公益財団法人 ダイヤ高齢者社会研究財団 研究部 土屋瑠見子
TEL:03-5919-3174
E-mail:tsuchiya*dia.or.jp
広島大学大学院医系科学研究科 寺本千恵
E-mail:terachie*hiroshima-u.ac.jp
(*は半角@に置き換えてください)
近年日本では、救急出動件数が増え続けており、救急搬送の約6割を高齢者が占めています。急病やけがの多くは時間との勝負であり、通報から病院到着までの時間を短くすることは、患者の予後の改善と救急体制の効率化の両面で重要です。中でも現場滞在時間は、消防署と現場、そして病院との距離に依存する現場到着所要時間や搬送時間と違い、改善の余地がある時間として扱われてきました。しかし、年齢・重症度・時間帯といった変えにくい要因との関連が報告され、住まいの構造という「変えることができる要因」は検討されてきませんでした。
東広島市消防局(竹原市・大崎上島町を含む管轄)の救急出動記録と救急搬送記録を用い横断研究を実施しました。
解析対象は、2016年1月〜2024年12月の65歳以上26,058人としました。説明変数は 「発生場所(居間、廊下、階段、トイレ、浴室、台所、庭、その他)」と 「居住階(1階〜6階以上)」を用いました。アウトカムは現場滞在時間とし、ガンマ分布・対数リンク関数を用いた一般化線形モデルで解析し、性別、年齢、国籍、事案種別、通報日時区分、COVID-19流行期、気温、居住地域を調整した平均比(aMR)と95%信頼区間(95% CI)を算出しました。あわせて、指令内容のテキストデータを用いた対応分析も行いました。
現場滞在時間の中央値は16分(四分位範囲13–21分)でした。発生場所別では、居間と比べてトイレ(aMR: 1.08, 95%CI: 1.04–1.12)、浴室(1.09, 1.05–1.13)、台所(1.06, 1.03–1.10)で有意に長く、廊下(0.95, 0.93–0.97)と庭(0.95, 0.93–0.98)は有意に短くなっていました。居住階では、1階に対し、2階から6階以上までおおむね上階ほど現場滞在時間が長い傾向でした。対応分析では、トイレ・浴室・台所は「意識障害」を示す軸の「意識消失」側に位置している一方、現場滞在時間が短かった廊下・庭は、「疾患・傷病の種類(外因性~内因性)」を示す軸の「外因性」側に位置していました。
自宅の上階や、トイレ・浴室・台所といった狭く仕切られた場所では、救急隊の現場滞在時間が長くなることが示されました。1件あたりの差は数%と大きくありませんが、出動件数が増え続ける中では、全体として無視できない意味を持ちます。本研究は横断研究であり因果関係を示すものではなく、エレベーターの有無や間取りといった情報も含んでいません。それでも、住まいの構造が救急活動に関わりうることを示した点で新しく、建築基準やバリアフリー施策、救急体制の検討における基礎資料となると考えます。
本研究は、JSPS科研費 基盤研究(課題番号 JP23H03228、JP23K27918)の助成を受けて実施されました。データをご提供いただいた東広島市消防局に感謝申し上げます。
著者:Tsuchiya-ItoR, Ueno K, Teramoto C, Imura H, Sano T, Tanabe K.
タイトル:Incident location at home and emergency medical services on-scene time for older adults in Japan: A population-based cross-sectional study.
掲載誌:BMC Emergency Medicine
DOI:https://doi.org/10.1186/s12873-026-01694-6
■本プレスリリースの作成には、AIツール(Claude)を活用しています。内容については作成者が最終確認を行っています
公益財団法人 ダイヤ高齢者社会研究財団 研究部 土屋瑠見子
TEL:03-5919-3174
E-mail:tsuchiya*dia.or.jp
広島大学大学院医系科学研究科 寺本千恵
E-mail:terachie*hiroshima-u.ac.jp
(*は半角@に置き換えてください)
掲載日 : 2026年09月30日
Copyright © 2003- 広島大学