DPCデータに基づく病院情報の公表(令和6年度)

◎使用するデータ

  • 様式1 ・・・・・・・診療録情報(主傷病名、入院の目的、手術術式 等)
  • 様式4 ・・・・・・・診療報酬算定情報(医科保険診療以外のある症例調査票)
  • Dファイル ・・・・・     〃   (診断群分類点数表により算定した患者に係る診療報酬算定情報)
  • 入院EFファイル・・・     〃   (医科点数表に基づく入院患者の診療報酬算定情報)
  • 外来EFファイル・・・     〃   (医科点数表に基づく外来患者の診療報酬算定情報)
  • 様式3(補助票)・・医療機関の施設情報(様式1の転倒・転落、褥瘡に係る項目の代替となる調査)

  ※患者情報はすべて匿名化されています。

◎対象となる患者データ

  • 令和6年6月1日から令和7年5月31日までの退院患者で、一般病棟に入院した患者

※集計対象外
・入院した後24時間以内に死亡した患者
・生後1週間以内に死亡した新生児
・臓器移植・労災・自賠責・自費・正常分娩・治験・先進医療の患者

◎患者数等の表記について

  • 患者数が10未満の場合は、患者数等を「 ‐ 」としています。

◎集計項目

 《病院指標》

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

 

 《医療の質指標》

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
  4. 転倒・転落発生率
  5. 転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率
  6. 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
  7. d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率
  8. 65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合
  9. 身体的拘束の実施率

入院時の満年齢を10歳刻みの年齢階級別にし、90歳以上については1つの階級として集計し、患者数の分布を示しています。

年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 714 623 603 850 1280 2558 3441 5633 2795 292

診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

DPC14桁分類(DPCコード)の患者数を診療科別に集計し、上位5位までのDPCコード、DPC名称、患者数、平均在院日数(自院)、平均在院日数(全国)、転院率、平均年齢、解説を示しています。

【DPC14桁分類(DPCコード)】
診断群分類を表すコードです。入院期間中に最も医療資源が投入された傷病名と、入院期間中に行われた医療行為等の組み合わせによって決定されます。
診療報酬改定時に見直しが行われ、令和6年度診療報酬改定において、DPCコードの総数が3,248分類、そのうち2,477分類が包括対象となっています。

小児科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 
手術なし 手術・処置等2なし

33

4.21

6.11 

21.21

0.00

010230xx99x4xx てんかん 手術なし 手術・処置等2 4あり

31

9.00

5.90 

0.00

5.10

060180xx99x0xx クローン病等 手術なし
 手術・処置等2なし

22

3.50

6.85 

0.00

11.82

010081xxxxx30x 免疫介在性脳炎・脊髄炎 
手術・処置等2 3あり 定義副傷病なし

16

10.94

29.48 

0.00

5.69

130010xx99x7xx 急性白血病 手術なし
 手術・処置等2 7あり

16

5.56

23.16 

0.00

12.00

〈妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上)〉
当院は地域周産期母子医療センターに指定されており、新生児集中治療室(NICU)6床および新生児回復室(GCU)6床で運用しています。主に、当院で管理されたハイリスク妊娠母体から出生した児や、他施設からの新生児搬送に対応しており、NICUとGCUを合わせた年間入院数は約200例に上ります。対象は、在胎28週以上の早産児・低出生体重児をはじめ、新生児血液疾患や悪性腫瘍疾患の児、当院遺伝子診療科に紹介される先天異常の児、さらには正期産児の呼吸障害や黄疸の治療など、多岐にわたる新生児疾患を含みます。院外搬送の受け入れ増加に伴い、出生体重2,500g以上の新生児入院が全体の約半数を占めており、DPC分類の上位となっています。
〈てんかん〉
当院は難治性てんかんの包括的診断・治療を担うてんかんセンターとしての役割を果たしています。脳神経内科・精神科・脳神経外科や地域の医療機関との合同カンファレンスを定期的に実施し、連携を強化することで質の高いてんかん医療を実践しています。入院では抗てんかん発作薬の調整やACTH療法・ケトン食療法などの特殊治療を行い、難治例に対しては脳機能画像検査や長時間ビデオ脳波モニタリング検査を実施し、てんかん外科手術の適応を評価しています。長時間ビデオ脳波モニタリング検査は年間40-50件施行しており、実施と評価が可能な施設・専門医が限られていることから当院での患者数は増加傾向にあり、DPCにおいても上位を占めています。
〈クローン病等〉
クローン病や潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患(IBD)は、腸に原因不明の慢性的な炎症が生じる病気で、下痢や血便、腹痛、発熱、成長障害などの様々な症状が現れます。当科ではIBDセンターと連携を取りながら、小児消化器を専門とする医師により、内視鏡をはじめとする各種消化管検査のほか、難治性病態に対する生物学的製剤や分子標的薬の導入、遺伝性疾患の精査など高度専門医療を提供しています。小児IBD患者数は年々増加していますが、その一方で専門的な治療施設は全国的に少なく、広島では当院が中心的な役割を果たしています。
〈免疫介在性脳炎、脊髄炎〉当院には複数名の小児神経専門医が在籍しており、救命救急病棟での集中治療管理が可能な体制も整っています。これにより意識障害・けいれん重積・呼吸不全・運動障害等の症状を呈し集学的治療を必要とする免疫介在性脳炎、脊髄炎の症例について、広島県内の多くの病院より紹介を受けて診療しています。治療の基本は免疫抑制療法ですが状況に応じて救命救急医と連携し呼吸・循環管理や血漿交換療法などの特殊治療・高度専門医療を行っています。広島県内で診断・治療が可能な施設は限られており、そのため当院への紹介数は必然的に増加傾向にあります。
〈急性白血病〉
当院は年間40名前後の新規小児がん症例の診療にあたっており、白血病はその中で約半分程度を占め、化学療法を中心に治療を行っています。再発難治症例については造血幹細胞移植や特殊な免疫療法などのより専門的な治療を行います。当院は中国四国地方唯一の小児がん拠点病院として患者さんの紹介を受けるだけでなく、中国・四国地方の小児がん診療施設とネットワークを形成し小児がん診療の向上に努めています。またJCCG(日本小児がん研究グループ)に所属し、小児がん治療成績向上のためにさまざまな治療開発・研究を行っています。

整形外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
160620xx01xxxx 肘、膝の外傷(スポーツ障害等を含む。) 腱縫合術等

99

13.77

12.71 

10.10

26.05

070210xx01xxxx 下肢の変形 骨切り術 前腕、下腿等

72

15.89

20.77 

40.28

65.97

070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。)
 人工関節再置換術等

66

19.74

21.38 

63.64

73.32

07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等

36

14.44

18.76 

55.56

66.22

070041xx99x3xx 軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く。)
 手術なし 手術・処置等2 3あり

29

12.59

8.66 

3.45

49.97

整形外科では、膝関節班、四肢外傷班、足・足関節班、脊椎・脊髄班、手・微小外科班、股関節班、肩関節班、骨軟部腫瘍班といったサブグループがあります。それぞれの分野の専門家が、日本のみならず世界的にもトップクラスの診療・研究を行っています。保存的治療から最先端の再生医療も含めた手術的治療を行い、新生児・小児から超高齢者まで、多くの患者さんの運動器の健康、整形外科医療の発展に寄与しています。

膝関節班では、スポーツによる外傷・障害や一般外傷、加齢的変化などによる膝関節の障害を全般的に扱っています。特に前十字靭帯損傷や後十字靭帯損傷などの靭帯損傷の手術件数が多くを占めています。その方法も、今では世界的に主流となっている自分の腱の一部を使って靭帯を再建する手技を用いており、正確で侵襲の少ない関節鏡視下手術を行っています。また、変形性膝関節症の手術件数も多く、人工関節置換術や、関節温存手術である骨切り術なども積極的に行っています。人工膝関節置換術ではロボット支援手術を取り入れています。そのほか、半月板損傷や軟骨損傷、滑膜炎の手術件数が多く、軟骨欠損の治療では、骨穿孔術などの他、骨軟骨柱移植術や自家培養軟骨移植術を行っています。軟骨損傷や滑膜炎については、膝関節だけでなく足関節や肘関節などでも比較的多く見られ、関節鏡による手術を中心に行っています。

足・足関節班では、外反母趾や変形性足関節症に対して骨切り術による変形の矯正を行っています。また内反尖足といった先天性・後天性の変形に対しても骨切り術を中心とした変形矯正を行っています。

脊椎・脊髄班では、電気生理学的診断を行いながら、頚椎症性脊髄症や腰部脊柱管狭窄症などの圧迫性変性疾患に対して手術用顕微鏡を用いた除圧術を行っています。また、脊柱変形に対して矯正固定術などの手術も行っています。

手・微小外科班では、腱断裂や神経損傷に対する腱縫合や神経縫合を行っています。さらに細かい指動脈などの血管縫合では顕微鏡下の手術を行っています。

股関節班では、股関節疾患の痛みや異常に対して、CTやMRI、また超音波検査などを用いて正確な診断を図り、それぞれの患者さんの病状に応じた治療法を選択しながら診療を行っています。手術療法においては回転骨切り術など、可能な限り股関節を温存する手術を行い、必要に応じて人工股関節置換術を行っています。人工股関節置換術もロボット支援手術を取り入れて行い、良好な治療成績が得られています。

肩関節班では、腱板損傷や脱臼などに対して関節鏡を用いた手術を広く行っています。

骨軟部腫瘍班では、四肢の良性や悪性腫瘍の摘出、およびそれに伴う再建術を広く行うとともに、化学療法を用いた治療も行っています。

形成外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
070520xx97xxxx リンパ節、リンパ管の疾患 手術あり

65

10.74

7.87 

1.54

69.40

090010xx05xxxx 乳房の悪性腫瘍 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後)

15

6.60

7.26 

0.00

51.53

030390xx970xxx 顔面神経障害 手術あり 手術・処置等1なし

-

-

9.51 

-

-

100100xx97x0xx 糖尿病足病変 手術あり 手術・処置等2なし

-

-

24.47 

-

-

090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし

-

-

6.48 

-

-

形成外科では、身体に生じた欠損や変形・機能障害などに対して、機能的にも形態的にも正常な状態に近づけることを目的に、以下の外科治療を行っています。

・リンパ浮腫では、小さな傷からリンパ管と細静脈をつなぐ手術、リンパ管細静脈吻合(Lymphatico-venular anastomosis:LVA)を第一選択として行っており、優れた治療効果を出しています。超微小血管外科(supermicrosurgery)の技術により、今までは不可能だった細い血管をつなげるようになり、体への負担が小さく優れた治療効果を有するLVAが可能となりました。手術前のリンパ管造影の所見をもとに、局所麻酔をして皮膚を2㎝ほど切って手術を行います。0.5㎜ほどのリンパ管と細静脈をみつけて、それらを切ってつなぐことでバイパスを作ります。LVAの吻合数が多いほど効果が高い傾向があることから、当科では複数の術者が同時にさまざまな場所で手術を行い(足首と太ももなどを同時に)、約4時間の手術時間内にできる限り多くの吻合を行います。局所麻酔のため手術中にも意識がはっきりしており、基本的には手術の映像をみてもらい、術者が手術の状況を説明しながら手術を行います。入院は約1-2週間で、手術前後は医師の指導通りの弾性ストッキングによる圧迫療法が必要となります。上記手術に加え、浮腫の状態によりリンパ節移植術、脂肪吸引術などの手術も行われることがあります。怪我や腫瘍切除に伴い神経が切れている場合は、神経同士を縫い合わせたり、あるいは他の神経を移植したりして治療します。筋肉は神経からの刺激がないと徐々に萎縮してしまうので、この場合は早い段階での治療が望ましいです。
・顔面神経麻痺では、麻痺になってから時間が経っている場合や先天性の場合、既に表情筋は萎縮・変形しているため、神経をつなぐだけでは機能回復が難しいことが多く、他の治療方法が選択されます。主に形態的な左右差を整える事を目的とした静的再建術と顔面の動きを再現する事を目的とした動的再建術とがあります。静的再建術では、垂れ下がった上まぶたや眉毛に対し皮膚を一部切り取って吊り上げたり、口角の垂れ下がりに対して筋膜、糸などを皮膚の下に移植して吊り上げるといった治療があります。目を閉じやすくするために金製の小さい重りを上まぶたに埋め込む手術もこれに属します。これらの治療には顔面を積極的に動かして表情運動を回復させる効果はないので静的手術と呼ばれます。一方、動的再建術では、麻痺した表情筋に代わり、別の筋肉で表情運動を回復させる方法で、咬む役目をする筋肉(側頭筋や咬筋)の一部をまぶたやくちびるに移動したり、身体の他の部位から筋肉を取ってきて移植したりします。顔面神経麻痺の症状は顔面全体に及ぶので、通常は静的手術と動的手術の両方を利用して治す必要があります。神経や筋肉の回復は遅いので、治療終了まで多少時間がかかります。病的共同運動に対しても、手術やボツリヌス毒素などを用いた治療、リハビリテーションなどを行うことで症状の改善が得られます。                  
・糖尿病性潰瘍(Diabetic Ulcer)の治療においては、血管障害、神経障害、感染症が複合的に関与する難治性の創傷に対し、デブリドマン(壊死組織の除去)、骨髄炎の外科的処置、創傷管理(感染症対策や局所陰圧閉鎖療法など)を行い、下肢切断を回避しながら「足の救済」を目指しています。
・乳癌術後の乳房欠損に対する治療を行っています。保険認可となった人工乳房を用いる方法や、腹部などの自家組織を移植する方法も行っています。
・熱傷後や外傷後の瘢痕・瘢痕拘縮に対して、拘縮の解除および植皮や皮弁を用いた欠損の再建を行っています。
・多趾症・合趾症などの先天異常疾患に取り組んでいます。

形成外科では、自科の手術以外にも、乳腺外科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、歯科口腔外科、消化器外科、呼吸器外科、脳神経外科、皮膚科、整形外科など、院内外科系各科からの要請に応じた手術支援、技術協力を行っており、自科の手術よりもこちらに割く時間の方が多いと言っても過言ではありません。形成外科が協力する事で、他施設では取り組むことが難しい症例を当院では行うことが可能です。具体的には、乳腺外科における乳房再建術(同時組織拡張器挿入術、人工乳房挿入術)や、耳鼻咽喉科・頭頸部外科や歯科口腔外科における遊離複合組織移植などがこれに該当します。 

脳神経外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
010030xx990xxx 未破裂脳動脈瘤 手術なし 手術・処置等1なし

