DPCデータに基づく病院情報の公表(令和2年度)

◎使用するデータ

  • 様式1 ・・・・・・診療録情報(主傷病名,入院の目的,手術術式 等)
  • 様式4 ・・・・・・診療報酬請求情報(医科保険診療以外のある症例調査票)
  • Dファイル ・・・     〃    (診断群分類点数表により算定した患者に係る診療報酬請求情報)

  ※患者情報はすべて匿名化されています。

◎対象となる患者データ

  • 令和2年4月1日から令和3年3月31日までの退院患者で,一般病棟に入院した患者

※集計対象外
・入院した後24時間以内に死亡した患者
・生後1週間以内に死亡した新生児
・臓器移植・労災・自賠責・自費・正常分娩・治験・先進医療の患者

◎患者数等の表記について

  • 患者数が10未満の場合は,患者数等を” ‐ ”としています。

◎集計項目

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

入院時の満年齢を10歳刻みの年齢階級別にし,90歳以上については1つの階級として集計し,患者数の分布を示しています。

年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 692 496 504 749 1,448 2,243 3,524 5,169 2,166 228

診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

DPC14桁分類(DPCコード)の患者数を診療科別に集計し,上位5位までのDPCコード,DPC名称,患者数,平均在院日数(自院),平均在院日数(全国),転院率,平均年齢,解説を示しています。

【DPC14桁分類(DPCコード)】
診断群分類を表すコードです。入院期間中にもっとも医療資源が投入された傷病名と,入院期間中に行われた医療行為等の組み合わせによって決定されます。
診療報酬改定時に見直しが行われ,令和2年度診療報酬改定において,DPCコードの総数が4,557分類,そのうち3,990分類が包括対象となっています。

小児科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率

平均

年齢

自院 全国
010230xx99x00x てんかん

手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
42 8.86 7.48 4.76 6.52
140010x199x0xx 妊娠期間短縮,低出産体重に関連する障害(出生時体重2500g以上)

手術なし 手術・処置等2なし
26 3.81 6.13 19.23 0.00
100180xx97x1xx 副腎皮質機能亢進症,非機能性副腎皮質腫瘍

その他の手術あり 手術・処置等21あり
22 20.27 28.91 0.00 6.41
130010xx99x2xx 急性白血病

手術なし 手術・処置等22あり
18 11.56 12.61 0.00 10.50
100180xx990x0x 副腎皮質機能亢進症,非機能性副腎皮質腫瘍

手術なし 手術・処置等1なし 定義副傷病なし
15 9.93 6.26 0.00 10.07

小児科では,小児に関わる問題に幅広く対応しています。神経・精神・内分泌・アレルギー・膠原病・循環器・腎臓・新生児フォローアップ・代謝など,多くの分野で専門的医療を提供しています。また,大学病院の役割として稀少疾患にもできるだけ対応するとともに,必要に応じ専門領域を横断して全人的医療を行うことを方針としています。中央診療施設に設置されているてんかんセンターやIBDセンター,血友病診療センターにも参画し,それぞれの疾患領域において小児に対する専門治療を行っています。

小児血液腫瘍科では,年間約50名の新規小児がん患者の入院があり,全国多施設共同治療研究(JCCG:日本小児がん研究グループ)による血液腫瘍・固形腫瘍患者の診療を行っています。DPC上位5位のうち,3項目が急性白血病や神経芽腫といった小児血液腫瘍性疾患に関連したものとなっています。平成25年には,厚生労働省より小児がん拠点病院の指定を受け,中国・四国ブロックにおける唯一の指定施設として,小児がん中国・四国ネットワークを発足させ,インターネット会議などを通じて小児がん診療の向上に努めています。現在までに約300例の造血幹細胞移植を実施しており,当科の特徴としては慢性肉芽腫症や重症先天性好中球減少症などの食細胞異常症に対して,約40例の造血幹細胞移植を実施し,全国からの紹介を受けています。原発性免疫不全症の領域では,厚生労働科学研究や多くの研究班の一員として多くの国内施設と共同で,基礎・臨床研究を行っています。子どもの診療には多くの職種が携わっており,医師・看護師のみならず,病棟薬剤師・理学療法士・作業療法士・臨床心理士・チャイルド・ライフ・スペシャリスト・病棟保育士・相談員などが患者さんとご家族のQOL向上を目指しています。

てんかんセンターでは,神経内科・神経精神科・脳神経外科と連携して,小児てんかん患者の診療を行っており,DPCで一番上位を占めています。各診療部門と連携して定期的なカンファレンスが行われており,様々な視点から,診断や治療方針の決定を行っています。

当院の新生児集中治療室(NICU)は地域周産期母子医療センターに指定されています。対象疾患は,一般的な早産児・低出生体重児の全身管理のほか,新生児血液・悪性腫瘍疾患の児や,当院の遺伝子診療部などで出生前診断された先天性疾患を持つ児など,幅広い新生児疾患の診療を行っています。特に,出生時体重2500g以上の低出生体重に関連する障害はDPC上位に含まれています。

整形外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
160620xx01xxxx 肘,膝の外傷(スポーツ障害等を含む。)

腱縫合術等
79 15.03 13.96 10.13 28.47
160610xx01xxxx 四肢筋腱損傷

靭帯断裂形成手術等
45 13.71 17.59 88.89 67.87
070210xx01xxxx 下肢の変形

骨切術 前腕,下腿等
41 18.54 21.13 36.59 65.61
070230xx02xxxx 膝関節症(変形性を含む。)

骨穿孔術等
39 20.82 26.80 38.46 59.15
070085xx97xxxx 滑膜炎,腱鞘炎,軟骨などの炎症(上肢以外)

手術あり
37 17.05 12.99 43.24 64.78

整形外科では,膝関節班,脊椎・脊髄班,肩関節班,手・微小外科班,足・足関節班,股関節班,骨軟部腫瘍班,四肢外傷班といったサブグループがあります。それぞれの分野の専門家が日本のみならず世界的にもトップクラスの診療・研究を行い,保存的治療から最先端の再生医療,新生児・小児から超高齢者まで,多くの患者さんの運動器の健康,整形外科医療の発展に寄与しています。

膝関節診療班では,スポーツ障害や一般外傷,加齢的変化などによる膝関節の障害を全般的に扱っています。特に前十字靭帯損傷や後十字靭帯損傷などの靭帯損傷の手術件数が多くを占めています。その方法も,今では世界的に主流となっている自分の腱の一部を使って靭帯を再建する手技を以前から用いており,正確で侵襲の少ない関節鏡視下手術を行っています。また,変形性膝関節症の手術件数も多く,人工関節置換術や,下腿を中心とした骨切り術なども積極的に行っています。そのほか,半月板損傷や軟骨損傷,間接滑膜炎の手術件数が多く,軟骨欠損の治療では,骨穿孔術などの他,骨軟骨柱移植術や自家培養軟骨移植術を行っています。軟骨損傷については膝関節だけでなく,足関節や肘関節などでも比較的多く見られ,状態に応じた手術的治療を行っています。

股関節診療班では,股関節疾患の痛みや異常に対して,CTやMRI,また超音波検査などを用いて正確な診断を図り,それぞれの患者さんの病状に応じた治療法を選択しながら診療を行っています。手術療法においては回転骨切り術など,可能な限り股関節を温存する手術を行い,必要に応じて人工股関節置換術を行っています。

手・微小外科班では肘から手の骨折に対する骨接合術の他,腱断裂や神経損傷に対する腱縫合や神経縫合を積極的に行っています。さらに細かい指動脈などの血管縫合では顕微鏡下の手術を行っています。最近では四肢外傷班の立ち上げに伴い,それぞれの専門分野にさらに集中して医療を行えるようになっています。

腫瘍治療班では,四肢(上肢,下肢)や脊柱にできる腫瘍を扱っています。診断をできるだけ早期に正確につけ,適切な治療を行うことが重要です。最近では,様々な診断方法や治療方法が進歩し,悪性腫瘍といえども決して不治の病ではありません。当科では,患者さんの四肢機能をできるだけ温存した治療方法を行った上で,腫瘍が根治されるよう,集学的な治療を行っています。

形成外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
070520xx97xxxx リンパ節,リンパ管の疾患

手術あり
74 9.51 8.51 0.00 62.92
090010xx04xxxx 乳房の悪性腫瘍

組織拡張器による再建手術(一連につき) 乳房(再建手術)の場合等
25 7.60 8.26 0.00 49.12
090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍

その他の手術あり 手術・処置等2なし
15 11.87 6.20 0.00 52.87
070570xx012xxx 瘢痕拘縮 

瘢痕拘縮形成手術 手術・処置等12あり
- - 11.37 - -
140490xx970xxx 手足先天性疾患

手術あり 手術・処置等1なし
- - 7.62 - -

形成外科では,身体に生じた欠損や変形・機能障害などに対して,機能的にも形態的にも正常な状態に近づけることを目的に以下の外科治療を行っています。

●小さな傷からリンパ管と細静脈をつなぐ手術,リンパ管細静脈吻合(Lymphatico-venular anastomosis:LVA)を第一選択として行っており,優れた治療効果を出しています。超微小血管外科(supermicrosurgery)の技術により,今までは不可能だった細い血管をつなげるようになり,体への負担が小さく優れた治療効果を有するLVAが可能となりました。手術前のリンパ管造影の所見をもとに,局所麻酔をして皮膚を2㎝ほど切って手術を行います。0.5㎜ほどのリンパ管と細静脈をみつけて,それらを切ってつなぐことでバイパスを作ります。LVAの吻合数が多いほど効果が高い傾向があることから,当科では複数の術者が同時にさまざまな場所で手術を行い(足首と太ももなどを同時に),約4時間の手術時間内にできる限り多くの吻合を行います。局所麻酔のため手術中にも意識がはっきりしており,基本的には手術の映像をみてもらい,術者が手術の状況を説明しながら手術を行います。入院は約1-2週間で,手術前後は医師の指導通りの弾性ストッキングによる圧迫療法が必要となります。

●乳癌術後の乳房欠損に対する治療を行っております。保険認可となった人工乳房を用いる方法や,腹部などの自家組織を移植する方法も行っています。

●熱傷後や外傷後の瘢痕・瘢痕拘縮に対して,拘縮の解除および植皮や皮弁を用いた欠損の再建を行っています。

●多趾症・合趾症などの先天異常疾患に取り組んでいます。

形成外科では,自家の手術以外にも,乳腺外科,耳鼻咽喉科・頭頸部外科,歯科口腔外科,食道外科,消化器外科,呼吸器外科,脳神経外科,皮膚科,整形外科その他,院内外科系各科からの要請に応じた手術支援,技術協力を行っており,自家の手術よりもこちらに割く時間の方が多いと言っても過言ではありません。形成外科が協力する事により,他施設では取り組むことが難しい症例を当院では行うことが出来ています。具体的には,乳腺外科における乳房再建術(同時組織拡張器挿入術,人工乳房挿入術)や,耳鼻咽喉科・頭頸部外科や歯科口腔外科における遊離複合組織移植などがこれに該当します。

脳神経外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
010030xx9900xx 未破裂脳動脈瘤

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし
56 3.00 7.22 0.00 64.80
010010xx02x00x 脳腫瘍

頭蓋内腫瘍摘出術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
51 18.78 21.17 13.73 52.12
010010xx9900xx 脳腫瘍

手術なし 手術・処置等2なし 手術・処置等2なし
44 4.80 11.50 11.36 24.66
010230xx99x20x てんかん

手術なし 手術・処置等22あり 定義副傷病なし
35 12.26 13.98 0.00 29.97
010030xx03x0xx 未破裂脳動脈瘤

脳血管内手術 手術・処置等2なし
33 9.06 9.69 0.00 65.00

脳神経外科では,外科的治療に関して余裕を持って十分な検討ができるよう,また,外科的治療による入院期間ができるだけ短くなるよう,集中的な検査入院を推奨しています。上記のものは,脳動脈瘤に対する脳血管撮影による最終評価のための検査入院,脳腫瘍摘出術をより効率的に行うための総合的な術前情報を集約して集めるための検査入院,更に,難治性てんかん患者におけるビデオ脳波モニタリングです。いずれも,本格的な治療を行う前の治療を前提とした精密検査に当たります。これらで得られた情報をもとに,各専門領域のグループ内で十分な検討を行います。その検討結果を診療科全体の術前カンファレンスに提出し,科全体での検討を経て,最終的な外科的治療の内容(目的,方法,モニタリングの種類,ナビゲーションの有無,SCOTに該当するか,覚醒下手術の適応か,等など)を決めていきます。小児脳腫瘍,AYA世代の脳腫瘍,間脳・下垂体腫瘍は中四国の治療センターで,モニタリングと内視鏡,ナビゲーションを駆使した手術治療を行い,さらに関連する専門科と協力して最先端の放射線治療と薬物療法を行い,治療後の長期フォローアップも充実しています。

脳腫瘍症例では,初回手術症例と放射線化学療法継続目的の入院があり,いずれも最先端の集学的治療を行っています。

当院では2014年にてんかんセンターが開設されており,難治性てんかんに対する外科的治療としては,中四国地方のハブ的施設となっています。ビデオ脳波モニタリングに加え,先進医療機器である脳磁図も駆使しててんかん焦点診断を行い,迷走神経刺激装置埋込術や難易度の高い小児の手術も行っています。

