第14回 ハリマ化成株式会社 西岡 務 氏

多様なキャリアから得た適応性

取材日:2018年7月3日

西岡務氏は、これまで日東電気工業株式会社やハリマ化成株式会社にて、半導体開発、事業経営、企業経営など多くの経験をされてきました。多くの人は会社勤めだけで約半世紀を過ごすともいわれています。その会社生活をいかに充実したものにするのか、壁にぶつかったときの突破方法などについて、紹介して頂きました。

 ハリマ化成株式会社 西岡 務 氏

略歴

【学歴】

1985年  3月  広島大学工学部 第Ⅲ類(応用化学) 卒業

【職歴】

1985年  4月  日東電気工業(現:日東電工)株式会社入社
2012年  4月  同社 執行役員ICT事業部門長
2015年  6月  同社 取締役上席執行役員CTO全社技術部門長
2016年 12月 ハリマ化成株式会社入社
2017年  4月  同社 常務執行役員、研究開発センター長
2017年  6月  同社 常務取締役、研究開発部門統括、
                            研究開発カンパニー長

(現在に至る)

キャリアの転機

なぜ日東電工やハリマ化成を選ばれたのですか

大学の先生から企業を紹介されたため、日東電工への就職について特別な考えはありませんでした。その後、一身上の都合で日東電工を退社し、再就職先を探している際、ハリマ化成の社長に出会い、その心意気に惚れて「ぜひ入社させてください」と思うようになりました。これは後から聞いた話で、日東電工とハリマ化成は取引があったようなのですが、その時は全く知らなかったです。

多様なキャリアで得られたことは何ですか

日東電工では半導体開発20年、事業経営8年、企業経営6年と様々な部署を経験しました。その異動はすべて上司の命令で自分の意志ではないですけど、大変良い経験になりました。
例えば、私は昔、研究所の事業を「銭にならんものばっかり作りやがって、さっさと売れるもの作らんかい」と、正直な話馬鹿にしていました。そう思っていた矢先に上司から研究事業への異動を命じられ、「なんで」と落胆しました。
実際に研究所内部に入ってから分かったことですが、外から見ていた景色とは結果的に全く違っており、非常に高いポテンシャルと技術を持っていることがわかりました。まさに宝の山でした。その宝の山をどうにかして実のあるものにしてやらなければと考えると、また違うやり方が必要になると思います。
外の知見、経験を持つ人が入るとそれまでのアイディア、技術が新しい化学反応を引き起こして、より良い方法が見つけられることをこれまでさんざん経験してきました。

ハリマ化成に移った当時は、何をしている会社か正直知りませんでしたが、いろんな方の話を見て、聞いて、自分の中で少し検証してみたら、面白い技術や考え方を持っているのに、ビジネスの世界であまり上手に使えていない会社だなと思いました。ただ言われたものだけを作っていることで止まってしまっていて、なんともったいないのだろうと。こんな面白いものを持っているのであれば、見方を変えればさらに面白いものを生み出すことができ、その結果企業としてもっと成長できるのではないかと考えました。

これも日東電工の上司がガラリと環境を変えて、新しいチャレンジをさせてくれた経験が大いに生かされていると思います。異動を通知されたときは「なんでわしやねん」と腹が立つと思いますが、長いスパンで物事を見たときには、多様な経験をしていることは非常に有益な財産になると思います。

壁にブチあたった時の対処方法は

技術者として一番根っこに持っておいてほしいことは「これをやっているのは俺が一番最初だ」と思うことだと思います。と言いながら壁にぶち当たりますよね。その時に今まで結果的に良かったことは、自分ないし自分のチームだけで考えずに周りを巻き込むことです。自分たちだけで考えたら、いつまでも同じロジックの中で堂々巡りをしてしまいます。しかし、全く分野の違う他の人から意見をもらうと違う角度から物事を見ることができ、新しいアイディアを見つけることができます。意見を出してくれた人が正しいとかではなく、それを受けることで自分の思考や見解を変えることができます。その時に新たな気づきが生まれ、化学反応が起こるのです。つまり、いろんな分野の人の意見を聞き、バージョンアップさせて、より良いものを作るというのが壁を乗り越える方法の一つではないでしょうか。

それでだめなら、最終的には開き直ることですかね。これは悩んだときによくやっていました。答えが出ないと思った時には一回忘れてみると、ふとした時に良いアイディアが浮かんだものです。若いときには枕元にメモ帳を置き、寝入りばなに浮かんだアイディアをその都度書いたものです。ただ、寝ぼけているので、あとから見直しても8割がたは何を書いているか分らなかったですけどね。

求められる人物像

求められる姿勢・資質について教えてください

ハリマ化成や日東電工関係なく、研究者である以上、第一にいろんなことに興味を持ってほしいなと思います。第二に「なぜ」と疑問を持ってほしいです。聞く人の誰もがそうだよねと思うところまで原理を突き詰めてほしいです。

ハリマ化成は、相手の気持ちを忖度する人より変な人が好きです。普通の人は世の中の常識の範囲内のものを作ると思います。ただ、変な人はどこか一点ぶち破って、世の中にないものを作る可能性が十分あると思います。我々がお客さんに求められるのは当たり前のものではなく、何か差別化できる特性が必要です。何に使えるかわからないけど、何か使えたらすごくないですかっていうものの方こそ、お客さんも市場も求めています。

講演時の様子

ハリマ化成の博士取得者のニーズや求める人物像など

データは見ていませんが、割と増えています。少なくとも採用の活動の中で博士だから不利ということはないですし、私個人的には歓迎したいですね。修士課程2年、博士課程3年の計5年間研究を行ってきた地頭の体力・忍耐力は企業で働く上でも大変重要だと思います。修士課程などでは期間が短いためどうしても中途半端になりがちです。また、博士は専門性に偏ってしまって視野が狭くなるため良くないといわれることがあると思いますが、そんなことはないと思います。

学生時代に役立ったことは

友人と遊び、さまざまなアルバイトをしたことです。その中で色々な人・物に出会い多様性を知ることができました。社会の中では一人では何もできないので、多くの人を巻き込んで充実した人生を過ごしてほしいです。

取材者感想

インタビューを通して、「求める人物像」は個性的な人間の方が良いとのことを言われました。確かに量産型の人間であるのならばいくらでも代わりがいると思います。何か他人に負けない技術なり、能力があれば人材として差別化できるのではないかと思いました。

取材担当:広島大学グローバルキャリアデザインセンター特別研究員 山谷浩史


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