50

3.00

7.42 

0.00

63.50

010010xx03x00x 脳腫瘍 頭蓋内腫瘍摘出術等 
手術・処置等2なし 定義副傷病なし

44

16.59

19.89 

6.82

52.43

010030xx02x0xx 未破裂脳動脈瘤 脳血管内手術 
手術・処置等2なし

32

5.75

8.63 

0.00

67.19

010230xx99x4xx てんかん 手術なし 手術・処置等2 4あり

29

6.21

5.90 

0.00

33.62

010070xx9912xx 脳血管障害 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2 2あり

27

3.63

4.75 

3.70

40.26

脳神経外科では、外科的治療を行うに際して術前検査を入院にて集中的に行っています。上記のうち、手術を伴わないものについては、未破裂脳動脈瘤に対する脳血管撮影による最終評価のための検査入院、難治性てんかん患者における術前精査のためのビデオ脳波モニタリング、脳腫瘍摘出術をより効率的に行うための総合的な術前情報を集約して集めるための検査入院、もやもや病や脳血管狭窄症に対する脳血管撮影による術前評価のための検査入院です。いずれも外科的治療を行う前の精密検査に当たります。これらで得られた情報をもとに、各専門領域のグループ内で十分な検討を行います。その検討結果を診療科全体の術前カンファレンスに提出し、科全体での検討を経て最終的な外科的治療の内容(目的、方法、モニタリングの種類、ナビゲーションの有無、SCOTに該当するか、覚醒下手術の適応か、切除範囲をどこまでとするか等)を決めていきます。
当院は、中四国地方で唯一、小児がん拠点病院に指定されています。小児脳腫瘍、AYA世代の脳腫瘍、間脳・下垂体腫瘍など、中四国から多数の患者さんが紹介受診されます。脳腫瘍に対して、覚醒下手術、神経モニタリング、内視鏡、ナビゲーション等を駆使した、安全かつ質の高い手術治療を行っています。さらに、関連する専門科と協力して最先端の放射線治療や薬物療法を行い、治療後の長期フォローアップも充実しています。未破裂脳動脈瘤に対する脳血管内手術ではハイブリッド手術室を利用し、開頭手術では到達困難な部位にアプローチするなど最先端の医療技術に対応しています。また、当院では2014年にてんかんセンターを開設し、難治性てんかんに対する外科的治療としては、中四国地方のハブ的施設となっています。ビデオ脳波モニタリングに加え、先進医療機器である脳磁図も駆使しててんかん焦点診断を行っています。最近ではロボット支援下に頭蓋内深部電極を留置し焦点を診断する方法(SEEG)も施行できるようになりました。他院では行っていない難治性てんかんに対する皮質焦点切除術、脳梁離断術、半球離断術、迷走神経刺激装置埋込術などを施行することができます。

呼吸器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
040040xx02x0xx 肺の悪性腫瘍 肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの等 
手術・処置等2なし

207

8.06

9.82 

1.45

71.59

040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし

47

2.26

3.03 

0.00

72.26

040010xx01x0xx 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍 縦隔悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし

12

5.92

8.41 

0.00

54.50

040040xx9900xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

12

9.17

13.41 

8.33

71.75

040040xx99070x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2 7あり 定義副傷病なし

10

6.90

9.50 

0.00

59.80

呼吸器外科では、肺がん、悪性胸膜中皮腫、縦隔腫瘍など乳腺および食道を除く胸部良性/悪性腫瘍や胸部良性疾患を対象に、診断・外科的治療・薬物療法・集学的治療を中心に診療を行っています。特に肺がんを中心とした悪性腫瘍の手術を行う患者さんが大多数を占めています。肺がんの診断にはCT、PET/CT、MRI等、最新の画像診断技術などを用いて腫瘍の広がりや活動性を評価し、適切な治療方針を決定します。肺がんの確定診断は超音波を併用する最新の気管支鏡検査を用いて行います。がんを取り除く手術では患者さんの身体に対してやさしい低侵襲・機能温存手術を積極的に行っています。

心臓血管外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1なし 手術・処置等2 1あり

52

19.87

20.84 

9.62

67.48

050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 手術・処置等2なし

22

10.73

10.18 

0.00

76.95

050161xx01x1xx 大動脈解離 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 上行大動脈及び弓部大動脈の同時手術等 手術・処置等2 1あり

17

23.71

29.35 

58.82

70.65

050161xx9900xx 大動脈解離 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

12

15.33

16.32 

8.33

74.17

050170xx03000x 閉塞性動脈疾患 動脈塞栓除去術 その他のもの(観血的なもの)等 手術・処置等1なし、1あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

11

5.82

5.15 

0.00

76.18

心臓血管外科では、診断名として1)狭心症、心筋梗塞、2)弁膜症、3)不整脈(徐脈性、心房細動)、4)大動脈瘤(胸部大動脈、腹部大動脈)、5)急性大動脈解離、6)末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)、7)静脈疾患(静脈瘤)、8)慢性腎不全を対象とした治療を主に行っています。症例数は広島県下有数であり、広島県のみならず中四国地方から患者さんの紹介を受け、難易度の高い症例や複数の合併疾患がある患者さんの治療を数多く行っているのが特徴です。
以下に、上位5つの診断群分類について順番にその内容を説明します。

弁膜症として主な対象疾患は、大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症です。いずれの疾患に対しても、最近では右開胸手術を行うようになってきています。一般的にこれらは低侵襲心臓手術と位置づけられていますが、実際に施行する立場からするとそれだけではありません。いずれの手術においても、術前のCTや超音波検査で詳細な計画を立てることにより、弁膜を正面視することができ、これにより、より精度の高い手術を行うことができます。患者さんによっては、大動脈弁逆流や巨大右房などの場合、これらの方法は難しいことが多く、従来の方法でも手術を行っています。

大動脈瘤は高齢者の疾患であり、ほとんどが75歳以上の患者さんです。胸部大動脈、腹部大動脈ともに、ステントグラフトでの治療例が増加しており、近年では胸部、腹部ともには80%以上をステントグラフトで治療を行っています。ステントグラフトで治療可能な場合、切開は鼠径部(股の付け根)や鎖骨の下に4㎝程度で済みますので、術後の回復も非常に早く、比較的短い入院日数となっています。

急性大動脈解離は、心臓血管外科の急患の中で最も多いもので、特にA型解離と呼ばれるものは、発症当日(24時間以内)に治療を行わないと半数以上が死亡する、極めて緊急を要する疾患です。大学病院という機能性の高い施設ですが、日々の診療で高難度疾患を治療し続けているということもあり、急性大動脈解離手術での生存率はもちろん全国平均以上で、救命手術としての上行大動脈置換に止まらず、将来を見据えた上行弓部大動脈全置換術を多く行っています。拡大手術による死亡のリスクは増加することなく、むしろ疾患の特性を利用した術式を行っており、県下ではむしろそれが標準術式になりつつあり、成績は良好です。

一方、B型解離と呼ばれるものは、急性期の破裂のリスクが非常に低いため、降圧治療を中心として行い保存的に経過観察されることが通常です。長期的に経過観察をしていき、大動脈の大きさが急速に大きくなったり、胸部では55mm、腹部では50mmを超えてくるような場合は治療を行う必要があります。

急性動脈閉塞は、病態の把握と迅速な治療が必要であり、救急対応を24時間体制で行っています。血栓除去は、最新のデバイスを用いて行うなど、最新の治療法を導入して対応しています。

小児外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
060160x101xxxx 鼠径ヘルニア(15歳未満) 
ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等

46

2.39

2.73 

0.00

3.70

11022xxx01xxxx 男性生殖器疾患 精索捻転手術等

22

2.18

3.53 

0.00

6.32

060170xx02xx0x 閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニア
ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等 
定義副傷病なし

15

2.07

6.85 

0.00

2.67

140590xx97xxxx 停留精巣 手術あり

14

2.29

2.96 

0.00

2.14

11013xxx03xxxx 下部尿路疾患 尿管膀胱吻合術等

-

-

9.11 

-

-

当院は小児がん拠点病院であることから、小児外科では主に小児悪性腫瘍の治療をはじめとした重症の小児外科疾患の治療を行っています。小児がんの手術も多く行っていますが、種類が様々であるため患者数としては上位にはなっていません。
小児外科で数多く治療を行っている疾患は、一般的な「小児外科日常疾患」です。
小児鼠径ヘルニアは小児外科手術の中で最も多い疾患であり、子供100人に1人程度の割合で発症します。基本的には自然治癒することはほとんどなく、腸管などがはまり込んでしまう(嵌頓)の危険性があるため手術を行います。当院では2020年より男児・女児ともに腹腔鏡下手術を基本術式として行っています。さらに最近ではご家族の負担を減らすために、1歳以上の患児では原則1泊2日の入院で手術を行っています。鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術では、現在症状のない反対側のヘルニアも術中に有無が確認でき、もし反対側にもヘルニアが存在すれば同時に治療が可能であるため、将来的に再度手術を行うリスクを減らすことができるという大きなメリットがあります。そのため最近では腹腔鏡手術を希望して来院される方が増え、症例数も増加しています。
精索捻転は男児に非常に多い救急疾患です。当院は広島にある小児外科施設の中でも最も小児外科医の人数が多いため、積極的に救急疾患を受け入れて手術を行っており、近年は症例数が急増しています。
停留精巣は男児において、生下時より精巣が陰嚢内に触知しないという疾患であり、将来的には不妊や精巣腫瘍の原因となります。手術の不要な移動性精巣との鑑別はしばしば難しく、専門施設での診察が勧められます。診断がつけば、1歳~1歳半を目安に精巣を陰嚢に固定する手術を行います。

小児外科ではこのような一般的な「日常疾患」と呼ばれる疾患の治療に加え、非常に様々な分野・臓器の手術を数多く行っています。中国・四国ブロックにおいて唯一の小児がん拠点病院の指定を受けている当院の特徴でもある小児固形腫瘍(神経芽腫・胚芽腫・腎芽腫・奇形腫など)の手術、胸部・呼吸器疾患の手術、胆道閉鎖症や胆道拡張症などの肝胆道系手術、ヒルシュスプルングなどの腸管手術、尿道下裂や精巣捻転などの泌尿器系手術など、非常に多岐にわたる手術を行っています。

産科婦人科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病なし

230

4.62

4.07 

0.00

62.34

120010xx99x30x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 3あり 定義副傷病なし

171

4.01

4.12 

0.00

60.75

12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし

94

9.77

9.84 

0.00

57.33

120010xx99x50x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 5あり 定義副傷病なし

89

3.71

3.96 

0.00

60.75

120060xx02xxxx 子宮の良性腫瘍 腹腔鏡下腟式子宮全摘術等

59

6.03

5.88 

0.00

42.95

【産科】
・当院は周産期専門医認定施設の基幹施設であり、ハイリスク妊娠・分娩、早産を主に取り扱っています。
・新生児集中治療室(NICU)、小児科との連携により、早産が予測される母体の管理が可能です。
・特発性血小板減少性紫斑症(ITP)などの血液疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化器・代謝疾患、その他の稀な合併症疾患など、多くの合併症妊娠例を母科と連携して管理しています。
・妊娠高血圧腎症や胎児発育不全、前置・低置胎盤などの産科合併症症例も多く取り扱っています。
・心疾患合併妊娠や脳動脈瘤合併妊娠などにおいて、麻酔科と協力して無痛分娩を行っています。
・麻酔科、手術室、小児科、NICUとの連携により超緊急帝王切開を迅速に行うことが可能です。また、弛緩出血や子宮型羊水塞栓などの産後大量出血に対して、放射線診断科(IVR部門)の協力により、緊急動脈塞栓術を行うことも可能で、重症度に応じて高度救命救急センター・ICUでの管理を行っています。
【婦人科】
・当院はがん診療連携拠点病院であり、婦人科がんに対する集学的医療を行っています。婦人科腫瘍専門医を中心に適応症例の検討を行い、手術療法・薬物療法・放射線療法・がんゲノム医療などを含めた治療に取り組んでいます。また日本婦人科腫瘍学会指定修練施設として、修練医の指導・教育にも力を入れています。
・卵巣癌に関しては、手術と薬物療法による集学的治療が必要であり、コンパニオン診断を行いながら維持療法を導入しています。
・がんゲノム医療に関しては、増加するコンパニオン診断薬を使用し、適切な治療を行っています。また、がん遺伝子パネル検査についても積極的に取り組んでいます。
・2024年度の婦人科悪性腫瘍件数は、子宮頸癌40例、子宮体癌68例、卵巣癌51例でした。
・遺伝子診療科と連携して、近年注目されている遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)やリンチ症候群を含む遺伝性腫瘍・家族性腫瘍に対して遺伝カウンセリングを行っています。
・良性疾患である附属器腫瘍、子宮内膜症、卵巣腫瘍茎捻転などに対する子宮附属器腫瘍摘出術は、緊急症例も含め積極的に腹腔鏡手術で行っています。また、子宮筋腫などの良性の子宮疾患に対する腹腔鏡下腟子宮全摘や、子宮腺筋症に対する手術も行っています。。
・骨盤臓器脱にも対応しており、腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)やロボット支援下仙骨腟固定術(RSC)などを含めた手術療法も積極的に行っています。
・全国的な組織である婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)の認定施設、全世界的な組織であるNRG Oncologyの本邦認定施設(全国約20施設)として、最先端の臨床試験に積極的に参加しています。

眼科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 手術あり片眼

437

2.48

2.49 

0.69

73.07

020220xx01xxx0 緑内障 緑内障手術 濾過手術片眼

299

7.72

8.69 

0.33

71.93

020220xx97xxx0 緑内障 その他の手術あり片眼

252

3.65

4.52 

0.40

72.00

020160xx97xxx0 網膜剥離 手術あり片眼

223

6.43

7.53 

0.45

56.52

020280xx97xxxx 角膜の障害 手術あり

123

5.68

8.78 

0.81

71.49

眼科では、主として緑内障、角膜、網膜硝子体、小児眼科および眼形成の5つの専門部門に分かれて診療にあたっており、神経眼科やロービジョンの外来も設けています。
入院期間を短くして効率よくレベルの高い医療を提供するように努めています。全身に種々の問題がある患者さんや、小児のように全身麻酔を必要とする患者さんの白内障手術では、入院期間が3日間におよぶことがあり、DPCⅡ期の期間を超える場合もあります。緑内障手術、角膜移植については、全国有数の手術件数があります。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
03001xxx99x70x 頭頸部悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 7あり 定義副傷病なし

113

4.27

6.52 

0.00

59.79

03001xxx01xxxx 頭頸部悪性腫瘍 鏡視下咽頭悪性腫瘍手術(軟口蓋悪性腫瘍手術を含む。)等

83

13.47

11.79 

0.00

68.54

03001xxx0200xx 頭頸部悪性腫瘍 頸部悪性腫瘍手術等 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

61

11.66

12.45 

1.64

64.56

03001xxx99x3xx 頭頸部悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 3あり

48

42.06

26.52 

4.17

59.96

100020xx010xxx 甲状腺の悪性腫瘍 甲状腺悪性腫瘍手術 切除(頸部外側区域郭清を伴わないもの)等 手術・処置等1なし

39

7.51

7.90 

0.00

57.33

耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、入院患者の7割以上が悪性腫瘍です。頭頸部悪性腫瘍の治療は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科だけでなく、放射線治療科、放射線診断科、がん化学療法科、遺伝子診療科、口腔総合診療科など、多科との連携チームで担当しています。

