年頭挨拶 (2026.1.5)
あけましておめでとうございます。2026年、令和8年の年頭にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
今年の干支は「丙午(ひのえうま)」です。情熱と行動力が新たな局面を切り拓く年とされています。干支は60年を周期とし、人の営みや社会の潮流に節目をもたらすとされる古代中国の英智です。人の免疫や代謝をはじめ、「コンドラチェフの波」と言われる長期景気循環、国際秩序の転換などにおいても、60年前後で転機が生じることが知られています。今年はまさに、本学にとっても未来への新たな一歩を踏み出す年になると言えます。
創立75+75周年と被爆80年の節目となった一昨年から昨年にかけて、本学では吉永小百合さんによる原爆詩朗読会や平和学長会議、さらにフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏を招いた講演と対話のつどいを開催しました。開学以来、一貫して受け継いできた本学の理念である「平和を希求する精神」を、核兵器の脅威が高まる中、世界に向けて発信し、対話を重ねることの大切さをアピールできたのではないかと考えています。
研究面では昨年も、国の大型助成事業に相次いで採択されました。西日本で唯一の「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業」をはじめ、日本医療研究開発機構(AMED)の「医学系研究支援プログラム」、文部科学省の「半導体人材育成拠点形成事業」などが挙げられます。いずれも役員・教職員が一丸となって大型の競争的資金獲得に取り組んだ成果に他なりません。
今年は、東広島キャンパスでは半導体・超物質研究の産学官連携拠点が竣工し、キャンパスの一角に米国アイダホ大学広島キャンパスが夏に開校予定です。一方、霞キャンパスにおいては国内の大学で唯一となるワクチン・医薬品製造拠点が完成するのに続き、放射線影響研究所が入る新棟の工事も急ピッチで進みつつあります。高度人材育成の基盤となる施設・環境の強化に、全力で取り組んでまいります。
「歴史は真理の光であり、人生の教師である」と、古代ローマの政治家キケロは述べています。私たちはこれまでの歩みを振り返って成果と課題を見つめ直し、その経験を未来へ生かすことが重要です。さらに、古代中国の書『易経』の「彰往察来(しょうおうさつらい)」の精神にならい、これまでの学問的蓄積を新たな革新へとつなげてまいります。
日本は今、人口減少や経済の縮小に伴う国力の低下、さらには国際情勢の緊迫化という大きな試練に直面しています。しかし、人々は戦争や疫病、自然災害など幾多の困難を乗り越え、柔軟な発想や挑戦によって未来を切り拓いてきました。原爆被災という未曽有の「原体験」から立ち上がった本学の先人たちの労苦とご努力にあらためて思いをいたし、危機を好機へと転じる強靭さを育んでまいる所存です。
私は2015年に学長に就任して以来、教員人事の全学一元化、情報科学部の創設、海外協定大学の積極的な誘致など、100年後にも世界で光り輝く大学を目指して改革を進めてきました。2018年の豪雨災害や2020年からの新型コロナウイルスといった困難にもめげず、広島大学を支えてくださった歴代の構成員の皆様に、深い感謝の意を表します。
これからも皆様と緊密に意見交換しながら、「広島大学で学んで良かった」「広島大学で働いて良かった」と、心から思っていただける環境づくりに、一層注力してまいります。
最後になりましたが、今なお戦火が続く地の一日も早い平和と日本の安寧を願い、教職員・学生の皆様、そしてご家族にとりまして、より良き年となりますよう祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。
令和8年(2026年)1月5日
広島大学長 越智光夫

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