教授 手塚 貴大 (TEZUKA Takahiro)

研究分野、研究テーマ

行政法、租税法、租税政策論

経歴

2004年3月、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。2004年4月から広島大学大学院社会科学研究科助教授、2007年4月から同准教授(職名変更による)、2014年10月から同教授。博士(法学)。専攻分野は、行政法・租税法。

学部ゼミの教育内容

学部の授業に関しては、以下の科目を担当しています。

まず、行政法1・2です。行政法は行政活動が我々に如何なる法的影響を与えるかを考え、行政活動を法律の規律の中に置くことを主眼としています。行政過程、公権力、行政行為、行政立法、行政指導、取消訴訟、国家賠償etc.のキーワードが多数出現するのですが、それらを基に我々が日常的に接する行政活動を法的に眺めることは、とても役立つと同時に、学問的にもとても魅力的であると思います。そうした行政法の基本的な部分、つまり行政法総論を、教科書を基にして授業では扱っています。これは行政という極めて広範な領域にわたり一般的に妥当する共通ルールです。そして、行政活動を法的に分析する必須の道具でもあるわけです。そして、公務員試験にとっても極めて重要な科目といえるでしょう。そのため、毎年多くの方が受講されます。

次に、税法1・2です。租税法は当初行政法の一分野と考えられていましたが、現在では、強い関連性を残しつつも、独立した別個の法体系を構成しています。我々が日常的に納付・負担する租税について、どのような仕組み・理論に基づいて課税が行われるのか、を授業では講義しています。確かに租税法は税負担の計算を行う仕組みではありますが、その背後には複雑な基礎理論があります。したがって、授業ではそうした基礎理論をできるだけわかりやすく、興味が持てるように理解していただけるように授業を行っています。租税法にも独自の解釈理論があり、それを学んだあとに、所得税法、法人税法について講義しています。いずれも我々が聞いたこともある税目に関する法ですが、租税法律主義、担税力、所得概念etc.のキーワードを中心に扱っています。

最後に演習です。これはゼミとも呼ばれていますが、租税法に関する重要判例についてケースブックを教材にしながら、参加者全員で検討していきます。租税法は総合科目とも言われ、多くの学生が3年次以降で勉強しますが、基本科目にも関連している部分がありますので、無理なく学習できます。ビジネスの世界においては、自らの経済取引についてどの程度の税負担が課せられるかを明らかにしないと、それを円滑に行うことはできません。租税法はビジネスの世界において最も重要な法であるといっても過言ではないでしょう。この演習で租税法の素養を身につければ、皆さんの将来にとっての財産となると思います。勿論、公務員になった方にも、税制・財政部門は行政活動の心臓部分ですから、きっと役立つはずです。

大学院の教育内容

大学院では、租税法、国際租税法、演習を担当しています。いずれも、学部の演習の内容をさらに高度にさせつつ、判例研究を通じた租税法解釈論の動向把握とその習得に努めています。学部の授業が基本を知るというものであるならば、大学院の授業は応用力の習得にその眼目があります。自らの研究分野について、自ら深く・広くリサーチを行う必要があります。また希望者がいる場合には、諸外国の理論動向も踏まえた原書購読を行うことも可能です。

大学院の授業といえば、基本的には研究者養成が目的であると思いますが、最近では大学院生の志望も多様化しており、特に、私の指導下にある大学院生の傾向としては、民間・公務員を志望する方、税理士を志望する方等が多いように思います。そうしたいわば実務家を進路として志望する大学院生の指導も行っています。

最近の研究について

私の研究分野の中心は租税法です。特に、所得税法・法人税法についてドイツ租税法の理論動向を素材に研究をしています。所得税・法人税は租税法の体系の中でも中心を占めるもので、租税法の基礎理論の形成には大きなウェイトを占めていると思います。ドイツにおいては、確固とした解釈論の確立も進められていますが、それ以外にも租税政策論の観点からの研究も行われています。例えば、所得税・法人税をさらに租税原則に照らして改善していくために、租税理論に基づく改革案が提示されており、最近はその分析作業を研究課題としています。また、わが国の企業課税に係る解釈論的諸問題を、重要判例を素材として検討する作業も行っています。租税実体法は、特に私法との関係が重要ですので、いわゆる「租税法と私法」の視点を意識しています。

そして、租税手続法も研究対象です。今までは、ドイツ租税法を参照して、事前照会制度、租税手続における和解(ネゴシエーション)の可能性等について研究しましたが、最近は国税通則法の改正もあり、それに関する論文も書きましたが、さらに納税者の手続的権利をわが国の実定法上どのように実現していくかを深く研究したいと思います。

さらには、地方税の研究です。地方分権の時代において、地方税は租税法の領域では研究分野として最も重要性が高くなっているといえると思います。特に、総論的には、地方交付税、国庫支出金等の財政調整のあり方も含めた地方分権時代の地方税体系のあり方、個別分野では固定資産税の法的分析です。

行政法の研究については、政策実現を指向する行政法総論の研究です。行政法は法律による行政の原理という基本原則に拠りつつその体系が構築されています。その法律は行政活動を拘束するものですが、同時に公共政策が規律されるものです。その公共政策の内容が合理化されなければ、結果として行政活動も不合理なものになります。したがって、行政法律の内容の合理化を確保しつつ法律による行政の原理を論ずる必要が出てきます。行政法解釈論は立法された後の法律を前提として展開されますが、それだけではなく、立法段階での作業の理論的基盤を提供する行政法総論も重要であろうと思います。具体的には、規制緩和・民営化における行政制度、立法過程のあり方、行政立法のあり方等を素材として検討しようと思っております。

その他にも、いわゆるBEPSに対応するための国際課税、金融規制法のあり方、国際金融システムの制度設計も新たに研究していこうと思っております。


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