当院は日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医制度指定研修施設であり、頭頸部がん専門医が4名在籍しています。悪性腫瘍以外にも難易度の高い良性腫瘍手術も多く施行しています。また、内視鏡下甲状腺手術(VANS)などの低侵襲手術、咽喉頭癌に対するロボット支援下経口的咽喉頭癌切除術を積極的に行い、プロクター施設として見学を受け入れています。さらに、頭頸部癌に対する光免疫療法である頭頸部アルミノックス治療も積極的に行っています。希少癌や再発症例に対しては、遺伝子パネルなどを用いて最適な治療提供を心がけています。新規治療の開発やエビデンスの構築のため、JCOG頭頸部癌グループで種々の臨床試験に参加すると同時に、国際共同治験にも多数参加しています。

鼻副鼻腔炎、慢性中耳炎・中耳真珠腫などの良性疾患、唾液腺や甲状腺などの良性腫瘍、救急対応を要する咽喉頭の急性感染症などに関しても、手術難易度の高い症例や合併症等で治療困難な症例が集まる傾向にあります。特に疫学的な増加現象を認めている好酸球性副鼻腔炎(ECRS)の治療に関しては、新規抗体製薬の国際共同治験にも参加しています。

当院は日本鼻科学会認定手術指導医制度認可研修施設であり、内視鏡下鼻・副鼻腔手術に関しては、内視鏡下鼻・副鼻腔手術V型(拡大副鼻腔手術)や広範頭蓋底手術などの難易度の高い手術も多く行っています。多くの手術においてナビゲーションシステムを併用し、安全を第一に手術を行っています。また、経鼻腔翼突管神経切断術、甲状腺眼症に対する眼窩内容減圧術など、高度な技能を要する機能的手術にも対応しています。

当院は日本耳科学会認定手術指導医制度認可研修施設でもあり、高度難聴に対しての人工内耳埋め込み術、慢性中耳炎などに対しての鼓室形成術、より手術侵襲の少ない内視鏡下耳科手術も数多く行っています。

放射線治療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
100020xx99x2xx 甲状腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 2あり

85

3.64

5.83 

0.00

63.54

06007xxx9909xx 膵臓、脾臓の腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2 9あり

28

3.00

3.19 

0.00

66.18

060010xx99x30x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。) 手術なし 手術・処置等2 3あり 定義副傷病なし

16

12.25

14.51 

0.00

65.06

040040xx9902xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2 2あり

15

4.87

18.87 

0.00

79.93

060010xx99x40x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。) 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病なし

-

-

8.61 

-

-

放射線治療科では、最先端の高精度放射線治療を積極的に行っています。体幹部定位照射は、放射線を多方向からピンポイントに照射する治療法で、サイズの小さな肺癌・肝臓癌(転移性を含む)を高い確率で治癒に導きます。強度変調放射線治療(IMRT)は、照射範囲内の放射線ビームの強度を細かく調整し自由度の高い線量分布を達成します。当院では照射筒を回転させながら強度変調照射を行う強度変調回転照射(VMAT)を採用し行っています。本法では、効率の良い照射による短時間照射が可能で、患者さんの負担軽減、治療患者数の増加(スループット向上)が得られています。頭頸部癌を主体に多くの疾患において、有害事象を低率に抑えつつ病変への確実な線量投与を行うことで、より良い治療成績につなげています。これらの治療を精度高く行うため、放射線治療専門医・医学物理士・放射線治療専門技師を含む診療放射線技師・がん放射線治療看護認定看護師がチームとして日々診療にあたっています。

●甲状腺癌に対する内照射
甲状腺癌の治療における放射線治療の役割は、手術後の再発を予防するため全摘術後の残存甲状腺組織の破壊(アブレーション)を行うこと、既に再発・転移を来した腫瘍に対する治療の2つが挙げられます。甲状腺癌に対する放射線治療の方法は、放射性ヨウ素(I-131)を内服して体内から放射線を当てる内部照射が主体となります。内部照射では、甲状腺がヨウ素を取り込む性質を利用して、服用した放射性ヨウ素を甲状腺に取り込ませ、手術で取り除けなかった微量の甲状腺組織や再発・転移を体内から照射します。内服した放射性ヨウ素により患者さんの体内から放射線が放出することから、数日間は専用の個室で過ごしていただくことになります。この専用個室は広島県内には当院しかないため、近隣施設から多くの患者さんの紹介を受け治療を行うのが当科の特徴の一つになっています。

●神経内分泌腫瘍に対する内照射
神経内分泌腫瘍に対する放射線治療の方法は、ルタテラ治療という内部照射が主体となります。ルタテラ(ルテチウム-177ドタテート)治療は、ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対して開発された、先進的かつ効果的な治療法です。ベータ線という放射線を放出するルテチウム-177という物質を合成した薬剤が、腫瘍細胞の表面に存在するソマトスタチン受容体に特異的に結合し細胞内に取り込まれることで、正常な細胞に与える影響を最小限に抑えつつ、腫瘍細胞に効果的に放射線を照射します。大きな臨床試験の結果、これまで用いていた治療よりも効果が良いこと、重い副作用も少なく安全性も高いことが示されています。投与した薬剤により患者さんの体内から放射線が放出することから、数日間は専用の個室で過ごしていただくことになります。

●食道癌に対する化学放射線療法
当院における食道癌治療に放射線治療は深く関与しています。早期食道癌のうち、ごく表在性のものは内視鏡治療の良い適応ですが、内視鏡治療で切除困難な広範囲あるいはやや厚みのある早期食道癌では手術あるいは化学放射線治療が選択されます。その治療成績は、化学放射線療法と手術で同等で、臓器温存を希望する患者さんには、積極的に化学放射線治療を施行し、非常に良好な治療成績を達成しています。局所進行食道癌では、術前に化学療法を施行した後に手術を行う手法と根治的な化学放射線療法を施行し、腫瘍の再燃や再発に対して救済手術を行う手法の治療成績が同等であることが示されています。手術を希望するか、食道温存を希望するかで治療の選択が可能です。頸部食道癌は、解剖学的に放射線治療が難しい場所です。従来の照射法では、十分な線量の投与が困難な場合がありましたが、VMATを導入することでこの問題は解消しました。胸部食道癌の放射線治療では晩期心呼吸器合併症が問題となります。当院では、本合併症回避を目的として、VMATを導入、積極的に施行しています。

●肺癌に対する放射線治療
当院での肺癌治療における放射線治療の特徴としては、早期肺癌に対する定位放射線治療と進行肺癌に対する化学放射線療法が挙げられます。早期肺癌については手術が第一選択ですが、高齢者や合併症を有するため手術困難と判断された場合や手術を希望されない場合に選択されます。定位放射線治療は病変に限局して高線量を投与するため、身体負担が少なく高い効果を得ることができます。局所進行肺癌に対する化学放射線療法は切除困難な場合に選択されますが、最近は免疫チェックポイント阻害薬との併用により治療成績は向上しています。放射線治療に関してもVMATを積極的に導入し、病変への十分な線量投与を保つと同時に放射線肺臓炎などの副作用の低減を図り、安全に高い効果を得られるよう努めています。

脳神経内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
01021xxxxx0xxx 認知症 手術・処置等1なし

39

4.64

13.68 

0.00

74.92

010230xx99x4xx てんかん 手術なし 手術・処置等2 4あり

31

4.97

5.90 

0.00

35.81

010110xxxxx40x 免疫介在性・炎症性ニューロパチー 手術・処置等2  4あり 定義副傷病なし

22

10.91

15.45 

9.09

61.45

010155xxxxx00x 運動ニューロン疾患等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

17

12.88

12.28 

11.76

67.12

010060xx99x20x 脳梗塞 手術なし 手術・処置等2 2あり 定義副傷病なし

15

12.40

16.94 

20.00

70.40

脳神経内科では、頭痛、めまい、物忘れ、手足のしびれや力の入りにくさ、手のふるえ、歩きにくいといった症状に対して、正確な診断・適切な治療を行っています。

●脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など)、免疫・炎症性疾患(多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、筋炎、重症筋無力症など)、神経感染症(脳炎、髄膜炎など)、筋ジストロフィー、てんかん、慢性頭痛などの脳神経内科特有の疾患について、それぞれの専門領域の医師が診療を行っています。
てんかんに対して長時間ビデオ脳波検査が必要な場合、入院で検査を行います。
アルツハイマー病のアミロイドβ抗体薬は入院して適応があるかどうか検査します。適応がある場合、1回目の投与は入院の上、副作用の確認をしています。
●入院病棟では摂食嚥下支援チームなどを含めたチーム医療により、質の高い医療を提供しスムーズに退院できるように連携しています。

皮膚科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2なし

36

7.75

6.92 

8.33

77.56

080005xx99x1xx 黒色腫 手術なし 手術・処置等21あり

20

6.25

8.00 

0.00

56.65

080005xx01x0xx 黒色腫 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2なし

15

11.73

11.59 

0.00

70.00

080220xx99xxxx エクリン汗腺の障害、アポクリン汗腺の障害 手術なし

15

2.80

3.15 

0.00

25.93

161060xx99x0xx 詳細不明の損傷等 手術なし 手術・処置等2なし

-

-

2.63 

-

-

皮膚科では、重症、難治性の皮膚疾患の診療を多く行っています。大学病院という特性上、皮膚悪性腫瘍(皮膚がん)の患者さんが多く、遠方の患者さんの入院治療も数多く行っています。主な皮膚悪性腫瘍としては、悪性黒色腫、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病などがありますが、その他の皮膚がんや浅い部位にあたる軟部腫瘍にも対応し、幅広い年齢層の患者さんの手術を行っています。皮膚悪性腫瘍の入院期間は、およそ1-2週間ですが、 通院での対応が困難な放射線療法を実施する場合や、進行期悪性腫瘍に伴う全身状態悪化で入院した患者さんでは、通院可能な病状に回復するまで、 あるいは緩和ケア中心の医療に移行するまでの診療調整に少し長めの期間を要するケースもみられます。また、 無汗症・乏汗症の診療も積極的に行っており、1泊2日の入院でおこなう発汗試験により発汗低下の状況を詳細に診断します。特発性後天性全身性無汗症と診断が確定した場合には、引き続き入院にてステロイドパルス療法も行っています。この場合の入院期間は3-4日です。このほか、湿疹・皮膚炎群では、主にアトピー性皮膚炎の入院治療を行っています。急性増悪時に緊急入院を行う他、教育入院にも力を入れており、それらは7-10日間程度の入院となります。また、円形脱毛症に対する点滴療法、蜂窩織炎や壊死性筋膜炎といった細菌性疾患、熱傷の入院治療も行っています。

泌尿器科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり

236

2.03

2.45 

0.42

70.27

110070xx02xxxx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術+術中血管等描出撮影加算

105

6.90

6.75 

0.00

74.30

11001xxx01x0xx 腎腫瘍 腎(尿管)悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし

75

10.79

10.12 

0.00

67.27

110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍 前立腺悪性腫瘍手術等

73

11.18

11.11 

0.00

71.11

110080xx9903xx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2 3あり

20

8.30

11.29 

0.00

72.75

泌尿器科では、悪性腫瘍領域の手術療法と薬物療法が多くを占めています。
根治術では、特にロボット支援前立腺悪性腫瘍手術やロボット支援腎悪性腫瘍手術の件数が多いことが特徴です。
また、膀胱癌に対する経尿道的手術では光力学的診断を用いた手術が多く、これらの一部はロボット支援膀胱悪性手術症例となります。
薬物療法についても、前立腺癌、腎癌、膀胱癌を含む尿路上皮癌に対して多くの症例で行っています。

呼吸器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし

115

3.16

3.03 

0.00

70.92

040040xx99040x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等24あり 定義副傷病なし

111

5.95

8.16 

3.60

71.77

040110xxxx10xx 間質性肺炎 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし

35

4.71

10.66 

0.00

66.86

040110xxxx00xx 間質性肺炎 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

25

13.28

18.68 

16.00

73.80

040040xx9900xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

24

10.54

13.41 

20.83

73.46

呼吸器内科では、間質性肺炎の診断に際し、2泊3日の入院で気管支鏡検査を行っています。検査では気管支肺胞洗浄による細胞分画解析、経気管支肺生検に加え、クライオバイオプシーも導入しています。必要に応じて呼吸器外科と連携し、胸腔鏡下肺生検も実施しています。これらの結果や胸部画像検査を総合的に評価し、治療方針を決定しています。治療はステロイドや免疫抑制剤を用いて行い、効果判定や副作用管理のため入院治療を行っています。

肺がん診療においては、同様に2泊3日の気管支鏡検査で病理診断を行い、PET-CT等と組み合わせて病期診断を行います。治療方針は放射線治療科や呼吸器外科と合同で検討し、患者さんごとに最適な治療を選択しています。進行肺がんでは、採取組織を用いたドライバー遺伝子解析に基づき、分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害薬による治療を行っています。副作用や合併症の管理のため、まず入院で導入し、その後外来で継続する体制を整えています。

さらに、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断・病態評価のため、スパイログラフィー、呼気中一酸化窒素測定、呼吸抵抗測定などの呼吸機能検査も行っており、幅広い呼吸器疾患に対応できる体制を整えています。

循環器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
050070xx03x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2なし

463

3.70

4.47 

1.51

68.16

050080xx99100x 弁膜症(連合弁膜症を含む。) 手術なし 手術・処置等11あり 
手術・処置等2なし 定義副傷病なし

154

6.94

5.18 

1.95

75.44

04026xxx99100x 肺高血圧性疾患 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

103

3.19

4.24 

0.97

60.70

050210xx97000x 徐脈性不整脈 手術あり 手術・処置等1なし、1,3あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

75

10.07

9.59 

10.67

77.93

050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1なし、1,2あり 手術・処置等2なし

72

4.57

4.18 

1.39

73.25

循環器内科では、心臓や血管の病気を中心とした全身疾患の診療を行っています。高齢化や生活習慣により、心臓の血管の病気(狭心症や心筋梗塞)、心筋の病気(心筋症)、弁膜の病気(弁膜症)、心房細動という頻脈性(脈が速くなる)不整脈は年々増加してきています。このため、これらの病気により引き起こされる心不全も増加しています。一方で、その診断と治療方法(医療機器や技術)は急速に進歩を遂げています。当科は中国・四国地方の循環器疾患において最も高度な診療体制を整えています。心筋梗塞・弁膜症・不整脈・心不全・肺高血圧・下肢血管の治療に熟練した医師と、心エコー・心臓CT・心臓MRI・心筋シンチなどの画像診断のスペシャリストが一致団結して診断と治療にあたっています。高度救命救急センター、心臓血管外科と協力の上、重症患者の治療も行っています。

全国に先駆け開設された心不全センターでは、広島県内近郊に回復期リハビリテーションを実施する心臓いきいきセンターを整備し、多職種で協力して心不全に対する包括的治療を行っており、厚生労働省のモデル病院になっています。また中国地方で初めて『脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業』に採択され、今年からは広島県の事業となり、広島県全体で脳卒中・心臓病の診断・治療・社会復帰までより良いシステム作りを行っています。

