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研究者への軌跡

細胞分裂の研究はおもしろい?

氏名:濱生 こずえ

専攻:生物科学専攻

職階:准教授

専門分野:細胞生物学

略歴:理学研究科助手。広島大学大学院理学研究科博士課程を修了し、博士(理学)の学位を取得。ポスドクを2年間経験し、現在に至る。

 

動物や植物、細菌やバクテリアに至る全ての生物の基本単位は細胞である。私達ヒトの体は約60兆個の細胞から構成されているが、元々は受精卵という1つの細胞から始まる。この1つの受精卵がどのようにして60兆個もの細胞が集まった生物体になるのか?・・・・・・それは、細胞分裂が起こるからである。しかし、常に細胞分裂を続けているわけではない。発生が進むと細胞が分化し、細胞分裂が停止するのである。
 

細胞分裂とは、例外もあるが、1つの細胞が2つの細胞になることである。この過程で、DNA合成や染色体分離、細胞質分裂が起こる。これらの現象は、動物細胞も植物細胞も共通している現象であるが、細胞質分裂の様式は動物と植物で異なっていると考えられている。動物は細胞の外側から細胞膜がくびれていくのに対して、植物は細胞の内部に細胞板が形成される。これらのことは、高校生物の教科書にも記載されている。
 

DNA合成はどのようにして行われるのか?染色体分離はどのようにして起こるのか?細胞質分裂はどのようにして引き起こされるのか?教科書では、あたかも既に明らかにされているかのように記載されているが、これらの答えはまだ分かっていないのである。私は、上述の疑問の中でも特に、動物の細胞質分裂がどのようにして引き起こされるのかについて研究を行っている。
 

動物の細胞質分裂時には、細胞の赤道面にアクチンとミオシンから構成される収縮環と呼ばれる構造体が形成され、収縮環が収縮することにより細胞がくびれていくことがこれまでの研究で明らかにされている。しかし、収縮環がどのようにして形成され、どのように収縮し、どのように消失するのかについては明らかにされていない。
 

私達の研究室では、活性化されたミオシンが収縮環に存在していることや、ミオシンを活性化する蛋白質(キナーゼ)が収縮環に存在していることを明らかにした。また、ミオシンの活性阻害剤やキナーゼ阻害剤を細胞に処理すると、細胞分裂が阻害されることを明らかにしている。現在は、ミオシンを収縮環の領域に運ぶ因子について検討を行っている。
 

私達が細胞分裂の仕組みを明らかにすれば、細胞分裂をコントロールすることが出来るようになり、癌の予防や治療に役立つと考えている。私は、大きな野望を持ちつつ、地道に研究を行っている。


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