学長式辞 令和6年度秋季学位記授与式 (2024.9.20)
本日、学位記を受けられる312人の卒業生、修了生の皆さん、誠におめでとうございます。令和6年度の秋季学位記授与式を挙行するにあたり、広島大学を代表して心よりお祝いを申し上げます。
特に海外から来られた留学生の皆さんは、異なる文化、言葉、生活習慣の中で、学びに励んでこられました。そのご努力と忍耐に心から敬意を表します。一方、皆さんには本学での学びを後押しして下さったご家族や友人をはじめ、多くの方々への感謝の気持ちを忘れずに持ち続けていただきたいと思います。
今、皆さんの胸には、キャンパスで過ごした日々が、次々と浮かんでいることでしょう。また、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの紛争が続く中、世界の状況に心を痛めていることと思います。
今年は広島大学創立75周年、最も古い前身校の白島学校創立から数えると150周年の節目に当たります。9つの前身校に甚大な被害を与えた原爆の惨禍から4年後の1949年に開学した広島大学は、今や中四国地区を代表する総合研究大学として発展を続けています。
先月8月6日の原爆の日に世界の7カ国・地域の10大学の学長らが広島に集まり、初めて平和学長会議を開催しました。大学には、紛争やSDGsといった課題を理性と対話で解決し、世界平和に寄与できる人材を育てる責務があると考えるからです。
参加したアメリカ、スウェーデン、イタリア、インド、インドネシア、台湾の学長ら22人の総意で「プログラムや教育を通じて国際交流を促し、人と人とのつながりを育む」という平和学長宣言を採択しました。今後は、多くの学生や教育関係者に広島を訪れてもらい、被爆の実相に直接触れる機会を提供していきます。
きょうから広島大学の同窓生の一員となられた皆さんには、本学で得た平和に関する知識や見識を母国や地域の人々に伝え、世界の恒久平和に貢献していただきたいと願っています。現在、本学の同窓生は、前身校を含め25万人を超えています。昨年はインドネシアに同窓会組織を立ち上げ、今年はベトナムに農学系のサテライトキャンパスを計画するなど、「世界から選ばれ、地域に愛される大学」を目指してまいります。
18世紀の哲学者ジャン=ジャック・ルソーは名著「エミール」の中で「生きること、それは呼吸することではない。活動することだ」と述べています。そして「私たちの器官、感官、能力を、私たちに存在感を与える体のあらゆる部分を用いることだ」と続けています。つまり、環境からの刺激に対して、私たちの五感を総動員して反応していくことが生きるということなのだと、ルソーは言っているように思います。
皆さんが、重大な岐路に立った時や、未経験の難題に直面した時こそ、本学で培った知識と教養そして経験が力になります。それを最大限に活用しながら、他者の受け売りでなく自らの頭で考えていけば、必ず道は開けるはずです。
最後に、本学はこれから新たな一歩を踏み出される皆さんと手を携え、「100年後にも世界で光り輝く大学」を目指して全力で取り組んでいくことをお誓いし、私からの、はなむけの言葉と致します。
令和6(2024)年9月20日
広島大学長 越智光夫