重症心臓弁膜症を含む構造的心疾患については、全例、心臓CTおよび3D経食道心エコーを中心とした正確な術前評価がされています。ハートチーム多職種カンファレンスでの協議を経て、最善の治療戦略をご提案しています。TAVI(経皮的大動脈弁留置術)の専門施設、MitraClip🄬(経皮的僧帽弁接合不全修復術)の指導施設に認定されており、PASCAL🄬(経皮的僧帽弁接合不全修復術)も使用可能で全国トップクラスの症例数を誇ります。PTMC(経皮的僧帽弁交連裂開術)、経皮的卵円孔開存閉鎖術、経皮的左心耳閉鎖術も行っています。

狭心症については、心筋シンチや冠血流予備量比(FFR)測定、FFR CTやFFRangioなどを用いて心筋虚血の評価を十分に行い、複雑な冠動脈病変については心臓血管外科と協議のうえ治療方針を決定しています。カテーテル治療に加えて、慢性期治療として心臓リハビリテーションや薬物療法の見直しによる2次予防にも力を入れ、包括的治療を行っています。通常の冠動脈形成術以外にもロータブレーター、IVL(ショックウェーブ)、エキシマレーザー、DCA(方向性粥腫切除術)治療も可能です。

不整脈治療においては、全国トップクラスの実力を有しています。スタッフも充実し、最新の機器を使用して最先端の治療を行っています。経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)については、現在使用可能な3種類の3Dマッピングシステムすべてを装備しており、高周波カテーテルアブレーションに加え、バルーンアブレーションも使用可能で、今後パルスフィールドも導入予定です。突然死の原因となるブルガダ症候群やQT延長症候群など、遺伝性致死的不整脈の突然死予測のためのリスクの層別化や遺伝子診断による個別化治療なども行っています。心室頻拍など重症不整脈の薬物療法、カテーテル治療やデバイス治療も積極的に行っており、他院で治療困難な重症例の治療にも取り組んでいます。デバイス治療にも力を入れており、植え込み後は、遠隔モニタリングを用いて患者さんの状態を常に把握し、アフターケアも万全です。島しょ部や遠隔地との連携にも役立っています。県内で唯一のレーザーシースを用いたリード抜去可能施設であり、デバイス感染によりリード抜去が必要な場合には、当院で受け入れを行っています。

内分泌・糖尿病内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 手術・処置等2 1あり

65

12.12

13.77 

3.08

66.83

100180xx99000x 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

20

5.25

5.35 

0.00

59.90

100250xx99x21x 下垂体機能低下症 手術なし 手術・処置等2 2あり 定義副傷病あり

18

7.39

7.07 

0.00

66.22

100180xx991xxx 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり

16

6.06

3.88 

0.00

56.44

100220xx99x0xx 原発性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺腫瘍 手術なし 手術・処置等2なし

12

2.25

6.43 

0.00

67.00

内分泌・糖尿病内科では、外来通院では血糖管理の難しい方、そして当院での手術が予定され厳格な血糖管理が必要な方などを対象に入院による糖尿病治療を行っています。細小血管症(眼・腎臓・神経)や動脈硬化症(脳・心臓・下肢)の合併症精査も同時に行います。併せて、糖尿病療養指導士の資格を持った看護師や管理栄養士・理学療法士・薬剤師など多職種に渡るチーム体制のもと、糖尿病専門医の責任下に糖尿病教育にも力を入れています。また、持続血糖モニター(CGM:continuous glucose monitoring)や間歇スキャン式持続血糖測定器による詳細な血糖プロファイルの管理、CGM機能付きインスリンポンプの導入も積極的に行っています。

副腎腫瘍は、CTなどの腹部画像検査を行った方の1%程度に認められ、決して稀な疾患ではありません。副腎腫瘍のうち悪性が疑われる、またはホルモン過剰産生を示す際に手術適応となります。ホルモン過剰産生を示す代表的な疾患として、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫などがあげられますが、手術加療により生命予後が大幅に改善されます。当院では、副腎腫瘍に対する精査を積極的に実施しており、副腎腫瘍の早期診断・早期加療に努めています。

下垂体は、体の多様な機能維持に必要な様々なホルモンを分泌しています。特に最近では悪性腫瘍への免疫チェックポイント阻害薬投与後に下垂体ホルモンが減少する下垂体機能低下症の発症が増えています。当院では下垂体機能低下症の早期診断に関する精査、早期加療を積極的に行っています。

原発性副甲状腺機能亢進症は、頚部の副甲状腺に発症する疾患で、過剰に分泌されたホルモン(PTH)が高Ca血症や骨粗鬆症、腎障害を引き起こします。診断が難しい場合があり、当科では入院検査を含め複数の検査を実施し、正確な診断に努めています。各合併症の検査も行い、手術治療が適切か、保存的治療が適切かの治療方針決定にも寄与しており、診断・治療選択の面で積極的に関与しています。

腎臓内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
110280xx991xxx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1あり

48

4.52

6.01 

0.00

48.10

110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

34

10.59

11.35 

0.00

66.03

110280xx9901xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2 1あり

16

11.25

13.75 

12.50

69.56

110260xx99x0xx ネフローゼ症候群 手術なし 手術・処置等2なし

10

11.30

19.53 

0.00

53.70

110290xx99x0xx 急性腎不全 手術なし 手術・処置等2なし

10

9.90

13.54 

10.00

71.90

腎臓内科では、検尿異常から末期腎不全まで、腎臓疾患全般にわたり幅広い診療を行っています。
尿検査でたんぱく尿が陽性の場合、腎臓に何らかの病気があることが疑われます。たんぱく尿は糸球体腎炎などの腎臓の病気で陽性になります。糖尿病や高血圧などの生活習慣病も腎臓に負担がかかり、たんぱく尿が陽性になることがあります。たんぱく尿が陽性でも、ほとんどの場合は自覚症状がありません。しかし、放置すると腎機能が低下して透析や腎移植が必要な末期腎不全になってしまう危険があります。また、たんぱく尿が陽性の人は心筋梗塞や脳卒中、死亡のリスクが高いことが分かっています。
尿潜血が陽性の場合、糸球体腎炎などの腎臓の病気、腎結石、腎臓や膀胱の癌などの泌尿器科の病気が隠れていることがあります。
健康診断や病院では、血液検査でクレアチニンというたんぱく質の濃度を測定し、さらに年齢と性別からeGFRを計算して、腎機能を評価します。eGFRが低いほど腎臓の働きが低いと診断され、その値は腎臓の働きが「正常に比べておよそ何%か」を表しています。腎臓の働きが正常に比べて60%未満にまで低下している人は、末期腎不全、心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスクが高いことが分かっています。
腎臓内科では、検尿異常や腎機能異常を認める患者さんに対し、尿検査、血液検査、画像検査、腎生検などの検査を駆使して正確な診断をつけ、治療方針を立てます。検尿異常や腎機能異常のために行う腎生検は年間100件以上行っており、安全に検査を行うことが出来るように心がけています。
遺伝が関係する腎臓疾患の診察にも対応し、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対するトルバプタン(サムスカ)治療、ファブリー病に対する酵素補充療法なども行っています。
腎臓の病気は治りにくいという印象があるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。過去、数十年にわたる医学の進歩により、病気の進行を相当におさえることが可能となっています。腎臓の病気は薬だけで治すものではなく、適切な食事・飲水、体重の管理、運動や安静、睡眠など、日々の過ごし方が重要な意味を持ちます。
腎臓の働きが悪くなると、体内に尿毒素がたまり、貧血をきたし、過剰な塩分や水分がたまって浮腫や高血圧の原因となります。さらにひどくなると食欲が低下し、肺に水がたまって呼吸が苦しくなることもあります。この状況が末期腎不全であり、生命を脅かす危険があります。
日本では毎年3万人以上の患者さんが腎不全のために血液透析、腹膜透析、腎移植いずれかの治療法を新たに必要としています。日本では諸外国と比べて腹膜透析を選択される患者さんが少ないのですが、医療施設で腹膜透析の情報を十分に提供できていないことが原因と考えられます。腹膜透析は治療のために拘束される時間と通院回数が少ない、食事制限が比較的緩やか、といった長所があります。腎臓内科では患者さんの価値観やライフスタイルを尊重し、3つの治療法のうちどの方法が患者さんに適しているかを一緒に考えます。

救急集中治療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒) 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

37

2.35

3.58 

21.62

39.59

160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

19

5.00

7.99 

42.11

51.68

160690xx01xxxx 胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む。) 脊椎、骨盤脱臼観血的手術等

17

19.00

30.34 

76.47

60.65

180010x0xxx3xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等23あり

17

27.59

30.29 

70.59

69.18

160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

16

9.88

9.83 

50.00

57.19

救急集中治療科は、広島大学病院の高度救命救急センター(集中治療室(ICU)、救急ケアユニット(ECU))およびハイケアユニット(HCU)における診療を担っています。高度救命救急センターとは、極めて重症度や緊急性の高い病気や外傷(ケガ)を幅広く治療する医療施設です。当施設は広島県で唯一の「高度救命救急センター」として認定を受けており、地域の最重症の救急患者を集約化して診療しています。また、院内で他疾患の診療経過中などに発生した重症患者の集中治療を行っています。

高度救命救急センターでは、24時間体制で専属の医師(救急科専門医/集中治療専門医)が常駐し、交通事故や災害による重症外傷、急性呼吸不全(急性呼吸窮迫症候群、重症肺炎、間質性肺炎)、急性心不全(急性心筋梗塞、急性心筋炎、重症不整脈)、重症感染症(敗血症、軟部組織感染症、髄膜炎)、脳卒中(脳出血、クモ膜下出血)、けいれん、急性肝不全、急性腎不全、消化管出血(吐血、下血)、熱中症、多臓器不全など、多彩な疾患の診療を行っています。その他、他の医療機関では治療が困難な広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊疾患も受け入れています。重症の患者に対しては、人工呼吸器、体外式心肺補助(ECMO)、血液透析、血漿交換、大動脈内バルーンパンピング、心臓ペーシング、補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)など、様々な先進医療機器を用いて最善の医療が提供できるよう努めています。2020年からの新型コロナウィルス病(COVID-19)の流行に伴い、人工呼吸やECMOを必要とする最重症のCOVID-19患者を広島県全体から集約化して受け入れています。このような重症・特殊な疾患や外傷に対応するために、多様な専門分野を持った救急集中治療医が中心となり、各専門診療科の医師・看護師・薬剤師・理学療法士・臨床工学技士・管理栄養士などの多職種で構成されるチームを構成し、力を合わせてひとつひとつの命を丁寧に救っていくことを目標としています。

DPC主要疾患に挙げられた各病態において特筆すべきは、在院日数が全国平均よりも短いことです。これは、上述のような専門医と多職種チームの連携によるきめ細かな診療に加え、最小限の侵襲により最大限の救命と早期の回復を目指すという無駄のない診療が功を奏している結果であると考えられます。なお、現行のDPC制度における今回の集計方法では、救急集中治療科から他の診療科に転科となった患者さんや、他の診療科と併診している患者さんの数が含まれないので、救急集中治療科としての診療実績が正確に反映されていないことにご注意ください。

敗血症:肺炎や尿路感染症、腹膜炎など様々な感染症が原因となり発症する急性の多臓器障害を敗血症と呼びます。敗血症は致死率が30%にも及ぶ重篤な感染症の病態です。感染症指導医資格を有する救急科専門医が中心となり、最新のエビデンスに基づいた人工呼吸管理、血液浄化療法などの臓器機能代替療法、循環作動薬や抗菌薬などを用いた急性期の総合的集中管理を行うことにより救命率の向上を目指しています。

重症多発外傷(頭部外傷を含む):交通事故、転落などにより受傷した生命に危険が及んでいる重症多発外傷に対し、様々な外科系専門診療科と連携して治療を行っています。特に四肢・脊椎外傷については四肢外傷再建科の専属医師が高度救命救急センターへ常駐し、救肢および機能予後を考えた集学的治療の充実を図っています。

呼吸不全:様々な原因により発生する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療を中心に、幅広く人工呼吸を要する呼吸不全の治療を行っています。COVID-19に伴うARDSも多く受け入れています。呼吸器科専門医や呼吸療法専門医資格を持つ救急科専門医が中心となり、最新のエビデンスを取り入れた人工呼吸療法に加え、人工呼吸器のみでは治療困難な最重症呼吸不全に対して、体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた先進医療も行っています。また、早期の人工呼吸器離脱や早期離床のためのリハビリテーションにも力を入れ、速やかに亜急性期における回復に進んでいくよう援助しています。

重症熱傷:県内唯一の日本熱傷学会熱傷専門医認定施設として、重症熱傷を積極的に受け入れ皮膚科との協力の下、集学的治療を行っています。

小児重症患者:広島県にはこども病院、小児救命救急センター、小児集中治療室(PICU)がありません。当科では人工呼吸やECMOが必要な重症の小児を集約化して治療する仕組みを近隣病院との連携の中で作り、小児救急の専門医資格を持つ救急医を中心に小児科医と共に診療を行っています。

血液内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
130030xx99x5xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等2 5あり

34

18.65

19.30 

2.94

67.97

130010xx97x2xx 急性白血病 手術あり 手術・処置等2 2あり

23

32.57

35.63 

13.04

48.43

130030xx97x50x 非ホジキンリンパ腫 手術あり 手術・処置等2 5あり 定義副傷病なし

23

25.83

27.53 

4.35

65.04

130030xx99x6xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等2 6あり

22

8.55

15.67 

0.00

60.55

130030xx99x7xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等2 7あり

16

12.38

12.54 

6.25

72.13

血液内科では、あらゆる血液疾患の診療が可能ですが、特に白血病やリンパ腫・骨髄腫などの造血器悪性腫瘍の治療に力を入れており、関連診療部門との緊密な連携体制のもと、新規治療薬の臨床試験(治験)と造血幹細胞移植を積極的に行っています。また、中四国地方におけるHIV/エイズ診療拠点病院としての役割も担っています。
造血器疾患の治療成績は年々向上していますが、依然として治癒をもたらすことが難しい病気も多く存在しています。また、必ずしも治癒を目指さなくても、QOLの高い生活を維持することが可能な場合もしばしばあります。したがって、私たちの診療科では、納得のいく医療を受けていただくために、患者さんやそのご家族との「対話」を最も重視しています。患者さん・ご家族の不安や疑問に時間をかけてお答えしていきたいと考えていますので、ご病状・診療方針についてお尋ねになりたいことがありましたら、何でもお気軽にご相談下さい。
①130030xx99x5xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等25あり
非ホジキンリンパ腫に対して、リツキシマブやG-CSFという薬剤を使用して治療を行った患者さんの入院数を表しています。
②130010xx97x2xx 急性白血病 手術あり 手術・処置等22あり
急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病に対して、当科で検査を行い診断し、寛解導入療法などの強力な化学療法や輸血を行った患者さんの入院数を表しています。
③130030xx97x50x 非ホジキンリンパ腫 手術あり 手術・処置等2 5あり 定義副傷病なし
当院で生検を行い、そのまま非ホジキンリンパ腫に対してリツキシマブやG-CSFという薬剤、輸血を用いて治療を行い、かつ、敗血症の続発を伴わなかった患者さんの入院数を表しています。
④130030xx99x6xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等26あり
非ホジキンリンパ腫に対して、メトトレキセート大量療法という治療法を使用して治療を行った患者さんの入院数を表しています。
⑤130030xx99x7xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等27あり
非ホジキンリンパ腫に対して、サリドマイド系の免疫調整薬や、BTK阻害剤という分子標的薬を使用して治療を行った患者さんの入院数を表しています。

