広島大学病院呼吸器内科 益田 武
Tel:082-257-5196 FAX:082-255-7360
E-mail:ta-masuda*hiroshima-u.ac.jp
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・局所進行非小細胞肺がん*1では、化学放射線療法*2に続いて免疫療法*3を行う標準治療の過程で、約30%の患者に発熱や呼吸困難などの症状を伴う肺炎が発生することが課題となっています。
・研究チームは、治療前のCT画像*4をもとにしたRadiomics解析*5とAIを用いて、肺炎の発症を事前に予測できるモデルを開発しました。
・これにより、早期受診・早期治療につなげることで、重症化の防止が期待されます。
局所進行の非小細胞肺がんでは、化学療法と放射線療法を組み合わせた治療の後、免疫チェックポイント阻害薬*6による地固め免疫療法を行うのが一般的です。しかし、この地固め免疫療法の過程で、主に放射線治療の合併症として発熱や呼吸困難などの症状を伴う肺炎が約30%の患者さんに発生することが課題となっています。
この肺炎の発症を前もって予測できれば、患者さんに症状がある場合には、早めの病院受診をするように指導し、早期に治療を開始することができ、肺炎の重症化の抑制につながります。
広島大学病院呼吸器内科の益田武特定准教授、広島大学病院放射線治療科の河原大輔准教授らは、化学放射線療法に続く地固め免疫療法前のCT画像検査を用いたRadiomics解析と機械学習を用いて、臨床的に問題となる肺炎を高精度に予測できるモデルを開発しました。本研究成果は、2026年1月16日に国際学術雑誌である『AI』オンライン版に掲載されました。
・ 論文名:A Radiomics-Based Machine Learning Model for Predicting Pneumonitis During Durvalumab Treatment in Locally Advanced NSCLC
・ 著者名:Takeshi Masuda1*†, Daisuke Kawahara2†, Wakako Daido1,3, Nobuki Imano2, Naoko Matsumoto3, Kosuke Hamai4,5, Yasuo Iwamoto6, Yusuke Takayama7˒8, Sayaka Ueno4, Masahiko Sumii1, Hiroyasu Shoda7, Nobuhisa Ishikawa4, Masahiro Yamasaki3, Yoshifumi Nishimura9, Shigeo Kawase10, Naoki Shiota11, Yoshikazu Awaya12, Soichi Kitaguchi13, Yuji Murakami2, Yasushi Nagata2,14, Noboru Hattori1
1:広島大学病院呼吸器内科、2:広島大学病院放射線治療科、3:広島赤十字・原爆病院呼吸器内科、4:県立広島病院呼吸器内科、5:JA尾道総合病院呼吸器内科、6:広島市立広島市民病院腫瘍内科、7:広島市立広島市民病院呼吸器内科、8:広島市立舟入市民病院内科、9:東広島医療センター呼吸器内科、10:呉共済病院呼吸器内科、11:中国労災病院呼吸器疾患科、12:市立三次中央病院呼吸器内科、13:広島市立安佐市民病院呼吸器内科、14:中国労災病院放射線治療科、*:責任著者、†:同等貢献
・ 掲載雑誌名:AI 2026, 7(1), 32; https://doi.org/10.3390/ai7010032
従来、化学放射線療法後に発症する肺炎のリスク因子として、放射線治療の照射線量が多いことや、治療前の胸部CT画像で既に軽度の肺病変を認めることなどが報告されていました。本研究では、これらの従来指標による予測法と、治療前CT画像の肺のRadiomics解析と機械学習を組み合わせた新しい予測法の性能を比較しました。その結果、予測性能を示すROC曲線下面積(AUC)*7は、従来法の0.71に対して、新しい方法では0.88と高い値を示しました。これは、新しい方法の方が肺炎を発症しやすい患者さんをより正確に見分けられることを示しており、従来法よりも優れた予測性能を持つ可能性があります。
本研究では、CTで肺の画像をいくつかの領域に分け、気腫が目立つ部分や炎症を反映する部分など、領域ごとの特徴を解析しました。これにより、肺炎発症リスクの予測精度向上につながったものと考えられます。また、本研究では肺炎発症予測のために複数のAIモデルを比較しました。その結果、SVM(サポートベクターマシン)が最も高い予測性能を示しました。SVMは、データの特徴の違いをもとに、リスクの高い群と低い群をより適切に分類するAI手法の一つです。
【参考資料】
*1 局所進行非小細胞肺がん:肺にできたがんが周囲の組織やリンパ節に広がっているものの、遠くの臓器には転移していない状態の肺がん
*2 化学放射線療法:抗がん剤と放射線治療を同時に行い、がんをより効果的に抑える治療法
*3 免疫療法:体の免疫の力を活性化させて、がんを攻撃する治療法
*4 CT画像:胸部の断層画像を撮影し、肺や病変の状態を詳しく調べる画像検査
*5 Radiomics解析:CT画像などに含まれる情報をコンピュータで詳しく解析し、病変の形、大きさ、濃淡、ばらつきなどの特徴を数値データとして取り出す技術
*6 免疫チェックポイント阻害薬(ICI): がん細胞がリンパ球の活性を抑制する仕組みを解除し、免疫細胞ががん細胞を持続的に攻撃できるようにする薬 。
*7 ROC曲線下面積(AUC): 予測モデルの性能を評価する指標の一つ。病気を発症する人としない人をどの程度正確に見分けられるかを0~1の値で示し、1に近いほど予測性能が高いことを意味する。
広島大学病院呼吸器内科 益田 武
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掲載日 : 2026年05月14日
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