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研究者への軌跡

高校の化学と大学の化学の違い

氏名:石坂昌司     

専攻:化学専攻

職名:教授

専門分野:分析化学、光化学

略歴:
1995年北海道大学理学部化学科卒業、1997年同大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了、1998年同専攻博士後期課程を中退し、北海道大学大学院理学研究科化学専攻助手に着任。
2000年博士(理学)取得。
2011年10月に広島大学大学院理学研究科化学専攻准教授に着任し現在に至る。
2004年日本分析化学会奨励賞、2010年日本エアロゾル学会計測賞を受賞。
2009年~2012年、JST さきがけ(「光の利用と物質材料・生命機能」領域)研究員兼任。

 

私は、昭和47年1月に北海道のむかわ町で生まれ、中学まで地元のむかわ町の学校に通いました。その後、苫小牧東高校に進学し、平成3年に北海道大学理II系に入学しました。2010年ノーベル化学賞を受賞された鈴木章先生は、同じむかわ町の御出身で、私の中・高・大学の偉大な先輩です。
 

私が在籍した当時の北大は、大学2年の前期まで教養部で単位を取得し、成績順で学科分属先が決まるシステムを採用していました。当時は、獣医学部・薬学部・農学部が御三家と言われる人気学部でしたが、ちょうど私が学科移行した平成4年は、理学部化学科のOBである毛利衛博士が、NASAスペースシャトル「エンデバー号」に搭乗して宇宙実験を遂行したニュースで持ちきりでした。当時、まだ自分自身の興味の対象が明確ではなかった私は、これがきっかけで、理学部化学科に移行することを決めました。
 

このように何となく進んだ「化学」への道でしたが、結果的には理学部化学科を選んで大正解でした。高校の化学は覚えなくてはいけない項目が多いため、暗記が苦手な私にとっては、どちらかと言えば苦手科目でした。しかし、大学の化学は、高校の化学の印象とは全く異なり、物理に近い分野から生物に近い分野まで極めて広い学問領域を含みます。化学科は、大学3年生までに物理化学、無機化学、分析化学、量子化学、有機化学、生物化学などの専門科目を一通り学習した後、4年生の研究室配属時に、幅広い選択肢の中から自分の専門を選ぶことが出来るところが大変お得なところだと思います。したがって、理科が好きで色々なことに興味があるが進路を決めかねている高校生には、是非、理学部化学科をお勧めしたいと思います。
 

私自身は大学4年次の配属先として分析化学研究室(喜多村曻教授)を選び、光化学と出会うとともに研究の面白さに目覚めました。これまで、界面選択的な分光学的手法の一つである、フェムト秒レーザーを用いた時間分解全反射蛍光法を駆使して、「水と油の接した界面で分子はどの程度混ざり合うのか?」に関する研究を行い博士(理学)の学位を取得しました。最近は、光ピンセットを用いて雲の発生や降雨(降雪)に関わるミクロな水滴の物理・化学過程を光学顕微鏡下で人工的に再現する手法の開発に取り組んでいます。
 

気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)は、2100年までの地球温暖化の見通しを報告しています。2007年に報告されたIPCC第4次レポートには、『将来の気候予測における最大の不確実性は「雲」に起因している』と述べられてます。雲中で起こる物理・化学過程には、未知の課題が数多く残されているのが現状です。雲は、ミクロな水滴または氷の粒の集合体です。光ピンセットを用いると、大気中に浮遊するミクロな水滴を非接触で操ることが出来ます。より確度の高い気候変動予測を実現するために、研究の基礎となる微小水滴の捕捉・計測法を確立し、微小水滴の物理・化学過程の詳細を解明することを目指しています。広島大学理学部化学科で一緒に研究を楽しみませんか?

(2012.7.24掲載)


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