未破裂脳動脈瘤に対する脳血管内手術ではハイブリッド手術室を利用し,開頭手術では到達困難な部位にアプローチするなど最先端の医療技術に対応しています。

呼吸器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
040040xx97x0xx 肺の悪性腫瘍

手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
169 8.89 10.83 0.59 69.92
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし
79 2.47 3.39 0.00 70.77
040040xx9900xx 肺の悪性腫瘍 

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし
16 8.63 13.30 18.75 72.69
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等24あり 定義副傷病なし
- - 9.42 - -
040050xx99x4xx 胸壁腫瘍,胸膜腫瘍

手術なし 手術・処置等24あり
- - 10.41 - -

呼吸器外科では,肺がん,悪性胸膜中皮腫,縦隔腫瘍などを対象として,診断・外科的治療・薬物療法を中心に診療を行っています。

肺がんの診断にはCT,PET,MRI等,最新の画像診断技術を用いて腫瘍の広がりや活動性を評価し,適切な治療方針を決定します。肺がんの確定診断は超音波を併用する最新の気管支鏡検査を用いて行います。がんを取り除く手術では患者さんの身体に対してやさしい低侵襲・機能温存手術を積極的に行っています。また国内・海外の抗がん剤を中心とした臨床試験,治験に参加し,患者さんにより良い最新の肺がん治療を届けられるように努めています。

心臓血管外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。)

ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1なし 手術・処置等21あり
42 23.10 22.56 11.90 67.86
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤,腸骨動脈瘤

ステントグラフト内挿術 手術・処置等2なし
28 9.36 11.56 7.14 74.64
050161xx97x1xx 解離性大動脈瘤

その他の手術あり 手術・処置等21あり
20 30.95 29.23 65.00 70.65
050080xx9700xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。)

その他の手術あり 手術・処置等1なし,1あり 手術・処置等2なし
15 15.07 15.36 6.67 82.33
050180xx02xxxx 静脈・リンパ管疾患

下肢静脈瘤手術等
13 3.08 2.74 0.00 73.54

心臓血管外科では診断名として,1)狭心症,心筋梗塞,2)弁膜症,3)不整脈(徐脈性,心房細動),4)大動脈瘤(胸部大動脈,腹部大動脈),5)急性大動脈解離,6)末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症),7)静脈疾患(静脈瘤),8)慢性腎不全,を対象とした治療を主に行っています。症例数は広島県下有数であり,広島県のみならず中四国地方から患者さんの紹介を受け,難易度の高い症例や複数の合併疾患がある患者さんの治療を多く含んでいるのが特徴です。

上位5つの診断群分類に関して,順番にその内容を説明します。

弁膜症として主な対象となる疾患は大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症です。いずれの疾患に対しても,最近では右開胸手術を行うようになってきています。一般的にこれらは低侵襲心臓手術と位置づけられていますが,実際に施行する立場からするとそれだけではありません。いずれの手術においても,術前のCTや超音波検査で詳細な計画を立てることにより,弁膜を正面視することができ,これにより,より精度の高い手術を行うことができます。患者さんによっては,大動脈弁逆流や巨大右房などの場合,これらの方法は難しいことが多く,従来の方法でも手術を行っています。

大動脈瘤は高齢者の疾患であり,ほとんどが75歳以上の患者さんです。胸部大動脈,腹部大動脈ともに,ステントグラフトでの治療例が増加しており,近年では胸部,腹部ともには80%以上をステントグラフトで治療を行っています。ステントグラフトで治療可能な場合,切開は鼠蹊部(股の付け根)や鎖骨の下に4㎝程度で済みますので,術後の回復も非常に早く,比較的短い入院日数となっています。

急性大動脈解離は,心臓血管外科の急患の中で最も多いもので,とくにA型解離と呼ばれるものは,発症当日(24時間以内)に治療を行わないと半数以上が死亡する,極めて緊急を要する疾患です。大学病院という機能性の高い施設ですが,日々の診療で高難度疾患を治療し続けているということもあり,急性大動脈解離手術での生存率はもちろん全国平均以上で,救命手術としての上行大動脈置換に止まらず,将来を見据えた上行弓部大動脈全置換術を多く行っています。拡大手術による死亡にリスクは増加することなく,むしろ疾患の特性を利用した術式を行っており,県下ではむしろそれが標準術式になりつつあり,成績は良好です。

慢性大動脈解離は,主に下行大動脈に発生する病態であり,これに対する治療法はステントグラフトが一般的となっており,当院でも標準術式で行っています。頭や腹部臓器に流れる血管がある部位の大動脈に関しては,患者さん毎の病態に合わせて,ステントグラフトを用いる場合と,開胸・開腹にて行う場合があります。それぞれの長所・短所を考慮して術式を決定しています。

下肢静脈瘤は,近年開業医でも行われるようになっている疾患です。標準的な静脈瘤の患者さん・合併疾患を有する患者さん・難易度の高い患者さんまで,幅広く広島大学病院では治療を行っています。患者さんの病態に合わせて,従来の術式に加えレーザー治療やラジオ波治療,さらには広島発・広島大学発の新規開発した治療を含めて,最良の方法を行うようにしています。

小児外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
060160x101xxxx 鼠径ヘルニア(15歳未満)

ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等
22 2.68 2.79

0.00

3.41
140590xx97xxxx 停留精巣

手術あり

13

2.77 3.02 0.00 4.46
060340xx99x0xx 胆管(肝内外)結石,胆管炎

手術なし 手術・処置等2なし
- - 9.76 -

-

060170xx02xxxx 閉塞,壊疽のない腹腔のヘルニア

ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等
- - 8.17 - -
11022xxx01xxxx 男性生殖器疾患

精索捻転手術等
- - 3.84 - -

小児外科では,主に小児悪性腫瘍の治療をはじめとした重症の小児外科疾患の治療を行っていますが,同時に一般疾患の先進的な治療も積極的に行っています。

小児鼠径ヘルニアは小児外科手術の中で最も多い疾患であり,子供100人に1人程度の割合で発症します。基本的には自然治癒することはほとんどなく,腸管などがはまり込んでしまう(嵌頓)の危険性があるため,手術を行います。広島大学病院では2020年より男児女児ともに腹腔鏡下手術を基本術式として行っており,原則は2泊3日,相談により1泊2日での手術も行っています。鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術では,現在症状のない反対側のヘルニアも術中に有無が確認でき,もし反対側にもヘルニアが存在すれば同時に治療が可能であるため,将来的に再度手術を行うリスクを減らすことができるという大きなメリットがあります。そのため最近では腹腔鏡手術を希望されて来院される方も増えてきたため,症例数が増加しています。

陰嚢水腫も鼠径ヘルニアとほぼ同じ疾患です。鼠径ヘルニアでは出生時に閉鎖するはずの「腹膜鞘状突起」が大きく開いたままになっており,ここに腸管などが脱出します。陰嚢水腫ではこの「腹膜鞘状突起」が小さく開いていることで,腹水が貯留して鼠径部や陰嚢が膨らみます。通常3歳くらいまでに自然となくなることが多いですが,なかなか治らない場合には鼠径ヘルニアと同様の手術を行います。

停留精巣は男児において生下時より精巣が陰嚢内に触知しないという疾患であり,将来的には不妊や精巣腫瘍の原因となります。手術の不要な移動性精巣との鑑別はしばしば難しく,専門の施設での診察が勧められます。診断がつけば,1歳~1歳半を目安に精巣を陰嚢に固定する手術を行います。

小児外科ではこのような一般的な「日常疾患」と呼ばれる疾患を治療する他にも,非常に様々な分野・臓器の手術を数多く行います。中国・四国ブロックにおいて唯一の小児がん拠点病院の指定を受けている広島大学病院の特徴でもある小児固形腫瘍(神経芽腫・胚芽腫・腎芽腫・奇形腫など)の手術,胸部・呼吸器疾患の手術,胆道閉鎖症や胆道拡張症などの肝胆道系手術,ヒルシュスプルングなどの腸管手術,尿道下裂や精巣捻転などの泌尿器系手術など,非常に多岐にわたる手術を行っています。

産科婦人科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等24あり 定義副傷病 なし
251 4.65 4.44 0.00 60.72
120010xx99x50x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等25あり 定義副傷病 なし
146 4.02 4.34 0.00 61.75
120010xx99x40x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 

手術なし 手術・処置等24あり 定義副傷病 なし
139 3.64 4.78 0.00 61.02
12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍

子宮悪性腫瘍手術等 手術・処置等2 なし
69 12.42 11.96 0.00 53.83
120010xx99x70x 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 

手術なし 手術・処置等27あり 定義副傷病 なし
68 3.51 4.24 0.00 61.82

【産科】

・周産期専門医認定施設の基幹施設であり,ハイリスク妊娠・分娩,早産を主に取り扱っています。

・新生児集中治療室(NICU),小児科との連携により,早産が予測される母体の管理が可能です。

・特発性血小板減少性紫斑症(ITP)などの血液疾患,全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患,潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化器・代謝疾患,その他の稀な合併症疾患など,多くの合併症妊娠例を母科と連携して管理しています。

・妊娠高血圧腎症や胎児発育不全,前置・低置胎盤などの産科合併症症例も多く取り扱っています。

・高度救命救急センター/ICU,麻酔科,手術室,小児科,NICUとの連携により超緊急帝王切開を迅速に行うことが可能です。また,弛緩出血や子宮型羊水塞栓などの産後大量出血に対して,放射線診断科(IVR部門)の協力により,緊急動脈塞栓術を行うことも可能な施設です。

【婦人科】

・婦人科がん全般に対しては,婦人科腫瘍修練施設として,3名の婦人科腫瘍専門医を中心として手術療法・化学療法・放射線療法・ホルモン療法・遺伝子診断などを含めた集学的医療を実践しています。

・卵巣癌に関しては,手術と化学療法の集学的治療が必要であり,コンパニオン診断薬を行いながら化学療法を導入しています。維持療法,再発治療でも化学療法を適切に選択しています。

・がんゲノム医療に関しては,増加するコンパニオン診断に対応し適切な治療を行っています。また,がん遺伝子パネル検査についても積極的に取り組んでいます。

・遺伝子診療科と連携して,近年注目されている遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)やリンチ症候群を含めた遺伝性腫瘍・家族性腫瘍に対して遺伝カウンセリングを行っています。

・2020年度の婦人科悪性腫瘍件数は,子宮頸癌46例,子宮体癌45例,卵巣癌29例でした。

・良性疾患では,重症の子宮内膜症症例や子宮腺筋症に対する管理や治療を行い,卵巣腫瘍茎捻転などの緊急性のある婦人科疾患にも対応しています。

・骨盤臓器脱にも対応しており,腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)やロボット支援下仙骨膣固定術(RSC)などを含めた手術療法も積極的に行っています。

・全国的な組織である婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)の認定施設,全世界的な組織であるNRG Oncologyの本邦認定施設(全国約20施設)として,最先端の臨床試験に積極的に参加しています。

眼科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
020110xx97xxx0 白内障,水晶体の疾患

手術あり片眼
350 3.36 2.76 0.29 71.89
020220xx01xxx0 緑内障

緑内障手術 濾過手術片眼
338 6.63 9.79 0.00 68.70
020220xx97xxx0 緑内障

その他の手術あり片眼
222 4.05 5.79 1.35 66.03
020160xx97xxx0 網膜剥離

手術あり片眼
154 6.12 8.97 0.00 56.09
020110xx97xxx1 白内障,水晶体の疾患

手術あり両眼
121 5.87 4.95 0.83 74.79

眼科では,主として緑内障、角膜、網膜硝子体、小児の眼科および眼形成の5つの専門部門に分かれて診療にあたっており,神経眼科やロービジョンの外来も設けています。

入院の多くは,白内障手術(1位片眼,5位両眼)をされる患者さんです。

次に緑内障手術が多くの割合を占めます。2番目の濾過手術は線維柱帯切除術を意味しており,3番目には繊維柱帯切開術や緑内障チューブシャント手術などが含まれます。

その次が網膜剥離の手術で,硝子体手術や網膜復位術が含まれます。

このように幅広い疾患に対して多くの手術を行っています。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
03001xxx0100xx 頭頸部悪性腫瘍

頸部悪性腫瘍手術等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし
52 11.52 13.68 0.00 66.88
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 41 5.73 6.71 0.00 52.27
030150xx97xxxx 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍

手術あり
39 7.05 7.20 0.00 51.46
03001xxx99x31x 頭頸部悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等23あり 定義副傷病あり
38 46.53 43.67 0.00 65.39
030240xx99xxxx 扁桃周囲腫瘍,急性扁桃炎,急性咽頭喉頭炎

手術なし
33 4.85 5.63 0.00 36.97

耳鼻咽喉科・頭頸部外科では入院患者の7割以上が悪性腫瘍です。頭頸部悪性腫瘍の治療方針は,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の他,放射線治療科・放射線診断科・がん化学療法科・遺伝子診療科・口腔総合診療科など,多科にわたる連携チームで検討しています。

当院は日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医制度指定研修施設であり,頭頸部がん専門医が4名在籍しており,悪性腫瘍以外にも難易度の高い良性腫瘍手術も多く施行しています。また内視鏡下甲状腺手術(VANS)などの低侵襲手術,高度先進医療である中咽頭癌に対する経口ロボット手術などの先進的な医療にも対応しています。またJCOG頭頸部癌グループで種々の臨床治験に参加すると同時に,希少癌や再発症例に対しては遺伝子パネルなどを用いて最適な治療提供を心がけています。

