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学長開発の自家培養軟骨移植治療が「変形性膝関節症」にも保険適用 根治の可能性開く

 広島大学の越智光夫学長が開発・技術移転した「自家培養軟骨移植治療」が、2026年1月に「変形性膝関節症」へ保険適用を受けました。本治療は、国内に1,000万人いるとされる変形性膝関節症患者の医療費負担を軽減するとともに、根治の可能性を開く新たな治療法として期待されます。1月22日に東京で開かれた記者会見で発表しました。

自家培養軟骨「ジャック」

自家培養軟骨「ジャック」

 保険適用を受けたのは、株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC、愛知県蒲郡市、山田一登社長)が製造販売する医療製品、自家培養軟骨「ジャック」です。患者さんご自身の正常な膝軟骨細胞を採取し、約4週間培養したゲル状の培養軟骨で、欠損部位に移植し再生を促します。運動療法や薬物療法で改善が見られず、一定以上の軟骨欠損のある患者さんが対象で、高額療養費制度の適用により、自己負担額は月額約6万~25万円程度に抑えられます。

 越智学長は、1996年に自家培養軟骨の技術を開発。越智学長が監修し、J-TECに技術移転を進め、2012年に「外傷性軟骨欠損症」と「離断性骨軟骨炎」で、国内初の製造販売承認を受け、2013年に保険適用を受けました。これまで約2,000人の患者さんが治療を受けています。

変形性膝関節症に対する「ジャック」移植後の軟骨の修復経過

変形性膝関節症に対する「ジャック」移植後の軟骨の修復経過
(硝子軟骨洋組織による修復が認められた例)

 広島大学大学院医系科学研究科の安達伸生教授が2019年から臨床試験を開始し、国際的評価指標であるWOMACスコアで、膝機能の大幅な改善が確認されるとともに、有害事象が認められないなど有効性と安全性が評価され今回、「変形性膝関節症」へも保険適用が広がりました。

 「変形性膝関節症」の治療は、薬物療法や運動療法、人工関節置換術、骨切り術などが主流ですが、軟骨の自然再生は非常に難しく根治的治療法は確立されていません。この培養軟骨移植治療では、手術後52週時点で従来の軟骨と同様の組織による修復が確認された症例もあり、疾患の根治の可能性を開く治療として期待されます。

 J-TECと共同開催した記者会見で、越智学長は「膝関節の痛みに苦しむ患者さんに新たな治療の選択肢ができ、高齢化社会の医療に貢献できることをうれしく思います」と成果を強調しました。安達教授は「患者さん自身の細胞を用いるため、拒絶反応のリスクが極めて低く、膝本来の動きを回復し、活動的な生活を取り戻すことが期待されます」と述べました。

 本学では、今回の保険適用を、長年の基礎研究と臨床研究が社会実装された重要な成果と位置付け、変形性膝関節症に苦しむ患者への新たな治療の選択肢として、今後の普及とさらなる臨床研究に注力してまいります。なお、J-TECでは、数年後に年間約1000例の使用を目指しています。

記者会見する左から山田社長、越智学長、安達教授

記者会見する左から山田社長、越智学長、安達教授

(写真提供:J-TEC)


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