麻酔科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
010120xx99xxxx 特発性(単)ニューロパチー 手術なし

10

2.00

5.54 

0.00

67.20

010111xxxxx0xx 遺伝性ニューロパチー 手術・処置等2なし

-

-

12.00 

-

-

010310xx97x0xx 脳の障害(その他) 手術あり 手術・処置等2なし

-

-

18.41 

-

-

060030xx99x0xx 小腸の悪性腫瘍、腹膜の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2なし

-

-

7.67 

-

-

060040xx99x00x 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

-

-

9.44 

-

-

麻酔科では、三叉神経痛などの神経障害性疼痛に対する神経ブロック目的の入院が大半を占めています。施術翌日退院のため、平均在院日数は2日が多くなっています。

消化器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術

265

2.34

2.57 

0.00

66.00

060050xx99000x 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

177

7.25

8.13 

1.13

72.49

060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術

166

4.59

7.45 

0.00

71.05

060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

141

8.47

8.88 

5.67

69.31

060050xx03xxxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等) 選択的動脈化学塞栓術

115

8.94

10.22 

0.00

75.23

消化器内科では、各臓器別に専門性の高いチーム医療を行っています。

消化管領域では、日本および世界で最先端の消化器内視鏡診断と治療を行っており、その実績は国際的にも評価されています。食道癌・胃癌・大腸癌などの消化管腫瘍、小腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病など多岐にわたる消化管疾患に対する治療を行っています。

肝臓領域では、急性・慢性肝炎、肝硬変、肝癌など、あらゆる肝疾患を対象として最先端の診断・治療を行っています。予後不良な肝不全、肝硬変、門脈圧亢進症に対する薬物療法、内視鏡的治療、栄養療法などの包括的な治療や、難治性の進行肝癌に対する新しい薬物療法を中心とした集学的治療に積極的に取り組んでいます。

膵臓・胆道領域では、膵臓癌・胆道癌などの悪性腫瘍を中心として、自己免疫性膵炎やIgG4関連硬化性胆管炎などの炎症性疾患、良性疾患である胆石や膵石、膵のう胞など、様々な疾患に対する診断・治療(内視鏡的・経皮経肝的治療や化学療法など)を行っています。特に内視鏡を用いた超音波内視鏡(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連手技を積極的に施行し、良性・悪性疾患の早期診断や治療に努めています。

消化器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
060050xx020xxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) 肝切除術 部分切除等 手術・処置等1なし

81

15.32

13.83 

2.47

71.73

060035xx0100xx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし

71

14.01

14.81 

1.41

69.10

06007xxx9905xx 膵臓、脾臓の腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2 5あり

69

6.86

6.74 

1.45

73.81

06007xxx97x0xx 膵臓、脾臓の腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし

58

6.60

11.52 

5.17

70.19

060010xx99x40x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。) 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病なし

56

9.59

8.61 

0.00

70.64

消化器外科では、食道・胃から大腸・肛門に至る全ての消化管と、肝臓・胆道・膵臓を主な対象として、悪性疾患や難治性疾患を中心に高度な外科医療を提供しています。

臓器別のキャンサーボードにより、内科や放射線科など他診療科や多職種医療従事者間で協議の上で治療方針を決定し、患者さんに最先端・最高レベルの外科医療を提供することを心がけています。

病態を正確に把握することにより、根治性と低侵襲を両立します。可能な限り低侵襲で、可能な限り根治性を求めて摘出あるいは再建し、手術による不利益を最小限にとどめることを目指しています。内視鏡手術を推進し、多くの日本内視鏡外科学会の技術認定医を養成しています。2024年現在保険適用となっているロボット支援下内視鏡手術(食道、胃、直腸、肝臓、 膵臓)を施設内で適応基準を設け、有効性および安全性に対して評価を重ねながら施行し、症例を蓄積しています。また、消化器外科関連専門医および指導医が多く在籍し、 消化器外科専門医をはじめとした、 各領域の専門医育成を行っています。決して妥協しない姿勢で難治癌の研究に取り組み、新しい治療法の開発に努めています。

リウマチ・膠原病科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
070560xxxxx00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

29

11.90

14.93 

3.45

60.24

070470xx99x2xx 関節リウマチ 手術なし 手術・処置等2 2あり

11

4.18

16.42 

0.00

61.00

070470xx99x3xx 関節リウマチ 手術なし 手術・処置等2 3あり

-

-

10.76 

-

-

070560xxxxx01x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 手術・処置等2なし 定義副傷病あり

-

-

24.07 

-

-

040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし

-

-

20.78 

-

-

リウマチ・膠原病科では、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、炎症性筋疾患、血管炎症候群、成人発症スチル病などの難治性膠原病患者の入院が多く、グルココルチコイド療法、免疫抑制療法、血漿交換療法を行っています。膠原病は間質性肺炎、腎炎、血球貪食症候群などの複数臓器障害をきたす病気ですので、関連診療科と密に連携をとり、質の高い医療の実践に努めています。退院後は当院もしくは関連施設で、引き続き専門医による外来管理を行っており、急変時においても適切な対応ができる体制を構築しています。また、近年では治療技術の進歩により、多くの膠原病・リウマチ性疾患に対して抗体製剤やJAK阻害薬などの分子標的治療薬の使用が増えています。患者さんの安全な治療のため、新規薬剤導入目的の入院が増えています。

がん化学療法科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
180050xx99x1xx その他の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 1あり

38

9.21

11.79 

0.00

69.58

03001xxx99x40x 頭頸部悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病なし

18

7.28

8.80 

0.00

45.11

040010xx99x30x 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 3あり 定義副傷病なし

16

7.19

8.06 

0.00

56.31

070041xx99x3xx 軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く。) 手術なし 手術・処置等2 3あり

14

9.36

8.66 

0.00

60.86

060030xx99x30x 小腸の悪性腫瘍、腹膜の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 3あり 定義副傷病なし

11

7.55

5.10 

0.00

74.09

がん化学療法科では、化学療法全般を行っており、主に原発不明がんや軟部肉腫、胚細胞腫瘍、胸腺腫・癌、副腎癌、小腸癌、神経内分泌腫瘍・癌などの希少がんや中心に、あらゆる臓器原発のがんを対象としています。特に、原発不明がんや希少がんの化学療法は標準治療も少なく、有益とされる化学療法であっても使用する薬剤が保険適用外となる場合が多く存在します。該当する化学療法においては、院内に設置された未承認新規医薬品等審査部・未承認新規医薬品等評価委員会の十分な審議を経て承認を受けた治療を、患者さん・ご家族や保険審査機関にも十分な説明を行いながら実施しています。また、重複癌など治療に難渋する症例やがんゲノム検査に基づく臓器横断的な化学療法も行っています。

総合内科・総合診療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし

12

17.08

20.78 

50.00

84.58

110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし

12

13.58

13.66 

58.33

77.92

0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2なし

-

-

16.40 

-

-

070560xxxxx00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

-

-

14.93 

-

-

180010x0xxx0xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2なし

-

-

20.06 

-

-

総合内科・総合診療科では、他院や他科から紹介された診断困難症例や、救急患者として入院となった何らかの急性期の病態の方に対して、入院の担当をすることが多くあります。中でも診断困難事例であれば、発熱や炎症の原因が不明な病態が多く、稀な悪性リンパ腫や血管炎の診断に至ることが多いです。これらはそれぞれが非常に稀で、同じ疾患という結論になることは少なく、これまでは各DPCコードの患者数が二桁に上ることはありませんでした。しかしながら高齢者の増加に伴い、大学病院でも高齢者救急の一端を担う機会が徐々に増えてきています。その結果、後者の救急患者の占める数が増え、今年度から誤嚥性肺炎や尿路感染症といったDPCコードの患者数が12人ずつという集計結果となりました。高齢者救急の入院数は、本年の対象期間以降も増加しており、今後も患者数の増加が見込まれます。

乳腺外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等1なし

166

8.51

9.77 

1.81

60.20

090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)

87

4.54

5.50 

0.00

58.80

090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし

13

4.62

6.48 

0.00

55.92

090010xx99x0xx 乳房の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2なし

13

8.08

9.75 

15.38

59.85

090020xx97xxxx 乳房の良性腫瘍 手術あり

-

-

3.94 

-

-

乳腺外科では、早期乳癌に対して根治を目的とした外科治療を行っています。乳房手術としては乳房部分切除術または乳房切除術を、腋窩手術としてはセンチネルリンパ節生検術または腋窩リンパ節郭清術を施行しています。乳房切除術を施行された患者さんで乳房再建を希望される場合には、同時再建術も行っています。本データはDPCに基づく入院治療症例を対象としており、乳房温存手術やセンチネルリンパ節生検術が行われる患者さんについては5日前後の入院期間を基本とし、乳房切除術や腋窩リンパ節郭清術が行われる場合には10日前後の入院を基本としています。乳房再建術を併施する場合でも、多くの症例が術後2週間以内に退院しており、全国平均と比較しても短期間の在院日数で安全に周術期管理が行われています。

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初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数

5大癌(胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌)について、国際対がん連合(UICC)によって定められたTNM分類別の初発患者数を集計し、延患者数、期間内の再発患者(再発部位によらない)を示しています。

【 TNM分類 】
国際対がん連合(UICC)によって定められた病期分類です。原発巣(癌が最初に発生した場所にある病巣)の大きさと進展度(T)、所属リンパ節への転移状況(N)、遠隔転移の有無(M)の要素によって各癌を0期~IV期の5病期(ステージ)に分類するものです。

  初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌

  104

  12

   -

23

  99

20

1 第8版
大腸癌

71

42

42

56

65

18

1 第8版
乳癌

115

94

17

12

-

21

1 第8版
肺癌

201

47

100

171

87

211

1 第8版
肝癌

38

83

71

59

34

341

1 第8版

※病期分類基準  1:UICC TNM分類、2:癌取扱い規約

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成人市中肺炎の重症度別患者数等

成人市中肺炎の患者数を重症度別に集計し、患者数、平均在院日数、平均年齢を示しています。 

成人市中肺炎とは、病院の外で日常の生活を送っている人が感染し発症する肺炎のことです。20歳以上の患者さんを対象に重症度はA-DROPスコアを用いて評価し、1項目に該当すれば1点、2項目に該当すれば2点というように計算しています。

軽症 :0点の場合。
中等症 :1~2点の場合。
重症 :3点の場合。
超重症 :4~5点の場合。ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。
不明 :重症度分類の各因子が1つでも不明な場合。

【 A-DROPスコア 】

日本呼吸器学会が2005年に作成した成人市中肺炎診療ガイドライン(JRSガイドライン)で採用されている重症度分類です。

A(Age(年齢)) :男性70歳以上,女性75歳以上
D(Dehydration(脱水)) :BUN 21mg/dl以上または脱水あり
R(Respiration) :SpO2 90%以下(PaO2 60torr以下)
O(Orientation(意識障害)) :意識障害あり
P(Pressure(収縮期血圧)) :血圧(収縮期)90mmHg以下
  患者数 平均在院日数 平均年齢
軽症 15 10.13 56.67
中等症 69 13.17 72.32
重症 21 11.33 78.48
超重症 - - -
不明 - - -

肺炎による入院では、中等症が最も多く、年齢が上がるにつれて重症化率が高くなっています。

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脳梗塞の患者数等

脳梗塞(ICD10がI63$)の患者数を集計し、患者数、平均在院日数、平均年齢、転院率を示しています。

【 ICD10 】
世界保健機関(WHO)が世界保健機関憲章に基づき作成した、傷病に関する分類を表すコードです。International Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の略称で、世界の異なる国における傷病の状況を比較できることを目的とした標準的分類であり、第10回修正版を『ICD10』として呼称されます。

発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
- 56 15.5 73.77 48.00

脳梗塞の入院は年間56人で、発症から3日以内の入院が約8割を占めています。

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診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

実施された手術の術式別患者数を診療科別に集計し、上位5位までのKコード、術式名称、患者数、平均術前日数、平均術後日数、転院率、平均年齢を示しています。

【 Kコード 】
診療報酬医科点数表で定められた術式を表すコードです。このコードに基づいて診療報酬保険請求が行われます。

整形外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K0821 人工関節置換術 肩、股、膝

131

1.15

14.93

65.65

72.14

K079-21 関節鏡下靱帯断裂形成手術 十字靭帯

65

1.02

12.38

7.69

27.40

K0782 観血的関節固定術 胸鎖、肘、手、足

33

0.88

14.06

48.48

70.36

K082-7 人工股関節置換術(手術支援装置を用いるもの)

31

1.32

12.16

77.42

68.10

K1426 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 椎弓形成

31

1.77

12.32

9.68

70.68

K0821
<人工膝関節手術>
中高齢者の膝痛で最も多いのは、膝関節の中で関節軟骨がすり減る「変形性膝関節症」によるものです。保存療法を行っても膝痛が改善しない進行した変形性膝関節症に対しては、人工膝関節置換術が行われます。この手術では、膝の前面に切開を加えて関節を展開し、傷んだ膝の骨の表面を切り、大腿骨側と脛骨側に金属製の部品と摩耗に強いポリエチレン製の部品をはめて固定します。変形性膝関節症による膝痛が強い患者さんに対する治療として人工膝関節置換術を行うことは、世界中のガイドラインで推奨されています。

<人工肩関節手術>
変形性肩関節症は、退行性変化を基盤として関節軟骨が摩耗・欠損することにより、運動時痛や夜間痛、また可動域制限といった症状を呈します。手術は肩前方に約10cm程度の皮膚切開を加えて関節を展開し、上腕骨側には金属製の半球を、肩甲骨側にはポリエチレン製の受け皿を挿入します。また、2014年からは肩腱板断裂を起こした後で続発的に変形性関節症となる、いわゆるcuff tear arthropathyと呼ばれる変形性肩関節症に対応した人工関節も本邦で使用可能となっています。これは先ほどとは逆に肩甲骨側に金属製の半球を、上腕骨側にポリエチレン製の受け皿を挿入するのでリバース型人工肩関節と呼ばれています。

<人工股関節手術>
変形性股関節症は、骨盤あるいは大腿骨の形態異常により徐々に関節軟骨が摩耗・欠損して股関節に変形を来す病気です。骨盤や大腿骨の骨切り術などの関節を温存する手術が適応にならないほどに関節変形を来し、股関節痛が増強する場合に人工股関節置換術の適応となります。手術は、関節の前方あるいは後方から関節を展開して変形した骨を切除した後に、骨盤側には金属製カップを設置し、大腿骨近位部には金属製のステムを設置します。カップ内にポリエチレン製の受け皿がはまり、ステム先端に設置したセラミック製のボールが受け皿の中で摺れることにより関節が動きます。一般に良好な術後成績が報告されており、極めて有益な手術の一つと位置付けられています。

