広島大学大学院医系科学研究科 小児科学
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拡大新生児マススクリーニング検査(NBS)により、5万人に1人といわれる重症複合免疫不全症(SCID)と診断された広島県内在住の叶羽(とわ)ちゃん(1歳10か月)が、広島大学病院で造血細胞移植手術を受けて元気になり8月3日、退院しました。広島県内で初めての事例です。小児科の岡田賢(さとし)教授と主治医の浅野孝基(たかき)准教授、広島県子供未来応援課の南亮介課長、広島市こども青少年支援部の野瀬澄子・母子保健担当課長が2日、記者会見をしました。
叶羽ちゃんは出生後まもなく受けた拡大NBSで陽性となり、2023年9月にSCIDと診断されました。同年11月に臍帯血を用いた造血細胞移植手術を受け、術後の合併症を乗り越えて、退院を迎えました。今後は、内服治療を続けながら、成長を見守ります。
SCIDは生まれつき免疫細胞がうまく働かず、さまざまな感染症にかかりやすい病気。重篤な感染症を契機に診断され、造血細胞移植を行うも、その成功率は50%程度の難病です。しかし、拡大NBSで発見できれば、造血細胞移植により90%で根治が期待できます。岡田教授は「早期の診断、治療で助かる命があります」、浅野准教授は「無駄になるかもしれないとしても、検査はぜひ受けていただきたい」と訴えました。
退院を前に、叶羽ちゃんの両親は、「初めて聞く病名に、今まで感じたことがない不安に襲われました。臍帯血移植後も心配になることもありましたが、医師をはじめ多職種医療チームのみなさまのおかげで退院を迎えることができました。スクリーニング検査でわかる疾患ならば、可愛いわが子の命を救うことができます。これから出産する方々へ受検を勧めます」とコメントを寄せました。
拡大NBSは、通常のNBSにSCIDを含む3疾患を加えたもので、2022年7月から広島大学病院と広島県、広島市が連携して実施しています。生後5~7日の赤ちゃんの足底から少量の血液を採取して、専門機関で分析します。希望者は、国と県または市の負担により、無料で受けられます。