科学と数学の接点に惹かれて
氏名:吉田 清
専攻:数理分子生命理学専攻
職階:教授
専門分野:偏微分方程式論
略歴:
68年 京都大学理学部数学科 卒業
71年 広島大学大学院理学研究科数学専攻修士課程 終了
71〜82年 広島大学理学部数学 助手
82〜90年 熊本大学理学部数学 助教授
90〜05年 広島大学総合科学部数理情報 教授
06年〜 組織替えにより理学研究科に編入
幼少時代
我々の幼少時代に、湯川秀樹博士のノーベル賞受賞と言うニュースは、興奮するものでした。また当時、昆虫採集というのは、少年の遊びのひとつでありました。私もご多分に漏れず、中学卒業まで昆虫採集に夢中になっておりました。昆虫採集に凝って来ますと、その食草やら植物環境やらで、自然と植物に興味を持つようになりました。小学校高学年の時、黄アゲハの変種を採集し展示会に出品した折、この蝶に関して聞きたいことがあると、九州大学の昆虫学の先生が尋ねてこらたことがありました。その時、我が家で一泊され、いろいろな昆虫の話をして下さったことは、現在の仕事をするきっかけの一つになったかも知れません。楽しい思い出です。
中学時代
とにかく、科学に憧れておりました。部活は陸上部に所属しておりましたが、その他、科学クラブと言うのがあって、理科の先生の下で実験の手伝いをやっておりました。内容は、土壌調査でした。試薬など使って行う実験は、何か偉くなった気がし、ワクワクしたものです。この研究は市の代表に選ばれ、県大会に出場した覚えがありますが、そこでどのような評価を得たのか覚えておりません。
高校時代
この頃は文学に目覚め、文学書を読み、斜に構えておりました。文学のほか、湯川博士やアインシュタイン博士に憧れ、「物理学はいかに創られたか」「素粒子」「本の中の世界」などを読んだ記憶があります。「素粒子」などはさっぱり分かりませんでしたが、物理と化学は密接に関係しているのだと知りました。数学との出会いは、中学の時、気にもせずに読んだ「茶の間の数学」や高校の数学の先生から授業中に聞いた小平邦彦先生フィールズ賞受賞の話が、後の私の進路決定に影響していたのかもしれません。
大学進学後
大学は、何か科学がやりたい事もあって、理学部に行くことにしました。教養課程の間、数学の先生がユニークであったこともあって、数学科を専攻し、結局数学の研究が生涯の仕事となりました。実は、大学卒業して、すぐ数学を活かせる職業として、電子計算機プログラマーとなりました。今思うと無謀ではありましたが、アカデミックな職業に憧れて、すぐ会社を退職し、大学院に入り数学の勉強を本格的に始めました。その後、運良く、数学の研究のアカデミックポストを得ることができました。最初は純粋数学の研究を長い間やっていました。そのうち、応用数学の必要性が叫ばれるようになりましたので、私も応用数学をやろうと思い立ちました。しかし、急に方向転換しても、なかなか思うようには研究は進みませんが、やりがいがあります。今私が属しています数理分子生命理学専攻は「科学と数学の接点」に答えられる専攻だと思います。若い研究者が育って行くことを期待しております。