教授 宮永 文雄(MIYANAGA Fumio)

研究分野、研究テーマ

民事訴訟法、裁判外紛争処理(ADR)

経歴

1970年 熊本県に生まれる
1994年 西南学院大学法学部卒業
1996年 九州大学大学院法学研究科修士課程修了
1999年 九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学
1999年 九州大学大学院法学研究科助手(~2000年)
2004年 富山大学経済学部専任講師
2006年 富山大学経済学部助教授
2007年 富山大学経済学部准教授
2011年 広島大学大学院社会科学研究科准教授
2015年 広島大学大学院社会科学研究科教授(現在に至る)

学部の教育内容

民事訴訟法1・2(いずれも判決手続)
民事訴訟法は、「六法」の一つとなっている重要な分野であるが、他の分野と比較してなじみの薄いものと思われがちである。しかし、民事訴訟は、 私たちが遭遇する様々な紛争を解決するための最も重要で、かつ、基礎となる手続であり、ここで学んだ内容は非常に応用範囲が広い。それだけでな く、法や社会のあり方について学ぶ端緒にもなりうるものである。この講義では近年盛んに議論されている司法改革の流れも見据えつつ、民事訴訟法の 基礎を扱う。前期の民事訴訟法1では、基本的な概念と民事訴訟手続の流れを概観する。後期の民事訴訟法2では、訴訟要件、証拠などを扱う。

演習(1~4)
私が担当する演習(ゼミナール)は、3・4年生合同で実施している。民事訴訟に限らず裁判所内外の民事紛争解決手続を中心に幅広く扱い、学生に よる報告と議論により理解を深めている。授業の一環として民事訴訟の傍聴をしているほか、他大学との合同ゼミナールで討論をすることにより、知識 を深めるとともに問題解決・プレゼンテーション・ディスカッション能力の向上を図っている。

※以上のほか、年度によっては、1・2年次生に対するゼミナールを担当している(教養ゼミ・基礎演習)

大学院の教育内容

裁判外紛争処理論・裁判外紛争処理論演習
大学院の授業では、私の専門分野の中心であるADR(裁判外紛争処理)に近い分野を扱っている。具体的には、民事手続法のうち主として裁判外紛 争処理に関する法制、および紛争処理論、司法制度論等の分野から、受講者の興味・関心に応じて、幅広くテーマを設定している。2013年度の内容 の一部を紹介する。
前期は土地の境界紛争の解決について扱った。従来行われてきた境界確定訴訟は特殊な民事訴訟の類型とされている。近年は不動産登記法の改正に伴い 創設された筆界特定制度が盛んに利用されるようになっている。この制度の運用状況と問題点について議論した。境界紛争の解決を図る民間ADRも各 地で設立が相次いでいるが、必ずしも十分に利用されていない現状があり、この点についても議論した。
後期は、法テラス(日本司法支援センター)を中心に取り上げた。法的支援のワンストップサービスを目指し、司法アクセスの拡充等に貢献している が、課題も少なくない。これらの点について民事紛争にかかわる分野(情報提供・民事法律扶助・司法過疎対策)を中心に、東日本大震災対応を含め議論をした。

上記の大学院の授業については、隔年開講となっている。
これらが開講されない年度は、「民事訴訟の理論と実務」「民事訴訟の理論と実務演習」を開講している。
2020年度を例に挙げると、前者については、民事訴訟のIT化、令和元年民事執行法改正、家事事件手続法改正など、最新の手続法改正関係のトピックについて取り上げた。
後者については、判例時報連載の科学と裁判シリーズなど、文献購読を行い議論した。

※以上のほか、大学院生に対する研究指導を行っている。(特別研究I~IV)

最近の研究について

研究の中心であるADRについては、多重債務者に対する相談体制に関する研究を行ってきた。多重債務者に対する国や自治体の救済策も一定の成果 を上げ相談体制も整ってきたこと、資金業法の改正により貸出しに対する規制が強化されたこと等もあり、一時の危機的状況からは脱しつつある。いわ ゆる過払い問題もピークを過ぎたとみられることから、この問題には、従来とは異なる角度からの検討も必要と考えている。

民事訴訟関係については、所有権確認訴訟の当事者適格の問題を研究している。所有者不明の土地を時効取得した者が、自らの所有権を訴訟により確 認する必要が生じた場合に誰を被告とするべきかという問題である。民法239条2項には、無主の不動産は国庫に帰属する旨の規定があるが、所有者 不明と無主は異なるものである。解決策としては、民法の規定をここで用いることができるよう「無主」を擬制するか、手続法上訴訟担当として国を被 告とすることができるようにするか、あるいは、別の手段を用いるかといったことが想定される。東日本大震災後にも類似の問題起きており、今後検討を深めたい。


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