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研究者への軌跡

心にキュンと響くserendipityな発見を!

氏名:波多野 さや佳

専攻:化学専攻

職階:講師

専門分野:光有機化学

略歴:1982年青森県弘前市生まれ。2浪目に上京し、2003年4月青山学院大学に入学、2012年3月博士(理学)の学位を所得。2012年4月から、同大学の博士研究員を経て、2013年3月より広島大学大学院理学研究科助教(現在に至る)。

 

突然ですが、みなさんは“serendipity(セレンディピティー)”という言葉をご存知でしょうか?『セレンディップの三人の王子』という外国のおとぎ話からつくられた造語で、明確な言葉の定義はないようですが、「求めたわけでも、意図的でもない、思いもよらない、幸運な偶然で起こった出来事や経験、またはそういったもの(探しているものとは別の価値あるもの)に出会う能力」を意味します。“偶然”ではあるのですが、その偶然がその時の自分にとってはチャンスでもあることに気づけるかどうか(洞察力)、その偶然が今までの自分の中の価値観や世界観と違っていても受け入れられるかどうか、またその偶然は一生懸命努力した結果得られる素敵な“偶然”であるなど、かなり深い意味を持っています。私の大好きな言葉で、大事にしていることでもあります。研究をしていると、ごく稀に“serendipityな発見”に出会うことができます。私は幸運にもドクターの学生のころに、“serendipityな発見”に出会えたんです!ちょっと大げさかもしれませんが、これまで世界中の誰も予測出来なかった反応や現象をみつけることが出来ました。この時の、ワクワク+ドキドキというか心にキュンと響くというか、何とも言い表せない幸福感は、きっと1回経験してしまうと忘れられないと思います。
 

私はもともと「研究者になりたい!」と思っていたわけではありません。高校生の頃は吹奏楽部に所属し、授業時間以外は土日もほとんど、トロンボーンに夢中になっていました。大学で『化学』を学ぶことに決めたのも、まわりの友達よりも2年ちょっと遠回りをし、もういいかげん未来(というか来年)の自分の道を決めないといけない時期に、「身の周りのもの、自分の体、世界にあるものすべてが原子(分子)から成り立っているんだよなぁ、何かすごいなぁ。化学は全部の世界に通じているすごい学問だなぁ~」と漠然と思ったことがきっかけでした。広島大学で研究をしている今も、自分が研究者に向いているとはぜんぜん思っていません。ですが、学生時代に“serendipityな発見”に出会い、その時の何とも言えない幸せな気持ちが忘れられず、もう一度そんなキラキラした瞬間を経験したくて、今こうして研究を続けています。
 

もう一つ、私が大事にしていることがあります。それは“人のつながり”です。私は自分にまったく自信がなく、人が説明してくれた話をすぐに理解することも苦手ですし、特に秀でた能力もないです。昔から、大学の先生というのは特別な人だけがなることができる雲の上の職業だと思っていたので、「こんな凡人な自分が大学で教員として研究をしているなんて奇跡だなぁ。」と、よく思うことがあります。今、こうして広島大学で研究しているこの奇跡な軌跡は、これまでに出会った大学の先生方や先輩方、互いに励まし合ってきた同期の仲間、後輩、また直接はアカデミックの世界と関係はしていなくても、これまで出会えたたくさんの友人やみなさん、そしてもちろん家族のおかげだと思っています。
 

研究者になってまだ日が浅い私が研究のことを語るのはおこがましいかもしれませんが、研究の楽しさの一つは、今まで誰も見つけていない反応や現象を発見できる(かもしれない)ところだと思います。また、世界で初めての分子を創り出すことができるところが化学だけが持っている魅力だとも思います。もちろん、いつもいつもそういう経験ができるわけではありませんが、心にキュンと響く“serendipityな発見”に、今度は学生さんと一緒に出会えるように、“人のつながり”を大切にしながら、広島大学で研究を楽しんでいきたいと思っています。


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