中四国初、心房細動の新治療 患者負担小さく経過順調

 広島大学病院は9月、心房細動の患者に対する新しい治療法であるパルスフィールドを用いたアブレーションを、中国四国地方で初めて、お二人の患者さんに実施しました。心臓周囲の臓器への影響が少なく、合併症のリスクを減らすことができ、治療にかかる時間も1時間程度と短いため、患者さんの身体への負担が小さいことが特徴。お二人とも退院されて経過は順調で、循環器内科の中野由紀子教授が10月17日、記者説明会を開きました。

 心房細動アブレーション(拡大肺動脈隔離法)は、心房細動治療法として確立しており、まだ軽い状態の心房細動から発作の症状が強く、薬が効きにくい人や、心臓の機能が落ちている人でも対応できます。これまで長く高周波エネルギーが使われてきていますが、こちらは熱を使うリスクがありました。

 パルスフィールドアブレーションは、パルス電圧を利用した電場(パルスフィールド)を用いて細胞の働きを止めて、電気信号が伝わらないようにするカテーテル治療法で、熱を用いず、ターゲットとなる心筋のみに細胞死を引き起こせることから、組織の炎症も軽減され、他臓器の障害も起こしません。本邦でも、9月1日から保険適用が始まりました。

 広島大学病院では、大動脈解離の手術後、血圧低下や頻脈性心房細動を検出した広島市内の65歳の男性と、発作性心房細動から持続性心房細動に移行した東広島市内の74歳の男性に9月19日、パルスフィールドアブレーションを行いました。2泊3日の入院で、お二人とも何事もなく、帰宅されました。

 心房細動は加齢とともに増える不整脈で、高齢化社会の進行とともに増加しています。心房細動になると脳卒中のリスクが2~6倍、心不全のリスクが5倍、認知症のリスクが2倍程度増加すると言われており、心房細動の適切な治療はとても重要です。中野教授は「あらゆる症例に対応するにはまだ少し時間がかかりそうですが、皆が待っていた治療法。実績を積み重ねたい」と話しています。


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