただし、どのくらい書くのかは児童にまかせられていました。最初私は、ライバルに負けたくない一心で数字を書き始めたのだと思います。けれども次第に、負けん気というよりも数字を書くこと自体が楽しくなってきました。結局、宿題を提出する日までに5冊のノートいっぱいに

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
・・・・・・・

と延々と楽しみながら書き連ねたのでした。5冊のノートを見て先生はたぶんびっくりしたことでしょうが、全てのページにたくさんの丸をつけてくれました。最高は8重丸だったように思います。「小学1年生のとことん」にとことん付き合ってくれた先生にとても感謝しています。
 

高校生の時に、PC6001というパソコン(マイコンと呼ばれていた)をいとこからもらいました。基本的な使用方法は、パソコン雑誌「Pio」(懐かしい・・・)の付録のソノシート(薄っぺらいレコード盤、これも懐かしい・・・)からデータを取り込んで、読者が投稿したゲームを楽しむというものでした。ただし、付録のソノシートにデータが入っていないゲームも多数あって、そのゲームをやりたい場合には、雑誌に印刷された数ページから十数ページ近い機械語の16進数を打ち込まねばならなかったのです。それでも、色んな読者が作ったオリジナルのお茶目なゲームを楽しもうと、弟と二人で協力して数字を熱心に打ち込みました。努力の割に面白くなかったゲームもあったし、十数年後まで楽しんだゲームもありました。
そのパソコンを使って、いろんな計算を試してみたりもしました。
1+1/2+1/3+1/4+1/5+・・・
は発散することは知っていたので、代わりに
1-1/2+1/3-1/4+1/5-・・・
を計算してみました。すると、次第にマイコンのモニターに現れる数値は、自分が知っている数値に近づいてきました。それは、log(2)=0.693174・・・という自然対数の値でした。
翌日高校の数学の先生にこんな奇妙なことが起こるのだろうかと尋ねました。先生は、高校では学ばないのだけれど無限級数というものと関係していることを教えてくれました。どこまでも有理数を足したり引いたりしていくと、最終的にはたった一つのよく知った超越数で表されることに不思議を感じたものです。
 

大学でマクローリン展開を学んで上記の等式は納得しましたが、様々な無限級数が関わる問題の難しさにはずっと圧倒され続けています。そういった問題に答えるために、大学院では整数論や岩澤理論を学びました。そして今もなお、計算機を使いながら数の不思議な姿をとことん見てみたいと願っています。
最後に、無限級数の鮮やかな例をひとつ提示しましょう。18世紀最大の数学者レオンハルト・オイラーが、この世界で初めて公表したリストです。

どうしてこんな数値が出てくるのでしょうね。(pは円周率です。)


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