副鼻腔炎,慢性中耳炎などの良性疾患,唾液腺や甲状腺などの良性腫瘍,救急対応を要する急性感染症などに関しても,手術難易度の高い症例や合併症等で治療困難な症例が集まる傾向にあります。特に疫学的な増加現象を認めている好酸球性副鼻腔炎(ECRS)の治療に関しては,新規抗体製薬の国内治験にも参加します。

また当院は日本鼻科学会認定手術指導医制度認可研修施設であり,内視鏡下鼻・副鼻腔手術に関しては,内視鏡下鼻・副鼻腔手術V型(拡大副鼻腔手術)や広範頭蓋底手術などの難易度の高い手術も多く行い,多くの手術においてもナビゲーションシステムを併用し安全を第一に手術を行っています。

当院は日本耳科学会認定手術指導医制度認可研修施設であり,高度難聴に対しての人工内耳埋め込み術,慢性中耳炎などに対しての鼓室形成術,より手術侵襲の少ない内視鏡下耳科手術も数多く行っています。

放射線治療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
100020xx99x2xx 甲状腺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等2 2あり
85 3.48 6.15 0.00 62.79
060010xx99x30x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。)

手術なし 手術・処置等2 3あり 定義副傷病 なし
23 7.87 17.00 0.00 65.87
060010xx99x31x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。)

手術なし 手術・処置等23あり 定義副傷病 なし 
11 49.00 38.95 0.00 74.45
040040xx9902xx 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 2あり
- - 21.47 - -
03001xxx99x2xx 頭頸部悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等2 2あり
- - 32.48 - -

放射線治療科では,最先端の高精度放射線治療を積極的に行っています。体幹部定位照射は,放射線を多方向からピンポイントに照射する治療法で,サイズの小さな肺癌・肝臓癌(転移性を含む)を高い確率で治癒に導きます。強度変調放射線治療(IMRT)は,照射範囲内の放射線ビームの強度を細かく調整し自由度の高い線量分布を達成します。当院では照射筒を回線させながら強度変調照射を行う強度変調回転照射(VMRT)を採用し行っています。本法では,効率の良い照射による短時間照射が可能で,患者さんの負担軽減,治療患者数の増加(スループット向上)が得られています。頭頸部癌を主体に多くの疾患において,有害事象を低率におさえつつ病変への確実な線量投与を行うことで,よりよい治療成績につなげています。これらの治療を精度高く行うため,放射線治療専門医・医学物理士・放射線治療専門技師を含む診療放射線技師・がん放射線治療看護認定看護師がチームとして日々診療にあたっています。

●甲状腺に対する内照射

甲状腺がんの治療における放射線治療の役割は,手術後の再発を予防するため全摘術後の残存甲状腺組織の破壊(アブレーション)を行うこと,既に再発・転移を来した腫瘍に対する治療の2つが挙げられます。甲状腺がんに対する放射線治療の方法は,放射線ヨウ素(I-131)を内服して体内から放射線を当てる内部照射が主体となります。内部照射では,甲状腺がヨウ素を取り込む性質を利用して,服用した放射線ヨウ素を甲状腺に取り込ませ,手術で取り除けなかった微量の甲状腺組織や再発・転移を体内から照射します。内服した放射線ヨウ素により患者さんの体内から放射線が放出することから,数日間は専用の個室で過ごしていただくことになります。この専用個室は広島県内には当院しかないため,近隣施設から多くの患者さんの紹介を受け治療を行うのが当科の特徴の一つになっています。

●食道癌に対する化学放射線療法

当院における食道癌治療に放射線治療は深く関与しています。早期食道癌のうち,ごく表在性のものは内視鏡治療の良い適応ですが,内視鏡治療で切除困難な広範囲あるいはやや厚みのある早期食道癌では手術あるいは化学放射線治療が選択されます。その治療成績は,化学放射線療法と手術で同等で,臓器温存を希望する患者さんには,積極的に化学放射線治療を施行し,非常に良好な治療成績を達成しています。局所進行食道癌では,手術療法が第一選択となります。当院では,術前に行う補助療法として化学放射線治療を施行しています。手術を施行しやすくすることと,再発を抑えることを目的として,治療成績の向上を目指しています。頸部食道癌は,解剖学的に放射線治療が難しい場所です。従来の照射法では,十分な線量の投与が困難な場合がありましたが,VMATを導入することでこの問題は解消しました。胸部食道癌の放射線治療では晩期心呼吸器合併症が問題となります。当院では,本合併症回避を目的として,VMATを導入,積極的に施行しています。

●肺癌に対する放射線治療

当院での肺癌治療における放射線治療の特徴としては,早期肺癌に対する定位放射線治療と進行肺癌に対する化学放射線療法が挙げられます。早期肺癌については手術が第一選択ですが,高齢者や合併症を有するため手術困難と判断された場合や手術を希望されない場合に選択されます。定位放射線治療は病変に限局して高線量を投与するため,身体負担が少なく高い効果を得ることができます。局所進行肺癌に対する化学放射線療法は切除困難な場合に選択されますが,最近は免疫チェックポイント阻害薬との併用により治療成績は向上しています。放射線治療に関してもVMATを積極的に導入し,病変への十分な線量投与を保つと同時に放射線肺臓炎などの副作用の低減を図り,安全に高い効果を得られるよう努めています。

●頭頸部癌に対する放射線治療

当院における頭頸部癌に対する放射線治療は,ほぼ全てをVMATで施行しています。頭頸部癌はVMATの非常に良い適応で,腫瘍制御を達成しながら,従来の三次元放射線治療では回避できなかった有害事象の発生率やその程度を劇的に改善することができるようになりました。上咽頭,中咽頭,下咽頭癌,喉頭癌,副鼻腔癌を主体とするほとんどの頭頸部癌の根治照射および術後照射が対象で,唾液腺分泌障害,顎骨壊死,嚥下障害,脳壊死など晩期障害の軽減に貢献しています。

脳神経内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
010155xxxxx0xx 運動ニューロン疾患等

手術・処置等2なし
29 11.59 13.40 6.9 60.55
010230xx99x00x てんかん

手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
26 8.46 7.48 15.38 43.04
010110xxxxx4xx 免疫介在性・炎症性ニューロパチー

手術・処置等24あり
23 22.00 16.95 30.43 59.48
010060x2990201 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内,かつ,JCS10未満)

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等22あり 定義副傷病なし発症前Rankin Scale 0,1又は2

15

12.40 15.54 13.33 75.33
010155xxxxx2xx 運動ニューロン疾患等

手術・処置等22あり
13 15.77 16.14 0.00 66.31

●頭痛,めまい,物忘れ,手足のしびれや力の入りにくさ,手のふるえ,歩きにくいといった症状に対して,正確な診断・適切な治療を行っています。

●脳血管障害(脳梗塞,脳出血),神経変性疾患(アルツハイマー型認知症,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症など),免疫・炎症性疾患(多発性硬化症,ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,筋炎,重症筋無力症など),神経感染症(脳炎,髄膜炎など),筋ジストロフィー,てんかん,慢性頭痛などの脳神経内科特有の疾患について,それぞれの専門領域の医師が診療を行っています。てんかんが疑われ長時間ビデオ脳波検査が必要な場合,入院で検査を行います。

●入院病棟においては,救急疾患から慢性疾患にいたるまでの幅広い領域に対してチーム医療で取り組み,質の高い医療を提供し,スムーズに退院できるように連携しています。

皮膚科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外)

皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2 なし
28 6.57 7.71 0.00 73.86
070041xx99x5xx 軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く。)

手術なし 手術・処置等25あり
18 2.22 5.02 0.00 51.50
080220xx99xxxx エクリン汗腺の障害、アポクリン汗腺の障害

手術なし
18 3.11 3.99 0.00 28.94
080005xx01x0xx 黒色腫 皮膚悪性腫瘍切除術等

手術・処置等2なし
16 12.50 12.39 0.00 66.63
080010xxxx0xxx 膿皮症

手術・処置等1なし
16 7.56 12.87 6.25 58.38

皮膚科では,重症,難治性の皮膚疾患の診療を多く行っています。大学病院という特性上,皮膚悪性腫瘍(皮膚がん)の患者さんが多く,遠方の患者さんの入院治療も数多く行っています。主な皮膚悪性腫瘍としては,悪性黒色腫,有棘細胞がん,基底細胞がん,乳房外パジェット病などがありますが,その他の皮膚がんや浅い部位にあたる軟部腫瘍にも対応し,また,幅広い年齢層の患者さんの手術を行っています。皮膚悪性腫瘍の入院期間は,およそ1-2週間です。

膿皮症という臀部や脇に感染を繰り返す病変に対しても手術を行っており,病変が大きい場合は入院期間が少し長くなります。

発汗障害の治療も積極的に行っており,発汗試験により発汗低下がある場合は治療も行っています。

それ以外には,湿疹・皮膚炎群では,主にアトピー性皮膚炎の入院治療を行っています。急性憎悪時に緊急入院を行う他,教育入院にも力を入れており,それらは7-10日間程度の入院となっています。また,蜂窩織炎や壊死性筋膜炎といった細菌性疾患,熱傷,蕁麻疹などの入院治療も行っています。

泌尿器科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1 あり
179 2.06 2.54 0.00 68.68
110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍

前立腺悪性腫瘍手術等
70 12.16 11.89 0.00 67.66
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍

膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等2なし
67 7.46 7.13 1.49 75.15
11001xxx01x0xx 腎腫瘍

腎(尿管)悪性腫瘍手術等 手術・処置等2 なし
52 11.46 11.03 0.00 63.12
110070xx03x20x 膀胱腫瘍 

膀胱悪性手術 経尿道的手術 手術・処置等22あり 定義副傷病あり
42 6.36 7.05 0.00 72.50

泌尿器科疾患の中で,特に前立腺がん患者が多数を占めており,その確定診断のための前立腺生検が最も多い入院治療でした。2017年から始めたMRIと超音波所見を融合させて行う狙撃生検によって診断率の向上が確認されています。ロボット支援手術は安定して多く認められ,前立腺がん・腎がん・膀胱がんに対する根治的前立腺全摘除術,腎部分切除術,根治的膀胱全摘除術がそれぞれ行われました。

前立腺がんに次いで多いのが膀胱がんで,経尿道的膀胱腫瘍切除術を主体とした治療が行われています。サイズの大きい腎がんや腎盂尿管がんに対しては多くの場合,腹腔鏡下手術が行われています。

このように当科では,尿路精路に発生する悪性腫瘍に対する診断と治療を多く行っており,体に負担が少ない治療として,ほとんどの疾患でロボット支援手術,腹腔鏡手術といった低侵襲術式が行われているのが泌尿器科疾患治療の特徴です。さらに,泌尿器がんに対しては新しい全身薬物治療が次々と導入され治療成績が向上しています。その有害事象管理を目的とした入院が増加しています。

呼吸器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし
115 3.33 3.39 0.00 70.39
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし
84 6.70 9.42 2.38 70.05
040110xxxxx0xx 間質性肺炎

手術・処置等2 なし
61 15.23 18.61 16.39 73.84
040040xx9900xx 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし
26 10.23 13.30 23.08 70.81
040040xx9905xx 肺の悪性腫瘍

手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等25あり
26 25.12 19.51 3.85 72.58

呼吸器内科では,呼吸器疾患の診断や病態の解明をするために,呼吸機能検査・FeNO(呼気中一酸化窒素)・呼吸気道抵抗測定を行っています。また肺癌,間質性肺炎などの診断のために気管支鏡検査を行う際には,安全性を重視し基本的には3日間の入院で行っています。

間質性肺炎の診断のために,呼吸器外科と連携し,胸腔鏡下肺生検を行い,ステロイド治療や免疫抑制剤等による治療を行うにあたり,治療効果や副作用を十分に把握するために入院の上で治療を開始するようにしています。

肺癌については放射線治療科および呼吸器外科の医師と連携をはかり個々の患者さんごとに治療方針を決定しています。化学療法(免疫チェックポイント阻害薬含む)や放射線治療を行う際には副作用や合併症の発現に注意し迅速に対応するために入院で治療を開始しています。外来化学療法への移行をスムーズに行い,抗癌剤や免疫治療薬の変更が必要になった際には入院していただいた上で安全性を確認後,再度外来化学療法へ移行できるようにしています。

循環器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈

経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2 なし
320 4.51 4.95 0.31 65.39
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患

経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1 なし、1、2あり 手術・処置等2 なし  定義副傷病 なし
94 6.04 4.44 6.38 72.24
050050xx9920xx 狭心症,慢性虚血性心疾患

手術なし 手術・処置等12あり 手術・処置等2あり
76 5.53 3.26 3.95 71.20
050080xx9910xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。)

手術なし 手術・処置等11あり 手術・処置等2なし
76 7.41 5.77 2.63 75.03
050050xx9910xx 狭心症,慢性虚血性心疾患

手術なし 手術・処置等11あり 手術・処置等2なし
75 3.36 3.07 0.0 69.45

循環器内科では,心臓や血管の病気を中心とした全身疾患の診療を行っています。高齢化や生活習慣により,心臓の血管の病気(狭心症や心筋梗塞),心筋の病気(心筋症),弁膜の病気(弁膜症),心房細動という頻脈性(脈が速くなる)不整脈は年々増加してきています。このため,これらの病気により引き起こされる心不全も増加しています。一方で,その診断と治療方法(医療機器や技術)は急速に進歩を遂げています。当科は中国・四国地方の循環器疾患において最も高度な診療体制を整えています。心筋梗塞・弁膜症・不整脈・心不全・肺高血圧・下肢血管の治療に熟練した医師と,心エコー・心臓CT・心臓MRI・心筋シンチなどの画像診断のスペシャリストが一致団結して診断と治療にあたっています。高度救命救急センター,心臓血管外科と協力の上,重症患者の治療も行っています。