K079-21
前十字靭帯損傷は、サッカーやバスケットボールなどのスポーツをしている際、方向転換や片足着地などで膝を捻った時に受傷することが多い外傷です。前十字靭帯が損傷すると、関節の安定性が損なわれることで次第に不安定感を生じ、日常生活・スポーツに支障をきたすようになります。前十字靭帯は治癒能力が乏しいため、手術以外の方法で損傷した靭帯が十分な機能を保って治癒することはほとんどありません。そのため、日常生活において膝の不安定感に不自由する場合やスポーツ復帰を望まれる場合はもちろん、半月板や関節軟骨損傷の進行を防ぐためにも、自家腱(自分の体から採取した腱)移植による靭帯再建術が必要となります。移植材料としては、膝屈筋腱、骨付き膝蓋腱、大腿四頭筋腱などを用いることが多く、いずれも良好な成績が得られています。整形外科では、以前から膝屈筋腱もしくは大腿四頭筋腱を用いての靭帯再建術を行っています。その再建方法も、損傷した前十字靭帯の状態や膝屈筋腱の太さ、スポーツ活動量などに応じ、患者さんに合わせた解剖学的靭帯再建術や靭帯補強術を行っています。前十字靭帯の他、後十字靭帯損傷の場合も膝の不安定性が強ければ、同様に自家腱を用いて靭帯再建術を行います。

K0782
変形性関節症では、人工関節置換術を行うこともありますが、進行期、部位、患者さんの背景などを総合的に判断し、観血的関節固定術を行い痛みや関節機能の改善を図ることがあります。

K082-7
変形性股関節症に対して人工股関節置換術を行う際に、術中に光学的に計測した術野及び手術器具の位置関係をリアルタイムに表示し、寛骨臼及び大腿骨の切削を支援する手術支援装置を用いて手術を行います。これにより、より精度の高い手術を行うことが可能です。

K1426
脊椎の変性疾患において、黄色靱帯や骨棘の肥厚に伴い脊髄や馬尾が圧迫され神経症状を呈している場合に、椎弓を形成的に拡大し神経の除圧を行います。

形成外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K628 リンパ管吻合術

58

1.53

5.93

1.72

71.29

K476-4 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後)

21

1.05

4.90

0.00

55.10

K020 自家遊離複合組織移植術(顕微鏡下血管柄付きのもの)

11

1.18

8.55

0.00

61.64

K016 動脈(皮)弁術 、筋(皮)弁術

-

-

-

-

-

K0171 遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付きのもの) 乳房再建術の場合

-

-

-

-

-

K628
小さな傷からリンパ管と細静脈をつなぐ手術、リンパ管細静脈吻合(Lymphatico-venular anastomosis:LVA)を第一選択として行っており、優れた治療効果を出しています。
超微小血管外科(supermicrosurgery)の技術により、今までは不可能だった細い血管をつなげるようになり、体への負担が小さく優れた治療効果を有するLVAが可能となりました。手術前のリンパ管造影の所見をもとに、局所麻酔をして皮膚を2cmほど切って手術を行います。0.5mmほどのリンパ管と細静脈をみつけて、それらを切ってつなぐことでバイパスを作ります。LVAの吻合数が多いほど効果が高い傾向があることから、当科では複数の術者が同時にさまざまな場所で手術を行い(足首と太ももなどを同時に)、約4時間の手術時間内にできる限り多くの吻合を行います。局所麻酔のため手術中にも意識がはっきりしており、基本的には手術の映像をみてもらい、術者が手術の状況を説明しながら手術を行います。入院は約1-2週間で、手術前後は医師の指導通りの弾性ストッキングによる圧迫療法が必要となります。
                                                
K476-4
ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後)は、人工物を用いた乳癌術後乳房再建術です。施設基準があり本手術が可能な医師・施設が限られるため、当院ではこの領域の手術が多くなっています。

K020
形成外科で用いられる「血管柄付き遊離複合組織移植術」は、マイクロサージャリー技術を用いて、体内の他の部位から採取した皮膚、皮下脂肪、リンパ組織、筋肉、骨、などの複合組織を、付属する血管(動脈と静脈)と共に移植し、欠損部を再建する手術です。この手術は、移植した組織に栄養と酸素を供給し、生着させるために、移植された組織の血管と受け入れ側の血管を顕微鏡下でつなぐ(吻合する)ことが特徴です。
〈手術の目的〉外傷や腫瘍切除などによって生じた身体の組織の大きな欠損や変形を、機能的かつ形態的に改善するために行われます。
〈手技の概要〉組織の採取:移植する組織(皮膚、皮下脂肪、筋肉、骨など)と、それに付属する動脈・静脈を選んで採取します。血管の吻合(つなぎ合わせる):移植する組織の動脈と静脈を、受け入れ側の体の血管(動脈と静脈)に顕微鏡下でつなぎ合わせます。組織の固定と再建:移植した組織を欠損部に固定し、血管の吻合が成功していれば、移植した組織は生きた自家組織として定着します。
〈使用される技術〉マイクロサージャリー:直径0.3mmから3mm程度の非常に微細な血管や神経を顕微鏡下で扱う技術であり、血管柄付き遊離組織移植術には必須の技術です。
〈適用される疾患・状況〉リンパ浮腫、顔面神経麻痺、外傷による tissue(組織)の欠損、腫瘍(悪性腫瘍など)切除後の再建、先天的な欠損や変形の再建に用いられます。
この手術は、形成外科における代表的な手技の一つであり、高度なマイクロサージャリー技術を駆使して行います。

K016
形成外科における動脈皮弁、筋皮弁術は、血管を含んだ皮膚や皮下組織(組織の島)を移植する手術手技です。皮膚を島状に切り取った後、その血管を移植先の組織の血管と顕微鏡下でつなぐ(マイクロサージャリー)ことで、移植した組織に血流を再開させて生着させます。これは、大きな組織欠損や人工物が露出している部位など、様々な再建手術に用いられます。

K0171
形成外科で行われる「顕微鏡下での血管柄付き遊離皮弁術」は、腹部や背中などから皮膚や脂肪、筋肉などを血流を保ったまま採取し、胸部へ移植して乳房の形を作る手術方法です。移植する組織の血管と、移植先の血管を顕微鏡下でつなぎ合わせて血流を確保することが特徴です。

脳神経外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術 その他のもの

71

3.52

21.72

12.68

52.97

K1783 脳血管内手術 脳血管内ステントを用いるもの

24

2.33

6.04

4.17

64.96

K154-3 定位脳腫瘍生検術

23

3.61

25.17

8.70

62.70

K171-21 内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術 下垂体腫瘍

22

3.55

10.05

0.00

63.18

K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術

19

1.74

3.11

5.26

71.47

K1692 広島大学病院は、中国四国圏内のみならず全国的にみても脳腫瘍の治療件数の多い施設です。脳実質から発生するグリオーマの手術、頭蓋底に発生する腫瘍の手術、トルコ鞍近傍に発生する腫瘍の手術など多岐に渡ります。当院は「小児がん拠点病院」に指定されていますが、多いときには入院患者の1/3が小児脳腫瘍患者のこともあります。最近は顕微鏡下のみならず神経内視鏡も併用して手術を行っています。また、情報統合型手術室(スマート治療室、SCOT)も設置され、より正確で安全な手術の実施にむけて稼働しています。

K171-21 トルコ鞍近傍に発生する腫瘍に対して、鼻の孔を介し(経鼻的に)神経内視鏡を用いて腫瘍を摘出します。脳神経外科手術の中でも専門的な技術を必要としますが、開頭術と比べて低侵襲な腫瘍摘出が可能です。通常10-14日間の入院で手術を行い自宅退院可能です。対象疾患は主に下垂体腺腫で、頭蓋咽頭腫や髄膜腫などにも適応が広がっています。年間30-40件の手術を行っており、広島県のみならず県外からの患者さんも受け入れています。

呼吸器外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの

74

1.22

7.53

2.70

69.78

K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 区域切除

72

1.15

5.50

1.39

71.61

K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 部分切除

61

1.10

5.43

3.28

73.95

K504-2 胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術

11

1.00

4.00

0.00

53.36

K488-4 胸腔鏡下試験切除術

10

1.00

3.30

0.00

75.40

呼吸器外科では、多くの手術を胸腔鏡や手術支援ロボット(ダビンチ)を用いて行い、傷が小さく体にやさしい手術(低侵襲および術後肺機能温存)を目指しています。肺がんの手術は、がんができた袋(肺葉)を切除するのが標準ですが、小型の早期肺がんに対しては、肺の切除範囲を小さくした部分切除や区域切除を積極的に考慮し、切除に伴う体への負担軽減に配慮した手術選択を行っています。進行がんに対しては、手術前後に抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬、放射線治療などを単独もしくは複数の組み合わせで適切に追加し、再発制御に努めています。

心臓血管外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K554-21 胸腔鏡下弁形成術 1弁のもの

19

4.47

15.47

10.53

62.74

K5612ロ ステントグラフト内挿術 1以外の場合 腹部大動脈

17

2.18

9.65

0.00

77.88

K5551 弁置換術 1弁のもの

14

8.86

19.43

28.57

67.79

K5603ニ 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 上行大動脈及び弓部大動脈の同時手術 その他のもの

14

0.14

27.21

64.29

70.36

K555-22 経カテーテル大動脈弁置換術 経皮的大動脈弁置換術

13

2.54

9.46

0.00

84.77

心臓血管外科では治療法として、1)人工心肺を使用する疾患 2)人工心肺を使用しない疾患 の2つに大きく分けられます。人工心肺を使用するものの代表は、弁膜症手術と急性A型大動脈解離に対する手術です。人工心肺を使用しないものの代表は、ステントグラフト内挿術、腹部以下の大動脈及び末梢動脈手術、オフポンプ冠動脈バイパス術、下肢静脈瘤手術、透析用ブラッドアクセスの作成があります。いずれも症例数は県下有数であり、広島県のみならず中四国圏域から多くの患者さんを受け入れ、難易度の高い症例や複数の合併疾患を伴う症例を多く行っているのが特徴です。
以下に、上位5つの手術術式について説明をします。

胸腔鏡下弁形成術は、主に僧帽弁に対する術式です。当院では、僧帽弁閉鎖不全症に対する手術は基本的に、8cm程度の右側の小開胸での手術を行っています。僧帽弁を病変部切除縫合あるいは人工腱索を使用して、修復し、弁輪リングを当てる、という手術を行います。人工心肺は、鼠蹊部より挿入します。胸骨を切開しないため、術後の回復は早く、正中切開の手術よりも早く退院されることが多くなっています。

腹部大動脈瘤に対する術式は、開腹での人工血管置換術あるいは経皮的なステントグラフト内挿術があります。通常は開腹手術を行いますが、合併症があったり、全身状態が不良である場合は、ステントグラフト内挿術が選択されます。開腹という高い侵襲度を回避することができますが、縫合するわけではないため、隙間漏れしたり、分枝血管の閉塞をしたりすることがあり、人工血管置換術と同様の質が保たれない場合があるのが問題点です。しかし、開腹手術への抵抗感から、ステントグラフトを希望される患者さんが多くなっているのが現状です。

弁置換術には、主に大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術と、僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁置換術が含まれます。いずれの疾患も高齢化による増加から近年は横ばいの症例数で推移しています。弁膜症は、これら以外に、大動脈弁狭窄症に対するカテーテル大動脈移植術(一部循環器内科に計上されるものあり)や、僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術などがあり、むしろこちらの方が増加傾向です。

弓部大動脈の手術は、胸部大動脈瘤に対する術式としての弓部大動脈人工血管置換術と、急性大動脈解離に対する弓部大動脈人工血管置換術が主なものです。同時に上行大動脈にも病変が及んでいることが多いため上行・弓部大動脈手術として行うことが多いです。近年、前者はしばしば胸部ステントグラフトを併用する術式で行われます。後者について、上行大動脈人工血管置換術が従来の救命するための標準治療でしたが、当院の弓部置換術の治療成績が向上していることから、広島大学病院では上行・弓部置換術を行うことで遠隔期の治療成績向上および再手術回避に努めています。

経カテーテル大動脈移植術は、主に高齢者の大動脈弁狭窄症に対する術式で、開胸を必要とせず、初期成績は通常の弁置換術と変わらないが、むしろ入院日数が短く、QOLの改善に寄与しています。長期成績が不明ということもあり、若年者に対する適応には慎重です。

小児外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側)

58

0.26

1.05

0.00

3.55

K6333 ヘルニア手術 臍ヘルニア

14

0.07

1.00

0.00

1.93

K836 停留精巣固定術

12

0.00

1.08

0.00

2.25

K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む。)

11

0.64

4.45

9.09

5.18

K809-2 膀胱尿管逆流手術

-

-

-

-

-

小児外科では、一般的な「日常疾患」と呼ばれる疾患を治療する他、非常に様々な分野、臓器の手術を数多く行っています。中四国唯一の小児がん拠点病院である広島大学病院の特徴として、小児固形腫瘍(神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、奇形腫など)の手術、胸部・呼吸器疾患の手術、胆道閉塞症や胆道拡張症などの肝胆道系手術、ヒルシュスプルングなどの腸管手術、尿管下裂や精巣捻転などの泌尿器系手術など、非常に多岐にわたる手術を行っています。2024年からは小児生体肝移植が実施可能となるよう準備を進めています。

鼠径ヘルニア及び精索水腫に対する手術は、男児・女児ともに腹腔鏡下手術を基本術式として行っています。鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術では、現在症状のない反対側のヘルニアも術中に有無が確認でき、もし反対側にもヘルニアが存在すれば同時に治療が可能であるため、将来的に再度手術を行うリスクを減らすことができるという大きなメリットがあります。そのため最近では、腹腔鏡手術を希望し来院される方が増え、症例数も増加しています。最近では共働き世帯が増加しているため、鼠径ヘルニア手術ではなるべくご家族の負担を軽減するために1泊2日入院での手術を進めています。平均術前日数は0.26日となっており、ほとんどの患者さんで達成することができました。その分、ご家族が仕事を休んだり兄弟姉妹を別々に監護する負担が減るため、ご家族の満足度は高まっています。その他の停留精巣や臍ヘルニアに関しても同様に平均術前日数が激減しており、最近の取り組みの成果であると考えています。
停留精巣は男児において生下時より精巣が陰嚢内に触知しないという疾患であり、将来的には不妊や精巣腫瘍の原因となります。手術の不要な移動性精巣との鑑別はしばしば難しく、専門施設での診察が勧められます。診断がつけば、1歳~1歳半を目安に精巣を陰嚢に固定する手術を行います。
臍ヘルニアはいわゆる「でべそ」ですが、日本人の約4~10%が臍ヘルニアであるとされ、小児では特に社会生活上問題になることがあります。当科では臍内部切開と筋膜への臍皮膚の引き込みを併用して、外部から全く創が分からず、凹みも良好な臍の形成を伴う臍ヘルニア手術を行っています。

