平成２３年４月１１日

平成２３年度科学技術分野の文部科学大臣表彰
「科学技術賞 開発部門」「科学技術賞 研究部門」の受賞について
 

平成２３年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 「科学技術賞 開発部門」において、医歯薬学総合研究科 河野修興教授の研究グループの「間質性肺炎診断薬である血清ＫＬ-６抗原測定試薬の開発育成」が受賞、また、「科学技術賞 研究部門」において、理学研究科 寺田健太郎教授の「局所絶対年代分析で解読する新しい太陽系史の研究」が受賞しましたので、下記のとおり、受賞の記者会見を開催しますのでお知らせします。ご多忙の折、誠に恐縮に存じますが、是非ご出席いただきたくご案内申し上げます。

記

日 時： 平成２３年４月１４日（木）１１：００～１２：００
場 所： 広島大学歯学部 ２階大会議室
（広島市南区霞1丁目2番３号）
      
出席者： 河野修興（広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授）
寺田健太郎（広島大学大学院理学研究科 教授）

薬剤性肺炎などの急性型間質性肺炎の多くは致死率が高く、また、慢性型間質性肺炎は呼吸不全や肺がんを合併するリスクがあり、間質性肺炎は、早期に的確に診断することが望まれていましたが、この診断には、胸部Ｘ線画像診断等、高度で侵襲的な専門医レベルの診断技能が必要でした。そのため、一般医家や呼吸器専門医以外の医師でも診断可能な簡便な診断法の開発が望まれていました。
 
河野教授は、間質性肺炎の肺局所に増生するII型肺胞上皮細胞が産生する糖蛋白（ＫＬ-６抗原）に反応するマウスモノクローナル抗体を独自に作製し、その抗体を使って血液中ＫＬ-６抗原濃度を測定するキットを開発しました。この開発により、間質性肺炎の診断と疾患活動性を血液検査によって評価することが世界で初めて可能となり、専門外の医師にも間質性肺炎の診断がより容易に行えるようになりました

この研究成果は、大学と研究所での研究成果を企業との連携により実用化し、
日本呼吸器学会の診療ガイドラインに記載されるなど実地医療に大きく貢献し、侵襲性のない新たな検査法として日常診療に取り入れられることにより、間質性肺炎患者の肉体的・経済的負担を軽減することに寄与しています。

「科学技術賞 研究部門」受賞 理学研究科 寺田健太郎教授

地球型惑星の起源と進化を探る上で、「時間軸」を決定する岩石の年代測定は必要不可欠な分析技術です。しかし、惑星物質の多くは、数十億年間にわたる度重なる天体衝突によってミリサイズ以下に破砕・混合されているばかりか、衝突時の熱変成により放射年代系がリセットされる等、衝突前の始原的な年代情報を引き出す事が困難でした。
 
寺田教授は、隕石中に普遍的に存在する、熱耐久性にすぐれたウラン（Ｕ）に富むリン酸塩鉱物に着目し、約１０μmに絞った酸素イオンビームを照射し、
鉱物から叩き出されたウランとその娘核種の鉛（Ｐｂ）の同位体比を高感度・高分解能で分析する方法を、世界に先駆けルーチン化しました。この研究により、これまでベールに包まれていた月、火星、小惑星などの初期進化の「時刻」を決定することが可能となりました。

この研究成果は、十ミクロンの鉱物粒子から「絶対年代情報」を得る手法であり、彗星や小惑星から回収した微粒子や微化石など応用が可能であることです。生成環境の指標となる酸素・炭素同位体の分析方法と併用することにより、「太陽系史の高精度解読」、「地球史の古環境の復元、将来予測」にも寄与することが期待されます。

（筆頭者）
「科学技術賞 開発部門」
河野 修興（こうの のぶおき）
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
 
渡邉 啓祐（わたなべ けいすけ）
三光純薬株式会社 代表取締役社長
 
「科学技術賞 研究部門」
寺田 健太郎（てらだ けんたろう）
広島大学大学院理学研究科 教授