令和2年度 原爆死没者追悼式

広島大学原爆死没者追悼式 追悼の辞 (2020.8.6)

 「原爆の日」が巡ってまいりました。被爆75年の節目となる今年の「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、原爆の犠牲となられた方々の御霊(みたま)に、広島大学を代表し、謹んで哀悼の誠(まこと)をささげます。

 新型コロナウイルス(COVID19)の感染が再び拡大している現状に鑑み、ご遺族と関係者の皆様の健康と安全を最優先とするため、規模を縮小しての開催となりましたことをご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

 先ほど「広島大学原爆死没者追悼之碑」に、この1年間に確認された23人のお名前を書き加え、合わせて2,022人の方々の名簿を奉納させていただきました。

 75年前、まさにこの地にあった広島文理科大学をはじめ、広島大学の前身諸学校の多くが、校舎の倒壊や焼失など甚大な被害を受けました。学生・生徒・児童や留学生、教職員は学校内外や勤労動員先で尊い命を奪われ、傷つきました。

 被爆から4年後の1949年、広島大学は廃墟の中から「自由で平和な一つの大学」を建学の精神として開学しました。以来、一貫して平和の大学として歩みを続けてまいりました。

 私は、学長に就任して以来、「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人の育成」に取り組んでまいりました。そして今、あらためて本学の使命の重さを噛み締めているところでございます。

 現在、世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、頻発する自然災害とともに人類の大きな脅威になっています。こうした事態の背景にあるとされる地球温暖化や森林破壊は、まさに経済優先のグローバル化がもたらした負の遺産であると私は思っています。

 これからの時代に求められるのは経済至上主義ではありません。私たちは、かけがえのない地球を、人類の築いてきた英知と共に、次の世代に引き継いでいく重い責任を担っていると考えています。その基盤となるのが平和であります。

 被爆75年に当たり、あらためて原爆の犠牲になられた皆様に思いを致し、平和な人類社会を築くため、広島大学の構成員が一丸となって努力してまいることをお誓い申し上げ、追悼の辞といたします。

 

令和2年(2020年)8月6日
広島大学長 越智光夫


up