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【研究成果】水素の効果を左右するカギは「腸内細菌」? ~水素をつくる腸内細菌が少ない人ほど、水素摂取後に睡眠の質が改善しやすい可能性~

本研究成果のポイント

  1. 睡眠の質に悩みのある健康な成人44人を対象に、水素ゼリー(※1)を8週間摂取してもらい、睡眠の質などにどのような影響があるかを調べました。
  2. 参加者全体で比較したところ、水素ゼリーを摂取したグループと水素を含まないプラセボゼリー(※2)を摂取したグループとの間で、睡眠の質の改善に明確な差は確認されませんでした。一方で、水素ゼリーを摂取した人の中では、腸内の水素産生菌(※3)が少ない人ほど、睡眠の質や精神的ストレスが改善しやすい可能性が示されました。
  3. これまで、水素の効果を調べる臨床研究では、腸内細菌がもともとつくる水素の量の個人差はほとんど考慮されていませんでした。本研究は、水素の効果を評価する際には、腸内細菌の違いも考慮する必要性を示した点に特徴があります。この発見は、今後、腸内細菌の特徴に応じて適した健康管理を行う「個別化ヘルスケア」(※4)への応用が期待されます。

概要

 広島大学病院の東川史子特命准教授らの研究グループは、睡眠の質に悩みのある健康な成人44人を対象に、水素を含むゼリーを8週間摂取することで睡眠の質が改善するか、また、その効果に腸内マイクロバイオーム(※5)の違いが関与するかを調べました。
 参加者を、水素を含むゼリーを摂取するグループと、水素を含まないプラセボゼリーを摂取するグループに無作為に分け、どちらを摂取しているかを参加者にも研究者にも知らせない方法「ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(※6)」で試験を行いました。参加者には8週間、1日3回ゼリーを摂取してもらい、睡眠の質、精神的ストレス、身体的疲労感、酸化ストレス(※7)に関する指標および腸内マイクロバイオームなどを調べました。
 その結果、研究参加者全体で比較すると、水素ゼリーを摂取したグループとプラセボゼリーを摂取したグループとの間で、睡眠の質の改善に統計的に明確な差は確認されませんでした。
 一方、水素ゼリーを摂取したグループについて詳しく調べると、睡眠の質が改善した人と改善しなかった人では、腸内マイクロバイオームの特徴に明確な違いが見られました。特に、腸内で水素をつくるBacteroides(バクテロイデス)属などの細菌が少ない人ほど、水素ゼリー摂取後に睡眠の質が改善しやすい可能性が見出されました。
 この結果は、「水素を摂取すればだれにでも同じような効果がある」のではなく、もともとの腸内細菌の状態によって、水素摂取による影響が異なる可能性を示しています。これまでの水素に関する臨床研究では、腸内細菌がつくる水素の個人差はほとんど考慮されていませんでした。本研究は、水素の効果を調べる際に、こうした個人差を考慮することの重要性を示した点に新規性があります。
 今後、より大規模な臨床研究による検証を通じて、将来的に、腸内マイクロバイオームの情報をもとに、水素による効果が期待できる人を予測するなど、一人ひとりの特徴に合わせた「個別化ヘルスケア」や水素の臨床研究への応用が期待されます。
 本研究成果は、国際学術誌 Scientific Reports に掲載されました。

論文情報

論文タイトル:Individual variability in hydrogen-producing microbes influences the response to hydrogen supplementation on sleep quality: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel study
著者:Fumiko Higashikawa, Keishi Kanno
DOI:10.1038/s41598-026-52342-9
掲載誌:Scientific Reports, 2026, 16:23337

背景

 近年、水素には抗酸化作用や抗炎症作用があることが報告されており、さまざまな領域で研究が進められています。体内の酸化ストレスは、睡眠障害と関連することが示唆されており、酸化ストレスを軽減することが、睡眠の質の改善につながる可能性があります。
 一方、一部の腸内細菌は、食物繊維などの発酵を通じて水素を産生することが知られています。腸内マイクロバイオームは個人差が大きいため、日常的に体内で産生される水素量にも個人差があると考えられます。
 しかし、これまでの水素関連研究では、外から投与する水素の効果を評価する際に、もともと体内で水素を産生する腸内細菌の個人差を考慮した研究はほとんどありませんでした。そこで本研究では、水素ゼリー摂取による睡眠の質への影響を検証すると同時に、腸内の水素産生菌の個人差が、摂取した水素への反応性に関係するかを探索的に調べました。

研究成果の内容

★従来研究との違い(対比表)

今後の展開

 本研究は、腸内マイクロバイオームの構成、特に「水素産生能力」という機能的な個人差を事前に評価することで、水素投与への応答性を予測できる可能性を示しました。腸内マイクロバイオームによる代謝産物のネットワークが、宿主の健康や疾患に与える影響の解明に向けた重要な一歩となります。今後は、より大規模な集団での検証や、客観的な睡眠指標の導入、および呼気水素測定等を通じてエビデンスを蓄積することによって、個人の腸内環境タイプに基づいた個別化医療・ヘルスケアの発展に貢献することが期待されます。

参考資料

※AIによって作成されたイメージです 

用語解説

(※1) 水素ゼリー
 水素分子(水素ガス)を含むゼリー状の食品。本研究では、水素を摂取した場合の睡眠の質への影響を調べるために使用しました。
(※2) プラセボゼリー
 水素ゼリーの効果を正確に比較するために用いる水素を含まないゼリー。見た目や味などを水素ゼリーとできるだけ同じにすることで、思い込みなどによる影響を除いて効果を調べるために使用しました。
(※3) 水素産生菌
 糖質などの代謝過程で水素を発生する腸内細菌。本研究では、BacteroidesEscherichia、RuminococcusClostridium sensu stricto1の4属の合計を、水素産生能の間接的な指標として用いました。ただし、これは実際の体内の水素産生量を直接測定したものではありません。
(※4) 個別化ヘルスケア
 一人ひとりの体質や遺伝情報、生活習慣、腸内環境などの違いを考慮して、その人に合った健康管理を目指す考え方。
(※5) 腸内マイクロバイオーム
 腸内に存在する細菌などの微生物集団と、それらが持つ遺伝情報を含めた「生態系全体」を指す言葉。
(※6) ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
 参加者を無作為に介入群と対照群に分け、参加者も研究者もどちらを摂取しているか分からない状態で行う信頼性が高い臨床試験手法。本研究では、水素ゼリーと外観・食感・味・香りが同一のプラセボゼリーを用いました。
(※7) 酸化ストレス
 体内で発生する活性酸素などによる「酸化」と、それを抑える体の働きとのバランスが崩れ、細胞などに負担がかかった状態を指します。

【お問い合わせ先】

病院・未来医療センター 東川 史子
Tel:082-257-1909 FAX:082-257-1909
E-mail:fumiko*hiroshima-u.ac.jp
 

(*は半角@に置き換えてください)


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