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【研究成果】CT画像により「肺がんの治りにくさ」の仕組みを解明 -画像と遺伝子情報をつなぎ、薬の候補探索まで行うAI解析基盤を開発-

本研究成果のポイント

  • 治療前の非小細胞肺がんCT画像に対してRadiomic/AI技術により治療効果を予測するモデルを512症例の大規模データで構築しました。
  • 予後因子の画像特徴を解釈するために遺伝子データと解析する手法を新たに開発し、治りにくい肺がんの画像特徴には、低酸素や細胞増殖などに関わる遺伝子の働きが関連し、腫瘍を3つの制御状態に分類できました。
  • 解釈した予後因子情報に対して薬剤データを使用したAI創薬アルゴリズムも開発し、予後不良因子を打ち消す薬の候補を探索し、個別化治療などにつながる枠組みを示しました。

論文情報

論文タイトル
Radiogenomic Inference of Transcription Factor Regulatory Architecture Associated with a High-Risk CT Phenotype in Non-Small Cell Lung Cancer
著者
Daisuke Kawahara, Misato Kishi, Yuzuha Kadooka, Yuji Murakami
Department of Radiation Oncology, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Hiroshima, Japan
掲載雑誌
Medical Physics
DOI
10.1016/j.ejmp.2025.105202

概要

 広島大学病院放射線部の河原大輔准教授らの研究グループは、非小細胞肺がんのCT画像と遺伝子情報を統合し、予後が良くない腫瘍の背景にある遺伝子の働きを読み解き、薬の候補探索につなげるAI解析基盤を開発しました。
 402例の治療前CT画像から予後予測モデルを作り、独立した110例で検証したところ、予後を見分ける性能の指標であるC-indexは0.785となり、従来行われてきた臨床情報における予後因子以上に画像情報には重要な予後バイオマーカーが存在することを示しました。画像特徴には、低酸素、細胞増殖、炎症などに関わる遺伝子群と、それらを調節するHIF1A、STAT3、TP53、YAP1、E2F1/E2F3などの転写因子(※1)が関連していました。
 さらに、転写因子の働きから腫瘍を3つの制御状態に分類し、薬剤データベースLINCSより、各状態の遺伝子の働きを打ち消す可能性がある薬の候補を構築したAIアルゴリズムで探索しました。本成果は、CTから腫瘍の生物学的背景を推定し、創薬候補の検討へつなぐ研究基盤となります。
 本研究成果は、2026年10月6日に米国医学物理会誌「Medical Physics」に掲載されました。

背景

 肺がんでは、同じ病気で同じ治療を受けても、患者によって治療後の経過が異なります。その背景には、腫瘍ごとの低酸素、細胞増殖、炎症などの生物学的な違いが関係すると考えられています。一方、診療で広く使われるCT画像から、こうした遺伝子の働きや腫瘍を制御する仕組みをどこまで推定できるかは十分に分かっていませんでした。そこで本研究では、CT画像と遺伝子情報を結び付け、予後予測から薬の候補探索までを一つの流れで行うことを目指しました。

研究成果の内容

1.研究方法・手順
 研究グループは、402例の治療前CT画像から、腫瘍内部とその周囲の形状、濃度、模様などの画像特徴を数値化し、予後予測モデルを作成しました。次に、独立した110例で予測性能を検証しました。さらに、この110例において予後因子となる画像特徴に対して遺伝子情報を使用したGSEA/GSVA解析を行い予後因子となるがん微小環境要因を解明し、さらに世界最大の薬剤データベースとの解析を行い予後不良の要因を打ち消す薬剤を探索するシステムを開発しました。解析の全体像を図1に示します。

図1 CT画像から肺がんの背景を読み解き、薬の候補探索へつなげるAI解析の流れ
 治療前CT画像の特徴から予後リスクを評価し、遺伝子群と転写因子の働きを解析して、腫瘍を制御する生物学的な状態を推定しました。さらに、3つの制御状態を見いだし、LINCSの薬剤データを用いて、各状態に関連する遺伝子の働きを打ち消す可能性がある薬の候補を計算機上で探索しました。

2.今回分かったこと・従来との違い
 予後予測モデルを独立した110例で検証した結果、C-indexは0.785でした。予後が良くないCT画像の特徴には、低酸素、細胞増殖、炎症などに関わる遺伝子群が関連し、HIF1A、STAT3、TP53、YAP1、E2F1/E2F3などが、それらを調節する転写因子の候補として抽出されました。
 さらに110例を、低酸素・代謝型69例(62.7%)、細胞増殖型31(28.2%)、細胞の力学応答型10例(9.1%)の3つの制御状態に分類しました。各状態をLINCSの薬剤データと照合し、関連する遺伝子の働きを打ち消す可能性がある薬の候補を計算機上で探索しました。これにより、CT画像から予後を予測するだけでなく、その背景にある腫瘍の仕組みを推定し、薬の候補探索へつなげる一連の枠組みを示しました。主要結果を図2に示します。

図2 CT画像による予後予測と、腫瘍の制御状態に応じた薬の候補探索
 外部検証110例におけるC-indexは0.785でした。また、110例を低酸素・代謝型69例(62.7%)、細胞増殖型31例(28.2%)、細胞の力学応答型10例(9.1%)に分類し、それぞれの状態について薬の候補を探索しました。

今後の展開

 今後は、より大規模な複数施設のデータを用いて本システムの予測性能と再現性を検証します。また、計算機解析で得た薬の候補について、細胞・動物実験や臨床データによる検証が必要です。
 将来は、患者のCT画像から腫瘍を動かす仕組みを推定し、その特徴に応じた薬の候補を提示するAIシステムへ発展させ、肺がんの個別化治療や新薬開発の効率化につなげることを目指します。

用語解説

※1 転写因子(Transcription Factor:TF)
複数の遺伝子の働きをまとめて調節する因子。本リリースでは「遺伝子の働きを調節するスイッチ」に例えています。

※ ラジオミクス(Radiomics)
CTなどの医用画像から形状や濃度、模様など多数の特徴を数値化し、病気の性質や予後を解析する手法。

【お問い合わせ先】

病院放射線部 准教授 河原大輔
Tel:082-257-1545 FAX:082-257-1546
E-mail:daika99*hiroshima-u.ac.jp


 (*は半角@に置き換えてください)


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