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研究者への軌跡

Road to Frog

氏名:倉林 敦

専攻:生物科学専攻

職階:助教

専門分野:

略歴:平成2年 埼玉県立不動岡高等学校、卒業平成2年 筑波大学・第二学群・生物学類 入学、平成6年 筑波大学・大学院博士課程・生物科学研究科入学、平成12年 筑波大学・大学院博士課程・生物科学研究科 修了(理学博士)、平成12—15年 慶応義塾大学 法学部 生物学教室 助手、平成15年— 広島大学 大学院理学研究科附属両生類研究施設 助手

 

私は幼い頃から、魚や蛙、いわゆる「お水」系の生き物を捕まえることや、飼育するのが好きで、生まれ育った埼玉では、毎日のように川や野原に出向き、釣りや採集をしていました。そんな私が生物学を志したのも当然で、「魚や蛙をたくさん捕まえられる研究をしよう!」と心に決めて、筑波大学生物学類に進学しました。
生き物を採集して、それがどんな生き物で、進化的にどのような位置を占めるのかを調べる学問分野を、一般に「系統分類学」といいます。そこで、卒業研究では動物系統分類学教室の門をたたきました。しかし、ここに誤算がありました。それは、筑波大学には「お水」系の系統分類を行っている先生がいらっしゃらなかったことと、系統進化の研究の主流が、生き物自体を見るのではなく、DNA やタンパク質を用いた分子系統学にシフトしつつあったことです。むりやり頼み込んだ所、「八つ目鰻」のミトコンドリアゲノムの研究ならやってもいいと言うことになりましたが、卒業研究を終える頃、全く同じテーマの論文がアメリカの研究グループから出版されてしまいました。それ以外にも幾つか研究に手を付けたものの、ことごとく競争相手に先を越されてしまいました。その結果、私の修士課程以降の研究テーマは、「軟体動物の巻貝類」における「ミトコンドリア DNA ゲノム構造の解析とゲノム構造を指標とした系統推定」というものになりました。この研究では、(1)ミトコンドリア DNA の構造が巻貝類の進化に伴って段階的に変化していく様子を観察でき、(2)巻貝の仲間では、アワビなどのグループが原始的であり、原始的な巻貝から新生腹足類や異旋類と呼ばれるグループが出現し、最終的にウミウシとカタツムリが誕生したことを示した、という2つの成果をあげることができました。これは面白い結果だと思っているのですが、残念ながら魚や蛙とは縁遠い研究です。
 

上記研究で学位所得後、慶応義塾大学の法学部の助手に採用して頂きました。ここでは、ニワトリの色彩の研究や、ホヤと藻類の共進化の研究を行いました。これらの研究も楽しいものでしたが、やはり、魚・蛙の夢捨てがたいものがありました。このため、4年前に広島大学の両生類専門の研究施設である「理学研究科附属両生類研究施設」に採用して頂いた時には、サッカー日本代表が W 杯フランス大会初出場を果たした時のような感動がありました(ネタが古いですね。ちなみに、その時の合い言葉が「Road to France です」)。
 

現職では、多くの蛙に囲まれ、さらに博士課程の時と同じく、ミトコンドリアDNAを用いた進化の研究に携わらせて頂き、幸せな日々を送っています。特に素晴らしかったのは、私の研究に興味を持って下さった先生が居られ、進化的に重要なカエルがいる「マダガスカル」行きの旅費を出して下さったことです。マダガスカルでは、お水中のお水とも言うべき、「ハイレグアデガエル(写真:足の部分の模様がハイレグ水着を着ているようなのでこう呼ばれる)」 というカエルが採取でき、それを元に論文も書くことができました。こうしてみると、「あきらめなければ夢は叶う」ものなのだ、と思う次第です。


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