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広島大学は8月20日、横浜市のパシフィコ横浜にて、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)テーマ別イベント「GLOBAL INNOVATION 日アフリカ大学シンポジウム ~日アフリカ間の人材育成、科学技術協力の未来を描く~」を開催しました。
本イベントは、2025年8月20日から22日に横浜で開かれる第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の公式な関連イベントとして外務省に認定を受け実施するものです。
イベントには、日本とアフリカの大学、国際機関、政府関係者、民間企業、アフリカに関心のある一般の方など、多方面から多数の参加がありました。
越智学長の冒頭挨拶
開会に先立ち、広島大学の越智光夫学長が挨拶を行い、広島大学における30年以上にわたるアフリカとの交流や教育・人材育成について紹介するとともに、日本とアフリカが対等な立場で協力し、多様な価値観を持つ人材を育てていくことが、これからの世界に不可欠であることを強調しました。また、2024年11月に協定を締結したパンアフリカン大学(アフリカ連合)との連携をはじめ、今後、教育と科学技術分野においてアフリカとのさらなる交流促進、アフリカからの留学生の受け入れ拡大について述べました。
続いて行われた基調講演では、アフリカ開発銀行 教育・技能開発マネージャーのヘンドリーナ・C・ドロバ氏が、アフリカにおける教育基盤強化の現状と国際連携の可能性を紹介しました。ドロバ氏は、アフリカは発展の転換期にあり、人材育成が持続可能な開発と競争力強化の鍵となる。日アフリカは共に科学技術や高等教育でのパートナーシップを推進し、奨学金等を使い若者の潜在力を引き出し、イノベーションを産業や社会へつなげ、未来の繁栄を共に築く基盤とすることが重要である、と述べました。
アフリカ開発銀行Hendrina C. Doroba(ヘンドリーナ・C・ドロバ)氏
START International Hassan Virji(ハッサン・ヴィルジ)氏
さらに、START International 名誉事務局長のハッサン・ヴィルジ氏が、科学技術協力を通じた社会課題解決と人材育成の方向性について発表しました。
ハッサン氏は講演の中で、START Internationalが気候変動や持続可能性の分野において30年以上に渡り取り組み、積み上げてきたアフリカのポスドク研究者や博士学生に対する支援や育成に関する様々な経験を共有しました。
また、「科学技術イノベーションの新たな機会は、環境科学、ライフサイエンス、AI・データの分野にも拡大している。アフリカは人口増加と豊かな資源を背景に、未来の地球規模の平和と持続可能性にとって重要な地域である。これらの課題と機会に応えるには、プライベートセクターを含む多様なステークホルダーを統合し、社会のあらゆる分野が連携することが不可欠である。」と述べました。
パネルディスカッションの様子
その後のパネルディスカッション「日アフリカ間の人材育成と科学技術協力の未来」には、RUFORUM(農業能力構築のための地域大学フォーラム)、在日本エジプト大使夫人でAIの専門家でもあるハナン・ファドローン氏、広島大学、文部科学省、住友商事株式会社から登壇者が参加し、産官学それぞれの立場から、人材育成と教育・研究交流の拡大に向けた取組についた展望が語られ、活発な意見交換が行われました。
モデレーターを務めたハニー・エルシェミ理事補佐
RUFORUM((農業能⼒構築のための地域⼤学フォーラム) パトリック・オコリ氏
エジプト大使夫人 ハナン・ファドローン氏
パトリック・オコリ氏は、アフリカ54か国・175大学が参加するRUFORUMの役割を紹介し、博士人材育成や学部教育の重要性を強調しました。加えて、労働、農業、技術、環境といった課題に科学の力で取り組むことで、アフリカの科学分野における世界的な存在感を一層拡大していく展望を示しました。
ハナン・ファドロン氏は、AIと人間の関係性を探求し、規制やガイドラインの必要性を強調しました。教育・医療でのAI活用、倫理やインフラ課題に触れ、アフリカと日本との連携で若者の潜在力を開放すべきと語りました。
文部科学省 佐藤邦明氏
住友商事株式会社 新田臣平氏
広島大学 新福教授
文部科学省の佐藤氏は、アフリカは重要なパートナーであり、学生交流と大学間協力が不可欠と強調し、モビリティ拡大、産学官連携による持続可能な発展推進の必要性、日本とアフリカの強みの融合を訴えました。
住友商事の新田氏は、自身のアフリカ・マダガスカル鉱山事業での人材育成経験を紹介しながら、ABEイニシアティブを通じ育成された人材が成果を上げた事例を示し、産学官の連携による人材育成の拡充を強調しました。
最後に、広島大学の新福教授は、タンザニアでの母子健康アプリ活用事例を紹介。課題は公平なアクセスと持続可能性であり、日アフリカの共創で文化に根ざしたヘルスケア解決を目指す重要性を訴えました。
署名の様子
署名後の記念撮影
シンポジウム終盤には、アフリカの大学ネットワークであるRUFORUM(Regional Universities Forum for Capacity Building in Agriculture)と本学との間で、連携に関する覚書(MOU)の締結式を行いました。
本協定は、農学・生命科学・環境・エネルギーなど、SDGsに資する分野における大学院教育・研究を通じて、アフリカと日本の学術交流を促進し、次世代の科学技術・開発リーダーを育成することを目的としています。広島大学は、アフリカの学生と教員に世界水準の研究環境を提供し、帰国後に持続可能な開発に貢献できる人材育成を担います。
広島大学は、TICAD9やRUFORUMとの連携を一つの起点として、今後もより多くの教育・研究機関等と連携・協力し、アフリカをはじめとする多様な国・地域から広島に留学生を迎えられるよう取り組んでまいります。
集合写真
会場には広島大学のマスコットキャラクターであるヒロティーも応援に駆けつけました
当日のプログラム及び登壇者:
10:00-10:05 開会挨拶(広島大学学長 越智光夫)
10:05-10:25 基調講演① アフリカ開発銀行 教育・技能開発マネージャー Hendrina C. Doroba(ヘンドリーナ・C・ドロバ)氏
10:25-10:45 基調講演② START International 名誉事務局長 Hassan Virji (ハッサン・ヴィルジ)氏
10:45-11:25 パネルディスカッション「日アフリカ間の人材育成と科学技術協力の未来」
【登壇者】
①RUFORUM(農業能力構築のための地域大学フォーラム)事務局長 Patrick Okori(パトリック・オコリ)氏
②エジプト大使夫人 ハナン・ファドロン氏
③文部科学省高等教育局参事官(国際担当)佐藤邦明氏
④住友商事株式会社 アフリカ支配人
アフリカ住友商事会社 社長
中東・アフリカ住友商事グループDeputy CEO
新田臣平氏
⑤広島大学 大学院医系科学研究科教授 新福洋子
【モデレーター】
・広島大学理事補佐 Hany El-Shemy(ハニー・エルシェミ)
11:25-11:30 協定締結式(広島大学-RUFORUM)
広島大学国際室国際部グローバル化戦略グループ