全国に先駆け開設された心不全センターでは,広島県内近郊に回復期リハビリテーションを実施する心臓いきいきセンターを整備し,多職種で協力して心不全に対する包括的治療を行っており,厚生労働省のモデル病院になっています。

重症心臓弁膜症については,全例,心臓CTおよび3D経食道心エコーを中心とした正確な術前評価がされています。ハートチーム多職種カンファレンスでの協議を経て,最前の治療戦略をご提案しています。

狭心症については,心筋シンチや冠血流予備量比(FFR)測定などを用いて心筋虚血の評価を十分に行い,複雑な冠動脈病変については心臓血管外科と協議のうえ,治療方針を決定しています。カテーテル治療に加えて,慢性期治療として心臓リハビリテーションや薬物療法の見直しによる2次予防にも力を入れ,包括的治療を行っています。通常の冠動脈形成術以外にもロータブレーター,エキシマレーザー,DCA(方向性粥腫切除術)治療も可能です。

不整脈治療においては,全国トップクラスの実力を有しています。スタッフも充実し,最新の機器を使用して最先端の治療を行っています。経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)については,現在使用可能な3種類の3Dマッピングシステムすべてを装備しており,高周波カテーテルアブレーションに加え,バルーンアブレーションも使用可能です。突然死の原因となるブルガダ症候群やQT延長症候群など,遺伝性致死的不整脈の突然死予測のためのリスクの層別化や遺伝子診断による個別化治療なども行っています。心筋頻拍など重症不整脈の薬物療法,カテーテル治療やデバイス治療も積極的に行っており,他院で治療困難な重症例の治療にも取り組んでいます。デバイス治療にも力を入れており,植え込み後は,遠隔モニタリングを用いて患者さんの状態を常に把握し,アフターケアも万全です。島しょ部や遠隔地との連携にも役立っています。県内で唯一のレーザーシースを用いたリード抜去可能施設であり,デバイス感染によりリード抜去が必要な場合には,当院で受け入れを行っています。

内分泌・糖尿病内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
100180xx990x0x 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍

手術なし 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし
42 5.64 6.26 0.00 55.17
100180xx991xxx 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍

手術なし 手術・処置等1 あり
37 6.08 3.73 0.00 52.59
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。)

手術・処置等21あり
30 11.30 14.60 0.00 65.10
10007xxxxxx0xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。)

手術・処置等2なし
18 8.94 11.26 0.00 69.69
100220xx99xxxx 原発性副甲状腺機能亢進症,副甲状腺腫瘍

手術なし
13 2.00 9.92 0.00 69.69

内分泌・糖尿病内科では,外来通院では血糖管理の難しい方,そして当院での手術が予定され厳格な血糖管理が必要な方などを対象に入院による糖尿病治療を行っています。この1年の内訳は,1型糖尿病9例(うち糖尿病ケトアシドーシス2例),2型糖尿病60例,その他の糖尿病13例となっています。細小血管症(眼・腎臓・神経)や動脈硬化症(脳・心臓・下肢)の合併症精査も同時に行います。併せて,糖尿病療養指導士の資格を持った看護師や管理栄養士・理学療法士・薬剤師など多職種に渡るチーム体制のもと,糖尿病専門医の責任下に糖尿病教育にも力を入れています。また,持続血糖モニター(OGM:continuous glucose monitoring)や間歇スキャン式持続血糖測定器による詳細な血糖プロファイルの管理や,CGM機能付きインスリンポンプの導入も積極的に行っています。

副腎腫瘍は,CTなどの腹部画像検査を行った方の1%程度に認め,決して稀な疾患ではありません。副腎腫瘍のうち悪性が疑われる,または,ホルモン過剰産生を示す際に手術適応となります。ホルモン過剰産生を示す代表的な疾患として,クッシング症候群,原発性アルドステロン症,褐色細胞腫などがあげられますが,手術加療により生命予後が大幅に改善されます。当院では,副腎腫瘍に対する精査を積極的に実施しており,副腎腫瘍の早期診断・早期加療に努めています。

原発性副甲状腺機能亢進症は,頚部甲状腺背側にある副甲状腺に腫瘍を認め,その腫瘍から副甲状腺ホルモンを過剰に分泌する疾患です。本疾患は高カルシウム血症を呈し,骨粗鬆症,尿路結石,腎機能障害などを合併します。副甲状腺腫瘍を摘出することにより,高カルシウム血症は治癒し,骨粗鬆症,尿路結石,腎機能障害の発生リスクは改善されます。当院では,原発性副甲状腺機能亢進症の早期診断・早期治療に努めています。

腎臓内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし
74 9.18 11.04 4.05 54.51
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全

動脈形成術,吻合術 その他の動脈等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
22 5.05 8.15 0.00 64.45
110280xx9901xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等21あり
20 7.15 14.01 5.00 64.60
070560xx99x00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患

手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
10 14.50 15.28 10.00 55.50
110280xx02x1xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全

動脈形成術,吻合術 その他の動脈等 手術・処置等21あり
- - 33.50 - -

腎臓内科では,検尿異常から末期腎不全まで,腎臓疾患全般にわたり幅広い診療を行っています。

尿検査でたんぱく尿が陽性の場合,腎臓に何らかの病気があることが疑われます。たんぱく尿は糸球体腎炎などの腎臓の病気で陽性になります。糖尿病や高血圧などの生活習慣病も腎臓に負担がかかり,たんぱく尿が陽性になることがあります。たんぱく尿が陽性でも,ほとんどの場合は自覚症状がありません。しかし,放置すると腎機能が低下して透析や腎移植が必要な末期腎不全になってしまう危険があります。また,たんぱく尿が陽性の人は心筋梗塞や脳卒中,死亡のリスクが高いことが分かっています。

尿潜血が陽性の場合,糸球体腎炎などの腎臓の病気,腎結石,腎臓や膀胱の癌などの泌尿器科の病気が隠れていることがあります。

健康診断や病院では,血液検査でクレアチニンというたんぱく質の濃度を測定し,さらに年齢と性別からeGFRを計算して,腎機能を評価します。eGFRが低いほど腎臓の働きが低いと診断され,その値は腎臓の働きが「正常に比べておよそ何%か」を表しています。腎臓の働きが正常に比べて60%未満にまで低下している人は,末期腎不全,心筋梗塞,脳卒中,死亡のリスクが高いことが分かっています。

腎臓内科では,検尿異常や腎機能異常を認める患者さんに対し,尿検査,血液検査,画像検査,腎生検などの検査を駆使して正確な診断をつけ,治療方針を立てます。検尿異常や腎機能異常のために行う腎生検は年間100件以上行っており,安全に検査を行うことが出来るように心がけています。

遺伝が関係する腎臓疾患の診察にも対応し,常染色体優性多発性嚢胞陣(ADPKD)に対するトルバプタン(サムスカ)治療,ファブリー病に対する酵素補充療法などを行っています。

腎臓の病気は治りにくいという印象があるかもしれませんが,必ずしもそうではありません。過去,数十年にわたる医学の進歩により,病気の進行を相当におさえることが可能となっています。腎臓の病気は薬だけで治すものではなく,適切な食事・飲水,体重の管理,運動や安静,睡眠など,日々の過ごし方が重要な意味を持ちます。

腎臓の働きが悪くなると,体内に尿毒素がたまり,貧血をきたし,過剰な塩分や水分がたまって浮腫や高血圧の原因となります。さらにひどくなると食欲が低下し,肺に水がたまって呼吸が苦しくなることもあります。この状況が末期腎不全であり,生命を脅かす危険があります。

日本では毎年3万人以上の患者さんが腎不全のために血液透析,腹膜透析,腎移植いずれかの治療法を新たに必要としています。日本では諸外国と比べて腹膜透析を選択される患者さんが少ないのですが,医療施設で腹膜透析の情報を十分に提供できていないことが原因と考えられます。腹膜透析は治療のために拘束される時間と通院回数が少ない,食事制限が比較的緩やか,といった長所があります。腎臓内科では患者さんの価値観やライフスタイルを尊重し,3つの治療法のうち,どの方法が患者さんに適しているかを一緒に考えます。

救急集中治療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒)

手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし
63 1.90 3.81 7.94 40.79
040250xx99x1xx 急性呼吸窮<促>迫症候群

手術なし 手術・処置等2あり
24 9.46 22.36 91.67 58.83

180010x0xxx2xx

敗血症(1歳以上) 手術・処置等22あり 20 14.75 32.44 85.00 73.70

160800xx01xxxx

股関節・大腿近位の骨折

人工骨頭挿入術 肩,股等
17 9.88 25.09 82.35 59.47
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷

その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし
16 6.13 9.68 37.50 52.38

救急集中治療科は,広島大学病院の高度救命救急センター(集中治療室(ICU)及び救急ケアユニット(ECU))及びハイケアユニット(HCU)における診療を担っています。高度救命救急センターとは,極めて重症度や緊急性の高い病気や外傷(ケガ)を幅広く治療する医療施設です。

当院は,広島県で唯一の「高度救命救急センター」として認定を受けており,地域の最重症救急患者を集約化して診療しています。また,院内で他疾患の診療経過中などに発生した重症患者さんの集中治療を行っています。

高度救命救急センターでは,24時間体制で専属の医師(救急科専門医/集中治療専門医)が常駐し,交通事故や災害による重症外傷,急性呼吸不全(急性呼吸窮迫症候群,重症肺炎,間質性肺炎),急性心不全(急性心筋梗塞,急性心筋炎,重症不整脈),重症感染症(敗血症,軟部組織感染症,髄膜炎),脳卒中(脳出血,クモ膜下出血),けいれん,急性肝不全,急性腎不全,消化管出血(吐血,下血),熱中症,多臓器不全など,多彩な疾患の診療を行っています。その他,通常の病院では治療困難な広範囲熱傷,指肢切断,急性中毒などの特殊疾患も受け入れています。人工呼吸器,体外式心肺補助,血液透析,血漿交換,大動脈内バルーンパンピング,心臓ペーシング,補助循環用ポンプカテーテル(インペラ)など,様々な先進医療機器を用いて最前の医療が提供できるよう努めています。2020年からの新型コロナウィルス病(COVID-19)の流行に伴い,人工呼吸やECMOを必要とする最重症COVID-19患者を広島県全体から集約化して受け入れています。

救急集中治療科では,多様な専門分野を持った救急集中治療医が中心となり,各専門診療科の医師・看護師・薬剤師・理学療法士・臨床工学技士・管理栄養士などがチームとして機能し,力を合わせて様々な疾病・傷病に対応します。医療従事者が知識と技術を集結してひとつひとつの命を丁寧に救っていくことを目標としています。

DPC主要疾患に挙げられた各病態において特筆すべきは,在院日数が全国平均の4割程度とはるかに短いことです。これは,上述のような専門医と多職種チームの連携によるきめ細かな診療に加え,最小限の侵襲により最大限の救命と早期の回復を目指すという無駄のない診療が功を奏している結果と考えられます。

なお,現行のDPC制度における今回の集計方法では,救急集中治療科から他の診療科に転科となった患者さんや,他の診療科と併診している患者さんの数が含まれないので,救急集中治療科としての診療実績が正確に反映されていないことにご注意ください。

敗血症:肺炎や尿路感染症,腹膜炎など様々な感染症が原因となり発症する急性の多臓器障害を敗血症と呼びます。敗血症は致死率が30%にも及ぶ重篤な感染症の病態です。感染症指導医資格を有する救急科専門医が中心となり,最新のエビデンスに基づいた人工呼吸管理,血液浄化療法などの臓器機能代替療法,循環作動薬や抗菌薬などを用いた急性期の総合的集中管理を行うことにより救命率の向上を目指しています。

多発外傷(頭部外傷を含む):交通事故,転落などにより受傷された,四肢体幹,頭部,胸腹部など生命維持に危険のおよぶ重症外傷患者さんを受け入れ様々な外科系専門診療科と連携し治療を行っています。特に四肢体幹外傷については四肢外傷再建科の専属医師が高度救命救急センターへ常駐し,重症四肢外傷の救肢及び機能予後を考えた集学的治療の充実を図っています。

呼吸不全:様々な原因により発生する重症の呼吸不全である急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者さんの治療を中心に,幅広く人工呼吸を要する呼吸不全患者さんの治療を行っています。COVID-19に伴うARDS患者さんも多く受け入れています。呼吸器科専門医や呼吸療法専門医資格を持つ救急科専門医が中心となり,最新のエビデンスを取り入れた人工呼吸療法に加え,人工呼吸器のみでは治療困難な最重症呼吸不全患者に対して,体外式膜型人工肺(VV-ECMO)を用いた先進医療も行っています。また,急性期の人工呼吸器早期離脱や早期離床のためのリハビリテーションにも力を入れ,速やかに亜急性期における回復に進んでいくよう援助しています。

