大学院先進理工系科学研究科 化学工学プログラム 中井智司
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・論文のタイトル:Effects of Hiroshimana old pickle containing lactic acid bacteria as a potential probiotic source for broiler chicks
・著者:Brilian Pamungkas, Erina Shimura, Takahiro Nii, Toshikazu Suenaga, Satoshi Nakai, Takehiko Gotoh, Wataru Nishijima
・掲載雑誌:Poultry Science
・DOI:10.1016/j.psj.2026.107704
漬物は塩分を含むため、再利用しづらい食品廃棄物です。広島大学大学院先進理工系科学研究科の中井智司教授、末永俊和准教授、同大学院統合生命科学研究科の新居隆浩准教授は、乳酸菌を含む漬物を家畜の飼料として活用し、プロバイオティクス効果[5]により、ヒナの腸の状態をよくする可能性に着目しました。
研究では、広島菜の古漬けを飼料に1%または3%加え、ブロイラーのヒナに2週間与えました。その結果、1%添加した場合、ヒナの体重の増加量は通常の飼料を与えた場合と変わりませんでしたが、餌を体重の増加に利用する効率を示す「飼料要求率(FCR)」は平均して約9%低下しました。これは、同じ程度の体重増加を得るために必要な餌の量が少なくなったことを示します。また、腸の内部を調べた結果、栄養の吸収などに関わる「絨毛」が長くなっており、消化管の健常化を示す現象も確認されました。さらに小腸の一部である「空腸(くうちょう)」や大腸の一部「盲腸」にいる細菌を調べた結果、広島菜の古漬けを給餌した盲腸では、短鎖脂肪酸を作る細菌の仲間であるLachnoclostridium sp.、Anaerostipes butyraticus、Soleaferrea sp. が検出されました。短鎖脂肪酸は、消化管の粘膜の健全性維持や栄養利用効率の向上に寄与することが報告されている物質であり、これらが広島菜の古漬けの効果の原因である可能性が考えられました。
一方、広島菜の古漬けを飼料に3%加えた場合には、餌を食べる量とと体重の増加が抑制されました。これは古漬けに含まれる塩分が過多になったことが原因と考えられ、飼料として利用する場合には、適度な添加量が重要であることもわかりました。
本研究成果は、2026年8月25日(日本時間)にElsevier社の学術誌「Poultry Science」にオンライン掲載されました。
広島菜の漬物は、広島県の特産品として知られていますが、ある広島菜漬物の製造工場では、年間5トンの古漬けが廃棄されています。漬物の廃棄物は塩分を多く含んでおり、メタン発酵や堆肥化などの再利用に好適ではありません。しかしながら、漬物には乳酸菌が含まれています。乳酸菌のプロバイオティクス効果は広く知られており、漬物の給餌による消化管の健常化が期待されました。
本研究では、広島菜の古漬けを1%、3%にて飼料に加え、生後のブロイラーのヒナに2週間給餌しました。その結果、ブロイラーヒナの体重の増加量は変わりませんでしたが(図1a)、摂餌量は対照系よりも少なくなり(図1b)、飼料要求率(FCR)は対照系と比較して平均的に約9%低下しました。これより、ブロイラーの市販飼料の1%を広島菜の古漬けに置き換えられること、また、飼料自体の使用量も低減できる可能性が認められました。
次に、空腸粘膜を観察した結果(図2)、陰窩(いんか)(腸内のくぼみ)の深さは変化しませんでしたが、絨毛の高さが増加する(図3)といった、消化管の健常化を示す現象が確認されました。また、この結果は、広島菜の古漬けの添加によりヒナの栄養の吸収能力を向上させられることを示唆しています。さらに空腸や盲腸の細菌を調べた結果、広島菜の古漬けを給餌した盲腸では、短鎖脂肪酸を生成することが知られるLachnoclostridium sp.、Anaerostipes butyraticus、Soleaferrea sp. が検出されました。短鎖脂肪酸は、消化管の粘膜の健全性維持や栄養利用効率の向上に寄与することが報告されている物質であり、これらが広島菜の古漬けの効果の原因である可能性が考えられました。但し、広島菜の古漬けを飼料に3%添加すると摂餌(図1b)と体重増加(図1a)が抑制されました。これは塩分が過多になったためと考えられ、広島菜の古漬けの利用は、適度な添加量で行う必要があることがわかりました。
一連の結果は2週間の給餌試験の結果により得られました。ブロイラーの飼育期間は6週間ですので、今後は全飼育期間を通しての効果を評価する予定です。
図1 広島菜の古漬けの添加によるブローラーヒナの
(a)体重増加と(b)積算摂餌量への影響 (n=8)
図2 空腸表面粘膜における繊毛高さと陰窩深さ
図3 空腸表面粘膜の繊毛の高さと陰窩の深さへの広島菜の古漬けの効果(n=8)
[1] 古漬け
野菜などを塩漬けにして長期間熟成させた漬物のこと。
[2]ブロイラー
食肉用として育てられるニワトリのこと。
[3] 絨毛
栄養分を吸収する役割をもつ。繊毛の高さが高くなると表面積が大きくなり、栄養分の吸収率がよくなる。
[4] 飼料要求率(FCR, feed conversion ratio)
畜産物1 kgの生産に消費された飼料の量[kg]数量を指す。
本研究ではFCR=飼料摂取量[kg]/体重の増加量[kg]として計算した。
FCRの値が小さいほど飼料の利用効率がよいことを示す。
[5]プロバイオティクス効果
体に良い働きをする微生物(主に乳酸菌など)を取り入れることで、腸内環境を整え、健康によい影響をもたらすこと。
大学院先進理工系科学研究科 化学工学プログラム 中井智司
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掲載日 : 2026年10月27日
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