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【研究成果】MRI画像から予後に関わる免疫状態を解明 -画像/遺伝子情報のAI解析より治療薬候補へつながる免疫状態を探索-

本研究成果のポイント

  • 治療前MRI画像321症例をRadiomics/AIにより解析して治療効果を予測する高精度な予測モデル(C-indexが0.730)を開発しました。
  • 予後因子となった画像情報に対して遺伝子情報を組み合わせて解析する手法を開発し、免疫反応の特徴で3群に分類し、反応が乏しいCold型が53例(60.2%)と約6割を占めました。
  • 画像、遺伝子、単一細胞の情報をつなぎ、免疫状態別に今後検証すべき治療薬候補を整理しました。個別化治療や創薬研究につながる研究基盤です。

論文情報

・論文タイトル
Radiomics-Inferred Immune Programs Map Therapeutic Contexts in Glioblastoma
・著者
Daisuke Kawahara, Misato Kishi, Yuzuha Kadooka, Yuji Murakami
Department of Radiation Oncology, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Hiroshima, Japan
・掲載雑誌
Academic Radiology
・DOI
10.1016/j.acra.2026.08.057

概要

 広島大学病院放射線部の河原大輔准教授らの研究グループは、膠芽腫の治療前MRI画像から得られる特徴を、患者の予後予測に生かす解析手法を開発しました。膠芽腫は再発しやすく、患者ごとに腫瘍周囲の免疫環境が異なるため、画像から病状を詳しく捉える方法が求められています。
 研究グループは223例のMRI画像上より特徴を解析するRadiomics及びAI手法により予後予測モデルを構築し、独立した98例で検証しました。臨床情報だけの場合と比べ、MRI由来の情報を加えると、予測の一致度を示すC-index(※1)は0.639から0.730へ向上し、画像情報には臨床情報以上に重要な予後バイオマーカーが存在することを示しました。さらに、予後因子となった画像情報に対して遺伝子情報を統合して解析し免疫状態の高低でHot、Warm、Coldの3群(※2)に分類し、Cold型が53例(60.2%)と約6割を占めることを示しました。
 画像、遺伝子、単一細胞の情報を組み合わせ、各免疫状態と既知の治療標的・作用の仕組みを対応させた治療薬候補マップも作成しました。分類と候補は探索段階であり、患者の治療薬を直接決めるものではありません。今後、大規模な複数施設データと実際の治療反応で検証する必要があります。
 本研究成果は、2026年9月2日に米国放射線医学会誌「Academic Radiology」に掲載されました。

背景

 膠芽腫は、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせても再発しやすい、治療の難しい脳腫瘍です。免疫療法でも十分な効果が得られていません。その背景には、T細胞、マクロファージ、ミクログリアなどからなる腫瘍周囲の免疫環境が、患者ごとに異なることが関係すると考えられています。
 そこで、日常診療で撮影されるMRIから病状をより詳しく捉え、予後の予測と免疫状態の理解をつなぐ方法が必要でした。本研究では、MRI画像、遺伝子情報、単一細胞情報を組み合わせ、予後予測の性能と免疫状態別の治療薬候補を調べました。

研究成果の内容

1.研究方法・手順
 研究グループは、223例の治療前MRI画像から、腫瘍の形、濃さ、模様などを数値化して予後予測モデルを作成し、別の98例で性能を検証しました。このうち遺伝子情報が得られた88例では、T細胞関連遺伝子とIFN-γ反応を解析しました。さらに、単一細胞情報から腫瘍細胞と免疫細胞の反応を調べ、既知の治療標的や作用の仕組みと照合しました。解析の流れを図1に示します。

図1 MRI画像から膠芽腫の免疫状態と治療薬候補へつなげる解析の流れ
治療前MRIから画像特徴を数値化し、予後予測、遺伝子・腫瘍微小環境解析、単一細胞情報を組み合わせて、Hot・Warm・Coldの免疫状態を解析し、作用機序に基づく治療薬候補へつなげる流れを示します。223例でモデルを作成し、独立した98例で外部検証を行い、うち88例で遺伝子情報を解析しました。

2.今回分かったこと・従来との違い
 別の98例で検証した結果、臨床情報だけの場合のC-index 0.639に対し、MRI由来情報を加えると0.730へ向上しました。遺伝子情報が得られた88例は、Hot型12例(13.6%)、Warm型23例(26.1%)、Cold型53例(60.2%)に分かれ、免疫反応の乏しいCold型が約6割を占めました。単一細胞情報の解析では、炎症反応やIFN関連の反応が、腫瘍細胞、マクロファージ、ミクログリア、T細胞などで異なることが示されました。さらに、3つの免疫状態と既知の治療標的や作用の仕組みを照合し、免疫チェックポイント阻害薬、CAR-T細胞療法、血管新生阻害薬などを含む治療薬候補マップを作成しました。これにより、MRIによる予後予測から免疫状態の理解、治療薬候補の整理までをつなぐ枠組みを示しました。

図2 膠芽腫の腫瘍微小環境と3つの免疫状態に応じた治療薬候補マップ
左は、遺伝子情報が得られた88例について、腫瘍細胞やマクロファージ、ミクログリア、T細胞などの構成を推定した結果です。右は、免疫状態をHot、Warm、Coldに分類し、それぞれの生物学的特徴と既知の薬剤作用機序から、今後検証すべき治療薬候補を整理したものです。

今後の展開

 今後は、複数施設のより大規模なデータで、予後予測と免疫状態の分類を再検証します。さらに、示した免疫状態や治療薬候補と、実際の治療反応との関係を確かめる必要があります。
 将来は、日常診療で得られるMRIから患者ごとの腫瘍免疫環境をより直接的に把握し、個別化治療や新たな治療薬の開発につなげることを目指します。ただし、今回の3分類と治療薬候補は探索段階であり、現時点で患者の治療薬を直接決めるものではありません。

用語解説

※1 C-index
予後の順序をどの程度正しく予測できるかを表す指標。本研究では、値が高いほど予測の一致度が高いことを示します。
※2 Hot/Warm/Cold
本研究でT細胞関連遺伝子とIFN-γ反応から分けた免疫状態。Hotは免疫反応が比較的活発、Coldは比較的乏しい状態です。
※ 腫瘍微小環境(TME)
がん細胞の周囲にある免疫細胞や血管などからなる環境。
※ ラジオミクス(Radiomics)
MRIなどの医用画像から多数の特徴を数値化し、病気の性質や予後との関係を調べる方法。

【お問い合わせ先】

病院放射線部 准教授 河原大輔
Tel:082-257-1545 FAX:082-257-1546
E-mail:daika99*hiroshima-u.ac.jp
 

(*は半角@に置き換えてください)


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