重症熱傷:県内唯一の日本熱傷学会熱傷専門医認定施設とし,重症熱傷患者を積極的に受け入れ皮膚科との協力の下,集学的治療を行っています。

小児重症患者:広島県にはこども病院,小児救命救急センター,小児集中治療室(PICU)がありません。当科では人口呼吸やECMOが必要な重症の小児患者さんを集約化して治療する仕組みを近隣病院との連携の中で作り,小児救急の専門医資格を持つ救急医を中心に小児科医と共に診療を行っています。

血液内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
130030xx99x5xx 非ホジキンリンパ腫

手術なし 手術・処置等25
55 18.85 20.27 3.64 64.58
130010xx97x2xx 急性白血病

手術あり 手術・処置等22あり
50 32.20 38.35 0.00 59.42
130030xx99x4xx 非ホジキンリンパ腫

手術なし 手術・処置等24あり
48 9.56 11.14 0.00 68.04
130030xx97x50x 非ホジキンリンパ腫

手術あり 手術・処置等25あり 定義副傷病なし
33 31.36 31.90 6.06 64.48
130030xx99x3xx 非ホジキンリンパ腫

手術あり 手術・処置等23あり
32 15.56 16.62 3.13 66.69

血液内科では,あらゆる血液疾患の診療が可能です。特に白血病やリンパ腫・骨髄腫などの造血器悪性腫瘍の治療に力を入れており,関連診療部門との緊密な連携体制のもと,新規治療薬の臨床試験(治験)と造血幹細胞移植を積極的に行っています。また,中四国地方におけるHIV/エイズ診療拠点病院としての役割も担っています。

造血器疾患の治療成績は年々向上していますが,依然として治癒をもたらすことが難しい病気も多く存在しています。また,必ずしも治癒を目指さなくても,QOLの高い生活を維持することが可能な場合もしばしばあります。したがって,私たちの診療科では,納得のいく医療を受けていただくために,患者さんやそのご家族との「対話」を最も重視しています。患者さん・ご家族の不安や疑問に時間をかけてお答えしていきたいと考えていますので,病状・診療方針についてお尋ねになりたいことがありましたら,何でもお気軽にご相談ください。

<急性白血病:手術あり 手術・処置等22あり>

急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病に対して,化学療法で治療を行った患者さんの入院数を表しています。

<非ホジキンリンパ腫:手術なし 手術・処置等24あり>

非ホジキンリンパ腫に対して,リツキシマブという薬剤を使用して治療を行い,輸血や手術を行わなかった患者さんの入院数を表しています。

<非ホジキンリンパ腫:手術あり 手術・処置等25あり 定義副傷病なし>

非ホジキンリンパ腫に対して,まず診断のための組織生検術を行い,その後リツキシマブとG-CSF製剤という薬剤を使用して治療を行い,輸血や手術は行わなかった患者さんの入院数を表しています。

<非ホジキンリンパ腫:手術なし 手術・処置等23あり>

非ホジキンリンパ腫に対して,(リツキシマブを含まない)化学療法で治療を行った患者さんの数を表しています。(放射線療法を行った場合は除かれています。)

消化器・代謝内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。)

内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術
517 2.25 2.66 0.00 66.36
060050xx97x0xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。)

その他の手術あり 手術・処置等2なし
223 10.96 10.70 4.04 74.03
060050xx99000x 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) 

手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病 なし
212 8.16 8.65 7.08 70.92
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍

内視鏡的胃,十二指腸ポリープ・粘膜切除術
185 6.48 8.11 0.00 71.24
060035xx03xxxx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍

早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術
115 7.51 6.85 0.00 67.65

消化器・代謝内科では,各臓器別に専門性の高いチーム医療を行っています。

肝臓領域では,B型肝炎,C型肝炎に対する最新の高ウイルス治療に取り組んでおり,また非アルコール性脂肪性肝炎に対しても,栄養指導,運動療法,薬物治療など積極的に取り組んでいます。肝癌に対しては,内科,外科,放射線科による合同カンファレンスにて治療方針を話し合い,患者さんの予後向上を目指した集学的治療を行っています。移植も念頭に置いた急性肝不全の治療や,胃食道静脈瘤,腹水,肝性脳症など肝硬変の合併症に対する治療も行っています。

膵臓・胆道領域では,膵臓がん・胆道がんなどの悪性腫瘍を中心として,自己免疫性膵炎やIgG4関連硬化性胆管炎などの炎症性疾患,良性疾患である胆石や膵石,膵のう胞など,様々な疾患に対する診断・治療(内視鏡的・経皮経肝的治療や化学療法など)を行っています。特に内視鏡を用いた超音波内視鏡(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連手技を積極的に施行し,良悪性疾患の早期診断や治療に努めています。

消化管領域では,日本および世界で最先端の消化器内視鏡診断と治療を行っており,その実績は国際的にも評価されています。食道癌,胃癌,大腸癌などの消化管腫瘍や潰瘍性大腸炎,クローン病など多岐にわたる消化器疾患に対する診療を行っています。

消化器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
060050xx02xxxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。)

肝切除術 部分切除等
120 20.33 15.58 5.00 71.05
060010xx99x40x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。)

手術なし 手術・処置等24あり 定義副傷病なし
98 8.29 9.31 2.04 66.07
060035xx010x0x 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍

結腸切除術 全切除,亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1 なし 定義副傷病なし
65 16.12 16.19 4.62 70.43
060020xx02xxxx 胃の悪性腫瘍

胃切除術 悪性腫瘍手術等
56 16.64 19.04 5.36 69.61
06007xxx010x0x 膵臓,脾臓の腫瘍

膵頭部腫瘍切除術 血行再建を伴う腫瘍切除術の場合等 手術・処置等1なし 定義副傷病なし
48 22.92 25.67 0.00 67.81

消化器外科では,食道・胃から大腸・肛門に至る全ての消化管と,肝臓・胆道・膵臓を主な対象として,悪性疾患や難治性疾患を中心に高度な外科医療を提供しています。

臓器別のキャンサーボードにより,内科や放射線科など他診療科と協議の上で治療方針を決定し,患者さんに最先端・最高レベルの外科医療を提供することを心がけています。

病態を正確に把握することにより,根治性と低侵襲を両立します。可能な限り低侵襲で,可能な限り根治性を求めて摘出あるいは再建し,手術による不利益を最小限にとどめることを目指しています。内視鏡手術を推進し,多くの日本内視鏡外科学会の技術認定医を養成しています。2018年度により保険適応となったロボット支援下内視鏡手術(食道,胃,直腸)を施設内で適応基準を設け,有効性および安全性に対して評価を重ねながら施行しています。また,肝胆膵外科学会の高度技能修練施設Aとして,肝胆膵高度技能専門医の育成を行っています。決して妥協しない姿勢で難治癌の研究に取り組み,新しい治療法の開発に努めています。

リウマチ・膠原病科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
070560xx99x00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患

手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし
36 12.83 15.28 5.56 57.89
040110xxxxx0xx 間質性肺炎

手術・処置等2なし
14 21.57 18.61 14.29 62.36
070560xx99x01x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患

手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病あり
11 24.00 25.09 27.27 60.36
070470xx99x0xx 関節リウマチ

手術なし 手術・処置等2 なし
- - 15.90 - -
040110xxxxx1xx 間質性肺炎

手術・処置等21あり
- - 18.77 - -

リウマチ・膠原病科では,全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎・多発性筋炎,血管炎症候群,成人スチル病などの難治性膠原病患者の入院が多く,ステロイド療法,免疫抑制療法,血漿交換療法を行っています。膠原病は間質性肺炎,腎炎,血球貪食症候群などの複数臓器障害をきたす病気ですので,関連診療科と蜜に連携をとり,質の高い医療の実践に努めています。退院後は当院もしくは関連施設で,引き続き専門医による外来管理を行っており,急変時においても適切な対応ができる体制を構築しています。また,近年では関節リウマチの治療技術の進歩により,生物学的製剤やJAK阻害薬の使用が増えてきています。患者さんの安全な治療のため,新規薬剤導入目的の入院が増えています。

乳腺外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数 転院率 平均年齢
自院 全国
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍

乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等1なし
182 9.13 10.30 0.00 59.65
090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍

乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)
85 4.76 6.02 0.00 57.95
070041xx97x00x

軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く。)

その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし

- - 9.97 - -
090020xx97xxxx

乳房の良性腫瘍 手術あり

- - 4.13 - -
090010xx97x0xx

乳房の悪性腫瘍

その他の手術あり 手術・処置等2なし

- - 6.20 - -

乳腺外科では,広島県・中国地方の乳がん治療の中心を担うべく,日本乳癌学会乳腺専門医5名が在籍し,最先端の乳がん診療および乳がん専門医の育成を行っています。

<外科治療>

乳がんを確実に切除すること(根治性)は当然ですが,根治性を保ちつつ整容性(美しさ)も重視した手術を行っています。内視鏡による小さな傷での手術やすべての乳房を取り除いた際も,膨らみのある胸にする整容性を考慮した再建手術を形成外科と協力し積極的に行っています。

<診断のための最新検査>

正確な診断のため必要に応じて,3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)検査,造影乳房超音波検査,乳房専用PET検査を組み合わせて,乳がんの状況を診断しています。小さな腫瘍や,診断の難しい腫瘍の確定診断のため超音波ガイド下マンモトームを行っています。また,マンモグラフィ検査で悪性の可能性のある石灰化を診断するためステレオマンモトームも行っています。

<遺伝性乳がん>

遺伝子変異により乳がんを発症する可能性の高い(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)ことがこれまでの研究でわかってきました。遺伝性乳がん卵巣がん症候群の可能性の高い患者さんやその家族の方に対しては,遺伝が関与している可能性を含めて診療を進めてまいります。遺伝性乳がん卵巣がん症候群の方には,リスク低減乳房手術(予防的手術)を行う体制を整えています。

<妊孕性温存>

乳がん治療により,生殖機能が低下することや,妊娠出産の時期を逸してしまうことがあります。妊娠出産希望がある際は,必要に応じて生殖医療提供施設と連携して治療を進めています。

<臨床研究・臨床試験・治験>

複数の臨床研究・臨床試験・治験を行っています。適応のある患者さんには,臨床研究・臨床試験・治験を提案することがあります。

最後に我々は,患者さん一人一人の病状に合わせた最適な検査と治療を行うことにより,患者さんに優しい診療を提供できるように努めています。

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初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数

5大癌(胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌)について,国際対がん連合(UICC)によって定められたTNM分類別の初発患者数を集計し,延患者数,期間内の再発患者(再発部位によらない)を示しています。

【 TNM分類 】

国際対がん連合(UICC)によって定められた病期分類です。原発巣(癌が最初に発生した場所にある病巣)の大きさと進展度(T),所属リンパ節への転移状況(N),遠隔転移の有無(M)の要素によって各癌を0期~IV期の5病期(ステージ)に分類するものです。

  初発 再発 病期分類

基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 172 13 4 36 48 39 1 第8版
大腸癌 36 42 17 41 123 24 1 第8版
乳癌 110 105 18 7 40 7 1 第8版
肺癌 220 33 93 156 67 186 1 第6,7,8版
肝癌 49 82 78 52 19 460 1 第8版

※ 1:UICC TNM分類、2:癌取扱い規約

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成人市中肺炎の重症度別患者数等

成人市中肺炎の患者数を重症度別に集計し,患者数,平均在院日数,平均年齢を示しています。 

成人市中肺炎とは,病院の外で日常の生活を送っている人が感染し発症する肺炎のことです。20歳以上の患者さんを対象に重症度はA-DROPスコアを用いて評価し,1項目に該当すれば1点,2項目に該当すれば2点というように計算しています。

軽症 :0点の場合。
中等症 :1~2点の場合。
重症 :3点の場合。
超重症 :4~5点の場合。ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。
不明 :重症度分類の各因子が1つでも不明な場合。

【 A-DROPスコア 】

日本呼吸器学会が2005年に作成した成人市中肺炎診療ガイドライン(JRSガイドライン)で採用されている重症度分類です。

A(Age(年齢)) :男性70歳以上,女性75歳以上
D(Dehydration(脱水)) :BUN 21mg/dl以上または脱水あり
R(Respiration) :SpO2 90%以下(PaO2 60torr以下)
O(Orientation(意識障害)) :意識障害あり
P(Pressure(収縮期血圧)) :血圧(収縮期)90mmHg以下
  患者数 平均

在院日数
平均年齢
軽症 10 7.60 55.70
中等症 35 12.77 74.26
重症 5 14.20 79.00
超重症 4 12.25 81.25
不明 - - -

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脳梗塞の患者数等

脳梗塞(ICD10がI63$)の患者数を集計し,患者数,平均在院日数,平均年齢,転院率を示しています。

【 ICD10 】

世界保健機関(WHO)が世界保健機関憲章に基づき作成した,傷病に関する分類を表すコードです。International Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の略称で,世界の異なる国における傷病の状況を比較できることを目的とした標準的分類であり,第10回修正版を『ICD10』として呼称されます。

発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 58 16.72 72.67 36.51
その他 5 14.60 71.40 6.35

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診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

