高機能な膀胱留置カテーテルで患者に優しく苦痛を軽減

研究成果のポイント

1.    排尿管理のため膀胱内に留置するカテーテルを新たに作り上げました。広い内腔を保ちながら、より外径の細いカテーテルにすることで患者の痛みや尿道の損傷リスクを低減させます。
2.    様々な機材を接続可能なY字ポートをコネクター部に搭載し、カテーテルを外さず閉鎖回路(滅菌環境)を保ったままのガイドワイヤー操作や、カテーテルが詰まった場合の閉塞解除操作を行う事が可能となりました。
3.    高精度シリコーン原料によるカテーテルの透明化により、閉塞状況などが目視で確認できます。カテーテル自体に目盛りを付け、抜け具合を数値として管理できるようにしました。より正確な看護ケアが期待できます。

概要

患者負担の軽減:細径化により挿入時の尿道損傷リスクや痛みを低減させます。内径は太くする事で排尿効率を向上し、カテーテル閉塞リスクを低減させます。外径を細く、内径を太くの矛盾する仕様を目指すため、原料は精製シリコーンを厳選し、加工精度を研究することで、柔軟性と剛性を維持しながら肉厚を限界まで薄くしたカテーテルを実現しました(細径化してもJIS強度試験合格)。
感染リスクの低減:カテーテルと採尿バッグを接続したままの状態で、ガイドワイヤー操作や、カテーテルの閉塞解除操作を可能にするYコネクター構造(特許申請)を導入しました。これにより、カテーテル操作時の感染リスクを低減しました。

背景

 膀胱留置カテーテルは、泌尿器科を含む外科手術全般の後の排尿管理や、自力での排尿が困難な方の排尿管理を目的として、膀胱内に持続留置するカテーテルです。現在販売されている膀胱留置カテーテルは、カテーテルが太ければ閉塞リスクが少ない反面、留置による患者さんの痛み、挿入時の尿道の損傷や、細菌感染リスクが高くなるといった課題があります。また、尿道狭窄などの疾患がある場合はガイドワイヤーを使用した留置操作が、カテーテルの閉塞時にはその解除を目的とした膀胱洗浄やカテーテル交換が必要となりますが、一連の操作は煩雑で感染リスクを高めます。しかし、これらの課題を一度に解決可能なカテーテルは無く、その開発は臨床現場にとって重要な課題となっていました。
 広島大学大学院医系科学研究科腎泌尿器科学教室(日向信之教授)と、カテーテル製造販売を含む医療機器事業を行う株式会社カテラ(東京都台東区)は、膀胱留置カテーテルの臨床における課題を解決するため、問題点を精査し、カテーテル原材料、仕様について根本的に見直しを行い、共同研究を行いました。主に大学側が医療シーズと医学的指導や評価をし、カテラ側が製品の試作、改良を担当しました。

研究成果の内容

 膀胱留置カテーテルは、泌尿器科疾患で最も使用する機会が多いにも関わらず、これまでカテーテルの問題点を克服するために泌尿器科医が関わる機会は極めて少ない状況でした。今回、2021年4月より広島大学、原材料メーカー、医療機器製造会社がオールジャパンでタッグを組むことによって研究に着手し、2023年12月に実現させることが出来ました。
排尿効率を高めながら細径の膀胱留置カテーテルの実現が出来、患者の苦痛、尿道損傷リスクの低減が可能となりました。
 従来出来なかった閉鎖回路下でのデバイス挿入や膀胱洗浄の処置が簡易・安全に行えるようになり、感染リスクを低減した状態で種々の処置が可能となりました。

今後の展開

・広い内腔を保ったまま、カテーテル自体のサイズダウンが可能となるため、例えば手術後の短期的カテーテル留置の際の患者負担が、大幅に軽減される事が期待できます。
・細径化と付加機能カテーテルの実現により、寝たきり患者などに対する中長期的なカテーテル留置の際の患者負担および、排尿管理の向上が期待できます。
・小児用の膀胱留置カテーテルは細く柔らかい。そのためスタイレットと呼ばれる芯をカテーテル内に挿入した状態で留置を行う必要があるが、これまで閉鎖回路を保ったままスタイレット挿入操作を行う事は不可能であった。本カテーテルでは、スタイレットの挿入がYコネクター部から行えるため、小児のカテーテル留置操作の際の感染リスク低下が期待できます。

参考資料1

本カテーテル全体写真
①    材質:ラテックスフリー(シリコーン原料を採用)
②    カテーテルの挿入深度確認のマーカー(カテーテルの抜け具合を目視確認可能)
③    バルンカフ用注水コネクタ―
④    採尿バッグ接続コネクター
⑤    採尿ポート(閉鎖回路を保ったまま、シリンジによる採尿可能。またルアーロックアダプターによる汎用機材の接続が可能。)

【参考資料2】

ルアーロックアダプターによる汎用機材の接続例
例1)洗浄還流回路への接続。閉鎖回路のまま、尿路内のフラッシングや持続膀胱洗浄が可能。

(採尿ポートにアダプターを装着)

↑例1

例2)閉鎖回路のまま、スタイレットやガイドワイヤーを挿入可能。

(カテーテル先端:あらかじめガイドワイヤー通過可能な開口部あり)

↑例2

参考資料3

本カテーテル外径・内径・内腔面積の他社との比較
一例として、12Fr.規格のカテーテルを用いて、国内販売シェアNo1会社製品との断面比較を行った。(左下図:実測値比較 右下図:カテーテル断面の比較写真)

【お問い合わせ先】

広島大学院医系科学研究科 腎泌尿器科学 医局
担当窓口:小畠 浩平
Tel:082-257-5242 FAX:082-257-5244
E-mail:kkobatake*hiroshima-u.ac.jp

 (注: *は半角@に置き換えてください)


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