令和3年度 秋季学位記授与式

学長式辞 令和3年度秋季学位記授与式 (2021.9.17)

 本日、学位記を受けられる345人の卒業生、修了生の皆さん、誠におめでとうございます。令和3年度の秋季学位記授与式を挙行するにあたり、広島大学を代表して心からお祝いを申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、学業や課外活動、アルバイトなど学生生活にもさまざまな支障が生じたことと思います。また、休暇中も母国に帰れなかった留学生の方もいるでしょう。こうした苦難を乗り越えて、きょうの晴れの日を迎えた全ての皆さんに、心からの敬意と拍手を贈ります。また、この感激はご家族をはじめ友人、先輩、後輩など周りの人々の理解と支えがあって成し遂げられたことを忘れないでください。

 私たち人類は今、幾重もの厳しい試練に直面しています。新型コロナ感染症は2019年末に最初の症例が報告されてから既に1年半余りが経過しましたが、いまだ流行が終息する兆しは見えません。世界の累計感染者数は2億2千万人を超え、亡くなった人も460万人余に上っています。日本国内でも感染者数は延べ165万人、死亡も1万7千人を超えて、なお増え続けています。

 広島大学はいち早く全学でワクチンの職域接種に取り組み、希望する学生・教職員等約2万人に2回接種を受けていただきました。幸い、学内で大きな感染者集団クラスターが発生していないのは、皆さん一人一人の感染防止の取り組みとともに、ワクチン接種の効果もあるのではないかと考えております。

 豪雨や猛暑などの自然災害を引き起こす地球温暖化もまた、国境を越えて人間の安全保障を脅かす喫緊の課題です。本学は、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルについて、政府が目指す2050年からさらに20年前倒しして2030年までに実現することを宣言しました。2030年は国連の持続可能な開発目標SDGsの目標年でもあり、広島大学は世界の先頭に立って、リードしていくことを約束いたします。

 さらに、内戦や国際情勢の緊迫化による人権・自由の侵害も見過ごすことはできません。アフガニスタンでは先月来、政権崩壊と米軍の撤退に伴う混乱が伝えられています。現地には広島大学の在学生や修了生も多いことから、本学は急きょ「特別対策室」を設置しました。留学生の皆さんと連携・協力しながら情報を収集し、現地にとどまっている在籍生及び修了生に対し、最大限の支援を行ってまいります。平和の大学として、多様性を育み自由で平和な国際社会の構築に貢献することは、広島大学の使命であります。
 
 広島大学は3年後の2024年、開学から75年を迎えます。原爆投下後、「75年間草木も生えない」といわれた広島の地は今や見事に復興し、緑豊かな国際平和文化都市となりました。私は学長に就任して以来、「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人の育成」を掲げてまいりました。新たな人生の一歩を踏み出される皆さんが、平和のために何ができるかを自分の頭で考え、世界に羽ばたいていただきたいと願っています。
 
 最後に、前途洋々たる未来に向かって一歩を踏み出す皆さんを、広島大学はこれからも全力で応援することをお誓いして、私からのはなむけの言葉といたします。

令和3年9月17日
広島大学長 越智光夫


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