実施された手術の術式別患者数を診療科別に集計し,上位5位までのKコード,術式名称,患者数,平均術前日数,平均術後日数,転院率,平均年齢を示しています。

【 Kコード 】
診療報酬医科点数表で定められた術式を表すコードです。このコードに基づいて診療報酬保険請求が行われます。

整形外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K0821 人工関節置換術(肩、股、膝) 77 1.35 15.87 45.45 72.49
K0542 骨切り術(前腕,下腿) 46 1.00 18.52 45.65 60.98
K079-21 関節鏡下靭帯断裂形成手術(十字靭帯) 44 1.00 12.16 9.09 31.50
K1426 脊椎固定術,椎弓切除術,椎弓形成術(椎弓形成) 35 3.06 12.40 14.29

67.00

K080-42 関節鏡下肩腱板断裂手術(複雑) 33 1.00 12.00 100.00 69.06

K0821

<人工膝関節手術>

中高齢者の膝痛で最も多いのは,膝関節の中で関節軟骨がすり減る「変形性膝関節症」によるものです。保存療法を行っても膝痛が改善しない進行した変形性膝関節症に対しては,人工膝関節置換術が行われます。この手術では,膝の前面に切開を加えて関節を展開し,傷んだ膝の骨の表面を切り,大腿骨側と脛骨側に金属製の部品と摩耗に強いポリエチレン製の部品をはめて固定します。変形性膝関節症による膝痛が強い患者さんに対する治療として人工膝関節置換術を行うことは,世界中のガイドラインで推奨されています。

<人工肩関節手術>

変形性肩関節症は退行性変化を基盤として関節軟骨が摩耗・欠損することにより,運動時痛や夜間痛,また可動域制限といった症状を呈します。手術は肩前方に約10cm程度の皮膚切開を加えて関節を展開し,上腕骨側には金属製の半球を,肩甲骨側にはポリエチレン製の受け皿を挿入します。また,2014年からは肩腱板断裂を起こした後で続発的に変形性関節症となる,いわゆるcuff tear arthropathyと呼ばれる変形性肩関節症に対応した人工関節も本邦で使用可能となっています。これは先ほどとは逆に肩甲骨側に金属製の半球を,上腕骨側にポリエチレン製の受け皿を鼠入するのでリバース型人工肩関節と呼ばれています。

<人工股関節手術>

変形性股関節症は骨盤あるいは大腿骨の形態異常により徐々に関節軟骨が摩耗・欠損して股関節に変形を来す病気です。骨盤や大腿骨の骨切り術などの関節を温存する手術が適応にならないほどに関節変形を来し,股関節痛が増強する場合に人工股関節置換術の適応となります。手術は関節の前方あるいは後方から関節を展開して変形した骨を切除した後に,骨盤側には金属製カップを設置し,大腿骨近位部には金属製のステムを設置します。カップ内にポリエチレン製の受け皿がはまり,ステム先端に設置したセラミック製のボールが受け皿の中で摺れることにより関節が動きます。一般に良好な術後成績が報告されており,極めて有益な手術の一つと位置付けられています。

K0542

骨切り術は変形している上肢あるいは下肢において骨を切り,変形を矯正してから金属製のプレートやスクリューなどで固定する手術です。本邦では内反型の変形性膝関節症に対する下腿での骨切り術が多く行われており,これは膝の内側を通っている荷重軸を骨切りにより強制して荷重軸を膝の外側に移動されることにより,膝内側への負担を軽減して膝痛の改善を図るもので,人工関節の手術に比べて,自分の関節を温存できる点で有益です。また前腕においては骨折後の変形治癒などで上肢の機能障害を生じている例などに対して骨切り術が行われています。

K079-21

前十字靭帯損傷はサッカー,バスケットボールなどのスポーツをしている際,方向転換や片足着地などで膝を捻った時に受傷することが多い外傷です。前十字靭帯が損傷すると,関節の安定性が損なわれることで次第に不安定感を生じ,日常生活・スポーツに支障をきたすようになります。前十字靭帯は治癒能力が乏しいため,手術以外の方法で損傷した靭帯が十分な機能を保って治癒することはほとんどありません。そのため,日常生活において膝の不安定感に不自由する場合やスポーツ復帰を望まれる場合はもちろん,半月板や関節軟骨損傷の進行を防ぐためにも,自家腱(自分の体から採取した腱)移植による靭帯再建術が必要となります。移植材料としては,膝屈筋腱,骨付き膝蓋腱,大腿四頭筋腱などを用いることが多く,いずれも良好な成績が得られています。当科では以前から膝屈筋腱もしくは大腿四頭筋腱を用いての靭帯再建術を行っています。その再建方法も,損傷した前十字靭帯の状態や膝屈筋腱の太さ,スポーツ活動量などに応じ,患者さんに合わせた解剖学的靭帯再建術や靭帯補強術を行っています。前十字靭帯の他,後十字靭帯損傷の場合も膝の不安定性が強ければ,同様に自家腱を用いて靭帯再建術を行います。

K1426

椎弓形成術は,ヘルニアや加齢によって生じた骨棘などにより,骨髄が圧迫されて起きる頚椎症性脊髄症や脊柱管狭窄症に対して良く行われる手術です。頚椎に対しては,我々は1990年以降,片方の骨を繋げたまま片開き式にドアに開くように脊柱管を拡大する「片開き式」の椎弓形成術を行い良好な成績を収めています。この手術法は拡大した椎弓が構造的に強いだけでなく,同時に椎間板ヘルニアを摘出可能で,神経根の圧迫も取ることができる優れた方法です。手術時間は3時間以内,出血量はごく少量で済みます。腰椎の場合には,頚椎の場合と異なり腰椎では椎弓を形成する必要はなく,圧迫している後方の椎弓を切除するだけです。どちらも手術の2日後には歩いてもらうことが可能で,手術後2,3週間で退院出来ます。手術の効果ですが,脊髄は圧迫が解除されると少しずつ回復しますが,回復力にはかなりの個人差があります。いずれにしても脊髄は脳と同じで一旦障害が起こると回復力に乏しいため手術のタイミングを逃さないことが肝心です。

K080-42

腱板は股関節を安定させる働きを持っており,怪我やオーバーユース,加齢性変化などにより断裂します。症状としては,肩を動かしたときの痛みや夜間の痛み,肩の筋力の低下,腕が上らないなどですが,症状が全くないこともあります。注射やリハビリなどの保存治療を行っても痛みが続く場合は,関節鏡下肩腱板断裂手術を行います。皮膚に約1cmの傷を5,6か所開け,関節鏡を挿入して関節内を観察しながら行います。アンカーを上腕骨に打ち込み,この糸で断裂した腱板を骨に縫い付けて修復します。断裂サイズが大きい場合は再断裂する確率が高いため,当院では肩後方の肩甲骨の部分に約4cmの皮膚切開を追加し,腱板の筋肉を肩甲骨側から剥離して外側にスライドさせる方法を選択しています。また基礎研究を基に人工生体材料を補強材料とした腱板修復術を独自に考案し,臨床に応用しています。

形成外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K628 リンパ管吻合術 68 1.32 7.00 0.00 60.50
K476-4 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後) 24 1.00 5.63 0.00 49.33
K0171 遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付き)(乳房再建術) 14 1.14 10.14 0.00 52.43
K020 自家遊離複合組織移植術(顕微鏡下血管柄付き) - - - - -
K01053 皮弁作成術,移動術,切断術,遷延皮弁術(100㎠以上) - - - - -

K628

小さな傷からリンパ管と細静脈をつなぐ手術、リンパ管細静脈吻合(Lymphatico-venular anastomosis:LVA)を第一選択として行っており、優れた治療効果を出しています。

超微小血管外科(supermicrosurgery)の技術により、今までは不可能だった細い血管をつなげるようになり、体への負担が小さく優れた治療効果を有するLVAが可能となりました。手術前のリンパ管造影の所見をもとに、局所麻酔をして皮膚を2cmほど切って手術を行います。0.5mmほどのリンパ管と細静脈をみつけて、それらを切ってつなぐことでバイパスを作ります。LVAの吻合数が多いほど効果が高い傾向があることから、当科では複数の術者が同時にさまざまな場所で手術を行い(足首と太ももなどを同時に)、約4時間の手術時間内にできる限り多くの吻合を行います。局所麻酔のため手術中にも意識がはっきりしており、基本的には手術の映像をみてもらい、術者が手術の状況を説明しながら手術を行います。入院は約1-2週間で、手術前後は医師の指導通りの弾性ストッキングによる圧迫療法が必要となります。

K476-4

ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後)は、人工物を用いた乳癌術後乳房再建術です。施設基準があり本手術が可能な医師・施設が限られるため、当院ではこの領域の手術が多くなっています。

K0171

遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付きのもの)

乳房再建術の場合は、自家組織を用いた乳癌術後乳房再建術です。近年の乳癌患者の増加に伴い、乳房再建術自体が増加傾向にあります。ゲル充填人工乳房による乳房再建術は、身体への侵襲が少ないという利点もありますが、人工物ならではの合併症(破損、感染、被膜拘縮)、交換やメンテナンスの必要性が挙げられています。一方で自家組織を用いた方法は手術の難易度はありますが、一度再建をすれば自分の身体の一部を用いた自然な乳房を得られるため、一定の需要があります。

K020

自家遊離複合組織移植術(顕微鏡下血管柄つきのもの)

当院では形成外科以外にも、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、歯科口腔外科、食道外科、脳神経外科など、外科系各科の要請に応じて、自家遊離複合組織を用いた再建手術を手術協力の形で取り組んでいます。これにより十分な悪性腫瘍の切除および欠損の再建・閉鎖、他院で対応が困難な難治創の閉鎖、再建手術を行っています。

脳神経外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他) 64 4.52 21.73 10.94 52.08
K171-21 内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術(下垂体腫瘍) 33 4.42 9.79 0.00 49.48
K1781 脳血管内手術(1箇所) 23 1.39 13.57 21.74 58.57
K1783 脳血管内手術(脳血管内ステント) 19 2.79 6.32 0.00 65.16
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 17 2.24 6.47 0.00 77.47

K1692

広島大学病院は,中国四国圏内のみならず,全国的にみても脳腫瘍の治療件数の多い施設です。脳実質から発生するグリオーマの手術,頭蓋底に発生する腫瘍の手術,トルコ鞍近傍に発生する腫瘍の手術など,多岐に渡ります。当院は「小児がん拠点病院」に指定されていますが,多いときには入院患者の1/3が小児脳腫瘍患者のこともあります。年間合計で160-190件行っています。最近は顕微鏡下のみならず,神経内視鏡も併用して行っています。また,情報統合型手術室(スマート治療室,SCOT)も設置され,より正確で安全な手術の実施にむけて稼働しています。

K171-21

トルコ鞍近傍に発生する腫瘍に対して,鼻の孔を介し(経鼻的に)神経内視鏡を用いて腫瘍を摘出します。脳神経外科手術の中でも専門的な技術を必要としますが,開頭術と比べて低侵襲な腫瘍摘出が可能です。通常10-14日間の入院で手術を行い,自宅へ帰られます。対象疾患は主に下垂体腺腫で,頭蓋咽頭腫や髄膜腫などにも適応が広がっています。年間35-45件の手術を行っており,広島県のみならず県外からの患者さんも受け入れています。

K1781/K1783

従来脳血管障害の外科的治療は,開頭して手術顕微鏡下に行われるものが殆どでした。しかし,1995年ごろより徐々に血管内からカテーテルを介して脳動脈瘤を内側から柔らかい白金製のコイルで詰める,動脈瘤コイル塞栓術が可能となり,当科でも徐々にその技術を高めてきました。また,関連する器具も日進月歩で新しい,より質のいいもの,安全性が高いものが出てきて,使用できるようになりました。当科では年間脳血管障害の手術を80-100件行っていますが,かなりの部分をこの血管内治療が占めています。

K609-2

生活様式や食生活の欧米化により,頚部内頚動脈の起始部の狭窄性病変が増えてきました。脳循環障害の原因となりうる場合,あるいはその部分に出来た動脈内膜の肥厚部分や潰瘍部分からの血栓が原因で脳梗塞や脳塞栓を起こす場合,従前から厚くなった動脈内膜ごと切除する方法(血栓内膜摘除術,CEA)が行われていましたが,最近血管内治療にてステントを留置する治療(頸動脈ステント留置術,CAS)もかなり行われるようになりました。当科では,独自の安全なCAS方法を生み出し,好成績で実施しています。年間40-50件治療しています。

呼吸器外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの) 79 1.28 7.13 2.53 70.10
K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(区域切除) 46 1.46 6.54 0.00 68.17
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除) 42 1.17 5.64 0.00 69.90
K5132 胸腔鏡下肺切除術(その他) 12 1.25 5.17 0.00 70.67
K5131 胸腔鏡下肺切除術(肺嚢胞手術(楔状部分切除) - - - - -

呼吸器外科では,多くの手術を胸腔鏡や手術支援ロボット(ダビンチ)を用いて行い,傷の小さな体にやさしい手術を目指しています。肺がんの手術は,がんのできた袋(肺葉)を切除するのが標準ですが,小型の早期肺がんに対しては肺の切除範囲を小さくした部分切除,区域切除を行い,切除に伴う体の負担を軽減しています。進行がんに対しては,手術前後に抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤,放射線治療を追加し,再発制御に努めています。

