教授 浅利 宙(ASARI Hiroshi)

研究分野、研究テーマ

家族生活と社会的支援に関する社会学・法社会学的研究

経歴

2004年、九州大学大学院人間環境学研究科(発達・社会システム専攻)博士課程単位取得退学。宇部フロンティア大学講師・准教授、広島大学大学院社会科学研究科・法学部准教授を経て、2015年4月より現職。修士(文学)。

学部の教育内容

講義(法社会学、法社会学応用)では、法社会学の基本領域と問題関心、関連する主要な調査研究(特に社会学的アプローチによるもの)の概説、ならびに、家族・福祉・地域社会等の社会学的研究の動向把握と関連する社会制度や政策、社会資源の現状について取り上げ、検討している。演習(ゼミ)では、社会学系の基本文献の検討を通して基礎的な概念や方法論を学んだうえで、受講生(ゼミ生)各自が設定した研究課題を文献資料や調査によって明らかにしていくことを基本方針としている。これまでのゼミ生の研究テーマは、権力関係といじめの問題、貧困問題、過疎化と地域社会、漁村における社会組織、都市部の家族関係、地域社会における相互扶助とNPOの活動、非正規雇用をめぐる問題、現代日本における宗教、移民をめぐる問題、環境問題と社会運動、教育におけるジェンダーなど、かなりバラエティに富んでいる。担当学生による報告と参加者全員によるディスカッションを通して、報告内容の理解とともに、意義や問題点、次なる検討課題などを導き出すように努めている。

大学院の教育内容

講義(家族支援社会論)では、社会政策と社会資源の動向、現状、課題について,主に家族生活や地域生活で生じる諸問題や紛争現象との関わりを中心に、社会学・法社会学的な観点から検討している。演習(家族支援社会論演習)では、家族支援や支援活動に関連する社会学系の文献を 選定し、報告とディスカッションを通して理解を深めている。また、特別研究では、大学院生各自の研究テーマに関連する諸研究の報告と討議を通して、研究の 進展を図っている。近年、指導した院生の研究テーマは、母子家庭の現状と課題、子どもを亡くした親に対する支援、地域コミュニティ関与による空き家再生活動、性的マイノリティに対する理解と支援などである。

最近の研究について

家族支援に携わる社会資源の実態調査、現代家族の形態と関係性の動向に関する調査、家族社会学の諸学説における家族規範の位置づけの検討などを主な研究テーマとしている。

この数年は、家族支援のなかでもグリーフケア(悲嘆ケア、遺族に対するケア)の活動をおこなっているセルフヘルプ・グループの調査研究を集中的に実施している。近年、死別を経験した当事者によって運営される遺族支援グループは、死別後を支える資源として関心を集めており、家族関係の再構築に対する効果を指摘することができる。現在、多様な社会資源が家族福祉に果たす役割とともに、資源間の連携が問われているが、一方で、政策との関連を意識的に取り入れることも必要とされている。こうした現状認識のもと、遺族支援グループの中長期的な形成・展開過程と、遺族・家族と社会資源との関係性(社会制度も含めた当該分野(医療や福祉、法律や行政)の専門職が中心となるフォーマルな社会資源と、非専門職が多くを占めるインフォーマルな社会資源が連携しつつ、いかに当事者の力を引き出すことができるか)に着目しつつ、政策形成に対する当事者集団の活動の意義や課題について明らかにすることを目指している。


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