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【研究成果】腎移植後、拒絶反応に関わる抗体ができやすい人の特徴を解明 ―ドナーとのHLA適合性に加え、患者自身の遺伝学的背景も関係―

本研究成果のポイント

  • 腎移植後、新たに発生するドナー特異的抗体は、抗体関連型拒絶反応の原因となり、移植腎の長期生着に影響を与える。
  • ドナー・患者間のHLA適合性および、患者の濾胞性ヘルパーT細胞関連の遺伝学的背景が、ドナー特異的抗体の産生に関連することを明らかにした。
  • 本研究成果は、腎移植後の拒絶反応をより正確に予測し、患者ごとに最適な免疫抑制療法を選択する個別化医療につながることが期待される。

概要

 広島大学大学院医系科学研究科消化器・移植外科学の大段秀樹教授、志田原幸稔医師、県立広島病院 井手健太郎医師らの研究グループは、腎移植後に新たに出現するドナー特異的抗体(de novo donor-specific antibody: dnDSA)の産生リスクを、広島大学病院で腎移植受けた210例を対象に検討を行いました。dnDSAは抗体関連型拒絶反応の原因となり、移植腎の長期生着に影響します。
 研究グループは、世界的に広く用いられているドナー・患者間のHLA分子レベルでの適合性解析(HLA molecular mismatch)に加えて、患者の遺伝的変異(一般集団にも広く存在する一塩基多型:SNP)に着目し、抗体産生を補助する濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh細胞)関連遺伝子について解析しました。
 その結果、ドナー・患者間のHLA適合性だけでなく、患者のTfh細胞関連の遺伝学的背景がdnDSA産生に関連することが明らかとなりました。ドナー側の免疫学的情報と患者側の遺伝学的情報を組み合わせてdnDSA産生リスクを評価した点は、本研究の大きな特徴です。本研究成果は、腎移植後の拒絶反応を予防する免疫抑制療法を実施する上で、dnDSA産生リスク評価の精度向上や、将来的な個別化免疫抑制療法につながることが期待されます。
 本研究成果は、国際学術誌「Frontiers in Immunology」に掲載されました。
 また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。

論文情報

論文タイトル:Donor–recipient HLA molecular mismatch and T follicular helper-related genetic variants are associated with dnDSA development after kidney transplantation
著者:Hidetoshi Shidahara, MD, Kentaro Ide, MD, PhD*, Aiko Yamaoka, Yuki Imaoka, MD, PhD, Seiichi Shimizu, MD, PhD, Hiroyuki Tahara, MD, PhD, Masahiro Ohira, MD, PhD, Yuka Tanaka, PhD, Hideki Ohdan, MD, PhD*
DOI:10.3389/fimmu.2026.1875029

背景

 腎移植後に新たに出現するドナー特異的抗体(de novo donor-specific antibody: dnDSA)は、抗体関連型拒絶反応の原因となり、移植腎の長期生着を妨げる重要な因子として知られています。しかし、同程度のHLA適合性を有する患者でも、dnDSAを産生する患者としない患者が存在し、その違いを規定する要因は十分に明らかではありませんでした。近年、ドナーとレシピエント(腎臓を移植される人)間のHLA分子レベルでの違い(HLA molecular mismatch)を評価する解析法が注目されていますが、患者自身の免疫応答の違いを十分に説明することはできませんでした。

研究成果の内容

 本研究では、広島大学病院で腎移植を受けた210例を対象に解析を行いました。ドナー・患者間のHLA適合性を、HLA molecular mismatchと総称されるHLA-EMMA、PIRCHE-T2、Eplet mismatchの3種類の解析法で評価しました。また、患者側の要因として、抗体産生を補助する濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh細胞)関連の遺伝学的背景について、Tfh細胞の発現に関わる因子であるCXCR5およびCTLA4のSNPを解析しました。 
 その結果、追跡期間中に20例(9.5%)でHLAクラスIIに対するdnDSA産生を認めました。3種類のHLA molecular mismatchの中では、HLA-EMMAが最も高い予測性能を示しました。また、高HLA-EMMA群ではdnDSA発生リスクが約8倍高いことが明らかとなりました。さらに、Tfh細胞関連の遺伝学的背景も独立した危険因子でした。両者を組み合わせることで、dnDSA発生リスクをより高精度に層別化できることを示しました。 
 これまで、ドナー側の免疫学的要因であるHLA molecular mismatchの重要性は認識されていましたが、本研究はこれに加えて患者自身の免疫応答に関わる遺伝学的背景も重要であることを示した点に特徴があります。ドナー側と患者側の双方の情報を組み合わせることで、より精度の高い免疫学的リスク評価につながる可能性が示されました。

今後の展開

 本研究で示したリスク評価法は、今後、独立した集団での検証が必要です。検証が進むことで、腎移植後の拒絶反応リスクをより正確に予測し、患者ごとに最適な免疫抑制療法を選択する個別化医療への応用が期待されます。
 また、本研究ではTfh細胞に関連する遺伝学的背景がdnDSA産生に関与することが示されましたが、その詳細なメカニズムは未だ明らかになっていません。今後、Tfh細胞の機能解析を通じて、拒絶反応の発症機序の解明や、新たな予防法・治療標的の探索につながることが期待されます。

参考資料

図) ドナーと患者間のHLA分子レベルでの違いの大きさと、患者のTfh細胞関連の遺伝学的背景を組み合わせて4つのグループに分類しました。HLA分子レベルでの違いが大きい群(EMMA≥28)で、さらにTfh細胞関連の高リスク群(Tfh high)で、腎移植後にドナー特異的抗体(dnDSA)が最も高い割合で発生しました。この結果から、ドナー側と患者側の情報を組み合わせることで、dnDSA発生リスクをより正確に評価できる可能性が示されました。

【お問い合わせ先】

大学院医系科学研究科 消化器・移植外科学
教授 大段 秀樹
Tel:082-257-5220 FAX:082-257-5224
E-mail:hohdan*hiroshima-u.ac.jp
 

(*は半角@に置き換えてください)


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