小児は成人と比較して救急疾患における急変の危険性が高いため、速やかに検査及び手術を行う必要があります。当科では広島における小児の夜間救急病院と綿密な連携を行うことにより、救急疾患の患者さんを速やかに搬送していただき、手術へとつなげることができるようになりました。その結果として救急疾患の手術が増加しており、これは広島において昨年までよりもより速やかに、手術が必要な小児に対して治療が行われるようになってきていることが示されています。

産科婦人科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの

70

1.00

4.80

0.00

38.91

K877-2 腹腔鏡下腟式子宮全摘術

64

1.02

4.31

0.00

49.36

K879 子宮悪性腫瘍手術

54

1.85

9.80

0.00

59.30

K8982 帝王切開術 選択帝王切開

47

1.34

6.91

0.00

33.72

K861 子宮内膜掻爬術

44

0.57

1.34

0.00

45.27

【産科】
・当院は周産期専門医認定施設の基幹施設であり、ハイリスク妊娠・分娩を主に取り扱っています。妊娠高血圧腎症や胎児発育不全、前置・低置胎盤などの産科合併症症例を多く取り扱っています。
・通常の帝王切開や緊急帝王切開に加えて、超緊急帝王切開(決定から30分以内に施行)を麻酔科、手術室、小児科、NICUと連携して行っています。
・ハイリスク妊娠・分娩の受け入れにより帝王切開術の件数は増えていますが、双胎経腟分娩や医学的適応での無痛分娩も行っており、大学病院の特性を活かした妊娠・分娩管理を行っています。
・弛緩出血や子宮型羊水塞栓などの産後大量出血による救急搬送にも対応しています。緊急動脈塞栓術を行うことが可能で重症度に応じてICUでの管理を行っています。
【婦人科】
・当院はがん診療連携拠点病院であり、婦人科がんに対する集学的医療を行っています。婦人科腫瘍専門医、産婦人科内視鏡技術認定医を中心に適応症例の検討を行い、治療に取り組んでいます。また日本婦人科腫瘍学会指定修練施設として、修練医の指導・教育にも力を入れています。
・子宮頸癌に対しては、広汎子宮全摘出術を施行しており、根治性を保ちつつ神経温存手術も含めた質の高い手術を行っています。
・子宮体癌に対しては、根治性を保ちつつ腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を積極的に行い、2020年度以降増加傾向で維持しています。また2021年度からはロボット支援下子宮悪性腫瘍手術(子宮体癌)も行っています。鏡視下手術を積極的に取り入れつつ、開腹手術も含めて適切な手術選択を心がけています。
・卵巣癌に関しては、手術と化学療法による集学的治療が必要であり、進行症例に対しては審査腹腔鏡を積極的に導入し、無益な開腹手術を避け、十分な組織採取による診断やがんゲノム医療を行っています。診断後は早期に化学療法を行い、腫瘍減量術につなげています。
・婦人科癌に対しては、診断や治療目的に傍大動脈リンパ節郭清も積極的に行っています。
・腹腔鏡手術につては、日本産科婦人科内視鏡学会の認定修練施設を維持しながら、当科で定めた適応に準じて腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を積極的に行っています。
・良性疾患である附属器腫瘍、子宮内膜症、卵巣腫瘍茎捻転などに対する子宮附属器腫瘍摘出術は、緊急症例も含め積極的に腹腔鏡手術で行っています。また、子宮筋腫などの良性の子宮疾患に対する腹腔鏡下腟式子宮全摘術や、子宮腺筋症に対する手術も行っています。
・遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)に対するリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を行っています。
・子宮内病変に対しては、診断・治療目的に子宮鏡手術(シェーバー式)や子宮内膜全面搔爬術を行っています。
・骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)やロボット支援下仙骨腟固定術(RSC)も積極的に行っており、症例数は増加傾向です。
・帝王切開子宮瘢痕症に対する、腹腔鏡下手術や子宮鏡下手術も行っています。

眼科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K2821ロ 水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合 その他のもの

423

0.27

0.99

0.47

73.59

K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術 網膜付着組織を含むもの

361

0.57

4.75

0.28

62.74

K2683 緑内障手術 濾過手術

300

0.97

5.75

0.33

71.67

K2802 硝子体茎顕微鏡下離断術 その他のもの

159

0.62

3.09

3.14

67.98

K2684 緑内障手術 緑内障治療用インプラント挿入術(プレートのないもの)

127

0.97

2.17

0.00

74.35

K2821ロ 水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合(その他のもの)
当院での白内障手術は、通常の白内障に対するもののほか、難治性の白内障や先天性の小児白内障、あるいは緑内障や網膜疾患を治療するため、角膜移植の準備のために行っています。

K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含むもの)
黄斑上膜、黄斑円孔、高度増殖を伴わない糖尿病網膜症、裂孔原性網膜剥離などに対する手術です。

K2683  緑内障手術(濾過手術)
緑内障の末期や重症例では、眼圧を十分かつ確実に下げる必要があります。濾過手術はそのための術式です。

K2802 硝子体茎顕微鏡下離断術(その他のもの)
硝子体出血や硝子体混濁などを対象とした手術です。

K2684 緑内障手術 緑内障治療用インプラント挿入術(プレートのないもの)
主に中期の緑内障、あるいは流出路再建術が無効な緑内障に対して必要な術式です。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K374-2 鏡視下咽頭悪性腫瘍手術(軟口蓋悪性腫瘍手術を含む。)

74

1.42

11.88

0.00

68.61

K368 扁桃周囲膿瘍切開術

25

0.12

4.80

0.00

37.28

K4691 頸部郭清術 片側

24

1.42

8.04

0.00

63.71

K020 自家遊離複合組織移植術(顕微鏡下血管柄付きのもの)

22

2.68

38.68

4.55

64.05

K328 人工内耳植込術

20

1.10

3.05

0.00

52.45

耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、耳、鼻、口腔咽頭および頸部の良性から悪性疾患まで、様々な手術に対応できる人材、育成システムを構築しています。さらに最先端の器機の導入と手術技術の向上に日々励んでいます。また広島市医療圏の救急医療を支える大きな一翼を担っています。
良性あるいは炎症性疾患に対する手術として、慢性扁桃炎(扁桃周囲腫瘍)やIgA腎症(扁桃病巣感染)、睡眠時無呼吸症候群などに対して行う口蓋扁桃手術、あるいは慢性副鼻腔炎、鼻腔腫瘍などに対して行う内視鏡下鼻・副鼻腔手術などが挙がっています。近年、疫学的増加と難治化が我が国でも問題となっている好酸球性副鼻腔炎(指定難病)の症例数も増加しています。また悪性疾患に対する手術として、低侵襲の経口切除を主体とした咽頭悪性腫瘍手術が挙がっています。本疾患にはロボット支援下手術術式が保険適応となっています。また、光免疫療法(アルミノックス)治療も常勤認定医が症例を選び、施行しています。
これら以外にも悪性腫瘍に対する再建手術を必要とする拡大手術、甲状腺腫瘍に対する内視鏡手術、内視鏡を用いた経外耳道内視鏡耳科手術(TEES)、高度難聴に対する人工内耳埋め込み術、嚥下障害に対する嚥下改善手術や誤嚥防止手術、音声障害に対する咽頭形成術、頸部腫瘍などの急性感染症に対する救済手術なども行っています。

当院は、
〇一般社団法人 日本鼻科学会認定 手術指導医制度 認可研修施設
〇一般社団法人 日本耳科学会認定 耳科手術指導医制度 認可研修施設
〇特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会認定 頭頸部がん専門医制度 指定研修施設
〇一般社団法人 日本アレルギー学会 アレルギー専門医教育研修施設
であり、専門性の高い手術の施行、医療人の育成のため日々努力しています。

脳神経内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む。)

11

7.00

20.82

36.36

63.64

K178-4 経皮的脳血栓回収術

-

-

-

-

-

K386 気管切開術

-

-

-

-

-

K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回

-

-

-

-

-

K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの

-

-

-

-

-

 経皮的脳血栓回収術とは、カテーテルという細い管を血管内に挿入して脳の血管に詰まった血栓(血の固まり)を直接取り除く治療です。脳の血管に血栓が詰まってしまうと、その先の脳の細胞に栄養や酸素が届かなくなり脳細胞が死んでしまい脳梗塞になります。このように一旦脳梗塞になった脳の細胞は元に戻ることはありません。しかしながら、発症から時間が経過していない段階では脳梗塞は完全には完成しておらず、血栓を取り除き血流を再開通させることにより脳梗塞の範囲を最小限にとどめることが可能です。経皮的血栓回収術を行うためには、脳梗塞発症後できるだけ速やかに来院していただくことが非常に重要です。当院では、脳神経外科と脳神経内科が協働しており24時間365日体制で治療を行うことが可能です。
口から食べることが難しくなった場合、胃瘻を造設し、そこから栄養を補給することを検討します。胃瘻を造設する場合は、入院の上、消化器内科で作成してもらいます。     

皮膚科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術 単純切除

49

0.57

6.35

2.04

76.67

K0134 分層植皮術 200c㎡以上

-

-

-

-

-

K0052 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部) 長径2cm以上4cm未満

-

-

-

-

-

K013-22 全層植皮術 25c㎡以上100c㎡未満

-

-

-

-

-

K6261 リンパ節摘出術 長径3cm未満

-

-

-

-

-

皮膚科では、皮膚悪性腫瘍(皮膚がん)患者さんの紹介、入院が多いため、皮膚悪性腫瘍の手術を多く行っています。また、重度の広範囲熱傷の手術も行っています。局所麻酔の方には火曜日午後に手術を、 全身麻酔の方は火曜日もしくは水曜日に入院の上、翌日手術を行っています。悪性腫瘍を切除した後はご自身の皮膚による分層植皮術、全層植皮術などにより閉創します。熱傷については、部位にもよりますが分層植皮術による閉創を原則とし、 受傷範囲によっては広い面積に植皮をおこなうケースも少なくありません。腫瘍切除術後は1~2週間で退院となりますが、 熱傷の手術後は広範囲の創部に対して念入りな管理が必要となるため入院期間はやや長くなり、 すぐに自宅退院することは難しく、療養継続やリハビリテーションを見据えた転院が多くなる傾向にあります。また、皮膚がんではリンパ節転移を起こすことがあり、リンパ節が腫れている場合や肉眼的にわからない転移を早期に発見する目的でリンパ節を摘出することがあります。この場合は原則として手術翌日の退院を目指します。その他、皮膚良性腫瘍に対する手術や皮下組織などの軟部組織から生じた腫瘍の摘出も行っています。

泌尿器科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用のもの

121

1.24

4.51

0.83

75.40

K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)

73

1.15

9.03

0.00

71.11

K773-51 腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの) 原発病巣が7センチメートル以下のもの

68

1.18

8.50

0.00

66.65

K783-2 経尿道的尿管ステント留置術

29

2.66

8.14

13.79

73.38

K841-8 経尿道的前立腺切除術(高圧水噴射システムを用いるもの)

24

1.00

8.71

0.00

72.42

泌尿器科では、2022年4月からロボット支援下根治的腎摘除術、ロボット支援下根治的腎尿管全摘除術、ロボット支援下副腎摘出術が保険適用となり、それまでに保険適用となっていたロボット支援下根治的前立腺全摘除術、ロボット支援下腎部分切除術、ロボット支援下根治的膀胱全摘除術、ロボット支援下腎盂形成術、ロボット支援下仙骨膣固定術と併せ、泌尿器科領域でのメジャー手術はほぼ全てがロボット支援下で行えるようになりました。
当院では、泌尿器科が中心となり中四国・九州で初めてとなる国産手術支援ロボットhinotoriを2022年3月より稼働させ、さらに2025年からはdaVinci5が加わり、既に保有しているdaVinci Xi 2台と合わせ、ロボット支援手術の件数が増加しつつあります。
当院泌尿器科では、ロボット支援手術を2010年に中国四国地方で初めて導入しました。以後その件数は増加の一途をたどっているだけでなく、より難度の高い手術に対しても積極的に取り組んでいます。さらに、hinotoriを用いたロボット手術では、腎摘除術、膀胱全摘除術、副腎摘出術などを世界で初めて実施しており、これらの手術が今後増加することが予測されます。
daVinci5を用いた泌尿器科手術も全国で初めて行い、これらの手術も今後増加が見込まれます。
上述のロボット支援手術に加え、膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術に代表される経尿道的手術も多く行っています。
泌尿器科におけるほとんどの手術症例は、ロボット支援手術をはじめとした傷が小さく体に優しい内視鏡を用いた手術で行われています。その低侵襲性手術の結果、手術患者さんの平均入院期間は1~2週間程度の短期間の入院治療が可能となっています。高齢化が進む中、根治性や機能温存を担保しながら、体に負担が少ない治療を行っていることが泌尿器科の特徴です。

循環器内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの

382

1.08

1.53

1.31

70.15

K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術 
その他のもの

79

1.03

1.38

1.27

58.10

K555-22 経カテーテル大動脈弁置換術 
経皮的大動脈弁置換術

60

4.40

8.33

11.67

83.93

K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 
その他のもの

52

1.73

2.21

1.92

73.13

K5972 ペースメーカー移植術 経静脈電極の場合

50

2.62

9.80

12.00

79.38

経皮的カテーテル心筋焼灼術(心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの)は、心房細動に対する治療です。高齢化に伴い、心房細動症例は増加しており、デバイスや技術の進歩により、成績が良くなり合併症も減少したため、適応も広がり、経皮的カテーテル心筋焼灼術の需要も増しています。当院では、心房細動に対しては、従来の方法である高周波、クライオバルーン、レーザーバルーン治療が可能で、昨年度からは最新のパルスフィールドアブレーション(3種類)も導入しています。治療後の成績も良く、長期的な洞調律維持率も良好です。心房細動については、出血リスクのため長期の抗凝固療法が難しい場合には、カテーテルを使用した左心耳閉鎖システム(WATCHMANFLX®)による左心耳閉鎖術も行っています。心房細動以外のアブレーション治療(経皮的カテーテル心筋焼灼術 その他のもの)についても、国内で使用できるすべての3Dマッピング装置(3種類)が使用可能であり、オペ後などの複雑な心房頻拍や心室頻拍など不整脈の治療も可能です。特に、心室頻拍、心室細動など致死的不整脈の診断・治療にも優れた施設で、他施設での治療困難症例などの紹介を受けています。発作性上室性頻拍に関しては、小児から高齢者まで年齢に合わせて幅広く治療を行っています。
経カテーテル大動脈弁置換術(経皮的大動脈弁置換術)は、弁膜症である大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療です。大動脈弁狭窄症は心不全、突然死の原因となる疾患で高齢化に伴い増加しています。従来は開胸手術での治療しかなく、ご高齢者には侵襲が大きいといった問題点がありましたが、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)により低侵襲に治療することが可能となりました。当院はTAVIの専門施設に認定されており、国内で認証されているすべての種類の弁、すべてのアプローチ部位からの治療が可能です。また透析患者さんに対する治療、劣化生体弁に対する治療も積極的に行っています。当院ではハートチーム多職種カンファレンスにてTAVIの適応および治療戦略を厳密に検討しています。術前からリハビリを開始し、ほとんどの患者さんが短期間で元の生活に戻っています。術後はかかりつけ医と連携しフォローを継続しています。
経皮的冠動脈ステント留置術は、虚血性心疾患に対する冠動脈のカテーテル治療です。虚血性心疾患は食生活の欧米化、高齢化に伴い日本でも増加しています。現在の冠動脈カテーテル治療は、冠動脈狭窄をバルーンで拡張し、その後ステントを留置するステント留置術が中心です。再狭窄を引き起こす内膜増殖を抑えるための薬剤が塗布してある薬剤溶出性ステントが使用されています。非常に石灰化の強い病変では血管そのものの拡張が得られないため、ロータブレーター、IVL(ショックウェーブ)という石灰を切削、破砕する治療を行います。ステント内に再狭窄を起こした場合には、エキシマレーザーや薬剤塗布バルーンを用いた治療を行い、良好な成績が得られています。ステント留置に適さない病変ではDCA(方向性粥腫切除術)というプラークを切除する方法を併用します。血管内超音波や光干渉断層法、血管内視鏡などの画像診断のほか、機能的に心筋虚血を評価する目的でカテーテルによる冠血流予備量比(FFR)測定、ならびにFFR CT、FFRangioを使用し、安全かつ最大限の治療効果が得られるよう心がけています。動脈硬化の原因となったリスクの軽減のため、積極的な薬物療法や心臓リハビリテーションなど包括的治療が重要な疾患ですのでこれらを積極的に導入しています。
徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療は、洞不全症候群と房室ブロックが主な適応となりますが、デバイスの進歩により、患者さんの受ける制限もかなり軽くなっています。近年、軽度左心機能低下を伴う房室ブロック症例については刺激伝導系に対するペーシング治療の適応が認められ、当院でも積極的に行っています。またデバイス感染のリスクが低く、入院期間も短期間で治療が可能なリードレスペースメーカー治療も行っています。心筋症、心不全症例については、薬物治療に加えて両心室ペーシングをはじめとするデバイス治療や心臓リハビリなど多職種で介入し、集学的治療を行っています。