心臓血管外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率

平均年齢

術前 術後
K5612ロ ステントグラフト内挿術(1以外の場合)(腹部大動脈) 29 1.86 7.48 17.24 75.07
K5612イ ステントグラフト内挿術(1以外の場合)(胸部大動脈) 28 1.82 7.25 10.71 73.96
K5603ニ 大動脈瘤切除術(上行大動脈及び弓部大動脈の同時手術)(その他のもの) 27 0.93 27.19 55.56 70.48
K555-22 経カテーテル大動脈弁置換術(経皮的大動脈弁置換術) 22 4.41 11.27 4.55 82.55
K555-22 冠動脈,大動脈バイパス移植術(人工心肺不使用)(2吻合以上) 15 3.13 17.00 20.00 69.00

心臓血管外科では治療法として,1)人工心肺を使用する疾患 2)人工心肺を使用しない疾患 の2つに大きく分けられます。人工心肺を使用するものの代表は,弁膜症手術と急性A型大動脈解離に対する手術です。人工心肺を使用しないものの代表は,ステントグラフト内挿術,腹部以下の大動脈及び末梢動脈手術,オフポンプ冠動脈バイパス術,下肢静脈瘤手術,透析用ブラッドアクセスの作成があります。いずれも症例数は県下有数であり,広島県のみならず中四国より患者さんをご紹介いただき,難易度の高い症例や複数の合併疾患がある患者さんの手術を多く行っているのが特徴です。

以下に上位5つの手術術式に関する説明をします。

ステントグラフトとは,人工血管の内側に自己拡張する金網を貼り付けたもので,瘤化した大動脈の内挿することにより,大動脈瘤の治療を行うものです。近年では,解離性大動脈瘤や急性大動脈解離といった,大動脈の内膜に傷が入って穴が開いている場合に,その穴を閉じるために内挿することもあります。胸部,腹部ともに数は増加傾向です。単純なステントグラフト内挿術に加えて,デブランチと呼ばれる,頭や手,肝臓,消化管,腎臓に行く末梢動脈へのバイパス(迂回路)を先に作成しておいて,それらの動脈の根元が瘤化あるいは解離している病変も含めてステントグラフトを内挿する方法もあり,それらを合わせると胸部,腹部ともに年間50例,合わせて100例程度の治療を行っています。

弓部大動脈の手術は,通常の大動脈瘤に対する術式としての弓部大動脈人工血管置換術と,急性大動脈解離に対する弓部置換術とが主なものです。同時に上行大動脈も病変が及んでいることが多いため,上行・弓部大動脈手術として行うことが多いです。近年は,前者はしばしば胸部ステントグラフトを併用する術式でも行われています。急性大動脈解離は,上行大動脈人工血管置換術が従来のスタンダードな術式でしたが,近年では成績が向上していることから,広島大学病院では上行・弓部置換術を行うことにより,遠隔期の成績向上に努めています。

経カテーテル大動脈移植術は,主に高齢者の大動脈弁狭窄症に対する術式で,開胸を必要とせず,初期成績は通常の弁置換術と変わらないが,むしろ入院日数が短く,QOLの改善に寄与しています。長期成績が不明ということもあり,若年者に対する適応には慎重です。

冠動脈バイパス術とは,狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に対する外科的治療法で,人工心肺を使用する場合と使用しない場合があります。PCI件数の増加に伴い,その件数は減少傾向です。当院では単純冠動脈に対しては,人工心肺を使用しないオフポンプ冠動脈バイパス術を基本として行っていますが,近年の患者さんの病態が悪い場合が増えており,無理ない人工心肺を使用したバイパスも行うことにより,安定したし成績が得られるよう努力しています。これらにより,バイパスの開存率は95%以上で,難易度の高い患者群としては良好であると考えています。

小児外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K6334 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) 21 0.62 1.00 0.00 3.67
K836 停留精巣固定術 11 0.82 1..00 0.00 3.73
K6333 臍ヘルニア手術 - - - - -
K5141 肺悪性腫瘍手術(部分切除) - - - - -
K0062 皮膚,皮下腫瘍摘出術(露出部以外)(長径3㎝以上6㎝未満) - - - - -

小児外科では,主に生まれつきの病気を手術で治療していきます。

2020年より鼠径ヘルニア及び精索水腫に対する手術は男児女児ともに腹腔鏡下手術を基本術式として行っており,原則は2泊3日,相談により1泊2日での手術も行っています。鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術では,現在症状のない反対側のヘルニアも術中に有無が確認でき,もし反対側にもヘルニアが存在すれば同時に治療が可能であるため,将来的に再度手術を行うリスクを減らすことができるという大きなメリットがあります。そのため最近では,腹腔鏡手術を希望されて来院される方も増えてきたため,症例数が増加しています。

停留精巣は男児において生下時より精巣が陰嚢内に触知しないという疾患であり,将来的には不妊や精巣腫瘍の原因となります。手術の不要な移動性精巣との鑑別はしばしば難しく,専門の施設での診察が勧められます。診断がつけば,1歳~1歳半を目安に精巣を陰嚢に固定する手術を行います。

臍ヘルニアはいわゆる「でべそ」ですが,日本人の約4~10%が臍ヘルニアであるとされ,小児では特に社会生活上問題になることがあります。当科では臍内部切開と筋膜への臍皮膚の引き込みを併用して,外部から全く創が分からず,凹みも良好な臍の形成を伴う臍ヘルニア手術を行っています。

小児外科ではこのような一般的な「日常疾患」と呼ばれる疾患を治療する他にも,非常に様々な分野・臓器の手術を数多く行います。中四国地方において唯一の小児がん拠点病院の指定を受けている広島大学病院の特徴でもある小児固形腫瘍(神経芽腫・肺芽腫・腎芽腫・奇形腫など)の手術,胸部・呼吸器疾患の手術,胆道閉鎖症や胆道拡張症などの肝胆道系手術,ヒルシュスプルングなどの腸管手術,尿道下裂や精巣捻転などの泌尿器系手術など,非常に多岐にわたる手術を行っています。

産科婦人科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K879 子宮悪性腫瘍手術 53 1.30 11.58 0.00 55.21
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(腹腔鏡) 47 0.96 4.30 0.00 41.51
K877-2 腹腔鏡下膣式子宮全摘術 44 1.20 4.39 0.00 49.80
K867 子宮頸部(膣部)切除術 43 1.00 1.02 0.00 43.47
K861 子宮内膜掻爬術 35 0.66 1.20 0.00 50.66

【産科】

・超緊急帝王切開(決定から30分以内に施行)を麻酔科,手術室,小児科,NICUの連携により,通常の帝王切開や緊急帝王切開に加えて行うことが可能です。

・弛緩出血や子宮型羊水塞栓などの産後大量出血に対して,緊急動脈塞栓術(UAE)を放射線診断科(IVR部門)の協力により行うことが可能です。

・異所性妊娠の緊急手術も適応を選択して,24時間腹腔鏡手術が可能です。

・妊娠中の卵巣腫瘍摘出術も症例を選択して,腹腔鏡手術を行っています。

【婦人科】

・婦人科がんに対する集学的医療の一環として,婦人科腫瘍専門医3名,産婦人科内視鏡技術認定医2名を中心に適応症例には根治手術療法を行います。

・子宮頸がんに対しては,診断も含めた子宮頸部円錐切除術から難易度の高い広汎子宮全摘出術,傍大動脈リンパ節郭清術まである手術手技の中から,状況に応じて最適な術式を選択して行います。

・子宮体がん,卵巣がんに対しても子宮頸がんと同様に,診断も含めた子宮内膜掻把術,試験開腹術から難易度の高い広汎子宮全摘出術,傍大動脈リンパ節郭清術まである手術手技の中から,各症例に最適な術式を選択して実施します。

・良性卵巣腫瘍や子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術,子宮内腫瘤に対する経子宮頸管的切除(TCR)や,過多月経に対するマイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)などの経腟的手術などの低侵襲手術も積極的に行っています。

・良性疾患に対する子宮全摘出術として,腹式,腟式に加え腹腔鏡下,手術ロボットDa Vinchによるロボット支援下の全摘出術も含め術式を選択して実施します。

・早期子宮体がんに対しても従来の腹式に加えて腹腔鏡下,ロボット支援下の根治術も含め術式を選択して実行します。

・卵巣腫瘍茎捻転や付属器膿瘍などの婦人科緊急手術も,症例を選択して24時間腹腔鏡手術に対応しています。

眼科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後

K2821ロ

水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)(その他のもの) 379 0.97 1.93 0.53 73.75
K2683 緑内障手術(濾過手術) 356 0.98 4.93 0 69.12
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含む) 286 0.87 4.09 0.35 66.83
K2802 硝子体茎顕微鏡下離断術(その他のもの) 180 0.77 3.57 0.56 66.83
K2685 緑内障手術(緑内障治療用インプラント挿入術)(プレートあり) 111 1.01 3.22 2.7 66.74

K2821ロ:水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)(その他のもの)

いわゆる白内障手術のことで,ここでいう症例数は白内障単独手術のものが主にカウントされています。緑内障手術などと同時に手術しているものは除外されているため,実際にはもっと多くの白内障手術を行っています。

K2683:緑内障手術(濾過手術)

眼内の水を眼外に逃すバイパスを作る手術のことです。

K2801:硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含むもの)

眼の奥にある網膜という部分の病気に対する手術のことです。網膜がはがれる網膜剥離や,網膜に膜が張る網膜前膜,穴が開く黄斑円孔などが代表的な病気です。

K2802:硝子体茎顕微鏡下離断術(その他のもの)

網膜の手術の中でも,直接網膜を触らない比較的軽度の疾患に対する手術です。硝子体混濁や水晶体脱臼の手術が含まれます。

K2685:緑内障手術(緑内障治療用インプラント挿入術)

「緑内障手術(濾過手術)」と目的は同じですが,特殊なチューブを用いて眼内の水を眼外に逃がすことで眼圧降下を目指す手術のことです。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術3型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) 31 1.00 4.00 3.23 53.65
K6261 リンパ節摘出術(長径3㎝未満) 22 0.45 1.14 0.00 70.14
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 21 1.00 6.43 0.00 19.19
K368 扁桃周囲腫瘍切開術 20 0.20 3.85 0.00 38.60
K374-2 鏡視下咽頭悪性腫瘍手術(軟口蓋悪性腫瘍手術を含む) 20 1.85 10.25 5 68.75

耳鼻咽喉科・頭頸部外科では,耳,鼻,のど及び,頸部の良性疾患から悪性疾患まで様々な手術に対応できる人材,システムを構築しており,さらに最先端の器機の使用や技術の向上に日々励んでいます。

良性疾患に対する手術として,慢性扁桃炎やIgA腎症(扁桃病巣感染),睡眠時無呼吸症候群などに対して行う口蓋扁桃手術,慢性副鼻腔炎,鼻腔腫瘍などに対して行う内視鏡下鼻・副鼻腔手術などが挙がっています。悪性疾患に対する手術として,経口切除を主体とした咽頭悪性腫瘍手術が挙がっています。

これら以外にも悪性腫瘍に対する再建手術を必要とする拡大手術,甲状腺腫瘍に対する内視鏡手術,高度難聴に対する人工内耳埋め込み術,嚥下障害に対する嚥下改善手術や誤嚥防止手術,音声障害に対する咽頭形成術,頸部腫瘍などの急性感染症に対する救済手術なども行っています。

当院は,

〇一般社団法人 日本鼻科学会認定 手術指導医制度 認可研修施設

〇一般社団法人 日本耳科学会認定 耳科手術指導医制度 認可研修施設

〇特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会認定 頭頸部がん専門医制度 指定研修施設

〇一般社団法人 日本アレルギー学会 アレルギー専門医教育研修施設

であり,専門性の高い手術の施行,医療人の育成のため日々努力しています。

脳神経内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K664 胃瘻増設術(経皮的内視鏡下胃瘻増設術,腹腔鏡下胃瘻増設術を含む) 14 6.86 15.79 21.43 66.14
K386 気管切開術 - - - - -
K403-23 嚥下機能手術(咽頭気管分離術) - - - - -
K150 脳腫瘍排膿術 - - - - -
K178-4 経皮的脳血栓回収術 - - - - -

神経・筋疾患では,呼吸や嚥下が困難となることが多く,呼吸と栄養の確保が問題となります。気管切開を行い呼吸の通り道を確保し,胃ろうを造設し栄養状態を良好に保つことで,全身状態を維持できる場合があります。胃ろうが必要な症例に対しては,適切な時期に造設するようにしています。脳梗塞の発症早期には血栓を溶かす治療や血栓を機械的に回収する治療を行うことが可能です。

皮膚科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) 40 0.43 5.63 0.00 72.18
K0022 デブリードマン(100㎠以上3000㎠未満) 11 5.19 20.67 63.64 52.09
K013-21 全層植皮術(25㎠未満) - - - - -
K0301 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(肩,上腕,前腕,大腿,下腿,躯幹) - - - - -
K0052 皮膚,皮下腫瘍摘出術(露出部)(長径2㎝以上4㎝未満) - - - - -

皮膚科では,皮膚悪性腫瘍(皮膚がん)の入院が多いことに伴い,皮膚悪性腫瘍の手術も多く行っています。局所麻酔の方には,火曜日午後に手術を行っています。全身麻酔の方は,火曜日もしくは水曜日に入院の上,翌日手術を行っています。悪性腫瘍を切除した後は自家皮膚による分層植皮術,全層植皮術などにより閉創します。術後は約1週間で退院となっています。

熱傷の治療を行っていることも当科の特徴であり,やけどなどの傷んだ(壊死した)皮膚を除去する手術(デブリードマン)を行い,自家皮膚による分層植皮術を行います。その他,皮膚良性腫瘍に対する手術や皮下組織などでの軟部組織から生じた腫瘍の摘出も行っております。

