第6回 鬼丸 孝博(大学院先端物質科学研究科 教授)

「ここがええね!広大」は、広島大学の構成員が、普段感じている広大の良さを語ります。

学生を育て、学生に育てられる大学

私にとって広島大学は、研究者人生のターニングポイントを迎えた場所ですね。ここは、学生と教員の距離がとても近い大学です。学生との日々の議論を通して勉強になることも多く、私自身が成長する機会に恵まれています。

私は学生時代を他大学で過ごし、民間の企業や研究機関も経験しました。思えば今まで、「研究」をしてきたという自負はある程度ありましたが、いわゆる「勉強」はあまりしてこなかった。それが、広島大学に来てから、素直でリアクションの良い学生たちに刺激を受け、彼らの疑問や質問にきちんと応えたいという思いから、授業で使う「教科書」を読み込むという「勉強」を大切にするようになりました。

そのことで、私も基本に立ち返り、再び基本を学びます。その積み重ねが、研究のベースをしっかりしたものにし、自身の成果にもつながっていると感じます。研究だけに専念していたら、視野も狭くなりがちだったかもしれません。だから、学生と日々切磋琢磨し、コミュニケーションがとれる今の環境は、私にとって大事なものです。

学内の高い技術力を生かした「ものづくり」

学生だけでなく、教職員からも刺激を受ける毎日です。私は、新しい物質の合成や物質の性質を測定する実験的研究を行っているのですが、測定装置やその部品を学内で製作することも多くあります。広島大学には「ものづくりプラザ」という共用施設があって、そこで自作もできるし、技術職員に依頼して作ってもらうこともできます。購入すれば高額な物も、学内で製作すれば研究費の節約になりますし、何より高い技術力で、自分の研究に最適な物を作ってもらえる。こんなに有難いことはないですね。

X線回折用ゴニオメーターの昇降機能付きのベース部分は、ものづくりプラザで依頼製作したもの

既設の実験装置にも、ものづくりプラザで依頼製作した部品が多く搭載されている

主体性とコミュニケーション力を養える環境

広島大学は、研究者が育つ場だとも思います。就職と研究の狭間で、博士課程後期に進むことを諦めてしまう学生もいます。学生たちに研究者がしてやれることは何か。どんなメッセージを伝えられるか。日々の課題です。

その一助となるかどうかはわかりませんが、私の研究室では数年前から合宿を始めました。大学院入試で忙しくなる前の6~7月頃に、2泊3日で行います。そこでは、学生たちが、自分たちで企画して、研究発表やセミナーを行います。場所決めから発表テーマ決め、発表要旨の冊子づくりまで、全て学生たちで行います。発表中は、教員は質問せず、上級生が座長を務め、学生同士がやりとりしながら進めます。ミニ学会のような感じですね。

合宿での研究発表の様子

合宿の締めは、お揃いのユニフォームでサッカー大会!

この合宿を始めてから、学生同士のコミュニケーションがさらに良くなったと思います。それまでは、学生たちのグループも、なんとなく研究テーマで分かれてしまいがちだったのですが、合宿を経験してから、別の研究テーマの先輩に質問に行くなど、学生たちの意識に違いが見られるようになりました。今後、広島大学で良いものをたくさん身に付けて、羽ばたいていってほしいですね。そのための環境が、広島大学には整っていると思います。

略歴

東京理科大学理学部卒業。東北大学大学院理学研究科修士課程修了。京セラ株式会社勤務。東京大学大学院理学系研究科博士後期課程修了。科学技術振興機構雇用研究員、広島大学大学院先端物質科学研究科助手、助教、准教授を経て、2018年から現職。

研究概要

専門は物質の磁性や超伝導(電気抵抗がゼロになる状態)などの特徴的な性質を、量子力学・統計力学を使って扱う「物性物理学」。最近、磁性イオンの電子軌道が相転移や超伝導などの多様な現象を引き起こす新たな物質群を見いだし、単結晶合成や極低温での精密物性測定などの実験的研究を行っている。物性物理学の新しい研究対象となるような物質の探索、新機能物質の開発に取り組む。

 

(2018年3月取材)※4月1日付けで教授に昇任


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