令和8年度 秋季学位記授与式

学長式辞 令和8年度秋季学位記授与式 (2026.9.18)

本日、晴れて卒業、修了の日を迎えられた381人の皆さま、そしてご家族の皆さま、誠におめでとうございます。広島大学を代表して心よりお祝い申し上げます。

特に海外から来られた留学生の皆さんは、異なる文化や言語、生活習慣の違いを乗り越え、学業を全うされました。その努力に深く敬意を表します。同時に、今日まで皆さんを支えてくださったご家族やご友人への感謝の気持ちも、どうか忘れないでください。

さて、皆さんがこれから歩み出す世界に目を向けますと、ロシアのウクライナ侵攻が始まって4年半を超え、アメリカとイスラエルによるイランへの武力攻撃からも半年が過ぎました。いまだ戦争の終わりは見えず、核兵器使用のタブーさえも風前の灯になっています。まさに混沌とした状況の中で広島大学を巣立っていく皆さんに、私は心から励ましの言葉を送りたいと思います。

1949年、人類最初の被爆地・広島に開学した本学は、「平和を希求する精神」を理念の第一に掲げてきました。その広島大学で学んだ皆さんには、これからも自ら平和について考え、家族や友人・知人と対話し、何かアクションを起こしてほしいと願っています。

気象予測の分野では「バタフライ効果」という現象が知られています。初期条件のわずかな変化が、時間の経過とともに大きな変化を生む現象のことです。これを平和の取り組みに置き換えてみれば、たとえ一人一人のささやかな行動であっても、やがてそれが未来に大きな影響を与える力となるのではないでしょうか。私はそのように確信しています。

広島大学は原爆の犠牲となられた前身諸学校の方々をはじめ、本学に連なる人々が受け継いできた「平和の希求」「知への探究」「社会への貢献」の志を未来へつないできました。その決意を形にするため、8月7日、本学発祥の地・東千田キャンパスにモニュメント「不滅の学灯」を建立しました。

モニュメントの後方には、歴代学長をはじめ、趣旨にご賛同いただいた退職者を含む教職員や同窓生のお名前を記す顕彰掲示板を設けます。本日、学位記を手にされた皆さまにもぜひ、お名前を連ねていただきたいと願っています。詳しくは本学ホームページをご覧ください。

「人生に何を期待するかではなく、人生が私たちに何を期待しているかを問わなければならない」

ナチスの強制収容所での体験をつづった「夜と霧」で知られるオーストリアの精神医学者、ヴィクトール・フランクルの言葉です。この言葉は、過酷な歴史の只中で、人間がいかにして生きる意味を見いだし得るかを示しています。

皆さんもどうか「広島大学で学んだ自分は、世界から何を期待されているのか」という問いを胸に刻みながら、目の前に広がる「混沌の海」に漕ぎ出してほしいと思います。その航路を支えるのは、広島大学で培った専門知識と幅広い教養、そして恩師や友人、先輩・後輩とのつながりです。それらは、皆さんがこれから出会う未知の課題に向き合うとき、必ず力となり、灯となってくれるはずです。

広島大学はこれからも、「不滅の学灯」に込めた志を受け継ぎ、「平和を創る大学」として歩み続けます。皆さんと手を携え、「100年後にも世界で光り輝く大学」として希望の光を灯し続けることをお誓いし、私からのはなむけの言葉といたします。

 

令和8(2026)年9月18日
広島大学長 越智光夫


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