アトピー性皮膚炎(皮膚科)

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹を繰り返す病気です。家族にアトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギーを起こしやすい人がいる、または体の中に異物が侵入した際に生産されるIgE抗体と呼ばれる物質の量が多い人などに発症しやすいことが分かっています。そして、そのようなアレルギーを起こしやすい体質や乾燥肌の体質(遺伝的な背景)に加えて、住んでいる環境や大気汚染、食生活を含むライフスタイルなどの身の回りの環境の要因が複合的に組み合わさる事で発症すると考えられています。最近では乳幼児期の皮膚のケアが、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の発症を予防することがわかってきました。アレルギー疾患の発症予防という点では、乳幼児期は皮膚を清潔に保ちながら、乾燥に対して保湿をし、湿疹がある場合は適切に治療をして、皮膚を良い状態に保つことが大切です。

アトピー性皮膚炎は「治りにくい病気」と思われる方もおられますが、「治りにくい」と感じる理由は、まだ適切な治療が行えていないためかもしれません。アトピー性皮膚炎は少し良くなっても、またぶり返してしまうことがしばしばあります。湿疹に対して適切な治療が行われずに皮膚の炎症が長引いてしまうと、それをおさめるために長い時間が必要となってきます。

薬による治療を行うことによって、アトピー性皮膚炎の症状がまったく気にならない状態を保つ事も可能です。あわせて悪化因子を取り除き皮膚への刺激を抑えることや、保湿などの適切なスキンケアを行うことも大事です。アトピー性皮膚炎の治療の基本は塗り薬ですが、塗り薬は塗り方によって効果に大きな差が出ます。「毎日塗っているのになかなかよくならない」という方は正しく外用できているか、一度お医者さんと確認してみると良いでしょう。湿疹が改善しても、またすぐにかゆみが出てきて湿疹を繰り返すような場合には、かゆみや湿疹があるときだけ塗るのではなく、症状がおさまっても一定期間は定期的に塗り続けるプロアクティブ療法が一般的です。この方法では皮膚の奥にくすぶる炎症を抑え、症状が元の状態に戻ることを防ぎます。こうして皮膚の炎症をしっかりと抑え込むことによって、保湿剤だけでも症状がコントロールできる状態を目指します。それでもアトピー性皮膚炎を長く患っている成人の患者さんで、塗り薬の適切な治療を行っても症状がよくならないこともあります。そういった患者さんには塗り薬に加えて、飲み薬や2018年に登場した新しい注射薬をあわせて使用します。

アトピー性皮膚炎の治療は長く続くことが多いため、途中で諦めてしまったり、「これをしてはダメ」など自分自身の行動を制限してしまう患者さんがおられます。前述のように適切な治療によりアトピー性皮膚炎をよくすることが必ずできますので、お医者さんと二人三脚でまずは治療目標を共有して達成していきましょう。

なお、広島大学病院皮膚科では年間約100名の新患患者さんを含む約500名のアトピー性皮膚炎の患者さんを診察しています。重症の患者さんでは入院治療を行うこともありますし、適切な外用方法と病気の知識を共有することでより多くのアトピー性皮膚炎の悩みを解決できることを目指しています。

 


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