教育科学専攻

 教育は「生きる」ことを支える重要な基盤(education for life)であり,急速なグローバル化の中で持続可能で平和な社会を目指す,国際社会共通の最重要課題である。教育科学専攻では,この課題を解決するため,グローバルな視野と人類が抱える様々な課題への深い洞察を持ち,教育による将来の人類社会の創造を目指す人材を育成する。そのため,教育の目的,内容,方法等を対象とする深い専門性を涵養するための分野専門型学位プログラムとして「教師教育デザイン学プログラム」「教育学プログラム」「日本語教育学プログラム」を,教育学を基盤としつつグローバルな視点から多面的アプローチによる国際社会の課題解決を目指す融合型学位プログラムとして「国際教育開発プログラム」を開設する。これらの学位プログラムは,教育による人類社会の構築のための幅広い専門分野と,それぞれの分野を横断,融合することのできる構成とする。

 また,本専攻の目的の1つグローバルな視野と人類が抱える様々な課題への深い洞察の獲得は,人文社会科学専攻と共通する課題である。

 今後の教育を担う人材は,学校や教育関係者のみの閉じた環境に閉じこもるのでなく,教育の専門家以外と協働して活動すること(専門分野以外への強い関心と,自然科学や生命科学を含む他分野の専門家との協働は,人間社会科学研究科全体が目指す人材像)が求められる。これを達成するには,教育科学専攻の教育を他の学問分野と同じ研究科で行うことの効果は大きい。

 具体的には,研究科共通科目として提供する「人間社会科学特別講義」と「人間社会科学のための科学史」では,教育活動によって伝承すべき,あるいは学習材として活用する人間や社会及びその活動の所産について,文学,史学,哲学,言語学,経済学,経営学,法学,政治学,社会学,心理学,教育学など広範かつ歴史的視点から学ぶことができる内容としている。また,同じく研究科共通科目である「異分野協働プロジェクト」においては,複数の分野が協働して取り組むプロジェクトに,教育に関連する分野以外を専門とする学生とともにアクティブに関与する機会を提供する。さらに「未来創造思考(基礎)」では,起業の観点から自ら率先して将来の社会の創造を目指すための基礎的知識や能力を培う。

 教育科学専攻の分野専門型プログラムであっても,それが提供する専門科目の学びにおいて,他分野と同じ研究科で教育を行う効果が期待される。例えば,教師教育デザイン学プログラムの「学習材デザイン基礎研究」や「学習材デザイン発展研究」で扱う学習材は,人文学プログラム等の人文社会科学専攻の教育研究分野の対象となる人や社会の活動,所産,現象等であり,それらのプログラムが提供する関連授業を受講することにより,学びが一層深まる。教育学プログラムが提供する授業科目は,教育の諸理論や教育の諸問題を哲学的に考察する「教育哲学」,教育現象を社会学の理論や概念を用いて分析的・批判的に検討する「教育社会学」など,人文社会科学専攻の専門分野である哲学,社会学,政治学,史学,経営学,経済学,法学等と本来的に密接に関連することから,人文社会科学専攻の学位プログラムが提供する授業科目を合わせて受講することで,より深い学びが実現できる。日本語教育学プログラムも同様であり,言語学(対照言語学,社会言語学ほか),社会学(文化社会学ほか),心理学(日本語習得論,言語教育心理学ほか)等を基盤とする授業科目を多く提供している。

 両専攻が同じ研究科にあることによって,異なる専攻の関連する授業科目を受講したり,担当教員の副指導を受けやすい環境を整えることができるので,大きな学習効果が期待できる。

 また,両専攻の専門分野は,学生や教員が関心を向ける領域(人間や社会)や社会へなし得る貢献(新しい価値・思想・文化・教育の創造),成果の還元を短期間ではなく長期的スパンでとらえることなどの価値観を共有しており,同じ研究科の中で教育研究を行うことにより,人間や社会の持続的発展をもたらす人材を効果的に育成することができる。


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