第7回 工学研究科 社会基盤環境工学専攻 D2 近広 雄希さん

近広さん写真

取材実施日:2014年8月7日
第7回の研究留学コーナーは、工学研究科 社会基盤環境工学専攻 博士課程後期(D)2年の近広 雄希(ちかひろ ゆうき)さんに現在の研究内容や留学時の様子、海外に出て気付いたことについて伺ってきました。

近広さんの研究留学について

〔 留 学 先 〕 ポーランド ポーランド国立科学アカデミー基礎工学研究所
〔留学期間〕 1次期間:2014年03月~2014年07月 2次期間:2014年10月~2015年03月(予定)
〔留学経緯〕 指導教員からの紹介
〔 支 援 〕 1次期間:受け入れ先の研究所による支援 2次期間:広島大学工学部後援会の学生補助事業/公益財団法人浦上奨学会の奨学事業による支援
〔留学費用〕 渡航費約18万円、宿泊費約4.5万円/月、生活費約4.5万円/月

ポーランド ワルシャワ 地図

ポーランド ワルシャワ

ポーランド国立科学アカデミー 基礎工学研究所 写真

ポーランド国立科学アカデミー 基礎工学研究所 (IPPT PAN)

現在の研究内容は?

“モバイルブリッジ”という折畳みが可能な橋の研究をしています。私はプロトタイプ機となるモバイルブリッジの実験橋がちょうど製作された時に研究室に配属され、卒業論文、修士論文では、この橋の基本的な力学と設計概念を研究してきました。現在は、これまでの研究をふまえ、橋の実用化のために、より安全で強いものへとするための補強方法とその最適化について検討を行っております。

モバイルブリッジとは?

災害などで橋が流されたり、崩れたりしてしまうと人や車の往来が不可能になります。現状ですと、被災した橋を迅速に復旧させようとしても2週間以上の期間を要するため、早期の救援活動が遅れる可能性があります。そこで、迅速かつ少ない労力で橋を架設することを目的としたものが、このモバイルブリッジ になります。折り畳んだ橋を現場まで一括で運び、重機を極力使わずに、対岸まで伸ばし架設するというコンセプトです。現在では、車両が通行できる大型のMB3.0の開発が行われており、実用化に向けて研究が進められています。

モバイルビレッジ フレーム収納時(保管状態)
モバイルビレッジ展開時写真
モバイルビレッジ車両通行写真

写真(上から):研究開発中のモバイルビレッジ3.0のフレーム収納時(保管状態)
フレーム展開時
車両通行時
 

留学に行くまでの経緯は?

昨秋、指導教員である有尾先生から、海外での研究留学に興味があるかという誘いがあり、スマート構造物の研究に長けたポーランド国立科学アカデミーの“Smart - Tech Center”を紹介して頂きました。元々、外の世界を見て見聞を広めたいという思いがあったため、当時は二つ返事で研究留学を決意しました。その後、有尾先生を通じてホスト側の教授に連絡を取っていただき、CVと研究計画を提示して、受け入れの承諾を頂き、2014年3月から留学することが決まりました。

留学先での研究内容は?

モバイルブリッジの供用時に着目して、橋の耐力を効率良く上げるべく、補強材(弦材)を組込んだ場合の橋の強度やたわみなどの物理量がどのように変化するかを解析的に検討しておりました。モバイルブリッジは災害後の運用を想定しているため、ただ闇雲に橋を補強すれば良いという訳ではなく、少ない補強部材で効率良く橋の性能を上げることが求められます。留学先の研究室は構造物の最適化のみならず、過去にパンタグラフ機構を用いた衝撃吸収システムに関する研究をしていた経緯もあり、多くのアドバイスを頂くとともに、盛んなディスカッションができ、研究を大きく前進させることができました。

留学時の語学力は?

英会話はあまり得意ではありませんでした。そのため、留学出発前には、外国語教育研究センターの英会話の授業に参加したり、TOEICの勉強をしたりしました。不安はありましたが、もともと楽天的な性格であったこともあり、行けばなんとかなるだろうと考えていました。留学当初は自分の考えを上手く相手に伝えることができず、ボディーランゲージを用いるなど手探り状態でコミュニケーションをとっていましたが、滞在期間が増えるに従って、会話の中で用いる便利な言い回しや表現を覚えていき、スムーズなコミュニケーションをとれるようになっていきました。

研究留学を経ての収穫は?

積極性です。どこにいても同じですが、自分で考え、動かないと何も始まりません。留学中は、まずは自分で考えて行動を起こし、もしも行き詰まったら英語を使って誰かに助けを求めないといけませんでした。日常生活の中でさえ、郵便物を出す時でさえ、簡単なポーランド語を控えた上で、英語を交えながら会話をしなければならないという、私にとっては毎日がチャレンジでした。また研究留学の機会を通じて、ヨーロッパの国際学会(オーストリア、ベルギー)に2度参加できたことも貴重な刺激となり、留学以前よりも積極的に行動、コミュニケーションができるようになりました。

近広さん写真

オーストリアでの学会発表

これから研究留学を目指す学生へのメッセージ

留学できるチャンスは限られており、誰にでも巡ってくるものではありません。留学を決意するにあたり、現地でのコミュニケーションや生活など、様々な不安があるかと思います。実際に留学をすれば、自分で何とかせざるを得ないという状況になりますが、意外と何とかなりまし、周囲の方も支えてくれるはずです。そのため、チャンスのある方は不安を恐れずにチャレンジ精神を持って飛び込んで欲しいです。特に学生の方は、失敗して困ることよりも、学べることの方がはるかに多いと思います。

写真 ポーランド 文化科学宮殿

ポーランド 文化科学宮殿

ポーランド ヴィラヌフ宮殿

ポーランド ヴィラヌフ宮殿

謝辞
本研究留学をするにあたり、IPPT PANのProf. Jan Holnicki-Szulc, Dr. Piotr Pawlowski, Dr. Cezary Graczykowskiには研究だけでなく私生活においても多くのサポートをして頂きました。さらに、2014年10月から二度目の研究留学をするにあたり、本学の国際交流事業および公益財団法人浦上奨学会から援助をして頂いております。この場を借りて感謝申し上げます。

「モバイルブリッジ開発ページ」 http://home.hiroshima-u.ac.jp/bridge2/
「工学研究科 土木構造工学研究室」 http://www.civil-hu.jp/struct/
「Smart - Tech Center, IPPT PAN」 http://smart.ippt.gov.pl/index.php?id=info_general

取材者:杉江健太 (総合科学研究科総合科学専攻 人間行動研究領域 博士課程前期2年)

 


up