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【研究成果】進行肺がん患者の放射線肺炎予測精度を大幅に向上 ~SurvBETAモデルが多領域解析と複数のAI学習をつなぎ革新的な予測を実現~

本研究成果のポイント

  • 肺がん治療の副作用「放射性肺炎」のリスクを高精度に予測できる「SurvBETA」を開発しました。
  • 本モデルにより、放射線肺炎リスクの早期予測が可能となり、個別化治療の選択を支援する強力なツールとして、臨床現場での利用が期待されます。

概要

 広島大学病院放射線部の河原大輔准教授を中心とする研究チームは、肺がんの患者に対する放射線治療の後に発症する(放射性肺炎)のリスクを高精度で予測する新しいモデル「SurvBETA」を開発しました。
放射性肺炎は、放射線治療中に患者が経験する可能性がある重大な副作用で、発症すると治療方針の変更を余儀なくされることがあります。従来の予測方法では、臨床データや単一の画像から得られる情報に頼っており、リスク予測の精度には限界がありました。本研究では、患者のCT画像と放射線量情報から得られるさまざまな情報を抽出し、複数の機械学習アルゴリズムを用いて信頼性の高い予測を行うモデルを開発し、従来よりも高精度で放射性肺炎の発症リスクを予測できるようになりました。今後、より多くの施設での検証とデータの多様化を進め、放射線治療の個別化と最適化に向けた重要なツールとしての導入が期待されています。
 本研究成果は、2025年12月発行の「Medical Physics」誌に掲載されました。
 

<発表論文>
論文タイトル
Prediction of radiation pneumonitis after CRT in patients with advanced NSCLC using multi-region radiomics and attention-based ensemble learning
著書
Daisuke Kawaharaa,*, Nobuki Imanoa, Misato Kishia,b, Toshiki Fujiwarac, Tomoki Kimurac, Yuji Murakamia

a  Department of Radiation Oncology, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Hiroshima 734-8551, Japan
b  Radiation Therapy Section, Department of Clinical Practice and Support, Hiroshima University Hospital, Hiroshima 734-8551, Japan
c Department of Radiation Oncology Kochi Medical School, Kochi University, Kami, 783-0043, Japan.

掲載雑誌
Medical Physics 
DOI番号
10.1002/mp.70140

背景

 肺がんの治療において、放射線治療は効果的な方法の一つです。しかしこの治療では、がん細胞の周りの正常な細胞にも放射線が少し当たってしまい、放射性肺炎という肺炎を引き起こすことがあります。放射性肺炎はその重症度によりグレード1とグレード2に分けられますが、進行した肺がん患者がグレード2の放射性肺炎を発症した場合、患者の治療効果や生活の質に深刻な影響を与えるため、早期段階での予測が非常に重要です。従来、放射性肺炎の予測には主に臨床的な因子や線量に基づく手法が使われていましたが、これらの方法では予測精度に限界がありました。

研究成果の内容

 本研究では、進行した肺がん患者における放射性肺炎のグレード2以上の発症リスクを高精度で予測する新しい予測モデル「SurvBETA」を開発しました。「SurvBETA」は、CT画像から得られる、腫瘍部位、肺組織、腫瘍周囲領域、放射線線量分布など、複数の解剖学的・線量ベースの領域から特徴を抽出し、それらを基に放射線肺炎のリスクを高精度で予測します。
 「SurvBETA」は「アンサンブル学習」を利用しています。これは、複数の機械学習アルゴリズム(ランダムフォレスト、XGBoost、LightGBM、CatBoost)などに放射性肺炎発症リスクを予測させ、その予測結果を統合することで、より信頼性の高い予測を行う手法です。さらに、このモデルは、注意機構(Attention Mechanism)を組み込んでいます。これはCT画像や放射線の当たり方など、どの部分に着目すべきかをAIが自動で予測しすることで、患者ごとに異なる生物学的背景や放射線治療の影響を反映し、より正確なリスク評価を可能にするものです。この注意機構は、モデルが重要な特徴を動的に学習し、放射線肺炎発症のリスクが高い患者を正確に識別できるようにします。これにより、従来よりも高精度なリスク予測を実現しました。外部施設で行った検証結果では、C-index 0.83という優れた予測精度を達成し、これによりモデルの汎用性と実用性が確認されました。

今後の展開

 本研究により開発された「SurvBETA」モデルは、NSCLC患者における放射性肺炎の予測精度を大幅に向上させました。今後は、このモデルをさらに多くの医療機関で検証し、実際の臨床現場における実用性と汎用性を確認していきます。「SurvBETA」モデルは、放射線治療計画の最適化にも活用でき、個別化治療の支援ツールとして、治療方針を患者ごとに最適化するための重要な指標となることが期待されます。

図1 SurvBETAによる解析フロー図

表1 予測モデルの比較とパフォーマンス。

病院放射線部 准教授 河原大輔
Tel:082-257-1545 FAX:082-257-1546
E-mail:daika99@hiroshima-u.ac.jp


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