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【研究成果】長年の肝炎対策が奏功! 日本の肝がん死亡は大幅減 ―感染・肝がん死亡が大幅に減少、WHO 2030年目標の達成に近づく―

本研究成果のポイント

  • 全国規模のデータを約半世紀にわたり検証し、B型・C型肝炎ウイルスの感染と関連する肝がん死亡が大きく減少し、WHOの2030年「排除(Elimination)」目標に近づいていることを示しました。
     
  • 新規感染率はHCV(※1)で約0.4/10万人年、HBV(※2)で約2.38/10万人年と極めて低い水準となり、抗ウイルス治療もHBV・HCVともにWHOの治療目標を達成または上回る水準にあります。
     
  • 一方、ウイルス性肝炎による肝がん死亡の減少に伴い、肝細胞がん死亡に占める非ウイルス性の割合は2019年に56.0%となり、Elimination後を見据えた肝がん対策の新たな課題も明らかになりました。

概要

 広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学の秋田智之講師、田中純子理事・副学長らの研究グループは、日本における約半世紀の肝炎対策と肝がんの変化を、全国規模の疫学調査、公的統計、NDB(※3)、日本赤十字社の献血者データなどを用いて検証しました。
 その結果、B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の感染率と関連する肝がん死亡は大きく減少し、治療についてもWHOの目標を達成または上回るなど、日本がウイルス性肝炎の「排除」に近づいていることが示されました。
 一方、ウイルス性肝炎による肝がん死亡の減少に伴って肝がんの原因構成も変化しており、今後はこれまでの肝炎対策を維持してEliminationを達成・維持するとともに、非ウイルス性肝疾患にも対応していくことが重要です。

発表論文

■ 掲載誌:The Lancet Regional Health – Western Pacific
■ 論文タイトル:Liver cancer in Japan: epidemiological transition, viral hepatitis control, and emerging challenges
■ 著者名:Junko Tanaka 1*, Ko Ko 2, Aya Sugiyama 2, Chanroth Chhoung 3, Akemi Kurisu 2, Masahiro Satake 4, Tatsuya Kanto 5, Takaji Wakita 5, Tomoyuki Akita 2*

1. Medical Policy Office,Hiroshima University, Japan
2. Department of Epidemiology, Disease Control and Prevention, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Japan
3. Global Health Research Center, University of Health Sciences (UHS), Phnom Penh, Cambodia
4. Blood Service Headquarters, Japanese Red Cross, Tokyo, Japan
5. Japan Institute for Health Security, Tokyo, Japan
*Corresponding author, DOI: 10.1016/j.lanwpc.2026.101900

背景

• B型・C型肝炎ウイルスの持続感染は、肝硬変や肝がんの主要な原因です。日本では1970年代以降、輸血用血液の安全対策、HBV母子感染防止事業、肝炎ウイルス検査の普及、抗ウイルス治療への医療費助成など、予防・検査・治療を組み合わせた対策が続けられてきました。

• WHOは2030年までにウイルス性肝炎を公衆衛生上の脅威として「排除(Elimination)」することを目標としています。本研究では、全国規模の疫学データをもとに、日本の約半世紀にわたる肝炎対策が感染や肝がん死亡をどこまで減少させ、Eliminationにどこまで近づいたのかを包括的に検証しました。

研究成果の内容

  1. 研究方法・手順
    全国規模の疫学調査、公的統計、NDB、日本赤十字社の献血者データなどを用い、HBV・HCVの感染率、新規感染、肝がん死亡の長期的な変化を評価しました。これらを統合し、日本における長期的な肝炎対策の成果とWHOのElimination目標への進捗を検討しました。
     
  2. 今回分かったこと・従来との違い
    初回献血者のHBs抗原陽性率は1995~2000年の0.63%から2017~2021年には0.13%へ、HCV抗体陽性率も0.49%から0.16%へ低下しました。新規感染率もHCVで約0.4/10万人年、HBVで約2.38/10万人年と極めて低い水準となっています。
    特にHBVでは、2000年以降に生まれた妊婦では、HBs抗原陽性者がほぼ確認されない水準となり、母子感染防止対策の効果が次世代まで及んでいることが示されました。また、HBV・HCVともに抗ウイルス治療はWHOの治療目標を達成または上回る水準にあり、日本はウイルス性肝炎のEliminationに近づいています。
     こうしたウイルス性肝炎対策の進展に伴い、関連する肝疾患・肝がん死亡も減少しました。一方、肝細胞がん死亡に占める非ウイルス性の割合は1992年の6.8%から2019年には56.0%となりました。これは主としてウイルス性肝炎による肝がん死亡が減少したことに伴う相対的な変化であり、今後の肝がん対策では非ウイルス性肝疾患にも目を向ける必要があることを示しています。

今後の展開

ウイルス性肝炎の「排除」に向け、これまでの予防・検査・治療を継続、Eliminationを達成するとともに、その状態を維持していくことが重要です。そのためには、全国規模の疫学データによる継続的な評価と、残されたハイリスク集団への対策が必要です。

参考資料

図1 日本の原因別にみた肝がん死亡率の推移

見方 
・横軸は年、縦軸は肝細胞がん死亡率(10万人当たり)。
・Total=全体、HBsAg+=B型肝炎ウイルス関連、HCVAb+=C型肝炎ウイルス関連、NBNC=B型・C型肝炎ウイルス以外。
・肝細胞がん死亡率は2000年前後をピークに低下しており、特にHCV関連の死亡率が大きく減少しています。長期的なウイルス性肝炎対策の成果が、肝がん死亡の減少として現れています。

図2 日本におけるB型・C型肝炎ウイルス持続感染者数の推移と将来予測

見方
2000年、2015年、2020年のHBV・HCV持続感染者数を示しています。
HBV持続感染者は2000年の132~147万人から2020年には92~94万人へ、HCV持続感染者は169~219万人から18~48万人へ大きく減少しました。

用語解説

※1 C型肝炎ウイルス(HCV):
主に血液を介して感染し、慢性化すると肝硬変や肝がんに進展することがあるウイルスです。現在は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療が行われています。

※2 B型肝炎ウイルス(HBV):
血液や体液を介して感染し、慢性化すると肝硬変や肝がんの原因となるウイルスです。日本では母子感染防止などの対策が進められてきました。

※3 NDB(National Database):
保険診療のレセプトや特定健診の情報を全国規模で集めた国のデータベースです。医療の実態を把握する研究などに活用されます。

【お問い合わせ先】

大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学
Tel:082-257-5160 FAX:082-257-5164 
E-mail:eidcp*hiroshima-u.ac.jp
 

(*は半角@に置き換えてください)


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