腎臓内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 単純なもの

19

11.63

12.21

5.26

71.16

K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回

-

-

-

-

-

K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術

-

-

-

-

-

K616-42 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 1の実施後3月以内に実施する場合

-

-

-

-

-

K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿

-

-

-

-

-

末期腎不全の患者さんが行う血液透析の治療を受けるためには、1分間に200-300mlの血液を透析器に送り込む必要があります。これだけの血液量を確保するためには、血液流量の多い太い血管が必要となります。そこで、手首近くの動脈と静脈を手術でつなぎ合わせることによって血管を太くします。これが内シャント設置術です。
腕の静脈が細いために内シャント設置術を行うことができない方もいらっしゃいます。そのような場合には、人工血管を用いて血管をつなぐ血管移植術を行います。
また、何らかの理由により血液透析を行うために使用する血管の血流が悪くなったり、血流が途絶えたりする場合があります。そうなってしまうと、血液透析を行うことが困難になります。経皮的シャント拡張術・血栓除去術を行い、血流を改善させることで血液透析を継続することが可能となります。

救急集中治療科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K1422 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 後方又は後側方固定

23

1.26

20.26

86.96

62.57

K386 気管切開術

19

9.21

22.68

68.42

71.47

K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿

11

1.27

6.45

54.55

53.18

K046-3 観血的整復固定術(インプラント周囲骨折に対するもの)一時的創外固定骨折治療術

11

0.00

10.36

90.91

59.36

K1426 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 椎弓形成

10

1.60

14.10

100.00

72.50

診療科別主要手術の多くは、四肢外傷再建学講座との共同診療によるものです。
・脊椎固定術・椎弓切除術・椎弓形成術については、早期の除圧術や後方固定術は、特に重症例において有効であると考えられています。これらの手術の目的は、脊髄への圧迫を早期に除去し、損傷の進行を防ぎ、安定した脊椎の環境を整えることです。早期介入が神経学的な回復や機能改善に貢献する可能性が示されています。
・観血的骨整復術は、骨が大きくずれていたり、複雑な骨折、関節に関わる骨折など、非観血的な方法では十分な整復ができない場合に適応されます。また、早期の機能回復を図るためや、合併症を防ぐために行われる場合もあります。
・気管切開術は、頸部から直接気管にチューブを挿入するための手術で、長期の人工呼吸器管理を要する場合や、遷延性の意識障害や喀痰排出困難などがある場合に行われます。

外傷患者の初回手術までの時間が1日前後と短いことは特筆すべきことであり、患者さんの早期回復と予後改善に大きく寄与しています。これは救急集中治療科、四肢外傷再建学講座、麻酔科、手術室との協力関係により達成されているものです。

血液内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K9212ロ 造血幹細胞採取(一連につき) 
末梢血幹細胞採取 自家移植の場合

13

5.85

3.54

0.00

59.92

K922-2 CAR発現生T細胞投与(一連つき)

-

-

-

-

-

K921-31 末梢血単核球採取(一連につき) 採取のみを行う場合

-

-

-

-

-

K921-32 末梢血単核球採取(一連につき) 採取、細胞調整及び凍結保存を行う場合

-

-

-

-

-

K386 気管切開術

-

-

-

-

-

血液内科は、造血幹細胞移植推進地域拠点病院として全ての移植細胞源を用いた造血幹細胞移植に加え、CAR-T治療も提供可能です。造血幹細胞移植には、患者さん自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・凍結保存しておき、必要な時に移植を行う「自家移植」と、他人(ドナー)から採取した骨髄・末梢血・さい帯血を移植する「同種移植」があり、これらを疾患の特性に応じて使い分けています。前者は主にリンパ腫や骨髄腫、後者は主に急性白血病や骨髄異形成症候群に加え、一部のリンパ腫と再生不良性貧血を対象に選択しています。また2022年より新たに、一部の悪性リンパ腫や急性リンパ性白血病を対象にCAR-T療法の導入を開始しました。
K9212は自家移植を行うために、末梢血から体外循環を用いて造血幹細胞を採取した患者さんの数を表しています。また、K921-31・K921-32はCAR-T療法を行うために、末梢血から体外循環を用いて単核球を採取した患者さんの数を表しており、K922-2は実際にCAR-T療法を行った患者さんの数を表しています。

消化器内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2cm未満

240

0.31

1.14

0.42

65.74

K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術

159

0.35

3.54

0.00

71.69

K721-4 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術

118

1.03

3.88

0.00

70.40

K6152 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等) 選択的動脈化学塞栓術

115

2.17

5.78

0.00

75.14

K526-22 内視鏡的食道粘膜切除術 早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術

96

0.75

5.06

1.04

69.43

消化管疾患では、早期の食道癌や胃癌、小腸癌、大腸癌に対して最新の機器による緻密な精密検査を行い、大きな腫瘍でも適応のあるものは外科手術することなく、内視鏡的切除による根治治療を行っています。特に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、国内外でも有数の診療実績を挙げています。

肝疾患では、肝癌に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)を主体として、ラジオ波焼灼術(RFA)/マイクロ波焼灼術(MWA)も行っています。さらに、食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)や内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)、胃静脈瘤やシャント脳症に対するバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)などの専門的治療を行っています。

消化器外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術

73

2.85

11.07

4.11

70.22

K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術

43

2.65

5.26

6.98

66.30

K7032 膵頭部腫瘍切除術 リンパ節・神経叢郭清等を伴う腫瘍切除の場合又は十二指腸温存膵頭切除術の場合

43

4.67

24.98

2.33

71.23

K6112 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 四肢に設置した場合

35

1.77

4.77

0.00

70.14

K740-22 腹腔鏡下直腸切除・切断術 低位前方切除術

35

4.14

14.17

2.86

68.77

〈根治性と低侵襲の追求〉
(根治性)
病態や病状を正確に把握して、可能な限り低侵襲で、可能な限り根治性を求めた外科治療を提供します。化学療法や放射線療法と併用することにより、手術適応も拡がっています。

(低侵襲性)
臓器の保護・温存や、安全で迅速な手術を行うことも含めて低侵襲な手術に取り組み、手術による不利益を最小限にとどめることを目指しています。内視鏡手術やロボット支援下手術を積極的に推進しています。

〈対象となる主な手術の内訳〉
・食道切除:食道癌など
・胃切除:胃癌、胃粘膜下腫瘍、肥満減量手術など
・大腸切除:結腸癌、直腸癌、潰瘍性大腸炎、クローン病など
・肝切除:原発性肝癌、転移性肝癌など
・胆道癌手術:肝門部胆管癌、遠位胆管癌、胆嚢癌など
・膵切除:膵癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍など

移植外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K686 内視鏡的胆道拡張術

10

2.20

3.60

0.00

49.10

K783-2 経尿道的尿管ステント留置術

-

-

-

-

-

K688 内視鏡的胆道ステント留置術

-

-

-

-

-

K6121イ 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 単純なもの

-

-

-

-

-

K386 気管切開術

-

-

-

-

-

移植外科では、肝臓・膵臓・腎臓を対象として、生体及び脳死ドナーからの移植を提供しています。
多職種によるカンファレンスにより治療方針を決定し、患者さんに最先端・最高レベルの移植医療を提供することを心がけています。
日本移植学会認定医及び認定レシピエントコーディネーターが多く在籍し、臓器移植の手術のみならず、術後合併症に対する治療や免疫抑制剤のきめ細かな管理にも努めています。

乳腺外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K4763 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)

126

1.06

6.17

1.59

60.44

K4762 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)

87

1.00

2.54

0.00

58.80

K4765 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩鎖骨下部郭清を伴うもの)・胸筋切除を併施しないもの

21

1.14

6.71

0.00

61.76

K4768 乳腺悪性腫瘍手術 乳輪温存乳房切除術(腋窩郭清を伴わないもの)

10

1.00

9.30

0.00

51.90

K4741 乳腺腫瘍摘出術 長径5cm未満

-

-

-

-

-

乳腺外科における主要な手術は、乳房部分切除術および乳房切除術であり、年間を通じて一定数の症例を治療しています。術前入院日数は1日以内が基本であり、術後在院日数も短期間で推移していることから、クリニカルパスに基づいた効率的な入院管理が行われています。転院率は低く、大部分の患者さんが自宅退院可能であることから、乳癌手術において安全かつ標準化された入院治療が提供されているといえます。

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その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

感染症と手術・術後の合併症について集計し、症例数、全退院患者数に対する発生率を示しています。
症例数が10未満の場合は、症例数と発生率を「 ‐ 」としています。

DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる 11 0.06
180010 敗血症 同一 63 0.34
異なる 63 0.34
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 141 0.75
異なる 12 0.06

「手術・処置等の合併症」の発生は、ペースメーカー植え込み後感染症、後出血、中心静脈カテーテル感染症、吻合部狭窄、術後創部感染などが主な原因となっています。

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リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率

肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者を集計し、退院患者数、肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数、実施率、解説を示しています。
リスクレベルが「中」以上の手術は、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン 2017 年改訂版 」(日本循環器学会等)に準じて抽出しています。
肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数は、リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者のうち、肺血栓塞栓症予防管理料の算定があった、または抗凝固療法が行われた症例を抽出しています。

肺血栓塞栓症発症のリスクレベ ルが「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、 肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数
(分子)
リスクレベルが「中」以上の
手術を施行した患者の肺血栓
塞栓症の予防対策の実施率
2119 1894 89.38%

 周術期の肺血栓塞栓症発生率は約1人/1000人(当院データ)ですが、死亡率は約10~30%を超える大変危険な病気です。長時間の飛行機搭乗で起こるとされる、いわゆる「エコノミークラス症候群」と同じ病態です。手術中や手術後に体を動かさないでじっとしていると、下肢の血のめぐりが悪くなって静脈の中に血のかたまり(血栓)ができることがあります。手術後に動いたときに、この血栓が血管壁から外れて血流に乗り、肺の血管まで到達して肺の血管につまると肺血栓塞栓症となります。胸痛、呼吸困難、血圧低下などの症状で発症します。重症の場合には心臓が停止することもあります。
 誰にでも起こる可能性はありますが、特に下肢に血栓(深部静脈血栓症)がある人は危険性が高くなります。また悪性腫瘍、高齢、肥満、妊娠、下肢や骨盤の骨折、長期寝たきり、喫煙、下肢静脈瘤、経口避妊薬の内服、先天的または薬剤で血液が固まりやすくなっているなどの因子があれば危険性は高くなります。さらに手術部位が下腹部、骨盤、下肢、手術術式が腹腔鏡を使用する場合、手術の体勢が砕石位、腹臥位、側臥位の場合、長時間手術でも危険性が増すといわれています。
 当院では、弾性ストッキングや下肢マッサージ用空気ポンプを装着することや、血栓の発生を防止する薬剤を投与するなどによって、こうした病気の発生の予防に努めています。

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血液培養2セット実施率

血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
2390 1812 75.82%

当院は特定機能病院であるため、令和610月より「D025基本的検体検査実施料」に包括されている「D018細菌培養同定検査」をEFファイルに出力することになりました。そのため、この項目については令和6101日から令和7531日の期間で集計しています。

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広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率

広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
817 673 82.37%

当院は特定機能病院であるため、令和610月より「D025基本的検体検査実施料」に包括されている「D018細菌培養同定検査」をEFファイルに出力することになりました。そのため、この項目については令和6101日から令和7531日の期間で集計しています。

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転倒・転落発生率

退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数(分母)
退院患者に発生した
転倒・転落件数(分子)
転倒・転落発生率
230822 531 2.3‰

この項目については様式3を用いて集計しています。

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転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率

退院患者の在院日数の総和もしくは入院患者延べ数(分母) 退院患者に発生したインシデント
影響度分類レベル3b 以上の
転倒・転落の発生件数(分子)
転倒転落によるインシデント
影響度分類レベル3b 以上の
発生率
- - -

この項目については様式3を用いて集計しています。
分子が10件に満たなかったため、分母・分子・割合のすべてを「-」で表示しています。

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手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率

全身麻酔手術で、予防的抗菌薬投与が実施された手術件数(分母) 分母のうち、手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与開始された
手術件数(分子)
手術開始前1 時間以内の
予防的抗菌薬投与率
4206 4120 97.96%

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d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率

退院患者の在院日数の総和もしくは除外条件に該当する患者を
除いた入院患者延べ数(分母)
褥瘡(d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡)の発生患者数(分子) d2(真皮までの損傷)以上の
褥瘡発生率
181996 173 0.10%

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65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合

65 歳以上の退院患者数(分母) 分母のうち、入院後48 時間以内に
栄養アセスメントが実施された
患者数(分子)
65 歳以上の患者の入院早期の
栄養アセスメント実施割合
10247 10247 100.00%

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身体的拘束の実施率

退院患者の在院日数の総和
(分母)
分母のうち、身体的拘束日数の
総和(分子)
身体的拘束の実施率
185172 4061 2.19%

2025/09/29
DPCデータに基づく病院情報の公表(令和6年度)公開


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