泌尿器科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用のもの) 113 1.17 4.89 0.00 74.22
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いる) 69 1.12 10.04 0.00 67.54
K773-5 腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いる) 35 1.31 8.66 0.00 63.60
K754-2 腹腔鏡下副腎摘出術 21 1.10 7.38 0.00 51.71
K773-2 腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術 20 1.15 9.10 0.00 65.75

泌尿器科では、以前から低侵襲手術の開発と導入に力を入れています。その1つは腹腔鏡手術です。1991年から泌尿器領域の腹腔鏡手術に取り組んでおり、その件数は1,500件を超えました。

こうして培われた高い技術と実績をもとに、より高度な世界最先端技術である手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いたロボット支援手術を2010年に中国四国地方で初めて導入しました。以後その件数は増加の一途をたどっているだけでなく、より難度の高い手術に対しても積極的に取り組んでいます。

泌尿器科手術のうち多くを占めるのが、前立腺がんに対するロボット支援根治的前立腺全摘除術、腎がんに対するロボット支援腎部分切除術、浸潤性膀胱がんに対するロボット支援根治的膀胱全摘除術などのロボット支援下手術で、続いて膀胱がんに対する経尿道的膀胱腫瘍切除術に代表される経尿道的手術、腎がんに対する腹腔鏡下腎摘除術および腎盂尿管がんに対する腹腔鏡下腎尿管全摘除術や副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘除術などの腹腔鏡手術でした。

当科におけるほとんどの手術症例は、傷が小さく体に優しい内視鏡手術で行われています。その低侵襲性手術の結果、手術疾患患者さんの平均入院期間は1-2週間程度の短期間の入院治療が可能となっています。高齢化が進む現状で体に負担が少ない治療を行っていることが当科の特徴です。

循環器内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術(心房中隔穿刺,心外膜アプローチ) 253 1.78 1.75 0.79 67.89
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術(その他) 71 2.99 3.06 4.23 70.97
K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術(その他) 68 2.15 2.68 1.47 56.37
K5972 ペースメーカー移植術(経静脈電極) 51 1.92 9.24 11.76 77.55
K555-22 経カテーテル大動脈弁置換術(経皮的大動脈弁置換術) 43 3.77 9.70 11.63 82.49

経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)について,最もアブレーション数が多い不整脈は,令和2年度も心房細動でした。当院では,国内で使用できるすべての3Dマッピング装置(3種類)が使用可能であり,複雑な心房頻拍や心室頻拍など不整脈の治療も可能となっています。特に,心室頻脈,心室細動など致死的不整脈の治療にも優れた施設で,他施設での治療困難症例などの紹介を受けています。心房細動については,カテーテル先端の心筋へのコンタクトや安定性,焼灼される心筋の厚さをリアルタイムにモニター可能な高周波イリゲーション(カテーテル先端から水を出しながら焼灼)カテーテルなどは引き続き使用しており,バルーンカテーテルを使用した治療も行っています。心房細動アブレーション技術やテクノロジーの進歩を受けて,心不全を伴う心房細動についても治療適応が広がり,当院でもその様な困難例にも取り組み,心不全の集学的治療を行っています。また,長期の抗凝固療法が難しい場合には,カテーテルを使用した左心耳閉鎖システム(WATCHMAN®)による左心耳閉鎖も行っています。発作性上室性頻拍に関しては,小児から高齢者まで年齢に合わせて幅広く治療を行っています。徐脈性不整脈に対してのペースメーカー治療は,洞不全症候群と房室ブロックが主な適応となりますが,MRI対応のペースメーカーやリードレスペースメーカーも普及し患者さんの受ける制限もかなり軽くなっています。また,心機能低下を合併している場合の両心室ペーシング,His束ペーシング,左脚ペーシングなども可能な施設です。

現在の冠動脈カテーテル治療は,冠動脈狭窄を拡張しその後ステントを留置するステント留置術が中心です。再狭窄を引き起こす内膜増殖を抑えるための薬剤が塗布してある薬剤溶出性ステントが多くの症例で使用されています。非常に石灰化の強い病変では,血管そのものの拡張が得られないため,ロータブレーターという血管内腔を削る治療を行います。ステント内に再狭窄を起こした場合には,エキシマレーザーや薬剤塗布バルーンを用いた治療を行い,良好な成績が得られています。ステント留置に適さない病変ではDCA(方向性塾腫切除術)というプラークを切除する方法を併用し,良好な成績を残しています。血管内超音波や光干渉断層法,血管内視鏡などの画像診断のほか,冠血流予備量比(FFR)測定により病態にもせまり,安全かつ最大限の治療効果が得られるよう心がけています。動脈硬化の原因となったリスクの軽減のため,積極的な薬物療法や心臓リハビリテーションなど包括的治療が重要な疾患ですので,これらを積極的に導入しています。

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)については,ハートチーム多職種カンファレンスにて,TAVIの適応および治療戦略を厳密に検討しています。術前からリハビリを開始し,ほとんどの患者さんが短期間で元の生活に戻っています。術後はかかりつけ医と連携し,フォローを継続しています。劣化生体弁に対するTAVIも症例数が増えてきました。また,僧帽弁に対するカテーテル治療(マイトラクリップ)と卵円孔閉鎖デバイスは,県内では当院でのみ施行可能です。

腎臓内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K6121イ 末梢動静脈瘻増設術(内シャント増設術)(単純) 42 5.05 8.88 0 67.86
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術(初回) - - - - -
K608-3 内シャント血栓除去術 - - - - -
K610-3 内シャント又は外シャント設置術 - - - - -
K6105 動脈形成術,吻合術(その他の動脈) - - - - -

末期腎不全の患者さんが行う血液透析の治療を受けるためには,1分間に200-300mlの血液を透析器に送り込む必要があります。これだけの血液量を確保するためには,血液流量の多い太い血管が必要となります。そこで,手首近くの動脈と静脈を手術でつなぎ合わせることによって血管を太くします。これが内シャント設置術です。

腕の静脈が細いために内シャント設置術を行うことができない方もいらっしゃいます。そのような場合には,人工血管を用いて血管をつなぐ血管委移植術を行います。

また,何らかの理由により血液透析を行うために使用する血管の血流が悪くなったり,血流が途絶えたりする場合があります。そうなってしまうと,血液透析を行うことが困難になります。経皮的シャント拡張術・血栓除去術を行い,血流を改善させることで血液透析を継続することが可能となります。

救急集中治療科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K0461 骨折観血的手術(肩甲骨,上腕,大腿) 17 0.24 6.12 58.82 51.82
K386 気管切開術 17 9.00 9.29 64.71 67.29
K0462 骨折観血的(前腕,下腿,手舟状骨) - - - - -
K1422 脊椎固定術,椎弓切除術,椎弓形成術(後方又は後側方固定) - - - - -
K046-3 一時的創外固定骨折治療術 - - - - -

診療科別主要手術の多くは,四肢外傷再建科との共同診療によるものです。手術までの時間が1日以内と短いことは特筆すべきことであり,患者さんの早期回復と予後改善に大きく寄与しています。これは四肢外傷再建科,麻酔科/手術室との協力関係により達成されているものです。

血液内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K9212ロ 造血幹細胞採取(末梢血幹細胞採取)(自家移植の場合) 17 14.18 3.29 0.00 57.47
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 - - - - -
K6261 リンパ節摘出術(長径3cm未満) - - - - -
K654 内視鏡的消化管止血術 - - - - -
K6262 リンパ節摘出術(長径3㎝以上) - - - - -

造血幹細胞移植には,患者さん自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・凍結保存しておき,必要な時に移植を行う「自家移植」と,他人(ドナー)から採取した骨髄・末梢血・さい帯血を移植する「同種移植」の2つの方法があります。これらは疾患の特性に応じて使い分けられており,前者は主にリンパ腫や骨髄腫,後者は主に急性白血病や骨髄異形成症候群に加え,一部のリンパ腫と再生不良性貧血を対象に選択されることが一般的です。

当院では,過去8年間(2013-2020年)に233件の造血幹細胞移植を実施しています(自家移植108件,同種移植125件)。K9212は自家移植を行うために,末梢血から体外循環を用いて造血幹細胞を採取した患者さんの数を表しています。K6261及びK6262は,主に悪性リンパ腫が疑われた際に,耳鼻科・外科等の診療科と連携して診断目的にて組織生検術を行った患者さんの数を表しています。なお,K9212はDPC対象外となっています。

消化器・代謝内科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 520 0.20 1.24 0.00 66.34
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術) 183 0.53 5.18 0.00 71.44
K721-4 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術 157 1.39 5.62 0.00 67.36
K6152 血管塞栓術(頭部,胸腔,腹腔内血管等)(選択的動脈化学塞栓術) 155 1.99 7.45 1.29 75.28
K6153 血管塞栓術(頭部,胸腔,腹腔内血管等)(その他のもの) 91 3.55 10.53 4.40 68.25

肝疾患では,肝がんに対する肝動脈化学塞栓術(TACE)やラジオ波焼灼術(RFA),食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤効果療法(EIS)や内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL),胃静脈瘤やシャント脳症に対するバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)などさまざまな専門的治療を行っています。

胆道疾患では,閉塞性黄疸に対する内視鏡的および経皮的胆道ドレナージ術やステント留置術,総胆管結石に対する内視鏡的結石除去術,膵臓疾患では,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)やEUS下のう胞ドレナージ術などに積極的に取り組み,さまざまな疾患に対して早期診断や内科的治療を行っています。

消化管疾患では,早期の食道癌や胃癌,小腸/大腸癌に対して最新の機器による高度な精査を行い,大きな腫瘍でも適応のあるものは外科手術することなく,内視鏡的切除によって根治治療を行っています。特に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は,国内外でも有数の診療実績を挙げています。

消化器外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 62 3.73 10.97 6.45 70.27
K7032 膵頭部腫瘍切除術(リンパ節・神経叢郭清等を伴う腫瘍切除術の場合又は十二指腸温存膵頭切除術の場合) 45 5.89 30.42 2.22 68.16
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 39 2.97 6.21 0 67.97
K655-22 腹腔鏡下胃切除術(悪性腫瘍手術) 34 1.44 13.88 8.82 69.88
K6952 肝切除術(亜区域切除) 30 2.97 19.13 6.67 70.30

<根治性と低侵襲の追求>

(根治性)病態や病状を正確に把握して,可能な限り低侵襲で,可能な限り根治性を求めた外科治療を提供します。化学療法や放射線療法と併用することにより,手術適応も拡がっています。

(低侵襲性)臓器の保護・温存や,安全で迅速な手術を行うことも含めて低侵襲な手術に取り組み,手術による不利益を最小限にとどめることを目指しています。内視鏡手術を積極的に推進し,多くの日本内視鏡外科学会技術認定取得者を養成しています。

(対象となる主な手術の内訳:2020年度)

・食道切除:食道癌など

・胃切除:胃癌,胃粘膜下腫瘍,肥満減量手術など

・大腸切除:結腸癌,直腸癌,潰瘍性大腸炎,クローン病など

・肝切除:原発性肝癌,転移性肝癌など

・胆道癌手術:肝門部胆管癌,遠位胆管癌,胆嚢癌など

・膵切除:膵癌,膵管内乳頭粘液性腫瘍など

乳腺外科

Kコード 術式名称 患者数 平均日数 転院率 平均年齢
術前 術後
K4763 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 100 1.06 6.42 0.00 62.19
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 83 0.98 2.61 0.00 58.14
K4765 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術・胸筋切除を併施しない) 36 1.03 7.19 0.00 62.19
K4768 乳腺悪性腫瘍手術(乳輪温存乳房切除術(腋窩郭清を伴わないもの) 29 1.00 9.45 0.00 52.52
K4764 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴う)) 11 1.00 6.27 0.00 52.36

 乳がんを確実に切除すること(根治性)は当然ですが,根治性を保ちつつ整容性(美しさ)も重視した手術を積極的に行っています。整容性を高める工夫として「内視鏡補助下手術」を積極的に行っています。内視鏡を使用することにより,傷が目立ちにくい乳輪周りや腋窩(わき)の小さな傷で,乳がんを確実に切除することが可能です。

 乳房全切除が必要な場合,患者さんの希望に応じて,形成外科と協力し乳房再建を積極的に行っています。整容性を考慮し,皮膚の温存や乳頭乳輪を温存し手術を行うことも可能です。また乳房外側の目立ちにくい傷で手術ができることがあります。

 乳がんの既往のある方で遺伝性乳がん卵巣がん症候群の方には,乳がんのない反対側の健常乳房に対するリスク低減手術(予防的手術)とその際の再建手術が本年2020年4月より保険適応になりました。当科ではこのリスク低減乳房切除を行う体制を整えています。

 乳がんの進行度や全身状態によっては,再建手術や内視鏡手術が適応にならない場合があります。

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その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

感染症と手術・術後の合併症について集計し、症例数、全退院患者数に対する発生率を示しています。

DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 2 0.01
異なる 20 0.12
180010 敗血症 同一 45 0.26
異なる 32 0.19
180035 その他の真菌感染症 同一 6 0.03
異なる 2 0.01
180040 手術・処置等の合併症 同一 126 0.73
異なる 18 0.10

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更新履歴

2021/09/29
DPCデータに基づく病院指標(令和2年度)公開


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