<研究に関すること>
広島大学大学院医系科学研究科
大段 秀樹 教授
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広島大学広報部広報グループ
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(注: *は半角@に置き換えてください)
肝細胞がん*1は、根治的な治療が行われた後にも再発率は依然として高く、再発高危険群の予測と予防法に関しては未だ未解決の問題です。大段教授ら研究グループは、肝細胞がんに特異的なタンパク(glypican-3)をマーカーとして用い、末梢血中の循環腫瘍細胞*2の検出する方法を確立し、それを含めた再発危険因子により、肝細胞がん治癒切除後の再発危険群を正確に予測することを可能にしました(Hamaoka M,et al.PLoS One 2019, Yamamoto M,et al.Surgery 2021)。
ナチュラルキラー(NK)細胞*3は、ウイルスや細菌感染、あるいは発がん・増殖に対する防御機構を司るリンパ球であり、新たなタンパク質合成や再構成を必要とせず迅速に抗がん作用を発揮します。大段教授らの研究グループは、肝臓に局在する特定の成熟期(stage4)にあるNK細胞に強力な抗がん分子TRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)を誘導し得ること、そして肝細胞がんはTRAIL受容体を高発現しNK細胞を介した細胞死が誘導されることを発見しました(Hepatology 2006, J Clin Invest 2009)。以来、NK細胞のバイオロジーに関連する研究を重ね、「肝移植後の肝細胞がん再発予防を目的としたドナー肝由来活性化NK細胞を用いた免疫賦活療法(第1種再生医療等技術)」の第1相試験を、広島大学と米国マイアミ大学で実施し、安全性と容量に依存した生存率の改善を報告しました(Cancer Immunol Immunother 2021)。
この度、末梢血から分離した造血幹細胞からstage4NK細胞を分化・誘導する技術を開発し、第2種再生医療等提供技術「肝細胞がんに対する肝切除後の再発予防を目的とした末梢造血幹細胞由来NK細胞移入療法(図1)」の第1相臨床試験を開始しました。肝細胞がんに対する肝臓切除手術を受けた患者さんに対して、末梢造血幹細胞由来のNK細胞を分化培養し、静脈投与する新しい治療法(術後抗癌免疫補助療法)が、手術後の肝細胞がん再発の予防になるのではないかと考え、治療法の安全性と有効性を調べることを目的としています。
図1 肝細胞がん切除後再発予防を目的とした末梢血造血幹細胞由来分化NK細胞移入療法の臨床試験(第2種再生医療等技術)の概略。
*1肝細胞がん:肝臓の細胞ががん化して悪性腫瘍になったもので、治療切除がなされても再発する場合があります。切除術後2年の無再発生存率は、循環腫瘍細胞陰性の場合は80%だが、陽性の場合は50%に低下します。
*2循環腫瘍細胞:原発巣でがん細胞が増殖すると、その一部が血管内へ漏れ出すことがあり、血中を流れる循環腫瘍細胞が他の臓器に居座り、その場所でまたがんが増殖することがあります。これが「がんの転移」です。循環腫瘍細胞測定により、がんの転移を予測できる可能性があります。
*3 ナチュラルキラー(NK)細胞:NK細胞は、人間の体に生まれながらに備わっている防衛機構で、がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃するリンパ球です。新たなタンパク質合成や再構成を必要とせず、機能を発揮するため迅速に応答できます。NK細胞を用いた治療の有効性としてはがんの再ハウ予防、延命効果、症状の緩和や生活の質の改善、治癒が期待されています。
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掲載日 : 2021年12月27日
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